2019年3月19日に、NEAR Protocolのミートアップが開催されました。コア層の間で注目されつつあるNEAR Protocolですが、そのイベント模様をお伝えしていきます。
NEAR Protocol とは
NEAR Protocolとは、実用的でスケーラブルで開発者フレンドリーなブロックチェーンプラットフォームです。
従来のブロックチェーンプラットフォームは、スループットが遅く実用に耐えるものになっていませんでした。NEAR Protocolでは、シャーディングの技術を搭載し、高スループットなブロックチェーンサービスを実現することができます。
シャーディングでは、コンセンサスノードをシャードと呼ばれる複数のグループにわけ、承認作業を並行することで、承認が終わるまでの時間を短縮させます。これにより、ブロックチェーンの処理能力が飛躍的に高まります。
またNEAR Protocolでは、多くの開発者が既に馴染んでいるJavaScriptでコードが書けるようにし、開発キットを充実させていきます。
NEAR Protocol ミートアップ
NEAR Protocolミートアップでは、Co-FounderのIllia Polosukhin氏がプロジェクトを説明しました。
Illia氏は、毎年3万人以上が参加するICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト)のファイナリストになりました。その後、Google Researchで働きました。
また、Co-FounderのAlex Skidanov氏をはじめとするMemSQL出身のメンバーは、分散型データベースの企業を経験しシャーディングを研究していました。いずれのメンバーも、実績がある精鋭たちになります。
なぜブロックチェーンか?NEAR Protocolとは?
Illia氏は、なぜブロックチェーンを扱っているのかについて話しました。ブロックチェーンは計算プラットフォームの次なる進化だといいます。
ブロックチェーンは第三者に頼らなくても、トラストレスでアセットをプログラムすることができます。また、ユーザがDAppsで秘密鍵により個人情報をコントロールすることができるため、企業に個人情報を悪用されるのを防ぐことができます。さらにユーザのデータ共有して、アプリケーションを横断的に使いやすくすることもできます。
このような特性により、ブロックチェーンを使うことでイノベーティブなビジネスモデルを作ることができるとされているといいます。
そして本題、NEAR Protocolとは何かです。
NEAR Protocolは、実用的でスケーラブルな分散型ブロックチェーンプラットフォームです。高いスループットを確保することができ、アプリケーションがたくさん乗っても遅延なく快適に使うことができます。
また、開発者が開発しやすい環境が整備され、新しいユーザ獲得をしやすい設計になっているといいます。
スケーラビリティの解決策とその問題点
NEAR Protocolの優位性を説明するために、前段としてこれまでのブロックチェーンのスケーラビリティとその解決策についてが紹介されました。
まずはEthereumから。Ethereumは、個々のノードがすべてのトランザクションを処理するので、その仕組自体がスケーラビリティを遅くします。Ethereumではその解決策として、Plasmaが提唱されました。
Plasmaはメインチェーンとサイドチェーンをつなぐソリューションになりますが、サイドチェーンで取引されているアセットをメインチェーンに移してファイナリティの確認をする必要があります。その際のExit Gameにおいて、セキュリティの確保が難しいといいます。
続いて、Thunder / Solanaは、1つのサーバーでトランザクションを捌く方法です。
Thunder / Solanaは短期的には効果があるものの、長期的な持続性という観点では不透明です。
Cosmos / PolkaDotは、アプリケーションごとにブロックチェーンを作る方法です。
アプリケーションのブロックチェーンで異なるランタイムやコンセンサスアルゴリズムをもたせることができます。この方法では、ブロックチェーンを作るのが難しく、またバリデータが不正をした場合のセキュリティ確保が不透明になります。また、サイドチェーン間のコミュニケーションのセキュリティがまだ明らかになっていません。
Zilliqaのシャーディングでは、1つ1つのシャードがトランザクションの一部を処理します。
それぞれのシャードがトランザクションの一部を処理をして、ステートを次のシャードに移していくので、Zilliqaではたくさんのチェーンのデータサイズを消費するが問題点であるとしています。
フルシャーディングとNEAR Protocol
そこで、NEAR ProtocolやEthereum 2.0では、フルシャーディングを採用します。
ステートを別のシャードに移さないようにすることにより、Zilliqaに存在していた問題点を解決します。
Ethereum 2.0では、メインチェーンがありPoWで動いています。
メインチェーンの下にビーコンチェーンあり、シャードに割り振るトランザクションを管理しています。トランザクションはシャッフルされ、分散性が保たれます。
さらに、ビーコンチェーンの下のシャードチェーンでシャーディングが行われます。ファイナリティの確認が完了したものがビーコンチェーンに取り込まれるようになります。
トランザクションをグルーピングして分散処理を行う際に、異なるスマートコントラクトが別々のシャードに含まれている場合があると、別のシャードのスマートコントラクトを呼び出すときにファイナリティの確認に時間がかかるようになってしまうといいます。
一方NEAR Protocolでは、シャードチェーンのコンセンサスアルゴリズムが異なるため、ファイナリティの時間が短くて済むようになります。
それにより、ビーコンチェーンにチェックポイントされる時間を待つ必要がなくなるため、確認が速くなります。これにより、アプリケーションの相互利用がスムーズになります。
開発者デモ
NEAR Protocolの開発者デモでは、GuestBookが紹介されました。GuestBookは、裏でブロックチェーンが動いていることを感じさせない作りになっています。Metamaskみたいなものも必要ありません。
秘密鍵はWebブラウザで管理されており、アプリケーションのアクセス権限をユーザが決めています。権限では、秘密鍵にアクセスしないと決められています。
エコノミー
Illia氏らは、Proof of Stake (PoS)については資金力の大きいバリデータが決定権を持つことになるので、フェアではないと考えています。
そこで、DPoSの代わりに提案するのがThresholded Proof of Stakeになります。NEAR Protocolでは、シャーディングの際に多くのバリデータが必要になるため、バリデータがネットワークに参加しやすいコンセンサスアルゴリズムを採用したといいます。
また、会鉢者がアプリケーションを開発してNEAR Protocolのネットワークに貢献することで、報酬が開発者に返ってくるような設計がされていきます。これにより、アプリケーションがたくさん開発されて、ネットワーク効果が上がっていくことが期待されます。
ロードマップ
NEAR Protocolのロードマップでは、DevNetが既にローンチされており、AlphaNetが来週ローンチされます。AlphaNetでは複数ノードが実行できるネットワークになります。
さらに、BetaNetではエコノミーを、TestNetでガバナンスを追加していき、メインネットを7月半ばでローンチする予定です。
Illia氏は、もし開発者になりたければ色々なデモを試して、実際にフィードバックをして欲しいと聴衆に呼びかけました。そして、ユースケースがたくさん出てくるのを楽しみにしている語りました。
なお、NEAR ProtocolのデモはNEAR Studioから試すことができ、ドキュメントはNEAR Documentationから確認することができます。