イベント

ブロックチェーン・ナイト#008:ブロックチェーン社会実装事例紹介とその課題 イベントレポート

イベント
スポンサーリンク

2019年7月25日に「ブロックチェーンナイト#008:ブロックチェーンビジネスの最新ユースケースを知る」が開催されました。

ブロックチェーンナイトは、東京都内のイベントでも特にブロックチェーンの活用例にフォーカスしています。今回もどのような活用例があるのかを見てきました。

イベントページ:ブロックチェーン・ナイト#008:ブロックチェーン社会実装事例紹介とその課題

[the_ad id=”13126″]

エイベックステクノロジーズ「ブロックチェーン最新動向」

エイベックステクノロジーズ 石田氏

最近ブロックチェーンのビジネス実装を積極化しているエイベックステクノロジーズからは、石田氏がブロックチェーン最新動向を紹介しました。

Libra

Libaraは、世界中の成人17億人をターゲットの一つとしています。17億人は銀行口座を持っていないにもかかわらず、スマートフォンを持っており、SNSにアクセスすることができます。そこにブロックチェーンを紐付けることで、広告や決済、シェアリングエコノミーのような新たな経済圏を起こすことができます。

Libaraでは「人びとは次第に分散型ガバナンスを信頼するようになる、と私たちは考えています」という考えをベースにしており、現在は世間から批判を浴びているFacebookがこれにより信頼を獲得できるようになるのではとも見られています。

権利とブロックチェーン

権利の証明には様々な形態があります。土地だと登記簿、ダイヤモンドだと鑑定書、ペットだと血統書、絵画だと鑑定書、そして音楽では音楽信託管理があります。

そのような権利とブロックチェーンは相性が良いとされています。なぜなら権利は目に見えないもので、権利の保証は今までは国のような第三者が行っています。しかし、必ずしも第三者が信頼できるわけではないため、ブロックチェーンの場合はその問題を解消できとされています。

現状のデジタルコンテンツ活用については「IPのジレンマ」が存在しています。IPの活用と保護がお互いに両立し得ないということです。できるだけ多くの人にIPを使ってもらうと利益の管理が難しくなり、利益を管理しすぎるとIPは使いづらくなってしまいます。実際に海外では、日本のコンテンツは面倒くさいと思われており、中国や韓国のコンテンツが好まれている傾向があるといいます。

IPのジレンマ

IPのジレンマ

最近は、NFT(Non-Fungsible Token、代替不可トークン)が登場しており、デジタルコンテンツそのものを1つの権利として取り扱えるようになりつつあります。ブロックチェーンでは、IPのジレンマが解消できるのではと期待されています。

NFTの説明

NFTの説明

そのような中、エイベックスではデジタルコンテンツに証明書を発行する「A Trust」を開発すると発表しました。これは、コンテンツに証明書を発行して権利者を明確にするというものです。具体的には、コンテンツの関係者や利用者、コンテンツそのものにIDを振ることで、権利関係を明確にします。このような仕組みを取り入れることで、著作権を細分化することができます。

エイベックスにおけるブロックチェーンの取り組み

エイベックスにおけるブロックチェーンの取り組み

著作権を細分化することにより、ユーザが二次利用したコンテンツでも著作者の権利が守られ、新しいコンテンツが生まれることを活性化させられるのではないかとしています。

[the_ad id=”7916″]

SBI R3 JAPAN「エンタープライズ・ブロックチェーンの世界とB2B2C事例」

SBI R3 JAPAN 山田氏

SBI R3 JAPANは、エンタープライズ向けのブロックチェーンCordaプラットフォームを展開しています。母体のR3はもともと金融機関のコンソーシアムから始まっているため、Cordaは金融機関が自分たちの要件を出し合って使われています。

Cordaについて

Corda自体はミドルウェアなので、金融機関以外でも使うことができ、金融ベースなので厳しい要件にも耐えるものとなっています。

現在エンタープライズ向けのブロックチェーンは、メジャーなものは3つ存在しています。Hyperledger Fabric、Quorum、Cordaになります。企業内でノードを立てて使っていくものになります。逆にリテール分野が苦手なブロックチェーンになります。

ブロックチェーンの分類

ブロックチェーンの分類

現在Coradaのアプリケーションは300社が作っており、そのマーケットプレイスが存在しています。日本では300社の中に、NTTデータやTISが含まれています。また、スタートアップ企業も含まれています。

Cordaは技術目線よりも業務改善の目線で始まったブロックチェーンです。これができたのは為替取引がきっかけだったといいます。

為替取引では、A社とB社が取引するために、担当者はバックオフィスに取引を伝えて、バックアオフィスが社内システムに取引内容を記載します。2社のシステムには、システムが一元化されていない限り、記録ミスなどにより異なる取引内容が記載されていきます。しかし、お互いの内容を付き合わせるために、毎回相手に取引内容を確認するのは現実的ではありません。そこでブロックチェーンが役に立つのではないかと考えられました。

Cordaの目的

Cordaの目的

エンタープライズの世界は、機密性の観点から闇雲に情報共有することはできません。そのため、パブリックブロックチェーンにあるみんなに情報共有する仕組みは合いません。

パブリックブロックチェーンとCordaとの違い

パブリックブロックチェーンとCordaとの違い

Cordaでは、当事者間だけで情報共有できるしくみが備わっており、ユニークレスサービスという仕組みを使う二重払い防止の仕組みを実現しました。具体的には、Notaryというコンポーネントに問い合わせをして、Inputが使われているか確認する処理を経ることで二重払いをチェックします。

Cordaにおける二重払い防止の仕組み

Cordaにおける二重払い防止の仕組み

Cordaの他のエンタープライズ向けブロックチェーンを比較した場合、Cordaではインターオペラビリティに優れているといいます。Cordaを使っているアプリケーション間でデータ移転が容易になるため、サプライチェーンにおけるシステムを一社で作り込まず、横連携するだけで済むようになります。

Cordaネットワーク内におけるアプリケーション間のデータ移転

Cordaネットワーク内におけるアプリケーション間のデータ移転

[the_ad id=”7916″]

B2B2Cのブロックチェーンのユースケース

今回は事例が2つ紹介されました。

1つ目は損害保険への活用になります。

自動車の玉突き事故の場合、複数の保険会社が関係してきます。当事者はそれぞれの保険会社に事故報告をし、保険会社はその内容を保険会社間で横連携させながら、支払いの調整をしていきます。現状だと、複数の保険会社で情報の整合性の確認を取ることが困難でした。ブロックチェーンを使い、保険会社間で情報を共有できるようにし、今までの横連携を楽にしていきます。具体的には、事故の当事者が共通のQRコードを使うことにより、保険会社間で情報共有ができるようになります。

玉突き事故発生時の損害保険の例

玉突き事故発生時の損害保険の例

2つ目はKYCとID管理です。

引っ越しをすると、使っている金融機関の住所情報を変更する必要が出てきます。これには手間を要し、当然変更しきれないものもあります。そこで、自分のIDをブロックチェーンに登録し、金融機関がその情報を利用できるようにします。ブロックチェーンにより、ある金融機関の登録情報が変更されると、別の金融機関の登録情報も変更できるようにします。もちろん、別の金融機関の情報更新は本人の同意のもとで実行できるよいうにします。これにより、自分の情報を自分でコントロールしながら、渡したい相手に最新情報を共有することができるようになります。

KYCとID管理の事例

KYCとID管理の例

[the_ad id=”7916″]

パネルディスカッション

パネルディカッションの様子

パネルディカッションは、3名の登壇者が決められたお題に回答していきました。

<登壇者>

  • SBI R3 JAPAN 山田氏(以下「山田氏(R3)」と表記します)
  • アクセンチュア シタル氏
  • アクセンチュア 山田氏(以下「山田氏(ア)」と表記します)

注目しているブロックチェーンの使い方は?

山田氏(R3):

日本だとサプライチェーンに関する期待が大きい。モノのトレーサビリティや受発注プロセス。これらは表裏一体となっており、異なるユースケースがつながっていく。

シタル氏:

アイデンティティ。自分自身の実体験として、入社するためのプロセスでたくさんの書類を出さなければいけなかった。デジタルアイデンティティを保持して、毎回証明できるようにしてみたい。しかし、個人情報利用の承認権限をブロックチェーンを使って個人に帰属させるといいのではないか。

山田氏(ア):

Libraに興味がある。ビッグデータを持っているFaceboookが、ビッグデータをブロックチェーンに入れるとどうなるのか?そのような場合のデータの同期をどうするのか?参加企業がLibraに相乗りするまでのプロセスはどうするのか?などに興味がある。

[the_ad id=”7916″]

今からブロックチェーンを導入する企業への注意点は?

山田氏(R3):

リプレースな問題がある。もともとシステムがある部分をブロックチェーンにしようとすると、どうしてブロックチェーンにするのかという話になり、なかなか話しが進まない。そのため、まずは手作業でやっている領域に手を付けてみると良いだろう。あと一次情報に触れること。Hyperledger FabricやCorda、Quorumを比較して、自分たちのユースケースにあったものを選ぶ必要がある。

シタル氏:

ブロックチェーンはあくまでもツールになるので、業務問題はないかということを明確にしなければいけない。顧客側もブロックチェーンについて勉強しなければいけない。ブロックチェーン使って何をするのか?そのメリットは?ブロックチェーンを使うことで今までできなかったことは何か?ということを突き詰める必要がある。

山田氏(ア):

ブロックチェーンは突発的な負荷が苦手。企業の場合は、夜間バッチを回していて突発的な負荷が上がって大量のトランザクションが発生する。夜間バッチのトランザクションをならだかにできないかなどの周辺システムとの調整が必要になる。

ブロックチェーン導入におけるROI訴求はどうするのか? またプライベートブロックチェーンとパブリックブロックチェーンの利用判断の境目は何か?

山田氏(R3):

ブロックチェーン導入は業務改善をすることなので、日々のコストを積み上げて試算することになる。実際にPoCをして試算し、それを既存のシステムと比較することになる。サプライチェーンであれば、リコール被害はこれくらい、ブロックチェーンだとこれくらいになるという感じに。インシデント発生時のROIを比較すると良いのではないか。特にサプライチェーンの場合は、リコールの発生は必ず検討しておく必要がある。

ブロックチェーンの種類使い分けの判断は、要件次第になる。取引を全体に見せたくない場合はプライベートチェーンになる。それ以前に、そもそもブロックチェーンが必要なのかということを検討する必要がある。

シタル氏:

現実問題、ブロックチェーン導入におけるROIを訴求するのは困難だ。今のシステムをブロックチェーンに置き換えるよりも、新たなシステムを構築するということにフォーカスすると良い。お金以上に、その先のメリットや拡張性を観ていくとよいだろう。

ブロックチェーンの種類使い分けの判断は、ユースケースによりけりになる。ブロックチェーンで何を管理したいのか?もし情報そのものを載せるのであれば、パブリックブロックチェーンはNGになる。

山田氏(ア):

コストはイニシャルコストとランニングコストがあって、観点が違う。ブロックチェーンを取り入れる企業は、トレーサビリティのように色々な企業を巻き込むのが望ましい。規模の拡大とともにかかるコストが変わってくるからだ。イニシャルコストは先頭を走ると前例のないことをやるためにどうしても大きくなってしまう。次に続く会社のイニシャルコストは下がっていく。ランニングコストは、普通のシステムだと一貫性の確保が難しくなるために、拡大をすると管理コストが上がっていく。しかし、ブロックチェーンは一貫性の確保が従来より容易なため、規模の拡大に関わるコストが抑えられる。

ブロックチェーンの種類使い分けの判断は、どこまでを制御可能にするかという観点で決まってくる。例えば、手数料の問題はパブリックブロックチェーンだとGAS価格が変動するためにコントロールできない。また、パブリックブロックチェーンだと匿名性が確保できず、取り消しもできない。

[the_ad id=”7916″]

スポンサーリンク
この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

Junya Katoをフォローする
TOKEN ECONOMIST(トークンエコノミスト)
タイトルとURLをコピーしました