ブロックチェーン産業が拡大していくにつれて、仮想通貨の取引所やウォレットサービスのハッキングによる流出事件は増える一方です。
また、中国政府の取引所の取り締まりにより、取引所運営者が逮捕されてサービス継続が困難になるなど、取引所に仮想通貨を預けるリスクは減るどころか、むしろ増えています。
たとえサービス自体が安全だとしても、結局のところ仮想通貨をどこかに安全なところに預ける必要があります。その先は、どうしてもハードウェアウォレットになります。
今回は、筆者が実際にいくつかのハードウェアウォレットを使ってみて、使い勝手の比較を書いていきます。
<今回の比較対象>
- Ledger Nano S
- Ledger Nano X
- CoolWallet S
ちなみに、Ledger Nano Xだけは日本の代理店が扱っていないのでメーカーサイトから直接購入する必要があります。ほかの2つは、いずれも日本国内ではメジャーなハードウェアウォレットになります。

左から Ledger Nano X、Ledger Nano S、CoolWallet S
基本的なスペックの比較
モバイル対応
最近はパソコンを起動せず、スマートフォンのみを使う人は多いことでしょう。そうなると、重要なポイントがモバイル対応しているかどうかになります。現状の対応状況は以下の通りとなります。
パソコン (Windows / Mac) |
モバイル (iOS / Android) |
|
Ledger Nano S | 対応 | 非対応 |
Ledger Nano X | 対応 | 対応 |
CoolWallet S | 非対応 | 対応 |
モバイルに対応している製品では、Bluetoothを使って使用することができます。
補足になりますが、Ledger Nano Sはメーカーが出しているLedger OTG Kitのケーブルを使うことで、Androidのスマートフォンでも使うことができます。オプション品を別途買う必要があるため、表ではモバイルは非対応の扱いにしています。
純正アプリの日本語対応可否
日本語がネイティブな人からみると、アプリでは日本語が使えるなお良しといえるでしょう。この記事執筆時点(2019年12月8日)時点では、各アプリの対応状況は以下の通りになります。
パソコン | スマートフォン | |||
Windows | Mac | iOS | Android | |
Ledger Nano S | 対応 (※ 要実験機能オン) |
非対応 | N/A | N/A |
Ledger Nano X | 対応 (※ 要実験機能オン) |
非対応 | 非対応 | 非対応 |
CoolWallet S | N/A | N/A | 対応 | 対応 |
純正アプリの日本語対応という観点でみると、Ledger Nanoシリーズは今ひとつになります。
対応コイン/トークン
対応コイン/トークンについては、CoinMarketCapの時価総額ランキングトップ20を使い比較していきます。
ご覧のように、Ledger Nano X/Sが圧倒的な結果となります。
仮想通貨 | Ledger Nano X/S | CoolWallet S |
Bitcoin (BTC) | 対応 | 対応 |
Ethereum (ETH) | 対応 | 対応 |
XRP (XRP) | 対応 | 対応 |
Tether (USDT) | 対応 | 対応 |
Bitcoin Cash (BCH) | 対応 | 対応 |
Litecoin (LTC) | 対応 | 対応 |
EOS (EOS) | 対応 | 非対応 |
Binance Coin (BNB) | 対応 | 対応 |
Bitcoin SV (BSV) | 非対応 | 非対応 |
Stellar (XLM) | 対応 | 対応 |
Cardano (ADA) | 対応 | 非対応 |
TRON (TRX) | 対応 | 非対応 |
Monero (XMR) | 対応 | 非対応 |
Tezos (XTZ) | 対応 | 非対応 |
UNUS SED LEO (LEO) | 対応 | 対応 |
Cosmos (ATOM) | 非対応 | 非対応 |
Chainlink (LINK) | 対応 | 対応 |
Huobi Token (HT) | 対応 | 対応 |
NEO (NEO) | 対応 | 非対応 |
IOTA (MIOTA) | 対応 | 非対応 |
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実際に使ってみた感じの比較
ここからは筆者の主観になります。
初期セットアップの難易度
ハードウェアウォレットでは、必ず初期セットアップで復元ワードをメモする作業が必要になります。これが初期セットアップで最も時間を要するものの1つになります。
CoolWallet Sは、初期セットアップが簡単で、スマートフォンとペアリングをする際に画面の指示に沿ってウォレット本体のボタンを押すだけの操作になります。復元ワードをメモする作業では、ワードをスマートフォン上にまとめて表示させメモすることができる他、より安全にするためにワードをウォレット本体に表示させることもできます。
それに対し、Ledger Nano X/Sでは、ハードウェアウォレットの小さいディスプレイの表示を眺めながら操作をしていきます。こちらは、表示が小さくて見づらい上に、独特なボタン操作があるため、操作がどうしても遅くなります。
また、Ledger Nano X/Sでは復元ワードをメモしたら初期セットアップが終わりにはならず、ハードウェアウォレット上に利用したい暗号資産のアプリケーションをインストールする必要があります。例えば、XRPを扱いたい場合は、XRPのアプリケーションをインストールしなければいけません。アプリケーションのインストール自体は難しくはありませんが、Ledger Nano Sはアプリケーションのインストール領域の要領が小さいため、多くのアプリケーションをインストールすることができません。そのため、使い始めの時点でLedger Nano S上で扱う仮想通貨の種類を2から3に絞っておく必要があります。
上記を総合すると、初期セットアップの難易度はCoolWallet Sのほうが優れています。
基本的な操作感
基本的な操作の流れは、いずれも同じになります。アプリ上で入出金操作を行い、新たに入金用アドレスを発行したり、出金する際にウォレット側で承認操作をします。
この点は、モバイルに対応しているCoolWallet SとLedger Nano Xの使い勝手が、パソコンのみのLedger Nano Sより優れています。モバイルに対応している場合、QRコードをスキャンする支払い方法が簡単に利用できるからです。
また、多くのトークンがEthereumプラットフォームを利用し、ERC20規格で発行されています。そのため、アプリにERC20トークンを簡単に登録ができるかという点も、操作感を見るために重要な視点になります。ERC20トークンの登録は、CoolWallet Sが優れています。
CoolWallet Sでは、アプリからEthplorerやEtherscanで表示できるコントラクトアドレスのQRコードをスキャンするだけで、ERC20トークンを登録することができます。一方で、Ledger Nano X/Sの公式アプリではユーザーが自由にERC20トークンを追加することができません。その代わり、MyEtherWalletやMyCryptoといったフロントエンドを利用する必要があります。これらを利用する場合、さらにハードウェアウォレット上のEthereumアプリの設定を変更する必要があるため、非常に面倒です。
上記を総合すると、基本的な操作感はCoolWallet Sが優れているといえます。また、Ledger Nano SとLedger Nano Xを比較した場合は、Ledger Nano Xのほうがモバイル対応で使いやすい分、操作感が上になります。
できることの幅広さ
これは結論から書いてしまうと、圧倒的にLedger Nano S/Xが優れています。
Ledger Nano S/Xの場合、対応している仮想通貨の種類が圧倒的に多いため、世の中である程度認知されているブロックチェーンやそこで発行されるトークンに対応させることができます。例えば、NEOやBinance Chain上で発行されたトークンに対応させることができます。
また、EthereumではMyEtherWalletやMycypto、CardanoではYoroi Walletというように、それぞれのブロックチェーン固有のウォレットとの連携ができます。ブロックチェーンゲームで遊ぶ場合に必要なMetamaskについてもLedger Nano S/Xであれば連携させることができます。
まとめ
ここまで書いてきたように、CoolWallet Sは使い勝手が良い反面、できることの幅広さはLedger Nano S/Xに劣ります。
そのため、CoolWallet Sは初心者や中級者向き、Ledger Nano S/Xは上級者向きといえます。
ただし、CoolWallet Sは一部の仮想通貨しか対応してないため、実際に購入する場合は自分が使いたい仮想通貨に本当に対応しているかを事前確認することが重要になります。