筆者は、幸運なことに2020年12月に行われたAvalancheとAVADOの共同キャンペーンに当選し、AVADO i3を頂戴しました。AVADOはAvalancheのノードを簡単に構築できるというものなので、非エンジニアの筆者がどれだけ簡単に構築できるかを確かめてみました。
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? Avalanche (@avalancheavax) December 22, 2020
Avalancheとは
チェーンの特徴
Avalancheとは、AVALabs主導で開発が行われているDAG(有向非巡回グラフ)を採用した分散型台帳プラットフォームです。分散型アプリケーションとエンタープライズブロックチェーンの相互運用を可能にしつつ、高いスケーラビリティを確保します。
具体的には、4,500 TPS以上のスループットで、3秒未満のファイナリティを確保することができるとされています。Avalancheは、それだけ高いスケーラビリティを確保しつつも、分散化することが可能になっており、2021年1月24日時点は770のバリデータでネットワークが構成されています。
Avalancheチェーンの特徴として、プライマリネットワークが3つのチェーンで構成されています。それぞれのチェーンで機能が分離されており、分離することでバリデータの負荷を少なくし、より柔軟な運用をすることができます。
- Exchangeチェーン(X-Chain):アセット作成や交換など
- Platformチェーン(P-Chain):バリデータ配置やサブネットと言われるカスタムチェーンの作成など
- Contractチェーン(C-Chain):EVM互換のスマートコントラクト実行など
例えば、P-Chainでは特定のバリデータのみが参加できるプライベートチェーンを作成することができ、バリデータをプライベートチェーンの承認作業に集中させることができます。
また、AvalancheではEVM互換のスマートコントラクトを実行させることができます。そのため、Ethereumのネットワーク混雑により、Avalancheが退避先として使われることを有望視している人が少なくありません。
暗号資産の特徴
Avalanche上で扱われる暗号資産はAVAXとして知られています。AVAXは、上場審査が厳しいBinanceやGate.ioなどで上場されていることからも、AVAXは数ある暗号資産の中でも格上のものとして扱われています。2021年1月24日時点で、CoinMarketCapにおける時価総額ランキングは38位に位置しています。
また、Avalanche(厳密にはAVA LAbs)は、世界的に有名なベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツ(通称「a16z」)のポートフォリオにも入っていることからも、機関投資家からも高い期待が寄せられています。
AVADOとは
AVADOは、専門的な知識がない非エンジニアでも簡単にノードなどを立てることができるハードウェアを提供している企業、及び製品名です。ハードにDAppStoreで提供されているアプリをインストールすることにより、様々なブロックチェーンサービスを動かすことができるようになっています。また、AVADO上のソフトウェアは原則で自動更新されるため、チェーンのアップデート等にも追随することができます。
AVADOのハードは、AVADO i7, i5, i3の3つがラインナップされています。それぞれ搭載されているCPUやメモリ、ストレージが異なっており、ユーザーは実現したいサービスのハードウェア要件により、ハードを選択することになります。
今回の記事では、AVADOでAvalancheのノードの構築を紹介しますが、AVADOでは以下のようなサービスを実現することができます。
- EthereumやBitcoinのフルノード
- Ethereum 2.0のバリデータノード
- PolkadotやKusamaのアーカイブノード など
その他、詳しくはAVADO公式ページのDappStoreから確認することができます。
なぜAvalancheのノードを構築するのか
AVADOでは、様々なブロックチェーンのノードを構築することができます。筆者は、キャンペーンに当選したという理由もありますが、AVADOの仕様を調べて結局Avalancheのノードを構築することにしました。理由は、大きく2つがあります。
- 年平均収益率が高い
- スラッシュがない
年平均収益率が高い
ステーキングの統計サイトStaking Rewardによると、2021年1月24日時点のAvalancheの年平均収益率(APY)は11.12%、インフレを除いた場合のAPYは2.94%です。これは主要ブロックチェーンのAPYと比べると良い数字になります。
筆者は、Avalancheは前述の「暗号資産の特徴」の特徴に書いたように、見込みが高いチェーンであること、新規開発者をよく獲得したプロジェクト(Electric Capitalのレポート参照)と認識していることから、Avalancheの可能性を評価しました。
スラッシュがない
スラッシュとは、ハードウェア障害やネットワーク断などでノードに課せられるペナルティのことを指します。Proof of Stakeを採用したチェーンでは、スラッシュが発生するとステーキングしたコインの一部が取り上げられます。自宅でノードを運用する場合、当然ながら電源やネットワークは専用設備より安定していません。そのため、自宅だと環境由来のスラッシュリスクが存在します。
一方で、Avalancheではハードウェア障害やネットワーク断などが起きてもスラッシュはありません。Avalanche の開発者向けドキュメントによると、最低60%の稼働時間を確保できれば良いとされています。そのため、自宅でもノードを気軽に運用できると判断しました。
AVADO i3でAvalancheのバリデータノードを構築する
ここから製品レビューに入っていきます。筆者が当選したのはAVADO i3というモデルになります。AVADO i3は、AVADOの中でも最もスペックが低いモデルになりますが、Avalancheのバリデータはそのようなスペックが低いマシンでも動作させることができるようになっています。
製品の梱包と外観
箱にはクイックスタートマニュアルと、AVADO i3本体(左)及びACアダプタや取り付け用具、Wi-Fi用のアンテナモジュールが入っていました。
こちらは前面。電源スイッチと(左)とUSBポート群(右)があります。
こちらは背面。Wi-Fiのアンテナモジュールを取り付ける箇所が左右にあり、有線LANポートが付いています。また、HDMIとVGA端子がありますが、実際のセットアップで利用することはありません。
ちなみに、Wi-Fiモジュールは原則的に初期セットアップのみで利用します。初期セットアップが終わった後に、このモジュールを外すことで第三者がWi-Fi経由で管理画面に不正アクセスすることを物理的に遮断することができます。
初期セットアップ
AVADOは、VPNとWi-Fi経由でしか管理画面にアクセスできないようになっています。一番最初はVPNアクセスができないため、Wi-Fiを利用することになります。
しかし、Wi-Fi経由のアクセスは、AVADO固有のWi-Fiアクセスポイントに接続するため、使い勝手の観点から良い選択肢ではありません。そのため、初期セットアップだけWi-Fi経由でアクセスし、VPN設定後は、VPN経由でAVADOにアクセスできるようにします。
ここから、具体的にどのような設定をするかをご紹介します。
AVADOを有線LANポートと接続し、Wi-Fiモジュールの取り付けが終わったらAVADOを起動します。その後、AVADOのセットアップガイドに書かれているSSIDに接続し、管理画面URLにアクセスします。
管理画面では「Connect (VPN)」にアクセスし、共有アイコンをクリックした後に表示されるダウンロードアイコンをクリックします。
その後の画面で、OpenVPNを使ってAVADOにアクセスするためのプロファイルをダウンロードします。ネット環境により利用するプロファイルが異なるため、ネット環境に応じたプロファイルを選択します。
最後に、OpenVPNクライアントをPCにインストールし、ダウンロードしたプロファイルをOpenVPNクライアントにインポートします。
この手順が完了すると、Wi-Fi経由のアクセスが不要になります。セキュリティ強化のため、第三者によるWi-Fi経由アクセスを物理遮断するためにアンテナモジュールを取り外します。
以後、AVADOへのアクセスはOpenVPNを使ったVPN経由で行うことになります。
Avalancheノードのセットアップ
Avalancheノードをセットアップするために、AVADOの管理画面のDappStoreから「Avalanche Node」のアプリをインストールします。
Avalanche Nodeアプリをインストールすると、チェーンとの同期などのプロセスが走るため実際にノードの設定ができるようになるには1時間以上を要します。
実際にノードの設定ができるようになると、Avalanche Nodeの設定画面には以下のように表示されます。この画面で行うことは、2つしかありません。
- ノードIDを控える(”NodeID-”から始まる文字列をコピーする)
- ノードのバックアップ用キーを取得する(「Download Node Keys backup」よりダウンロード)
上記が終わったら「Open Wallet UI」から、Avalanche公式のウォレットにアクセスします。
Avalanche公式のウォレット画面が表示されます。その後に表示される画面で、自分が利用しているウォレットを選択します。
Avalancheでフルノードになるには、P-Chain上で2,000 AVAXを保有する必要があります。AVAXがX-Chain上にある場合、「Earn」メニューの「Cross Chain Transfer」を使うことにより、AVAXをP-Chain上に移動させることができます。
Avalancheのバリデータになるため、「Earn」メニューから「ADD VALIDATOR」をクリックします。
※ちなみに、2,000 AVAXを保有していない場合、25AVAXさえ持っていれば「ADD DELEGATOR」から委任することもできます。
バリデータの画面で必要なパラメータを入力します。
- Node ID:AVADOのAvalanche Node設定画面で控えたノードIDを入力
- Stake Period:ステーキング開始日と終了日を365日以内の範囲で指定
- Stake Amount:ステーキングするAVAXの数量を2,000以上の値で指定
- Delegation Fee:デリゲータが委任した場合に徴収する手数料率を指定
- Reward Address:ステーキング報酬を受取るウォレットを指定
上記のパラメータの入力が終わったら「CONFIRM」をクリックし、その後の確認画面で「SUBMIT」をクリックします。Statusが「Comitted」になれば、ステーキングが開始します。
ステーキングのステータスは、「Earn」メニューの「Estimated Rewards」から確認することができます。ステーキングが有効になっていると、以下のように表示されます。
所感
AVADOでは、当初の触れ込み通り、確かに専門知識がなくてもAvalancheのフルノードを構築することができました。
AVADOを触る上で少し面倒に感じた点は、初期セットアップでVPN接続を設定するくらいでした。これは、セキュリティのことを考えると至極まっとうなもので、面倒だからといって排除すべき手間ではありません。また、これはAVADOの仕様そのものとは無関係ですが、AVAXをP-Chainに移動させておくことも知らないと混乱する点に感じました。
全体の工程で見ると、面倒だと思った点は上記のみです。それだけ、AVADOは簡単にセットアップできるということです。
既にAVAXはだいぶ値上がりしてしまい、フルノードを立てるための初期コストがだいぶ高くなってしまいました。それでも、興味がある方はAVADOはなかなか遊べるブロックチェーンガジェットになることでしょう。
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