プロジェクト解説

日本初の日本円連動型ステーブルコイン JPYC(JPY Coin)解説

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今まで日本円に連動したステーブルコインはいくつか出ていましたが、いずれも社会実験段階や特定用途、特定プラットフォームの縛りなどにより広く流通することがありませんでした。

日本暗号資産株式会社では、2021年1月26日に一般流通を前提とした日本円連動のステーブルコインJPYC(正式名:JPYC Coin)を発行しました。日本円連動型のステーブルコインで、一般流通を想定し、かつオープンプラットフォームで取り扱いが可能なものは、JPYCが世界初となります。

JPYCの概要

JPYC(JPYC Coin)は、日本暗号資産市場株式会社が発行体となる、日本円連動型のステーブルコインです。そのため、1 JPYC≒1円の価格付けがなされます。JPYCは、日本の法律に基づき自家型前払式支払手段として発行され、かつERC20トークンであることから、イーサリアムベースのDeFiでも流通可能になっています。

これまで同社は、既に日本円連動型のステーブルコインのICHIBA COIN(ICB)を発行していました。しかし、法的な位置づけとして事業者に向けたものでした。一方で、JPYCは事業者に限らず、広く一般に使えることを目的としています。

JPYCとICBの違い

JPYCとICBの違い(JPYCのプレスリリースより引用)

また、JPYCは自家型前払式支払手段として扱われるため、利用者にとっての敷居が低くなります。入手時や利用時のKYCが不要になるため、従来の電子マネーと同じような要領で利用することができます。

JPYCの特徴

世界初、最も実用的な日本円連動型ステーブルコイン

今まで、いくつか日本円に連動したステーブルコインの発行(詳しくは後述)が試みられてきました。しかし、諸々の事情や制約があり、いずれも広く流通するまでには至っていません。

一方で、JPYCはパブリックチェーンのイーサリアム上で発行されているため、既存の多くの暗号資産ウォレットで扱うことができます。また、DeFiなどのイーサリアムエコシステムに組み込むことができるため、既存の日本円に連動したステーブルコインと比べると、汎用性の高さや実用面で大きな優位性があります。

【参考】今まで発行された日本円連動型のステーブルコイン:

  • XJP:テスト的に発行され、香港のGate Coin(現在は閉鎖)で扱われた。現在は活動停止。
  • ZEN:ブロックチェーン推進協会により社会実験のために発行された。使われていない。
  • XJPY:両替商のエクスチェンジャーズが発行した。プライベートチェーン上で流通している。
  • ICB:JPYCと同じ発行体が発行した。法的に事業者向けという制約があり、個人は利用不可。
  • GYEN:GMOが発行したが、米国の法律に準拠して発行された。日本でどれだけ使えるかは未知数。

法的位置づけはポイントのような扱いになる

JPYCは、日本の資金決済法に基づいて発行されています。JPYCの法的な位置づけは自家型前払式支払手段となるため、法的にはポイントや交通系ICのような電子マネーと同等の扱いになります。

前払式支払手段の扱いになることで、利用するための障壁が極めて低くなります。交通系ICのチャージや買い物でKYCが求められないのと同様に、JPYCも原則KYC不要で利用することができるようになります。

発行されたJPYCに資産の裏付けがある

発行されたJPYCには、裏付けされた資産が存在しています。これは、資金決済法によるもので、未使用残高が1000万円を超えると、その半額以上を法務局に供託しなければいけないという規制に基づいています。

JPYCの場合は、当面の間は資金決済法に定められた供託金の200%+1000万円を法務局に供託する方針をとっています。未使用残高が基準日において1億円になる場合、資金決済法上の規定では、その半額となる5000万円を供託すれば良いことになりますが、JPYCではそれを大きく上回る1億1000万円を供託することになります。また、JPYCの価格が1円から上に乖離した場合、供託率の割合を下げ、供託金の一部と取り崩すことで1 JPYC = 1円の連動を測ることを見込んでいます。

JPYCにおける供託

JPYCにおける供託(ホワイトペーパーより引用)

さらに、発行体が倒産した場合でも、国により倒産隔離されることから、JPYCの利用者の権利は保護されます。しかし、これは元本保証という意味ではない点にご注意ください。

複数チェーンに対応している

JPYCは、現在複数のチェーンに対応しています。JPYC自体はイーサリアム上で発行されていますが、それ以外のチェーンではイーサリアムからブリッジされる形で流通しています。

それぞれのチェーンのエクスプローラ上のコントラクト情報は、以下の通りになります。

  1. Ethereum:0x2370f9d504c7a6e775bf6e14b3f12846b594cd53
  2. xDai:0x417602f4fbdd471A431Ae29fB5fe0A681964C11bEthereum側のブリッジ
  3. Polygon (Matic):0x6AE7Dfc73E0dDE2aa99ac063DcF7e8A63265108cEthereum側のブリッジ

上記は、日本暗号資産市場が公式にサポートしているものになります。また、同社の非公式ではありますが、2021年3月14日時点でBinance Smart Chain(BSC)上にもJPYCが流通しています。これは有志によるもので、xDaiにブリッジされたJPYCをさらにBSC上にブリッジしたものになります。

JPYCの実用的な使い方

商品購入

JPYCは、前述の性格により日本居住者にとって非常に使いやすく実用的なものになっています。

何らかのERC20トークンで最終的に買い物をしたい場合、今までであればERC20トークンをETHやBTCに交換(1)し、それを日本の取引所に送り(2)日本円に交換(3)。さらに出金手続き(4)をして銀行口座に振り込まれるまで待つ必要がありました。この場合、1から4のいずれの手順でも手数料が発生してしまいます。

一方で、JPYCはより少ない手順で買い物までたどり着くことができます。例えば、ERC20トークンをUniswapでJPYCに交換(1)し、交換で得たJPYCでを販売業者に送金(2)して購入するということができるようになります。手順の数は前述より少なくなるため、全体の手数料も安くて済みます。

2021年3月14日現在、商品購入は発行体から提供される「JPYCでAmazonの商品を購入する」と「JPYCSwap」から行うことができます。購入に際して、追加手数料が取られることはありません。

JPYCSwap

JPYCSwap

暗号資産のトレード・運用

JPYCはERC20トークンであるため、これまで通りの暗号資産的な活用方法も可能です。トレードの他、Uniswapなどの分散型取引所(DEX)に流動性として供給し、手数料収入を受け取るという運用手段があります。

Uniswapの例

Uniswapの例

納税

JPYCは、2021年3月より日本国における納税でも使用できるようになっています。これは、日本暗号資産市場と公認会計士・税理士 井堂裕功事務所が提携により実現するもので、提携先を経由して納税を行います。

納税に関するリリース:【暗号資産納税に対応】JPYC運営と公認会計士・税理士の井堂裕功事務所が業務提携|日本円ステーブルコインの可能性拡大

JPYCの入手方法

JPYCは、以下の方法で入手することができます。

発行体から直接購入する

JPYCは発行体のWebページ「JPYCを購入する」から直接購入することができます。

購入は日本円(銀行振込・クレジットカード)、暗号資産(BTC・ETH)に対応しています。2021年3月14日現在、すべての購入方法が提供されているわけではないため、詳しくは発行体のWebページにてご確認ください。

また、購入時にどのチェーンに対応したJPYCを受け取るか指定することができます。

分散型取引所(DEX)から入手する

JPYCは、Uniswapなどを利用した暗号資産の交換により入手することができます。

2021年3月14日現在、Uniswapでは28,300 USD規模の流動性プールが形成されています。現状の詳細は、Uniswap infoより確認することができます。

JPYCでインセンティブプログラムを実施

JPYCでは、インセンティブプログラムが実施されます。JPYCをUniswapなどのDEXに流動性供給することで、流動性の供給量と提供期間に応じて報酬が提供されるようになっています。

具体的には、以下の通りになります。詳しくは「JPYCインセンティブ提供プログラムとは」をご覧ください。

参加条件

50,000 JPYC以上をDEXに流動性供給すること。

※DEXは、2021年1月28日時点はUniswap v2のみの想定になります。DEXが追加になる場合は、随時アナウンスされます。Uniswapでは、ペアとなるトークンが必要であるため、合計で10万円以上分のトークンを流動性供給することになります。

報酬体系

以下の条件に基づき、1年ごとにUSDCで報酬を配布(途中で流動性供給を辞めた場合は受取不可)。

フェーズ 発行されたJPYCの総額 1 年間継続 2 年間継続 3 年間継続 4 年間継続 5 年間継続
フェーズ 1 0 – 5,000万 10% 8% 6% 4% 2%
フェーズ 2 5,000万 – 2億5000万 8% 6% 4% 2%
フェーズ 3 2億5000万 – 5億 6% 4% 2%
フェーズ 4 5億 – 25億 4% 2%
フェーズ 5 25億 – 50億 2%

報酬例:フェーズ1の段階から「100万円分のJPYC」+「100万円分の任意のトークン」を流動性供給した場合

  • 1年間流動性供給を継続:100万円×10%=10万円分のUSDCを獲得
  • 2年間流動性供給を継続:100万円×8%=8万円分のUSDCを獲得
  • 3年間流動性供給を継続:100万円×6%=6万円分のUSDCを獲得
  • 4年間流動性供給を継続:100万円×4%=4万円分のUSDCを獲得
  • 5年間流動性供給を継続:100万円×2%=2万円分のUSDCを獲得

5年間運用した場合、年率は約5.38%に相当します。

JPYCに関する情報

公式情報

当メディアによるインタビュー

  • 日本暗号資産市場株式会社 岡部典孝氏 – 日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く(第1部第2部第3部
日本暗号資産市場株式会社 岡部典孝氏 - 日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く(第1部)
以前当サイトでインタビューを行った、岡部氏率いる日本暗号資産市場株式会社は、2020年12月23日に日本円建てのステーブルコインJPYCを発表しました。同社は、既に円建てのステーブルコインであるICBを発行しており、今回のインタビューでは発...
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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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