1995年から本格的に普及が始まったインターネットは、当時では想像もつかないほど便利なものになりました。一方で、個人の動向の監視が容易になったという負の側面を持ち合わせており、ブロックチェーン界隈ではプライバシー保護のためのプロジェクトがユーザーの支持を集めています。
この記事では、主にSNSのプライバシーに焦点を当てたMask Networkを紹介します。
Mask Network 概要
Mask Networkは、Suji yanらにより設立されたSNSコミュニケーションのプライバシーを保護するための手段として開発されました。
当初、自由で平等だったインターネットは、シリコンバレーのテックジャイアント(Google, Apple, Facebook, Amazon: GAFA)に支配されているというのはよく言われる話です。彼らが我々のインターネットを便利にした反面、ビッグデータを通じて我々のプライバシーを侵害しているのもまた事実であります。特に、SNSは個人情報の塊であり、例えば過去にFacebookはメッセンジャーアプリの音声通話の文字起こしをしていたことがあります。
Mask Networkは、個人情報の塊であるSNSのプライバシーに焦点を当てています。他のプライバシーを保護するプロジェクトの異なり、Mask Networkでは、TwitterやFacebookといった既存のSNSを使ったプライバシー保護を目指しています。
また、Mask NetworkはCoinbase元CTOのBalaji Srinivasanや、FTX創業者であるSam Bankman-FriedのAlmeda Research、HashKeyやNEO Global Capitalなど、業界の著名人物やVCから投資を受けています。詳細は、crunchbaseのMask NetworkよりFinancialsから確認することができます。
Mask Network の特徴
既存SNSでメッセージを暗号化できる
個人のプライバシーを守るためのSNSプロジェクトは複数あるものの、現実的にうまくいっていません。一般的なユーザーにとっては、既存SNSの使い勝手が最も良いため、これらを使うことができればそれに越したことはありません。そこで、Mask Networkでは既存SNSを使うことに焦点を当てています。
具体的には、PCではMask Networkのブラウザ拡張機能(Chrome, Edge, Firefox及び互換ブラウザ)、モバイルではアプリ(iOS, Android)を入れ、FacebookかTwitterからマスク機能を使ってメッセージを投稿するだけです。マスク機能を使って投稿をすることで、暗号化したメッセージを投稿することができます。
投稿されたメッセージ本体は、Twitter上ではなくMask Network上にアップロードされ、Mask Networkの拡張機能を利用している人が閲覧することができます。
より技術的なことを簡潔に書くと、Mask NetworkではクリアテキストをランダムなAES鍵で暗号化することで得られる暗号文を取得し、相手の公開鍵を使用してメッセージを共有します。公開鍵によって暗号文から元のクリアテキストが取り出せるようになっています。
メッセージの公開範囲や方法を指定できる
Mask NetworkでSNSにメッセージを投稿する際、ユーザーはメッセージの投稿範囲を限定することができます。公開範囲は、以下の3つに分かれます。
- Mask Networkを利用しているすべてのユーザー
- 自分だけ
- 自分が指定したユーザー
1の方法は、SNS運営側の人間がMask Networkを利用している場合にメッセージを見られてしまうリスクがありますが、SNS運営側のサーバー側から直接メッセージを閲覧することができないため、機械的に検閲されるリスクは回避できます。また、3を使うことによってSNSサービスが用意するダイレクトメッセージ機能を使う以上に、機密性が高いメッセージを送ることができます。
さらに、暗号化されたメッセージには10MBまでのファイルを添付することができます。添付したファイルは、Arweaveの技術を利用した分散型ストレージに保存されます。Arweave自体は、Coinbaseやa16zからの出資を受けており、プロジェクトの将来性が機関投資家から高く評価されています。
また、メッセージの投稿方法を調整することができ、テキストのみか画像つきで暗号化されたメッセージの投稿を知らせることができます。
トークンのエアドロップができる
Mask Networkでは、Red Packetと呼ばれる機能でエアドロップをすることができます。Red Packetは、中国語の「紅包」を意味する、特別な機会に赤い封筒にお金を包んで渡す文化に由来しています。
Red Packetは、現状はEthereumのトークンのみに対応しており、GAS代が非常に高いという問題点があります。そこでMask Networkは、zkRollupを使ったEthereum上のレイヤー2ソリューションを提供するLoopringとのパートナーシップを締結しました。このパートナーシップにより、将来的にはEthereumのGAS代を気にしないほどの低コストでRed Packetが使えるようになります。
参考:Mask Network Partners with Loopring to Build Ethereum Layer 2 Ecosystem
Twitterから離れずにコインのレート確認やスワップができる
Mask Networkのブラウザ拡張機能を入れると、Twitterから離れずにコインのレート確認やスワップを行うことができるようになります。
Twitterでは、$マークに通貨シンボルを入れると、”それが通貨である”と識別されるようになっています。例えば、”$ETH” と表記した場合、EthereumのETHを指すようになります。
Mask Networkでは、$ETHのような表記にマウスカーソルを当てると、現在のレート参照や取引可能な取引所が自動的に表示されます。情報元は、CoinMarketCapかCoinGeckoかを選ぶことができます。
また、MetaMaskと連携することで、その場でDEXを使ったスワップをすることができます。DEXは、Uniswap v2, 0x, Sushiswapに対応しています。さらに、クレジットカードでETHやUSDTなどを購入することができます。
ITOと呼ばれる資金調達方法が用意されている
Mask Networkでは、ITO(Initial Twitter Offering)と呼ばれる資金調達方法が用意されています。これはユーザーがTwitter上で公募のトークンセールを開くことができるというものです。
今まで多くの暗号資産による資金調達方法が試みられてきました。ICOにある問題点の解決策としてIEOが出てきましたが、煩雑な手続きと高額な手数料などの理由から、最近はIDO(Initial DEX Offering)のようなICOに近い資金調達方法が増えてきました。
Mask Networkは、多くの暗号資産を扱う人たちは”Twitterに住んでいる”と捉えており、Mask Networkの拡張機能さえ入れておけば、Twitterから離れずにそのままITOのトークンセールが利用できるようになります。ITOは、外部のサービスを介して行われず、Mask Network独自のシステムを使うことになります。そのため、販売者は変動レートではなく、固定レートでトークンを販売できるようになります。
ITOの第1段は、Loopringが実施され、第2段はパートナーシップのMirror Protocolによりテスラ株式のデリバティブの販売が行われました。そして、第3弾はMask Network自身のITOが行われます。
参考:A New Chapter of Mask Network – ITO
MASKトークン(MASK)
トークン概要
Mask Networkでは、前述のように既存SNSにMaskレイヤーと呼ばれるプライバシー重視の分散型ネットワーク・インフラを構築します。そのためには、コミュニティベースで自律分散的に動ける事が必要であり、そのための手段としてMASKトークンによる経済圏を導入することを決めました。
MASKは、MaskDAOのネイティブトークンになり、MASKはDAOを通じてMask Netoworkのエコシステムの所有権になります。ガバナンスによる投票がある場合、1MASKにつき1票の扱いになります。
MASKトークンの総発行数は、100,000,000 MASKですが、最初からすべてが流通するわけではなく、初期は9,000,000 MASKが流通します。初期流通の内訳は、2回のトークンセールとエアドロップ、流動性供給分になります。2回のトークンセールでは、第1回目のITOで3,000,000 MASKが割り当てられ、第2回目はBalancerの流動性ブートストラッププール(LBP)のオークションを利用し4,000,000 MASKが販売されました。
以下は、トークン供給のスケジュールを可視化したものになります。時間が経過するにつれ、コアチームや初期投資家のトークンが12-36ヶ月をかけてロックアップ解除されていきます。
参考:
MASKトークンが売買できる主な取引所
中央集権型取引所:
分散型取引所: