インタビュー

Stake Technologies CEO 渡辺創太氏 インタビュー(第1部) – Plasm Networkの開発経緯について訊く

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※Plasm Networkは、現在Astar Networkという名前になっています。

日本発のパブリックブロックチェーンPlasm Networkは、2018年からPolkadotエコシステムにコミットし、直近になりBinance等から投資を受けるなど、世界的に見て急速的に存在感が増しています。弊サイトでは、Plasm Networkの開発を行うStake Technologies株式会社のCEO渡辺創太(わたなべそうた)氏にインタビューを行いました。

本インタビューは3部で構成されます。第1部は、なぜパブリックブロックチェーン、とりわけPolkadotにコミットするのかを中心に訊いていきます。

第1部 なぜPolkadotにコミットするのか

渡辺氏のこれまで

加藤:最初に渡辺さん自身について教えてください。どのような経緯でブロックチェーンと出会ったのでしょうか?

渡辺:渡辺創太(わたなべ そうた)と申します。ブロックチェーン業界に入ったのは5年ほど前です。WIREDという雑誌があって、Vol.25がブロックチェーン特集でした。もともとWIREDの記事が好きで読んでいて、たまたまブロックチェーンに出会ったわけですが、自分が目指したい世の中は、より分散化されて個人に主権がある世の中だと感じました。

僕がもともと何をしていたのかというと、インドやロシア、中国のローカルNPOでインターンをしていました。そうすると、色々なことを見えてきます。道端で死にそうな人たちがゴロゴロいましたし、当時の中国は大気汚染の問題が深刻でした。日本の外に出て、色々な問題や格差を見たのが今の自分の原点になっています。

結局どうやったらこの状況を変えられるかということを考えると、世の中である程度の社会的インパクトを与えられる立場にいないとダメだなと思いました。今それができる立場というのは、政治家かIT起業家だと思っています。

IT起業家になって、今からビジネスとしてインターネットをやるのは遅いですし、年齢的にモバイルのチャンスに絡むこともできませんでした。でも、ブロックチェーンは今後起きてくるものです。ブロックチェーンなら、本当の初期から大きなムーブメントに関われる。これは、とても幸運なことだと思っています。

この業界の良くもあり悪くもあるところですが、14年以上継続してブロックチェーンをやっている人はいません。ブロックチェーン以前から周辺分野や暗号学、経済学で似たようなことをやっている人はいるのですが、基本的に上の層がごっそり抜けています。そのため、近年でいっせいのせでスタートしたこの領域は挑戦しやすいなと思いました。

加藤:確かにブロックチェーン業界にいる方を見ると、メインは20代、高くてもせいぜい40代前半という印象がありますね。ちなみに、パブリックブロックチェーンが好きとのことですが、どのようなところが好きなのでしょうか?

渡辺:僕は、パブリックチェーンこそ革新だと思っています。ブロックチェーンによって今まで既存の技術でできなかったけれど、初めてできるようになったのは「管理者のいない信頼形成」です。コンソーシアムチェーンの場合はそれがどこかの会社等に依存します。なので、コンソーシアムチェーンを使う人たちは既存の業務改善とかDXの分脈で話されることが多いです。パブリックチェーンはまったく新しいトレンドなので、業界の人達と話していると、DXと言っている起業家や投資家にいまだ会ったことがありません。

iPhoneの歴史とブロックチェーンの歴史を比較するとわかりやすいと思います。iPhoneの販売当初はガラケーと比較する人が多かったので、その本質であるGPSやカメラやソフトウェアのアップグレーダビリティと言った点が見過ごされました。現在キラーユースケースとなっているGoogle MAPやUber、InstagramといったものはiPhoneだからこそできる利点を最大限利用したものになっています。

ブロックチェーンもこれらと同じです。ブロックチェーンでしかできないことはコスト削減でもDXでもありません。「信頼」の在り方の再形成です。この性質は本質的にはコンソーシアムチェーンではできません。なのでパブリックブロックチェーンからこそ本質的なアプリケーションが生まれてくると思います。

世の中の大半がコンソーシアムチェーンを使うのは、パブリックチェーンを検証してダメだったからだと思います。秘匿性がないとか、スケーラビリティがなくてトランザクションコストが高いとか、そのような理由でしょうね。でも、それは技術の問題なのでいつかは解決することです。

僕は、今のうちからまだまだダメなパブリックチェーンと向き合うという経験が、本当にパブリックェーンが来た時に活きるだろうと考えています。ですので、我々はパブリックチェーンをやるという選択肢をとりました。

加藤:私は通信分野出身なので、どうしてもそれと比較してしまうのですが、以前は企業間通信で専用線を使っていたものが、今ではインターネットというオープンなネットワークを使い、インターネットVPNで済ませている場合も多いですね。ブロックチェーンもいずれ似たようなことにはなると感じています。

渡辺:ブロックストリーム社CEOのアダム・バックが言っていたことがあって、それは「Open network always win」(オープンネットワークは常に勝つ)なんです。やはり技術の歴史を見ると、ある程度オープンになっていたものが常に勝っています。Linuxを見れば明らかです。

加藤:仰る通りですね。Web分野を見ても、今やあらゆるサイトがオープンソースのWordPressを使っていますし、例外はごく僅かですね。ちなみに、渡辺さんご自身は、最初はどのようなブロックチェーン領域から入っていったのでしょうか?

渡辺:最初は、ビットコインから勉強していきました。その後、どうせ勉強するなら最先端のところに行ったほうが良いなと思って、シリコンバレーに行きました。ブロックチェーンを使ったサプライチェーンシステムを提供するChronicledという会社です。その後、日本に戻ってきて1年働きつつ、自分でプロジェクトを立ち上げたりしていました。また、東京大学大学院のブロックチェーン研究員をやらせていただき、そこで出会った人と起業しました。それが今のPlasm Networkを開発するStake Technologiesに至ります。

Plasm Networkの開発経緯とPolkadotに張る理由

加藤:Plasm Networkを開発するに至った経緯について教えてください。また、なぜパブリックブロックチェーンに賭け、とりわけPolkadotに張るに至ったのでしょうか?

渡辺:もともとパブリックチェーンでやりたいという気持ちがとても大きかったのがその理由です。

ほとんどの企業がそうなのですが、パブリックチェーンは簡単に儲からないものなのです。そうすると、結局マネタイズのために受託をやったり、そこからDX(デジタルトランスフォーメーション)をやるという会社が多いのですが、グローバルの最先端は最初からDXされているので、彼らはDXをやっていないんですね。我々はグローバルで戦いたいと思っていたのでパブリックチェーンをやるという選択をしました。

加藤:ブロックチェーン業界にいると、家で仕事をしてオンラインで海外とやり取りするのが当たり前なので、世間のDXは今更感を感じることがありますね。

渡辺:なので、我々はその先の世界を見ていて、パブリックチェーンをどう使うかという話をしています。

パブリックチェーン領域でPolkadotに張った理由としては、やはり理想を描く必要はあるけれども、ビジネスとして成功しなければ意味がないと思っています。

我々は投資を受けてやっていますが、2018年当時は、2年後に伸びる領域をやろうと考えました。当時からイーサリアムはある程度コミュニティが成熟していて、その中で勝っていくのは非常に難しいと思っていました。一方で、Polkadotに関しては、まだまだマーケットが小さくて内部のメンバーともすぐに友達になれました。そして、不足しているパーツがたくさんあるのが当時のPolkadotだったので、スタートアップとしてPolkadotに張ったほうが成功する可能性が高いだろう判断しました。

当時我々が考えていたスタートアップの鉄則は、マーケットが小さくても確実かつ急速に伸びる領域に張るということでした。結果的に、我々はPolkadotに張ったということです。

案の定、財団から助成を受けているときはDOTの価格が1ドルで、ここ1年で30-40ドルになりました。つまり、我々はここ1年で30-40倍に伸びているマーケットにいるということになります。

そのおかげで、Plasm Networkは色々な人たちに興味を持ってもらえるようになりました。ありがたいことに、Polkadot上で開発したいというアプリケーション開発者の人たちが、我々のところに問い合わせてきます。

加藤:確かに、この1年はPolkadotが急速に目立ってきた印象がありますね。

渡辺:そうですね。DOTの時価総額の伸びというのは環境要因ですが、我々はその環境要因を読んでやっています。

加藤:ちなみに、少し前にPolkadotには不足しているパーツがあるとのことでしたが、具体的にはどのようなものですか?

渡辺:Polkadotのエコシステムの中で開発を進めていたり、実際に内部の開発者の人たちと話していると、やはり足りないパーツが見えてきました。Polkadotはリレーチェーンとパラチェーンで成り立っていているのですが、リレーチェーンがスマートコントラクトをサポートしていません。

Polkadotは、リレーチェーンとパラチェーンで構成されます。パラチェーンはリレーチェーンに接続するブロックチェーンのことを指し、リレーチェーンを通して相互に接続することができます。

Polkadotの構造

渡辺:これは確実に大きなチャンスで、リレーチェン上にアプリケーションを作れないので、Polkadotのアプリケーションはパラチェーンの上に乗せなければならなくなります。そのため、スマートコントラクトをサポートしているパラチェーンを作ればよいのではないかということに落ち着き、今のPlasm Networkの形になりました。

第2部の予告

第2部では、Plasm Networkについて詳しく伺っていきます。なかなか理解が難しいパブリックブロックチェーンプラットフォームにおいて、Plasm Networkがなぜ良いのかをわかりやすく解説していただきます。

Stake Technologies CEO 渡辺創太氏 インタビュー(第2部) - Plasm Networkとは?
※Plasm Networkは、現在Astar Networkという名前になっています。 日本発のパブリックブロックチェーンPlasm Networkは、2018年からPolkadotエコシステムにコミットし、直近になりBinance等から...

Plasm Networkに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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