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世界最大のDEX「MDEX」の解説

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暗号資産の価値交換におけるコアとなるものが取引所です。特にDeFiの世界では、取引所が直接資産を保管しない分散型取引所(DEX)が大きな役割を担っています。その中でも、MDEXは世界トップの流動性を誇っています。この記事では、主にMDEXの優位点やユーザーメリットに焦点を当て、MDEXを解説します。本記事は、2021年6月23日時点の仕様に基づいて作成されています。

MDEXについて

MDEXのトップページ

MDEXは、2021年1月に設立された分散型取引所(DEX)です。Uniswapと同様の価格決定メカニズムである自動マーケットメイカー(Automated Market Maker: AMM)を採用しています。MDEXが採用しているチェーンはいずれもイーサリアム互換であることから、MDEXの使い勝手は基本的にUniswapと同等になります。

当初のMDEXは、サービスをHuobi Eco Chain(HECO)で開始し、同年4月からBinance Smart Chain(BSC)にも対応しました。いずれもトランザクション手数料が非常に安くなるため、しばしば送金詰まりで手数料が高騰するイーサリアムベースのDEXと比べて、取引コストを大幅に抑えた高速な取引ができるようになっています。また、MDEXはPolygonへの対応も予定しています。

MDEXの大きな特徴は巨大な流動性にあります。CoinGeckoによると、2021年6月22日時点のDEXの取引高ランキングにおいてHECO側は第3位、BSC側は第5位に位置しています。全体の取引高で見ると、MDEXは実質的に世界最大のDEXとなっています。

MDEXの取引高ランキング(2021年6月23日時点)

同様に、スマートコントラクト上にロックされた資産残高も大きくなっています。DeFiBoxによると、MDEXのTVLはHECO側において1位、BSC側において4位を獲得しています。

MDEXのTVL:HECO(2021年6月23日時点)

MDEXのTVL:BSC(2021年6月23日時点)
さらに、MDEXでは2種類のマイニングインセンティブを導入し、他のDEXと比べても利用者に対して多くのインセンティブの機会を提供しています。また、流動性マイニングのAPRが競合のDEXと比べても高めに設定されています。

MDEXの特徴

低取引コストを実現

MDEXは、Huobi Eco Chain(HECO)とBinance Smart Chain(BSC)の2つチェーンに対応しており、それぞれ大手取引所の取引所トークンであるHTとBNBがネイティブ資産になります。そのため、MDEXを使うには、GAS代としてそれぞれのネイティブ資産を利用することになります。ただし、HTの場合はHECO規格、BNBの場合はBEP20規格のものが必要です。

これらのチェーンを利用することにより、MDEXではイーサリアムベースのUniswapと比べて、大幅に安いGAS代で暗号資産のスワップを行うことができます。2021年6月22日現在、スワップにかかるGAS代は、HECOを用いた場合が 0.0019 USD、BSCを用いた場合が 0.50 USD 程度になります。いずれのチェーンも混雑具合によってGAS代が大きく変動するため、相場の状況によりGAS代が上下する点にはご注意ください。

デュアルマイニングインセンティブを採用

多くのDEXでは、取引所に流動性を提供することで得られるLPトークンをステーキングすることで、そのDEXの独自トークンを獲得することができる流動性マイニングが用意されています。MDEXも同様に、流動性マイニングをすることでMDXトークンを獲得することができるようになっています。

また、差別化要素として、MDEXでは取引マイニングによるインセンティブを用意しています。取引マイニングは、取引所の流動性を向上させるために、取引(スワップ)をした人に対して手数料相当の取引所トークンを配布する仕組みです。2018年に初めてFcoinが取引マイニングを実装し、後にCROSS exchangeで採用したことで、日本でも広く認知されました。しかし、トークンの発行ペースが速すぎるため、急激なインフレが起きてトークン価格が暴落してしまうという欠点もありました。

MDEXの取引マイニングは、手数料の一部を還元してMDXトークンで配布する形で行われます。 具体的には、手数料0.3%のうち0.14%がユーザーへの取引マイニング報酬に充てられます。さらに、0.06%がMDXトークンの買い戻しとバーンに割り当てられます。また、取引マイニングで還元されたMDXトークンはClaim処理を行わないと引き出せないようになっています。そのため、従来の取引マイニングよりは、入手後に即売却がしにくくなっておりトークン価格の暴落が起きにくいと見込まれています。

注意点として、流動性マイニング及び取引マイニングは、指定の資産ペアのみで有効になります:

高APRの流動性マイニング

MDEXは、同規模のDEXと比べると、APR(年換算利率)が高くなっています。以下は、MDEXとPancakeSwapとのAPRの比較になります。データは2021年6月23日時点のものです。

MDEXでは、BNBをラップしてWBNBとして利用しています。比較をシンプルにするために、表では単にBNBと表記します。

資産ペア MDEXのAPR PancakeSwapのAPR
<取引所トークン*1>-BNB 122.29 % 58.28 %
CAKE-BNB 73.15 %
<取引所トークン*1>-BUSD 121.65 % 64.40 %
USDT-BNB 52.74 % 13.02 %
USDT-BUSD 7.20 % 5.61 %
ETH-BNB 40.50 % 12.35 %
XRP-BNB 49.17 % 39.12 %

*1 取引所トークン: MDEXの場合MDX、PancakeSwapの場合CAKE

高APRのMDXトークン単体ステーキング

流動性マイニングを行う場合、資産ペアを流動性プールに入れるという性格から、資産ペアを構成するいずれかの資産価格が大きく動くと、そのまま保有するよりも損をしてしまうインパーマネントロスが発生します。インパーマネントロスを避ける手段として、各DEXではトークンを単体でステーキングできる仕組みを設けています。MDEXでは、この仕組みをBoardroomとして公開しています。

以下は、MDEX(MDX)とPancakeSwapで単体ステーキングした場合のAPRの比較になります。データは2021年6月23日時点のものです。

取引所 単体ステーキングする資産 獲得できる資産 APR
MDEX MDX MDX 490.48%
MDX WBNB 494.44%
PancakeSwap CAKE (自動再ステーキング) CAKE 107.58%
CAKE CAKE 74.53%
CAKE FORM 115.11%
CAKE ROBS 122.54%

MDEXは、単体ステーキングした場合に獲得できる資産の種類が少ないものの、実質的にBNBをAPR 494.44%で獲得することができるため、競合と比べても効率の良い運用を行うことができます。

MDEXの取引所トークンMDX

MDEXでは、取引所トークンとしてMDXを発行しています。MDXは、MDEXのコミュニティガバナンスの投票権の行使に使うことになります。MDXトークンは、総供給量として10億枚がHECO上で発行されます。10億枚の内訳は、以下の通りになります。

  • 4.0億枚(40%):流動性マイニング
  • 4.0億枚(40%):取引マイニング
  • 1.0億枚(10%):チームへの報酬
  • 0.7億枚(7%):初期投資家
  • 0.3億枚(3%):マーケティング

流動性マイニングでは、HECOのブロックが生成される3秒ごとに80MDXが発行されます。流動性マイニングには半減期が存在しており、半年ごとに半減していきます。

MDEXでは、取引手数料0.30%のうち0.06%がMDXトークンの買い戻しとバーンのためのプールに溜められます。市場価格が3日間の平均価格よりも低くなると、スマートコントラクトが動作しされ、買い戻しと燃焼が自動的に実行されます。実行されなかった場合は、トークンは引き続きプールに蓄積されていきます。

HECOとBSC上との連携は、HECOとBSCにあるトークンのロック・ロック解除を通して行われます。MDXをBSC上で扱う場合、MDXをHECO側のコントラクトにロックし、同数のHMDXがBSC側で発行されます。もし、BSC上のMDXをHECO側に移動させたい場合、BSC側のHMDXをバーンすることによって、HECO側にロックされていたMDXがロック解除されることになります。

MDXトークンの扱いがある取引所

MDEXに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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