暗号資産の保管に重要な位置づけになるものの、気軽に試すことができないのがハードウェアウォレットです。多くの製品が1万円以上かかり、ユーザーにとっては購入するのに慎重にならずにはいられない性格を持っています。今回、筆者が「SecuX V20」を入手する機会があったので、本記事にてレビューしていきます。
SecuX V20 とは
SacuX V20は、SecuX Technology Inc.(以下、SecuX社)が開発しているハードウェアウォレットです。
SecuX社は、2018年に設立され、ブロックチェーン、情報セキュリティ、Fnintech、電子工学など、様々な専門家集団によって支えられています。ハードウェアウォレットの他、店舗決済システムや、他社へのOEM提供を行っています。また、2019年12月には、ビジネス誌「CV Magazine」の「Best Cross-Platform Crypto Hardware Wallet 2019」を受賞しました。
SecuX社のハードウェアは、機能差によって3つのモデルで構成され、そのうちV20は最上位モデルになります。V20では、PC/スマートフォンの両方に対応しており、状況に応じた使い分けがやりやすくなっています。また、全製品のラインナップにおいてBIP-32, -39, -44規格に対応しているため、他のウォレットのシードフレーズをインポートすることができるようになっています。
対応している資産・環境
SecuX V20 を含む同社のハードウェアウォレットは、以下の資産に対応しています。一部の資産を除き、PC向けのWeb「SecuXess」やスマートフォン(iOS / Android)で扱うことができるようになっています。
- Bitcoin ($BTC)
- Bitcoin Cash ($BCH)
- Ethereum ($ETH)+ERC-20
- Litecoin ($LTC)
- Ripple ($XRP)
- Groesltcoin ($GRS)
- Stellar ($XLM)
- Binance Chain ($BNB)
- DigiByte ($DGB)
- Dashcoin ($DASH)
- Dogecoin ($DOGE)
- Cardano ($ADA)
- Tron ($TRX) +TRC-10, TRC-20トークン
- Binance Smart Chain +BEP20トークン
※上記は2022年1月17日時点の仕様に基づきます。
操作画面
画面の例は、スマートフォンを利用した場合になります。
残高・送受信
残高や送受信のような基本的な操作画面は、一般的なウォレットと特に異なっておらず、ウォレットアプリを使い慣れている人であれば特に迷わないようになっています。
初期設定
ハードウェアウォレットで最も手間になるのが初期設定です。V20では、ハードウェアウォレット本体の文字入力がスマートフォンのようなキーボードになっており、シードフレーズの確認は選択肢から該当項目をタップするだけで良いようになっています。セットアップ後に表示されるホーム画面は簡素な構成になっています。
SecuX V20 の特筆すべき点
PCとスマートフォンの両対応
既に様々なハードウェアウォレットが登場していますが、その多くはスマートフォンに特化しています。現実的に、暗号資産を本格的に利用するユーザーはPCをメインに操作をする場合も多く、PCとの接続はなくてはならないものになっています。
V20では、PCとスマートフォンの両方に対応しています。PCでは、USB-C接続でWebインターフェイス「SecuXess」を、スマートフォンはBluetooth接続で専用のアプリ「SecuX Mobile(iOS / Android)」を利用します。Bluetooth接続は、常時スマートフォンと接続されているわけではなく、ユーザーが任意でBluetoothのオンオフを切り替えることにより、セキュリティを確保できるようになっています。$ADAはPCのみの対応となっており、SecuXessから直接ADAのステーキングができるようになっています。
UI/UXが良い
V20は、画面が2.8インチと大きめになるため、多くの操作が一画面内に収まり、操作しやすくなっています。また、文字入力時にPCのキーボードと同じ配列の画面が表示されるため、シードフレーズ入力のような特に面倒な操作の快適さが向上します。
また、特に優れている点として、取引確定時における認証の使い勝手があります。多くのスマートフォン用のハードウェアウォレットは、QRコードをスマートフォンとウォレット本体で相互に読み取る方法が主流になっています。これは、最もセキュリティが高い方法である一方、特にWalletConnect経由でDeFiを利用する快適さを大きく下げてしまいます。DeFiでは、一回の取引のためにApprove処理や取引実行などの認証操作を2〜3回行う必要があるため、その都度QRコードを読み合うのは手間になるからです。
V20では、認証操作時にはウォレット本体に6桁のワンタイム認証番号が表示され、それをスマートフォン側で入力するだけです。この操作は、主流のQRコードを使った操作と比べるとだいぶ快適なものになります。
隠しウォレットを作ることができる
V20では、隠しウォレットを作ることができるようになっています。これは「Hidden Wallet」(ヒドゥンウォレット)と呼ばれています。より日本語的な表現をすると、へそくりに近い位置づけの機能になります。
現実的なウォレットの運用を想定すると、ハードウェアウォレットに入れる資産は本当に大事なものであり、他人からスマートフォンの操作画面を見られたときに真に大切な資産が見られて困るという場合があります。このような資産に対しては、Hidden Walletの利用が向いています。
Hidden Walletは、ハードウェアウォレット本体に2つのウォレットが入っているイメージになります。普段見えているウォレットに対し、もう1つの”陰の存在”がHidden Walletに相当します。2つのウォレットに紐づくシードフレーズは別々のものになるため、資産をまとめることはできないようになっています。
ファームウェアのアップデートが楽
ハードウェアウォレット利用時に、手間のかかる場面がファームウェアのアップデートになります。多くは、新しい資産に対応させる場合にファームウェアのアップデートが必要になります。主流のハードウェアウォレットでは、ファームウェアのファイルをダウンロードし、その整合性を確認し、ハードウェアウォレット上でアップデートを実行するという形になるため、手間がかかるものになっています。
V20でも、新しい資産に対応させる際にファームウェアのアップデートが必要になります。しかし、他と比べると手間が簡素化されています。スマートフォンの場合は「SecuX Firmware Update(iOS / Android)」を利用し、PCの場合は専用のWebインターフェイス「SecuXess」のSettings画面よりアップデートを行います。いずれのアップデート方法でも、表示に従い何回かボタンを押すだけの簡単操作となっており、主流のハードウォレットにありがちな手間がかからないようになっています。
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