インタビュー

Polygon – Polygon Edgeチーム kourin氏 インタビュー 第1部:Polygonにはどのようなプロダクトがあるのか?

インタビュー
スポンサーリンク

Ethereumのスケーリングソリューションとして知られているPolygonは、様々なソリューションを提供しています。今回は、Polygon Edgeチームでエンジニアをしているkourin氏に、Polygonのプロジェクトならびに自身が開発に携わるPolygon Edgeについてインタビューしました。

本記事は3部構成になっています。第1部では、kourin氏の自己紹介とともに、Polygonプロジェクトがどのようなプロダクトを提供しているかを訊いていきます。

第1部:Polygonにはどのようなプロダクトがあるのか?

kourin氏の自己紹介

加藤:最初にkourinさんについて教えてください。Polygonに入る前にはどのような仕事をしていましたか?また、Polygonにおいてはどのような関わり方をしていますか?

kourin:kourin (@kourin_crypto) と申します。僕は、Polygonに入る前は大学を卒業した後に、シンガポールのスタートアップに就職しました。そこは、暗号資産の取引アプリを開発している会社で、僕はフロントエンジニアとして1年半ほど開発に携わっていました。その後、業務委託でCosmos SDKを使ったブロックチェーンやそのUI実装に9ヶ月ほど関わっていました。当時開発していたものは、特定の用途に応じたアプリケーション特化型のチェーンでした。そして、2021年3月からPolygon Edge (当時はPolygon SDK) の開発に加わりました。

加藤:どのような経緯でPolygon Edgeに関わることになったのでしょうか?

kourin:現在の会社に入社したときは、まさか自分がPolygonに関わるとは思ってもいませんでした!Polygon Edgeを開発しているのは、セルビアにあるTrapesysという会社なのですが、僕が応募した段階では、そこがPolygon Edgeを開発しているということは一切知りませんでした。当時、僕は単純にブロックチェーンエンジニアの仕事を探していて、この会社にたどり着き、コーディング試験を経て採用されました。その後、会社がPolygon Edgeを開発していることを知りました。ですので、最初はPolygonで働きたいという想いはありませんでした。

加藤:意外な経緯なのですね。この業界だと作りたいプロダクトを指名してプロジェクトに参加する場合が多いですが、入ってみてたまたま関わったのがPolygonだったわけですね。現在は、開発で何の担当をしているのでしょうか?

kourin:基本的にはPolygon Edgeの開発全般に携わっています。チームはエンジニアが4人、インフラエンジニアが1人、テックリード1人、BizDevが3人、サポートが1人です。見ての通り多くはないです。ですので、部分部分で担当分けがあるにせよ、全体の開発に関わることが多いです。今年の秋にPolygon Supernetsをリリースする予定で、現在はそれに向けた開発を行っています。

複数あるPolygonのプロダクト、その違いは?

Polygonのプロダクト一覧

加藤:Polygonのプロジェクトとプロダクトについて教えてください。Polygonはどのようなプロジェクトなのでしょうか?現在いくつかのプロダクトがありますが、それらについて簡単にご紹介いただけますか?

kourin:まずPolygonという組織はEthereumを中心に据え、それに対してスケーリングするものを提供しています。

加藤:具体的に、Polygonにはどのようなプロダクトがあるのでしょうか?

kourin:たくさんあります。まず、Polygon PoS は、いわゆるみなさんが想像するPolygonになります。これは、サイドチェーンのソリューションです。Ethereumと比べて高速なブロックチェーンでユーザーのトランザクションを処理し、またEthereumとPoSチェーンの資産を転送するための仕組みがあります。一般的に「Polygonを使っています」というと、だいたいはこのチェーンを使っているものになります。

加藤:Polygonは、EthereumのLayer2であると聴いたことがありますが、Polygon PoSは仕組み上Layer2ではないように感じます。

kourin:その通りです。これはLayer2ではなく、あくまでもサイドチェーンになります。Ethereum向けのLayer2というのは、ロールアップになりますが、Polygonはロールアップにも力を入れています。基本的に、PolygonはzkRollupに力を入れていて、いくつかのプロジェクトがあります。

Polygon Hermezは、zk-SNARKベースのzkRollupソリューションです。ロールアップでは、シーケンサーと呼ばれる特定のノードがトランザクションを処理することになりますが、既存のロールアップではシーケンサーの信頼性に依存してしまいます。Polygon Hermezは、パーミッションレス型になっていて、誰がシーケンサーになってもちゃんと機能するようにコンセンサスアルゴリズムが作られています。それに加え、Ethereumのスマートコントラクトをそのまま動かせるようにEVMのエミュレーターであるzkEVMと呼ばれる仮想マシンが動くようになっています。そのため、基本的にはEthereumのスマートコントラクトをHermezのロールアップで動かせるようになります。

加藤:EthereumやPolygon PoSで実装したアプリケーションをそのまま移植して動かせるということなのですね。

kourin:その通りです。基本的には、EthereumやPolygon PoSで動かしていたバイトコードをそのままデプロイして、動かすことが可能になります。

続いて、Polygon Midenは、zk-STARKベースのzkRollupソリューションです。HermezだとEVMのエミュレーターを実装していたのですが、こちらは独自の仮想マシンであるMidenVMを開発しています。これにより、プライバシー機能を提供できたり、効率的な証明の生成ができたりと、様々なメリットがあります。MidenVMは、独自の仮想マシンだからEthereumやPolygon PoS向けに開発されたスマートコントラクトがそのまま使えないというわけではありません。Polygon Midenでは、Solidily用のコンパイラを開発していて、基本的にはSolidilyで書いたスマートコントラクトをMiden用のバイトコードに変換して動かすことができます。また、一部危険なコードを排除するようにできています。

Polygon Zeroは、独自のzk-SNARKベースのアルゴリズムを開発していて、zkRollupのトランザクションを実行して、証明を生成する速度に焦点を当てているプロジェクトです。証明の生成速度が、他のzkRollupソリューションと比べて100倍近く高速になっています。

次は、Polygon Nightfallと呼ばれるものです。こちらはzkRollupではなく、Optimistic Rollupを使っています。加えて、ゼロ知識証明を使うことによって、送金やトランザクションを秘匿して実行できるようになります。これはプライバシーに焦点を当てているソリューションになります。

ここまでがロールアップのソリューションになります。まだまだあります!

Polygon Availは、データ可用性(Data Availability)層を提供するブロックチェーンになります。通常、zkRollupではEthereumのメインチェーンにトランザクションを実行したという証明と、トランザクションのデータが保存されます。Polygon Avaliでは、証明をEthereum側に保存し、トランザクションデータをAvail側に保存することで、Ethereum側のトランザクションサイズを節約して、より多くのトランザクションを格納することができるようになります。

また、もう1つの特徴として、Polygon Availを使うとライトクライアントでも「トランザクションがある」ということを確認できるようになります。ライトクライアントは、ブロックヘッダーを確認するものなので、実際にその中でトランザクションがあるのかは検証していません。Polygon Availでは、ライトクライアントでも全データをフェッチせずに、トランザクションがあるということを確認できる利点があります。

Polygon IDは、分散型のID認証サービスです。自分の情報を開示せずに、特定の検証可能な情報を提供することができます。例えば、自分の生年月日を伝えなくても、特定の誰かに自分が成人であることを証明することができるようになります。これはKYCのようなものに活用され得るサービスになります。

そして最後に、僕が関わっているPolygon Edgeは、独自チェーンを構築するためのEVM互換チェーンのフレームワークになっています。Polygon SupernetsがPolygon Edgeを派生させたサービスになっていて、高い分散性と安全性を持つ独自チェーンを構築し、かつ運用までを可能にするサービスになっています。

加藤:こうしてみると非常に多いですね。この中で既に稼働しているのはどれなのでしょうか?

kourin:みなさんが思っている以上に色々動いています。この中で既に稼働しているのは、Polygon PoS, Hermez, ID, Edgeになります。またベータ段階ですが、Nightfallも稼働しています。

加藤:それにしても、なぜここまでソリューションが多いのでしょうか?

kourin:1つのソリューションだけで、すべてのニーズをカバーできないからです。Polygon自体はEthereumのスケーリングソリューションを提供していますが、Ethereum側はスケーリング戦略としてEthereum 2.0とロールアップをやっていくと決めています。このような方針において、PolygonがどのようなことをやるかというとzkRollupを開発していくということです。今のところ、zk-SNARKベースとzk-STARKベースの2つがあって、どちらが有用かというのがまだわからない状態なので、それらを同時並行でやっているという感じです。

第2部の紹介

第1部では、Polygonプロジェクトがどのようなプロダクトを提供しているかを訊いていきました。Polygonでは、よく知られたサイドチェーンのPolygon PoS以外にも、Layer2のロールアップを中心とした様々なスケーリングソリューションを用意しています。

第2部では、kourin氏自身が開発に携わる独自チェーン構築のフレームワークであるPolygon Edge/Supernetsをより深掘りし、Polygonが最近力を入れていることについて探っていきます。

▼第2部はこちら

Polygon - Polygon Edgeチーム kourin氏 インタビュー 第2部:Polygon Edge/Supernetsはどのようなプロダクト?
Ethereumのスケーリングソリューションとして知られているPolygonは、様々なソリューションを提供しています。今回は、Polygon Edgeチームでエンジニアをしているkourin氏に、Polygonのプロジェクトならびに自身が開...

Polygon に関する情報

 

スポンサーリンク
この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

Junya Katoをフォローする
TOKEN ECONOMIST(トークンエコノミスト)
タイトルとURLをコピーしました