インタビュー

STRAYM 山崎氏&片岡氏 – アートの分散型保有権をNFT化について訊く:第1部 – アートの分割化に取り組む事業背景とは

インタビュー
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NFTというとアートを想起させるほど、いまやアートNFTは最も代表的なNFTのユースケースになっています。そして、既存のアート業界からもNFTを使った新規事業に参入する動きが活発化しています。

アートの小口化による分割保有のサービス「STRAYM」を展開するストレイムアートアンドカルチャー株式会社(以下、ストレイム)は、2022年10月17日に同社のサービスをブロックチェーンベースにし、Web3化しました。

今回は、共同創業者 CDO (Chief Dream Officer) 山崎正典氏とCOO 片岡治樹氏にサービス展開における背景をお訊きしました。

本編は、3部に分かれています。第1部では、同社がアートをどのように捉えて事業を組み立てているかを訊いていきます。本記事では、会社名をストレイム、サービス名をSTRAYMと区別して記載しています。

第1部 – アートの分割化に取り組む事業背景とは

二人の自己紹介

加藤:まず、お二人について自己紹介をお願いします。どのようなバッググランドをお持ちで、ストレイム社ではどのような役割を担っているのでしょうか?

山崎:私はストレイムの共同創業者です。私自身は、ファッションの領域に長くいました。ファッション業界にいるとアートや音楽など、カルチャー業界の人に囲まれる事が多くあります。そのような中で仕事をやってきました。今は原宿/神宮前を拠点に活動しています。

私の役割は、事業創造を含むすべての領域になります。こうものが面白いのではないのか、社会をより良くできるのではないか、存在意義があるのではないかという視点から、ゼロから事業創造をしています。また、経営全般やUI/UXのクリエイティブな部分、作品企画などを行っています。

片岡:私は取締役COOで、バッググラウンドはファイナンスになります。社会人の一番最初は会計系のコンサルティングファームに入り、M&Aや資金調達のアドバイザリーなどのファイナンス業務をしてきました。その後、NTTデータのグループ会社に入り、上場企業のクライアントに対するM&Aアドバイザリースタートアップ向けの資金調達アドバイザリー、グループ会社のCVC起ち上げ支援などを手掛けていました。そして3つ目のキャリアとして起業し、スタートアップのM&Aアドバイザリーや資金調達のアドバイザリーを行う会社を設立しました。その後、ストレイムに参画して今に至ります。アートとの関わりについては、私の父親が名古屋で一級建築士事務所を経営しているのですが、アートコレクターでした。父親の影響で、昔からアートに囲まれていた生活をしていて、自分自身もアートが好きで家族と一緒に観に行ったりしていたのをよく覚えています。

加藤:もともとアートが身近な存在だったのですね。片岡さんは、途中からストレイムに参画したようですが、どのような経緯だったのでしょうか?

片岡:当初、ストレイムは私が設立したファイナンス支援会社のお客様でした。元から私がファイナンス領域で面白い会社がないかと調べていたところ、知り合いがストレイムを紹介してくださいました。参画する予定がない中で、資金調達支援という形で関わらせていただいたのが最初です。山崎と出会った時から、ストレイムの「アート x ファイナンス」というビジネスモデルはとても面白いなと思っていましたし、自分にとってものすごく刺さりました。その後、何ヶ月かご一緒させていただくうちに、私もストレイムの仕事にやりがいを見出してきた矢先に、山崎からCFOとしてコミットしないかとお誘いを頂きました。「是非お受けします」ということで即答し、ストレイムの中の人間として携わることになりました。

加藤:それはだいぶ嬉しいオファーですね!

山崎:片岡はCFOとしてだけではなく、事業創造や戦略的な部分にも積極的に参加してくれました。私としてはそこが良いなと思ってお誘いしました。

ストレイム社は何をやってきた会社なのか

加藤:ストレイム社は、もともとWeb3の事業をしていたわけではないようですが、今までどのような事業をしてきたのでしょうか?

山崎:ストレイムは、もともとブロックチェーンと小口化という切り口から、各分野で影響力のある方々が寄付したい先を指定した上で、その方にとって大切な私物を抽選物として公開し、ユーザーは一口100円でクジを購入することでその抽選に参加できる。そして、抽選に集まった総額を指定された寄付先にダイレクトに寄付するというプラットフォームを構想して準備していました。ということもあり、実はスマートドネーションの略でSMADONAという会社を設立しています。しかし、日本には抽選に関していろいろな法律の制約があったことと、我々のバックグランドを生かす意味でも、寄付という全体的な問題に対しての支援は広すぎるということで、ブロックチェーンと小口化を活用したアーティストやクリエイティブ領域に貢献できるということで今のSTRAYMがスタートしたという背景があります。

クリエイターをバックグランドに持つ創業陣が、現代アーティストと通じて事業を組み立てていく中、GDPが日本の70%程度である英国のアート市場規模が日本の6倍であることを知りました。「才能ある日本の作品をもっと購入する人を増やせないか」と考察した結果、アート市場が発展している国は、アートを資産として考える価値観が浸透していて、かつセカンダリー市場が大きいことに気がつき、アートを資産として捉える考え方を導入できないかと考えるようになりました。

日本のアート市場は伸びしろが大きく、潜在力があるだけではなく、日本のアートコンテンツは世界での競争力もあります。我々がまず取り組んだのは、アート購入の経済的なハードルを下げるということでした。そして、アートの作品を小口で買えるようにする「共同保有」という新しい概念でアプローチする手法を創案して、日本で初めて発表しました。また、保有者や資産性を可視化してSNSと連動できるようにすれば、ビジネスとして非常に大きくなるのではないかということで取り組んでいます。

加藤:なるほど、そのような背景があるわけですね。御社は、最初からWeb3サービスを展開しているわけではないようですが、今までどのようなサービスを提供してきたのでしょうか?

山崎:アートを小口化するというのは先程話した通りですが、アートをデジタルで見せるようにしています。これによって、ユーザーはアートギャラリーに足を運んで買うよりもハードルが低くなります。そして、デジタルには、信用さえあればそこにいなくても購入することができるというメリットがあるので、より気軽にアートを購入できるようになります。

もう1つは、しっかりと作品をフィーチャーするということを行っています。作品にどのようなストーリーや背景があって、どのようなものなのかをしっかりと伝えるということです。例えばネットオークションだと、たくさんの作品が出品されて雑多になる上に、本物か偽物かの判別ができません。これでは、作品をフィーチャーすることすら困難です。我々はそうではなく、作品に加え、アーティスト一人ひとりに注目できるようにしています。

加藤:確かに、ネットオークションはもちろんのこと、展示会ですら作品のストーリーというのは簡単な紹介文が載っている程度で、そこまでフィーチャーされている感じはしませんね。作品を知るというのは、意外と難しいものです。

山崎:そうなんです。作家や作品自体のバックグランドを知ってもらうことで、コレクターは作品に独自の価値をより見出してくれるということがあると思います。

あとアートに限りませんが、人は1つ目を持つと2つ目を持ちたくなるものです。逆に、1つ目を持っていないと、買おうとはなかなか思えないものです。我々はアートを小口から買えるようにしてアート作品に関与するハードルを下げることで、誰もが気軽にアートコレクターとしてスタートできるきっかけを提供していきます。細かいですが、我々は“保有”と“所有”を区別していて、所有は物理的に持ち、保有は株式のようなイメージです。アートを保有することにも満足感があるはずです。例えば「私はアップルの株主になっているんだ」という感じに。そういった概念を持ち込むことによって、小さく幅広くアートを買うことができるし、実際にものがあるので観に行こうと思えば現物を観ることもできます。

また、我々のプラットフォームで大切にしているところが、展示の公共化になります。バブル時代に高いアートを買ったお金持ちが話題になりましたが、そういったアートがどうなったかというと、社長室のような場所に飾ってあったりするわけです。そうすると、社長室に来た人しか観ることができません。さらに、アートの場合は作品の所有者だからといって、いらなくなったのでアートを捨てようとはなってはならないものだと思うんです。このようにアートに関しては公共共有の財産という考え方があり、後世にその作品のオーナーをリレーしていく必要があると思うんです。

アートの作品を多くの人に見せつつより良い状態で次の世代にリレーしていくためには、みんなが共同でアートを保有し、我々が委託という形で良い状態で管理することで、それが実現できると思っています。将来的には管理をDAO化して、どこに何を展示するのかなどの意思決定も民主化していきたいと考えています。

我々は、そもそも作家は誰か一人のために何かを伝えたくて描いていない場合の方が多いと考えていて、多くの人にその作家の表現を伝えていけるようにしたいです。より多くの人に観てもらうことでアートの価値も上がるわけです。

最後に、アートの評価の可視化を行っています。アート作品の価値形成における要因の一つに「誰がいくらで買ったか」というのがあります。誰がいくらで買ったかというのは現状だと見えにくいものになっています。我々のサービスでは、誰がコレクターであるかということも可視化してSNS連動できるようにしていきます。我々の目的は、この人が持っているなら私も購入しようという動機を促進し、今まで専門家のみが行ってきた作品の評価を民主化していくことです。

第2部の紹介

第1部では、ストレイム社がアートをどのように捉えて事業を組み立てているかを訊いていきました。

第2部では、それを踏まえた同社サービスのコア部分であるアートのオーナー権分割化(小口化)の優れた部分について追求していきます。

第2部:アートのオーナー権分割化はなぜ重要なのか?

STRAYMに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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