Layer2・サイドチェーン暗号資産

XRPL EVM (XRP) の解説 ~XRP LedgerのEVMサイドチェーン

Layer2・サイドチェーン
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XPRL EVMの概要

XRPL EVM は、$XRPの分散型台帳である XRP Ledger (XRPL)上にEVM互換のスマートコントラクト機能をもたらす新たなサイドチェーンです。

リップル社とPeersyst社が中心となり数年にわたり開発・テストを進められたXPRL EVMサイドチェーンは、2025年6月30日にメインネットが正式ローンチしました。これにより、これまで送金や決済に特化し高速・低コストで定評のあったXRPLに、Ethereumで見られるDeFiやその他の分散型アプリケーションを展開できる柔軟性が加わりました。

XRPL EVMサイドチェーンはXRPL本体とは並行して動作する独立チェーンですが、Axelarによるブリッジを介してXRPLと接続されています。このブリッジによりXRPLのネイティブトークンである$XRPがサイドチェーン上の取引手数料として機能し、XRPL上の資産を1:1のレートでサイドチェーン側に移して利用することができます。

XRPLとXRPL EVMとの接続

スマートコントラクト対応の追加は、XRPLにおける従来の強み(高速・安価な決済や高い安定性)を維持しつつ、Ethereumが持つプログラマビリティを取り込むもので、XRPLの相互運用性を飛躍的に向上させると期待されています。実際、XRPLのDeFiにおける活用度(TVL)はこれまでその時価総額の0.05%未満と極めて低く(参考までにEthereumは約20%)、潜在力はほとんど手つかずの状態でした。XRPL EVMの登場によってこの未開拓の領域が切り開かれ、今後XRPの経済圏が飛躍的に広がっていくことが期待されています。

XRPL EVMの特徴

EVM互換による豊富な開発環境

XRPL EVMサイドチェーン最大の特徴は、Ethereum互換のスマートコントラクトに対応する点です。

Solidityで記述されたコントラクトがそのまま動作し、既存のEthereum向けライブラリや開発者ツール(MetaMaskによるウォレット接続、HardhatやTruffleといった開発環境、OpenZeppelinのコントラクトライブラリ等)を違和感なく利用できます。つまり、Ethereum上で実現できるあらゆるDAppsをXRPL EVM上に移植・展開できる互換性を備えており、開発者は新たな言語やツールを学習することなくXRPL EVMのエコシステムに参入することができます。

高速・低コストなパフォーマンス

XRPL EVMサイドチェーンは高性能な処理能力を備えています。平均ブロック生成時間は約3~5秒、ネットワークのスループットも1,000トランザクション/秒を超えています。また、取引手数料はごく僅かで、一般的な取引コストは0.01ドル以下に抑えられています。これらの高速・低コストな特性は、DeFiなど大量のトランザクションを伴うアプリケーションに理想的な環境を提供します。

コンセンサスアルゴリズムにはProof of Authority(PoA)方式を採用しており、信頼されたバリデーターのみにブロック生成を任せることで処理効率とファイナリティの高速化を実現しています。現在、25社以上のグローバル企業・団体がバリデータとして参加しネットワークを支えています(バリデーター一覧)。PoAは一部の権威ノードに依存する方式ではありますが、XRPL本体と似通った合意モデルでありつつ最適化された高速取引を可能にしている点で、ユースケースによっては大きな利点となります。

$XRPをネイティブトークンとした設計

XRPL EVMサイドチェーン上のネイティブトークンは$XRPです。これはブリッジ経由でXRPL本チェーンから持ち込まれた Wrapped XRP がサイドチェーン内で利用される形になっており、XRPL上の$XRPと1対1の価値対応が維持されています。

ユーザーは従来のXRPLアカウントのまま、ブリッジされた$XRPを用いてサイドチェーン上のスマートコントラクトを利用でき、取引手数料も$XRP建てで支払います。$XRPは時価総額で常に上位に位置する高い流動性を持つ資産であり、今後XRPL EVM上で展開されるDeFiにおいて基軸通貨的な役割を果たすことが期待されます。実際、XRPLは元来内蔵のDEX機能を備え様々な資産の発行・交換を低コストで行える強みがありましたが、XPRL EVMによるスマートコントラクト対応によって$XRPを担保にしたレンディングやデリバティブ取引、ステーブルコイン運用など、より高度な金融ユースケースが可能となります。

クロスチェーン互換性とマルチチェーン展開

XRPL EVMサイドチェーンはクロスチェーンの相互運用性にも優れています。基盤のソフトウェアはCosmos SDKを用いて構築されており、Cosmosエコシステムが標準提供するIBCプロトコルによる他ブロックチェーンとの連携機能を有します。

これにより、将来的に他のCosmos系チェーンやIBC対応チェーンとの直接的な相互接続も可能です。また前述のとおり、Axelarネットワークが標準ブリッジとして組み込まれており、Axelarが接続する他の80以上のブロックチェーンとも間接的に接続できます。例えばEthereumやBNB Chain、Polygonといった主要EVMチェーン上の資産をAxelar経由でXRPL EVM側に持ち込むことが可能で、$XRPだけでなく様々なチェーンのトークンやステーブルコインがXRPL EVM上で利用できるポテンシャルがあります。加えて、今後は大手ブリッジプロトコルであるWormholeとの統合も予定されています。

XRPLからXRPL EVMへの資産移動方法

XRPL上の資産(主にXRP)をXRPL EVMサイドチェーンへ移動させるには、ブリッジ用のツールを使用します。公式にはAxelarネットワークによるクロスチェーンブリッジが提供されており、ユーザーはSquidと呼ばれるWebインターフェイスを利用して簡便に資産移動が可能です。

Squid: https://app.squidrouter.com/

基本的な手順としては、まずユーザーが自身のXRPLウォレット(例:Xamanウォレットや、MetaMaskにXRPL Snapを導入したウォレット等)をSquidのブリッジUIに接続し、送金したい$XRPの量を指定します。その後、ブリッジがXRPL本体上で対応する$XRPをロックし、同量のWrapped XRPをXRPL EVMサイドチェーン上に生成します。この一連のトランザクションが完了すると、ユーザーはサイドチェーン側のウォレット(MetaMask等、あらかじめXRPL EVMネットワークを追加)でブリッジされたXRPを受け取ります。

ウォレットにXRPL EVMサイドチェーンのPRC情報を設定する場合、ChainListからXRPL EVMを追加するか、以下の情報を追加します。

  • Network Name: XRPL EVM
  • New RPC URL: https://rpc.xrplevm.org/
  • Chain ID: 1440000
  • Currency Symbol: XRP
  • Block Explorer URL: https://explorer.xrplevm.org

Squidの画面(XRPL→XRPL EVM)

なお、2025年7月1日時点ではAxelar経由のルートが公式に案内されていますが、将来的には前述のWormholeブリッジを使った資産移動にも対応する見込みです。

ご自身の$XRPが取引所にある場合は、以下のXRPLに対応したウォレットに$XRPを送信することにより、XRPL EVMサイドチェーンへのブリッジをすることができるようになります。

XRPL EVMに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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