仮想通貨の相場は未だに下火ですが、ブロックチェーンのプロジェクトのミートアップに足を運ぶと熱心に良いICO案件を探している人を意外と見かけます。
そんな人たちの気持ちに付け入ってICOのブローカーがセールストークを繰り広げるのか「大企業がしているICOだからこれは良い!」という、いわゆるリバースICOと呼ばれるものになります。
果たして彼らの言う通り、リバースICOとは本当に投資として良いものなのでしょうか?
リバースICOとは
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まずはリバースICOの特長を確認しておきます。
リバースICOとは、既にプラットフォームを持ち、事業をやっている企業が行うICOになります。主に既存事業を強化する目的で資金調達が行われます。
通常のICOは、何もない状態からプラットフォームを作るために行われますが、リバースICOは既にプラットフォームがある状態で行うのがリバースと付く所以です。
リバースICOの一番のメリットは、プロジェクトの破綻率が低いということに尽きます。
既に事業を行っている会社がリバースICOをする場合、ある程度事業が起動に乗っていて十分に開発体制が整えられると踏んだ状態からプロジェクトがスタートします。
つまり、そのプロジェクトが失敗する確率は通常のICOよりはグンと低くなります。ICOプロジェクト全体の90%以上が1年後に淘汰されるという統計があるため、リバースICOが堅い投資であると言われるのは一見理にかなっています。
しかし、プロジェクトの成功がトークン価格に反映されるかは別問題です。トークンの価格というのはそのトークンの需要が喚起されて上がっていくもので、プロジェクトの成功とは関係ないからです。
リバースICOの例
- ASOBI COIN:アソビモ(2007年設立)のリバースICO
- OSA Decentralized:OSA DC(2015年設立)のリバースICO
- CRYCASH:Crytek(1999年設立)のリバースICO
- The Abyss:Destiny.Games(2008年設立)のリバースICO
- ORIPIA & PDATA:ORIPIAのリバースICO
知っておくべき事実
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リバースICOは最近広がったので、現状ではリバースICOをして上場したものはそれほど多くないです。
数少ない一例ですが、2017年末にCRYCASHのICOをしたCrytekを見てみます。
Crytekは1999年に創業しました。ドイツのフランクフルトに本社を置き、世界的に有名な一人称視点のガンシューティングのゲームを開発しています。
Crytekは非上場企業であるため、正確な売り上げや従業員数は公表されていませんが、Wikipediaによると2012年時点で638人の従業員がいて、十分な大きさを誇っている会社です。
それでは、Crytekがそれだけ大きな企業であるという点を踏まえて、CRYCASHのUSD建ての価格推移をご覧ください。データはCoinMarketCapのものです。
上場された地合いが悪いとはいえ、価格が一方的な下落基調なのは明白です。ICO開始時は 1 CRC = 0.70 USDに対し、ここのチャート取得時点では 1 CRC = 0.10 USD にまで値下がりしています。
CRYCASHのICOは、ETH建てのレートに基づき行われました。ICOのレートは 1 CRC = 0.0010 ETHでした。このチャート取得時点では 1 CRC = 0.0004 ETH まで値下がりしています。
CRYCASHはUSD換算で見ると約7分の1に、ETH換算では約4分の1になりました。地合いが悪い時期のデータとはいえ、投資パフォーマンスとしてみると悪いという表現以外に見つかりません。
この価格推移からわかることは、リバースICOだからといってトークン価格が上がるものではないということです。
リバースICOというのは所詮通常のICOと変わらないのです。
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リバースICOのどのポイントを見るべきか
リバースICOでも当然トークンが発行されるため、企業は発行したトークンを流通させるためのトークンエコノミーを考え、それを既に存在しているプラットフォームに組み込みます。今まで法定通貨のみを扱ってきたプラットフォームに、新たな通貨であるトークンが入り込んできます。
そのような点から、ICO投資としての見るべきポイントというのはだいたい以下になってきます。いずれのポイントを判断するにしても、ある程度その企業のビジネスモデルを理解し、ホワイトペーパーを読み込むことが必要になります。
- そもそも企業のビジネスモデルに優位性があるのか?
- トークンを使わなければいけない理由が存在するか?
- トークンを入手するための仕組みが整えられているのか?
- トークンが流通しそうなトークンエコノミー設計になっているか?
実はこうしてみると、考えるポイントは通常のICOとあまり変わりません。
それでは、個別に見ていきます。
そもそも企業のビジネスモデルに優位性があるのか?
これは言うまでもない点です。
優れた実績を持っている企業は、必ずホワイトペーパーに実績を記載しています。
Webページでもしつこいほどに強調している場合があるので、まず見落とすことはないでしょう。
トークンを使わなければいけない理由が存在するか?
多くのリバースICOが明確にすることができていないのがこの点になります。
例えば、そのトークンを使うとサービス利用料が割引になるという場合でも、トークンの入手が面倒だと使われない可能性があります。割引だけでは理由が弱いです。
単なる割引という枠を超えた、トークンを使うことによる絶対的なメリットが必要です。
特に企業向けサービスの場合は、利用側の企業は法定通貨より価格変動が大きいトークンを入手してプラットフォームを利用するというのは、大きなリスクを受け入れる必要があります。それを払しょくできるほどでないと、そのプラットフォームを使ってもらうことには至りません。
トークンを欲しがる人がいないと、結局トークンの需要が発生しないので、トークン価格は上がっていきません。
そのため、トークン価格が上がるには、そのトークンを利用してまでそのプラットフォームを使わなければいけない絶対的な理由が必要なのです。
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トークンを入手するための仕組みが整えられているのか?
ICOが終わったあと、トークンを使うのは一般ユーザーになります。ICO投資家と異なり、多くの一般ユーザーはトークンを購入するための知識やスキルを持ち合わせていません。
現状だと、トークンを買うには法定通貨をBTCに替え、BTCをトークンに替えるという面倒な作業が必要になります。さらに、トークン規格に合わせてウォレットを用意する必要があります。これを仮想通貨に不慣れな一般ユーザーがやるのは無理です。
日本だと現状は仮想通貨交換業の関係で無理ですが、例えばクレジットカードでトークンを購入し、専用のウォレットにチャージできるような仕組みまで用意しないとそのトークンは使われずに終わってしまうでしょう。
繰り返しになりますが、トークンが使われないということは、トークンを欲しがる人がいないということです。トークンを欲しがる人がいないと結局トークンの需要が発生しないので、トークン価格は上がっていきません。
トークンが大量に流通しそうなトークンエコノミー設計になっているか?
トークン価格が上がっていくための理想は、人々がそのトークンを手放そうとせず(条件1)、さらに決済額が多い&その頻度も多い(条件2)という状態です。(詳細は、別記事「ICO後に価格が上がるユーティリティトークンのジャンルを公式から導き出す」に記載)
よくある例として、とあるサービスを利用するためには一定数のトークンを保有しなければならないというものがあります。これに関して言えば、条件1は満たしますが、条件2は満たしていない場合が多いです。大きな決済が1回きりであれば意味がありません。
リバースICOの場合は、既存のプラットフォームにトークンエコノミーを強引に組み込んでいる場合が多いため、条件1と条件2の両方を満たすものは稀です。
また、どうしてもトークンの流通範囲がプラットフォームに縛られてしまうため、仕組み上トークンが大量に流通するかと言われるとNoとなるものが多いです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
上記の観点から大企業が行うリバースICOというものを見ていくと、”大企業だから”という要素自体は、トークン価格に優位に働くものではないということが判ります。
結局のところ、トークン価格が上がるためには、そのトークンの需要が起こるかということがすべてであり、トークンを持つための理由やトークンエコノミーの設計が甘いと価格には反映されません。
ただし、プロジェクトの破綻率は通常のICOよりは低いため、トークン価格がゼロになるリスクを極力排除できます。
大企業が行うリバースICOとは、その程度のものなのです。
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