ブロックチェーンコンサルティングファームのFEB主催で、匿名ブロックチェーンのZCash(ジーキャッシュ)がミートアップが日本で初めて開催されました。
かつてZCashはコインチェックに上場され、マネーロンダリングの懸念から上場廃止になっています。
いつものごとく、その模様をご紹介します。
イベントページ:Zcash 日本初Meetup “Intro to Zcash Discussion.”
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ZCashプロジェクト説明
プロジェクト説明では、ZCashのFounder&CEOのZooko Wilcox氏がプロジェクトを紹介しました。
ZCashのミッションは、人々に経済的な自由と機会を与えることです。そのミッションを実現するために、最高学府の科学者の研究に基づき、厳格な科学の上に構築された技術を利用します。
まずZooko氏は、最初にプライバシーについて伝えるために、Webページの通信プロトコルであるHTTPとHTTPSを取り上げました。
1990年代にインターネットができたとき、通信にはHTTPが使われていました。HTTPは自分の送信している情報が丸見えになるため、悪意があるハッカーにも内容が丸見えになってしまいます。
1994年にはHTTPSが開発され、自分の送信している情報がすべて暗号化されるようになり、ハッカーに通信が見られてもその内容が把握されないようになりました。
暗号通貨の世界でも同じようなことがいえます。
今までのビットコインなどのブロックチェーンでは、第三者がどこから誰どれだけの量を送信したかが判ってしまいます。それに対して、ZCashはこれらの情報が第三者から判らないようになります。
ビットコインの場合、エクスプローラを見ると、送信者と受信者のアドレス、取引量が第三者にもわかります。それに対して、ZCashのエクスプローラを使うと、送信者と受信者のアドレス、取引量が第三者にはわかなくなります。
暗号化するということは、それを復号化することができます。ZCashでは、閲覧用のビューイングキーを利用することで、当事者のみトランザクションを照会できるようになります。
例えば、図の一番左の人が自分のトランザクションを照会したとします。その人は受信しかしていないので、自分の受信アドレスや取引量、メモを照会することができます。
続いて、図の真ん中の人が自分のトランザクションを照会したとします。その人は受信と送信をしています。自分が受信した場合は、先程と同様に自分の受信アドレス、取引量とメモを照会することができます。また、自分が送信した場合は、自分の送信元アドレス、相手の送信先アドレス、取引量を照会することができます。
最後に、図の一番右の人が自分のトランザクションを照会したとします。その人は受信しかしていないので、自分の受信アドレスや取引量、メモを照会することができます。
例では、メモに”I love you”というメッセージが書き込まれています。Zooko氏は、実際にこのような方法でメッセージをやり取りしている人を見たことがあるそうです。
このように、ユーザは自分が知っている範囲の情報を、ビューイングキーを使って照会することができます。
続いて、取引所から送信した場合のトランザクション照会可否の比較です。
ZCashでは、トランザクションを公開できるアドレス「t-addr」とトランザクションを非公開にできる「z-addr」が存在しています。
まずビットコイン送信は、誰もがそのトランザクションを見ることができます。
続いて、ZCashについて。海外取引所からz-addrに送信すると、送信元の海外規制当局からトランザクションを見ることができますが、その他はトランザクションを見ることができません。同様に、国内の取引所からz-addrに送信すると、送信元の国内規制当局からトランザクションを見ることができますが、その他はトランザクションを見ることができません。
ZCashは、世界中の大手企業からサポートされています。
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質疑応答
質問1.
Q.国内取引所で取引をする以外に、ZCashを使っても匿名性が失われる場合があるのか?
A.ハッカーが送信者のIPアドレスをたどったり、マルウェアやフィッシングサイトでパスワードを抜き取った場合に匿名性が失われる。
質問2.
Q.ノードにトランザクションが反映されたとき、自分のIPがたどられてしまうのではないか?
A.たどられてしまう。それを防ぐにはTorを使うことになる。しかし、IPアドレスがわかったとしても、トランザクションの中身は分からないので、そこまで大きな問題にはならないだろう。
質問3.
Q.日本の人々は金融プライバシーの重要性に気がついていないように見える。日本人がそれに気がつくきっかけは何だと思うのか?
A.米国では、ロシアからのハッキングによるFacebookの個人情報の流出事件で人々がプライバシーの重要性に気がついた。日本でも、何らかの個人情報の流出事件が起きると、そうなるのかもしれない。
質問4.
Q.ZCashは大きなエコシステムを持っているブロックチェーン(ビットコイン、イーサリアム)のサイドチェーンとして活用する方向性は考えていないのか?
A.イーサリアムのサイドチェーンにするのは技術的に可能だ。なぜならイーサリアムのサイドキャッシュとしてWBTCが既に実用化されているからだ。ビットコインをサイドチェーンにできるのかはわからない。新しいブロックチェーンの技術としてCosmosがあるが、こことZCashのサイドチェーンもできる。
質問5.
Q.ZCashが他の匿名通貨にない強みはなにか?
A.MoneroやDASHと比べても、ZCashは匿名性は強い。ZCashはトランザクションを非公開にすることもできれば、公開にすることもできる。現状は、多くのウォレットがトランザクションの非公開に対応していないため、DASHやMoneroより匿名度が弱いと感じる。しかし、100%非公開で送信できれば、ZCashの匿名性が最も強いものになる。
質問6.
Q.マイニングのASIC耐性を実装する予定はあるのか?
A.ZCashはオープンな分散型のプロジェクトであるため、私自身は決める事ができない。ZCashのこれからの方向性として、ユーザビリティとスケーラビリティを向上させていきたい。そのため、ASIC耐性にリソースを割く余裕がないと思っている。どこかからASIC耐性の提案があれば、それは歓迎したい。
質問7.
Q.ZCashのSproutは、プラットファームとしてイーサリアムより優れてると思う。特に、プライベートなネットワークにおいて匿名にすることができることは、今後銀行系コインや商業系コインで使われるではないかと思う。そのような話は、既にあるのか?あれば、具体的な企業名を教えてください。
A.2年ほど前にJPモルガンのZCashの技術を活用するパートナーシップを結んだ。今の進捗については守秘義務があるので話せない。
質問8.
Q.ゼロ知識証明を使った技術はいくつかあるが、今後3年以外に他の方式に乗り換えるつもりはあるのか?
A.どれを選ぶのかは今考えている。五分五分という感じだ。
質問9.
Q.ZCashはマネーロンダリング対策に対してどういう意見を持っているのか?金融機関を含め、事業者は気にすると思われるが、ZCashの場合の対策は可能なのか?
A.CoinbaseとGeminiは、ZCashを取り扱いながらマネーロンダリング対策ができている。取引所の中のユーザの動きを分析したり、ブロックチェーン上のこれまでの履歴も分析している。
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質問10.
Q.Zookooさんはアナーキスト(無政府主義者)なのか?
A.私は個人が自分に対して責任を持つという考え方は好き。個人が率先して、他人と奉仕の精神をもって助け合いをするのは好き。公的インフラがないことによる争いは避けたい。総合的にわからない。
質問11.
Q.ZCashにとって、将来普及する可能性が高い分野は何か? 例えば、EthereumやQuorumのように他のシステム下でzk-SNARKsを稼働させるためのアプリケーションとしてなのか?
A.ZCashにスマートコントラクトを搭載してアプリケーションプラットフォームにするという考え方もあったが、私はそれはするべきではないと思っている。なぜかというと、多くの人がZCashに求めているのは、価値の保全や売買といったお金として使うことであり、お金そのものが大きなアプリケーションだからだ。さらに、将来的に 何十億の人に使ってもらうようなスケーラビリティを持たせる場合、よりシンプルにしておく方が拡張性を確保できる。そのような理由から、ZCashをアプリケーションプラットフォームに移行するべきではないと思う。
質問12.
Q.MimbleWimbleについてどう思うか?
A.私は、GrinやBEAMの開発者は好きだ。彼らのサポートができるならしたいと思っている。技術がどうかといわれればあまり好きではない。技術的に複雑で実装が難しい、あまりプライバシーの強度も高くない。かつスケーリングさせるのも難しいからだ。
質問13.
Q.Zookoさんが他に興味を持っている匿名通貨はあるのか?
A.GrinやBEAMの技術は嫌いだが、開発者好きだ。Moneroの技術は安全ではないけれども、彼らは頑張っていると思う。私がプライバシーコインとして名をあげられるのはこれくらいだ。Vergeはさすがにない。
質問14.
Q.匿名通貨についての世界の規制は強まっているが、同時に需要は高まっている。どこの国のマーケットが一番有望と考えているのか?
A.会社としては、いろいろな国が重要であるのはわかっているが、フォーカスをしていくのは北米、アジア、南米という順番になる。インドや中国は規制は厳しいけれども、匿名通貨の需要はとても大きい。
質問15.
Q.暗号資産(暗号通貨)の普及に何年かかると思うか?それはなぜか?
A.まだ10年くらいかかると思っている。一般的な話として新しい技術が注目を集めるのに5年、底から大きく飛躍して成長するのに5年かかる。ビットコインは誕生してから10年経っているが、まだ飛躍していない。なので、あと10年くらいかかるのではと考えている。ビル・ゲイツの言葉の中で「人々は2-3年のスパンで世の中が変わることは過大評価する。10年後のスパンでは過小評価する」という言葉が好きだ。
質問16.
Q.今回の日本の訪問で金融庁に会う予定はあるか?
A.いうべきことかどうなのか判断がつかない。
質問17.
Q.日本に来た真の目的は何か?
A.2つある。日本のマーケットについて学ぶこと。政府や金融庁、取引所にZCashを上場させるための話をすることだ。
質問18.
Q.Quorumと行ったPoCのその後の展開を教えてほしい。
A.PoC行った結果として、JPモルガンがオープンソースのソフトウェアをローンチした。しかし、それに対する資料がないので、どれだけのユーザがいたかという結果は判らない。
ZCashに関する情報
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