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「ブロックチェーン+Fintech」イベントレポート

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2019年5月31日に、中国最大ブロックチェーンメディアである金色財経(Jinse Finance)主催、TEAMZ共済の「ブロックチェーン+Fintech」をテーマにしたミートアップが開かれました。

本ミートアップでは、ブロックチェーンに率先して取り組む日本企業がプレゼンテーションを行いました。

イベントページ:【中国最大ブロックチェーンメディア主催】ブロックチェーン+Fintech

SBI Fintech Solutions

SBI Fintech Solutionsでは、デジタル資産に基づく新しい金融エコシステムを構築しています。その分野は9つに分かれています。

よく知られているものとして、アメリカのR3グループとジョイントベンチャーで開発されるCordaや、SBI Ripple Asiaがあげられます。この他に、セキュリティトークンやアセットマネジメント、トークンなどの分野があります。

SBIのデジタル資産に基づく新しい金融エコシステム

SBIのデジタル資産に基づく新しい金融エコシステム

SBIグループの取り組み例として、国際送金が紹介されました。サウジアラビアへの出稼ぎ労働者の母国への送金では、送金を効率化するためにXRP(リップルのxRapid)の活用が検討されています。

労働者の国際送金を可視化したもの

労働者の国際送金を可視化したもの

また、サウジアラビアの銀行では、窓口ばかりに人の列ができ、ATMが活用されていません。ATMが利用されないのは、同国内の識字率に問題があるといいます。そのため、音声の入出力インターフェイスを設ける必要があるのではないかとみられています。

サウジアラビアではATMが使われていない

サウジアラビアではATMが使われていない

もう1つ大きく取り上げられたのが、政府主導の取り組みであるペイロールカードです。ペイロールカードは、銀行口座の開設が困難な外国人労働者のため仕組みです。

ペイロールカード口座を振込先とすることで、給料が直接入金されるようになります。またそこからスマートフォンを使い直接送金ができるなど、銀行口座を介さない形の送金ができるようになります。

また、外国人労働者が銀行口座をオープンできるようになった場合は、リップルを含めた送金が検討されています。

ペイロールカードプロジェクト

ペイロールカードプロジェクト

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日本IBM

IBMでは、ビジネス向けブロックチェーンのHyperledgerを展開しています。Hyperledgerを用いて、企業の枠を分散台帳を使った情報共有を行い、ビジネスの課題を解決していきます。

IBMのブロックチェーンHyperledgerの立ち位置

IBMのブロックチェーンHyperledgerの立ち位置

もし中央集権的な台帳システムを一社が提供した場合、現実的に全部の会社が使うのは難しくなります。しかし、ブロックチェーンだとそのハードルが大幅に下がるといいます。

今回は実用化例として4つの事例が紹介されました。

1つ目が、国際貿易物流です。従来では紙ベースで情報のやり取りがされていたため、情報の不整合が多くて間違いが多発していました。そこで、これらのやりとりの情報をすべてブロックチェーンを使ったものに置き換えていきました。

この国際貿易物流のシステムはTradeLensと呼ばれ、IBMと海運のMaerskが開発しました。さらには、海運世界第2位のMSC、第3位のGMAも参入し、これら3社により海運シェアにおける40%がTradeLensを利用することになりました。

TradeLens

TradeLens

2つ目が、中小企業向けの貿易ビジネスプラットフォームwe.tradeになります。こwe.tradeは、欧米の銀行のコンソーシアムにより設立されました。

ブロックチェーンを活用し、国境を超えた取引を簡素化することにより、貿易相手のマッチングが容易になります。銀行からみても、融資実行や取引管理の機会が増え、新たな収益源の確保ができるようになることが期待されています。

we.trade

we.trade

3つ目が、IBMのブロックチェーンネットワークIWW(IBM Blockchain World Wire)を利用した国際送金です。これはIWWにおけるステーブルコインを利用したものになります。ブロックチェーンを利用することで、手数料コストを最小限に国際送金を行うことができます。

IBM Blockchain World Wire

IBM Blockchain World Wire

最後が、ウォルマートと始めた食品のトレーサビリティネットワークIBM Food Trustです。考え方は、1つ目のTradeLendsと似ています。

ウォルマートの悩みは、リコール発生時にどうするのかということでした。いままでは、食中毒が起きたら全量廃棄する必要がありましたが、トレーサビリティを厳密にすることで全量廃棄は避けることができるようになります。

また、Food Trustに参加しているそれぞれのプレイヤーが自らの付加価値を高めることで、その高めた付加価値がそのまま市場価格に反映させやすくなります。

IBM Food Trust

IBM Food Trust

このように、ブロックチェーンは、異業種や同業他社がネットワークを作って情報共有できる点に価値があるといいます。IBMでは、ブロックチェーンにより業種や国境をまたぐ協業を推進していきます。

ブロックチェーンの価値

ブロックチェーンの価値

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NeoX

NeoXは、AIとARを使ったブロックチェーンのプロダクトを提供しています。NeoXがターゲットとしているAR市場は、2019年時点で開発発展段階の初期にすぎないとみられています。

プレゼンターの趙氏は、ARの可能性はAIの出来にかかっているといいます。AI導入が難しい理由として、膨大な資金や知識、素材や手間が必要となってしまいます。特に、手作業によるラベリング作業は、最も重要ながら膨大な手間を要します。

AIとARの深い関係性

AIとARの深い関係性

AIの導入が難しい理由

AIの導入が難しい理由

これらの課題を解決するために、NeoXでは誰でも簡単にAIが使えるためのMoAirとよばれるプロダクトを提供しています。専門知識もエンジニアも不要で、誰でも簡単にAIモジュールを作ることができます。

MoAirの特長

MoAirの特長

簡単にAIを使えるようにするためには、ラベリング作業を外部に開放することが必要になります。そのためには、ラベルと素材、所有者を明確にする必要があり、その情報は安全に管理できる必要があります。また、ラベルや素材を提供した人には対価が必要になってきます。そのような要素を統合すると、ブロックチェーンが適しています。

MoAirでは、素材やそのID、ラベルと所有者をパブリックブロックチェーンで保存します。さらに、それらの引用関係も記録するようにしています。

実際の例として、上海のフランス料理店で空き時間にテーブルにスマートフォンをかざすとお店からのメッセージを見ることができたり、ワインのラベルにかざすとワインが何なのかがわかるようになります。

MoAirの活用例

MoAirの活用例

MoAirのワインデータベースの例

MoAirのワインデータベースの例

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パネルディスカッション

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションでは、フィンテックについての質問に登壇者が答えていきました。

<登壇者>

  • QURAS 角谷茂樹氏
  • SBI Fintech Solutions 山口智宏氏
  • 日本IBM 川村篤史氏
  • BINARYSTAR 井垣孝之氏
  • NeoX 趙文瑞氏

今回は、気になる回答について取り上げていきます。

Q.従来の銀行がブロックチェーンやフィンテックに対して抱く最大の懸念点は何か?

角谷:投資者の視点でいうと、仮想通貨バブルが起きたときに銀行からお金が抜けていくので、貸出できる資金が減り困るのではないか。

山口:法定通貨の領域は既得権益層が強いが、彼らがどのように生き残るかが課題になる。中間業者としてどのように生き残っていくかが一番の懸念だろう。

井垣:これから銀行に預金する必要がなくなる世界がくる。銀行は、いままでの手数料モデルはとれなくなるだろう。ブロックチェーンを使うことによるコスト削減の圧力と、国として既得権益を守りたいというところのせめぎあいになるだろう。

Q.ブロックチェーンの認知度を上げるようにするには何が必要か?

角谷:仮想通貨を使える店を増やす、銀行がビットコインを扱うなど、仮想通貨を身近にしていく必要がある。現在は仮想通貨の投資者は4000万人程度なので、5億人に達すれば認知されるだろう。

川村:世の中に良いサービスがあって、それにたまたまブロックチェーンが使われていたという状況になると認知されていくのではないか。

井垣:日本の大企業のマネジメント層はブロックチェーンに対する理解がなく、現状は提案が刺さらない。とにかくコストダウンができるという実例をひたすら作るしかない。ただし、金融系は理解が進んでいる。

趙:メディアがイベントをして、ブロックチェーンに対するポジティブな宣伝や知識を伝えていくことだ。

Q.一般人がフィンテックを使うにはどのようなものがあるか?

山口:アフリカの場合、現金による支援をするとそれを目の前にした人が奪い合いをして、支援者まで届かないということがある。現場はヘリでお金を投下するということもしているが、直接デジタルで送金することができるようになると考えている。

川村:IoTで色々な情報があがってきたところに対して、自動決済が行われるというところで使われろうだろう。

井垣:究極的には、使っていることを意識しないことだ。敢えて1つ例を挙げると、保険の分野が増えていくのではないかと考えている。少額保険をかけて、事故を認識して自動払がされるということができるようになるだろう。

Q.日本でブロックチェーンを最も活かせる領域は?

趙:ブロックチェーンが政府の一部機能を担うのではないかと考えている。例えば、著作権のような権利証明はブロックチェーンでできるようになるだろう。

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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