筆者自身がここ1年、日本発のブロックチェーンプロジェクトで最も注目しているのがSKYHASHです。SKYHASHは暗号通貨のマイニングにフォーカスし、第3世代マイニングを謳っています。
この思想をひとことで表すと「経済活動を行なっていく上で大切なものを作るプラットフォームである。その上でマイニングという行為は自らお金を生み出す」ということです。
SKYHASHでは、安い電力を大量に確保して収益をあげるマイニングに終止符を打ちます。第3部では、SKYHASHが具体的にどのようなことをしていくのか、そしてその技術の中核を担うドクター高橋について訊きました。
第2部をまだお読みになっていない方は第2部「マイニング業界の闇を暴く」をご覧ください。
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SKYHASHとはどのようなプロジェクトなのか?
加藤:おまたせしました!ここからやっとSKYHASHについて伺っていきます。そもそもSKYHASHとはどのようなプロジェクトで、どのような背景から始まったのでしょうか?
藤井:経緯から話すと、もともとマイニング工場を自社でやっていてゼロから作りました。僕らのソリューションは、僕らの特許が入る前でも、世界をみても僕らの上を行く技術がなかったんです。
もともと工場を大きく拡大して何箇所かやろうという企画だったのですが、2018年の暗号通貨相場の下落によって、考えを改めさせられることになって、工場拡大と同時にソフトウェアが必要になってきました。このソフトウェアを作っている大企業というのはなかった。今あるものは個人が作っているレベルです。
ビットコインのASICマシンでいうと、BITMAIN社がAntpool、ASICマシンの中にソフトウェアが入っているので、電源を入れると自動的にAntpoolにつながっていきます。自分が売ったマシンで儲けて、電源を入れた瞬間にマイニングプールに自動的につながって、プール手数料で儲けるというのが彼らのビジネスモデルなんですよ。
僕らはそこにいち早く気がついて、GPUを使ったマイニングでソフトウェアを作っているところはどこもないから、じゃあこれを作りにかかった方が工場を持たずしてマイニング業界を牛耳れるのではないかなと考えて、そっち方面にシフトしました。経緯はそのような感じです。
SKYHASHのプロジェクトは、簡単にいうとマイニングしているマイナーがお客さんなので、まずそこに訴求する。なにを訴求するかというと、SKYNETに接続するだけで簡単にハッシュレートを飛躍的に上がる。どれくらい上がるのだとなると、世界で一番掘れるイーサリアムのAntminer E3というASICマシンの二倍以上のスペック。僕らの技術でいうとSKYHASHにつなぐとどんなマシンでもそれの2倍以上になります。これには、明確なエビデンスがあります。
加藤:それ本当ですか?!
藤井:本当です。今現在最速と言われているマシンの2倍以上のスペックです。これがエビデンスとしてあります。そのへんにあるGPUでもAntminer E3以上の効率が出せるということです。
加藤:それはすごくないですか?
藤井:本当にすごいですよ!それを全部適用させなくても、SKYNETにつなげばまずマイナーが利益を上げられる。主要な暗号通貨はマイニングによって支えられているので、その屋台骨をより良く拡張することができるよねということです。
儲かるからみんなマイニングをやるわけで、その儲けのソリューションにSKYNETを入れて、SKYNETにつなぐだけでさら儲かることができればパイは広がっていくよねというのが、僕らのプロジェクトの醍醐味になります。
加藤:きちんとエビデンスがあるというのは大きいですよね。たしか論文はIEEEの学会に出していますよね。(筆者注:IEEEはWi-Fiの規格策定を行うなど、電気分野において大変権威がある学会です)
藤井:そうですね。
加藤:私がマイナーだったら率直にSKYHASHを使いたいなと思いますね。
藤井:大きく特徴的なものを2つだけあげると、ハッシュレートをというDTS-Optimizerと、瞬時にマイニングできる通貨を切り替えができるO2Wという技術です。例えば、ETHを掘っていてもすぐに切り替えてXMRを掘ることができるようになります。同じアルゴリズムの範囲内だったら、全て替えることができます。今のところは250種類コードを解析して、対応しています。
加藤:PoWのチェーンはそんなにあるのですね!
藤井:約300種類あります。そのうちの250種類を網羅しています。3rd Generationの真髄をひとことでいうと、マイナーは様々な通貨を簡単に採掘できるようになるわけですよ。マイナーはMONAにしても、自分の好きなコインを掘っていくと。どんなコインでも僕らのプールから発行しているという構図になるのが、3rd Generationの最終形態ですね。
最終的に300種類もあったら、例えば今のGrinはプールをサポートして成長させようとしている。成長したときにはとんでもないコインになる可能性があるわけです。こういったコインをマイニングしているとチェーンに直接つなぐか、プールにつなぐのかというのが選択肢にあるのですが、SKYNETのSKYプールにつなぐと優位性があります。優位性があるからSKYプールを使うようになると、色々なコインをマイニングしている人が集まってくるわけです。
マイナーたちのコインは僕らのプールに入ります。どれだけマイナーに還すかは僕らのプール次第です。一般的なプールより優位性があって、さらにリワードリサイクリングを使って、プールでストックしている現物コインを通貨間アービトラージで取引できるようにもなります。
加藤:プールでストックいる分をつかって現物のトレードができるということですね。
藤井:そういうことです。例えば、今ETHを持っていて、リワードリサイクリングの通知で24時間後に一番掘れるのがXMRだとなったときに、マイナーはプールが持っている暗号通貨と交換することができます。そういうシステムがあります。また、O2Wの技術を使って、マイナーはETHで掘っていたものを3分以内にXMRに切り替えることができます。
このリワードリサイクリングはもともと我々が持っていた技術です。この技術と、ドクター高橋のDTS-Optimizeの技術を掛け合わせることによってこのプロジェクトは成り立っています。
加藤:トータルでマイニングを効率化していこうというのがSKYHASHの根底にある考え方ということですね。
藤井:そうですね。
加藤:多くのマイニングプロジェクトは、結局はできる限り安い電力単価を確保して、できるだけ高いハッシュレートのマシンを確保するという方法ですからね。それらとは違うということですね。
藤井:僕らの場合は、今4世代くらい前のマシンでも、最新マシンよりも高いスペックを確保できています。
マイニング事業者が、4世代前のマシンを保有していたら、新しいものを買うとイニシャルコストがかかる上に、4世代前のマシンは売っても金にならないと。なので、金にならないやつにDTS-Optimizeを適用させると、最新マシンよりちょっと上のスペックを確保できるようになります。圧倒的優位性があるわけです。
加藤:これを実現できる先にあるものは、今までマイニングが成立しない地域でもマイニングができるようになって、マイニングが分散化するよという話だったと思いますが、どうなのでしょうか?
藤井:暗号通貨のインフラは、ビットコインの場合だと主に中国にあります。これをひっくり返すのはほぼ無理というのが現状です。イーサリアムもライトコインもそうです。彼らに何をとられるかというと、いずれ暗号通貨の世界が膨らんできた時に、決済で使われるようになります。その時に、一番の大元のインフラが何なのかというとマイニングなわけです。
その状態になった時に、SBIみたいな大きなところが自分らのサービスを発信しようとした時に、インフラの根本をとられているところに自分たちの事業を乗っけても面白くないですよね。中国にとられているインフラに乗っかりサービスするという気にはならないはずです。
僕らがいっている、3rd Generationの概念は、それはもうとられているからここで勝負するのはやめましょうと。「今までの手法をもっとビヨンドして第三世代を新しく。」こう考えたときに、今までのマイニングの手法だったら掘って持って、コイン価格が上がった下がったレベルだけれども、3rd Generationではこれを運用するような仕組みを入れようとしていることです。掘って持っていても、買って持っていても置いているコインはそのまま変わらないので、大前提として暗号通貨は暗号通貨で運用しましょうと。そうしようとしたときに、コインの枚数自体を増やすのが暗号通貨の運用です。
こういったものをプラットフォームに組み込んだ時に、マイニングの概念が3rd Generationの世界観で完結するのではないかと思っているというのはそこです。だって、掘るのにパワーを上げていっぱい掘れるとしても、この現物をプラットホーム内のサービスにつないで増やしていくことができたらいいじゃないですか。掘ったものをプラットフォームの中でグルグル増やしていけるのは全く新しいし、これをユーザの任意で未来の価値を想像しながら膨らませていけるというのは新しい考えですね。僕らはそこを目指しています。
加藤:マイニングは軍拡競争だと個人的に思うのですが、そこにおける最終着地点が3rd Generationマイニングということなのですね。
藤井:はい!当然!
ドクター高橋とは何者か?
加藤:SKYHASHに関わる重要人物が、ドクター高橋(高橋宏尚氏)だと思います。よく界隈からすごい人だと聞きますが、彼は何者なのでしょうか?SKYHASHでは、どのようなポジションを担っている方なのでしょうか?
藤井:彼はSKYHASH内のニックネームはジョージなんですよ。単純に高橋ジョージをもじってジョージというだけなのですけれども、彼はもともと東工大に所属していて、今から20年以上前に日立製作所の研究室に入ってJR運行管理システムやSuicaの根幹技術を作ったメンバーです。彼自身は、NTTデータなどに自分が作ったデータマイニング用のASICマシンを入れていたり、彼の会社自身の株主が銀行だったり、NTTデータだったりというような構成で、博士です。
加藤:すごい感じしかしないのですが・・・
藤井:究極の変態ですね!自律分散型ということにおいては。この前も論文を発表しましたし、権威的な人ですね。
加藤:その変態という言葉には敬意がこもっていますね。この前の論文というのはどのようなものだったのですか?
藤井:それも自律分散型の論文の発表でした。ウォレットの概念の論文です。それをウォレットにも応用できるし、RIGcoinのオリジナルチェーンにも適用できるし、という根本の発表です。
加藤:そもそもドクター高橋は、何でSKYHASHに関わるようになったのですか?
藤井:そもそも昨年9月にグルジアのジョージアで開催されたイベントで、ドクター高橋が来ることをわかった上で、新美が自分たちの思い描いている事業のアーキテクトを語ってきて、そしたら面白いですねとなりました。それがきっかけで、技術責任者のボードメンバーとして参画していただくことになりました。
加藤:向こうから興味を持ってもらえたというのは大きいですね。
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第4部の予告
第3部では、SKYHASHが実現する3rd Generationのマイニングがどのようなものか、そのコア技術を担うドクター高橋について訊いていきました。
次は、その技術についてもう少し詳しく、そして市場からの評価やSKYHASHのコインについて訊いていきます。
第4部:マイニング機材の潜在能力を引き出すSKYHASHの技術