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NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL – イベントレポート Part.1

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日本の仮想通貨取引所でも扱われているNEMは、Catapult(カタパルト)と呼ばれていた新しいブロックチェーンの正式名称をSymbol(シンボル)に決定し、いよいよメインネットに入ろうとしています。

2020年1月20日に、NEM財団後援のもと「NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL -」が開催されました。NEMの最新動向をまとめてチェックできる良い機会だったので、取材してきました。

イベントページ:NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL –

なお、このセミナーはCoinPostよりYouTubeで内容が公開されています。

NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL – イベントレポート

“nem基礎講座〜NEMからSymbolへ ブロックチェーンの力で社会課題に挑む〜”

株式会社Opening Line 岡田氏

by 岡田 和也(Daoka)氏 – 株式会社Opening Line テクニカルディレクター

岡田氏の講座では、従来からのNEM(NIS1)とSymbol(Catapult)の比較が行われ、Symbolの新しいところや優位性が解説されました。

特にSymbolで変わるポイントは注目度が高い部分になるため、岡田氏のプレゼンテーションはできるだけ詳細にご紹介します。

NEMのおさらい

NEMは、最初のブロックが2015年3月29日の午前9時6分25秒(日本時間)に誕生し、今に至ります。ブロックチェーンの基軸通貨はXEMが発行され、8,999,999,999 XEMの全量が発行されました。

NEMのコンセンサスアルゴリズムにはPoI(Proof of importance)が採用され、通貨の保有量と取引状況を重要度と定義し、重要度が大きいほどブロック生成の権利が得やすい仕組みになっています。報酬として、生成したブロックのトランザクション手数料を得ることができます。NEMでは、この報酬を得ることをハーベスティングと呼んでいます。

ハーベスティングに参加するには、XEMの既得残高が10,000 XEM以上必要になり、委任ハーベストにより自分がノードを建てなくてもハーベスティングに参加することがなります。ハーベスティングに参加するまでには、待機時間が必要になり、保有XEMが多ければ多いほどその時間が短くなります。

NEMには、NEMのネットワークを安定させるためにスーパーノードのプログラムが用意されています。このプログラムでは、一定要件を満たしたノード運営者に報酬が支払われるものになります。スーパーノードは、あくまでもNEMネットワークを安定させるための施策であり、プロトコル上はスーパーノードと通常のノードは対等として扱われます。

また、NEMの特徴的な点として、コアを共通とするパブリックチェーンとプライベートチェーンが用意されています。初期のNIS1ではNEMとmijin.v1が、CatapultではSymbolとmijin.v2でコアがそれぞれ共通しています。これらを、用途により使い分けることができます。

そして、NEMではAPIやSDKにより安全容易に使うことができます。ノンプログラマーでも簡単にブロックチェーンを利用できるようになっています。

NEMでは、社会的課題を解決するためのサービスが開発されています。プレゼンテーションでは、NEMのモザイク機能(独自トークンを発行する機能)を用いて地域やイベントに応じたトークンを発行し、歩いてコインを獲得、交換などができる健康増進が可能なFiFiC(フィフィック)、写真に投げ銭や存在証明ができるnemgraphが紹介されました。

Symbolで変わるポイント

Symbolは、NEMがより安全で使いやすく、より多くの活用を目指しています。そのために、Symbolでは性能や機能の強化、コンセンサスアルゴリズムの改良が行われます。

性能の向上:

v1 NIS1(従来のNEM)がパブリック環境で2TPS、プライベート環境で数百TPSになります。それに対し、v2 Catapult(Symbol)では、パブリック環境で100TPSを目指し、プライベート環境で約4000TPSと高速になります。ただし、パブリック環境の100 TPSは開発者によるとあくまでも過程の話で、実測値は実際に負荷をかけなければ判らないとされています。

また、ブロック生成はv1 NISが60秒に対し、Symbolは約15秒になります。

機能の強化 – モザイクの永続化:

NEMではモザイクの有効期限がネームスペースの有効期限に依存していた仕様に対し、Symbolではネームスペースと独立する形で、モザイクの有効期限を永続またはブロック数単位で設定できるようになりました。

機能の強化 – モザイク制限:

Symbolでは特定のフラグがついているユーザー間のみモザイクの取引を制限することができます。セキュリティトークンを発行した際に、譲渡先を限定することなどを想定した機能だといいます。

Symbolにおけるモザイク制限

Symbolにおけるモザイク制限

機能の強化 – Symbolのネームスペース:

Symbolのアドレスは40文字になっており、人間が覚えるのが不可能な形式になっています。Symbolのネームスペースでは、bob.coinのような簡潔な送金先を指定することができます。

機能の強化 – アグリゲートトランザクション:

アグリゲートトランザクションでは、複数のトランザクションをひとまとめにすることができます。

複数のトランザクションをひとまとめにすることで、取引が成功するか失敗するかだけになり、結果が明確になります。そして、複雑化された取引では持ち逃げや取引ミスが発生するようになるため、そのようなリスクも回避できます。

また、トザンザクションの作成者が手数料を代払いできるようになります。ブロックチェーンサービスを提供する会社がGASを代払いし、ユーザーがGAS用のXYM(Symbolの基軸コイン)を意識しなくても済む実装が実現できます。

Symbolにおけるアグリゲートトランザクション

Symbolにおけるアグリゲートトランザクション

機能の強化 -マルチレベル マルチシグアカウント:

マルチレベル・マルチシグアカウントにより、複数人の署名がないとトランザクションを実行できないようにしたり、複数階層のレベルの署名が必要なニーズにも対応します。

これにより、社内の承認など、複雑なワークフローを組むことができます。

Sumbolにおけるマルチレベル マルチシグアカウント

Sumbolにおけるマルチレベル マルチシグアカウント

機能の強化 – その他:

この他にも、異なるブロックチェーン間でトークン交換ができるクロスチェーンや、指定したアドレスやモザイクの受け入れ設定ができるアカウント制限、アカウントやモザイク、ネームスペースにタグ付ができるタグ機能があります。

コンセンサスアルゴリズム PoS+:

NEMでは、PoI(Proof of Importance)が採用されていますが、これには様々な問題があります。PoIの重要度の算出のために取引を評価されるには1000 XEM以上の取引が必要になり、モザイクの取引は評価されませんでした。また、重要度の計算処理が遅く、ノードを建てるインセンティブが乏しいものとなっていました。

それに対し、SymbolのPoS+では、トランザクションバイト数ベースの手数料体系に変わっています。これにより、手数料ベースでアカウントのアクティビティ全体を評価するようになり、計算量が削減できるようになった他、ハーベストを委任しているユーザーから手数料を徴収することができるようになりました。これにより、ノード運用に対するインセンティブの確保が可能となります。

SumbolにおけるPoS+の特徴

SumbolにおけるPoS+の特徴

NEMからSymbolへの移行

現状Symbolはまだリリースされていませんが、2020年2-3月のメインネットローンチに向けて、着々と準備が進んでいます。

ここでSymbolチェーンの立ち上げのポイントして、NEMとの関係性になります。

Symbolチェーンが立ち上がった場合でも、既存のNEMチェーンは並行して稼働します。NEM残高やNEMブロックチェーン上のデータも残り続けます。しかし、Symbol移行にあたりNEMチェーンから引き継がれるのは、XEM残高とルートネームスペース、マルチシグアカウントの構成のみとなります。それ以外はSymbolに引き継がれません。

引き継ぎは、ユーザー自身がアクションしてオプトインすることになります。オプトイン方法は、移行委員会からアナウンスされる予定です。

オプトインの選択肢は、Symbol立ち上げ前または立ち上げ後にオプトインする、オプトインしないという選択肢もあります。

Symbol立ち上げ前にオプトインする場合、Symbol立ち上げ前の指定ブロックの残高がSymbolに引き継がれます。また、Symbol立ち上げ後にオプトインした場合でも、Symbol立ち上げ前の指定ブロックの残高が引き継がれることになります。

Symbol立ち上げ前にオプトインした場合

Symbol立ち上げ前にオプトインした場合

Symbol立ち上げ後にオプトインした場合

Symbol立ち上げ後にオプトインした場合

ただし、オプトイオンの請求には期限があります(Symbol立ち上げから6年間を予定)。期限を過ぎた場合、残高の引き継ぎは行われず、オプトイン未請求のXYMはバーンされます。

また、Symbol立ち上げ後はSymbolチェーンを安定させるために、ノードに対してブロック報酬、階層的スーパーノードプログラム、ノードボーナスが導入されます。あくまでも、当面のブロックチェーン安定の施策であり、最終的にはノードは手数料報酬のみになります。

Symbolを利用するメリット

Symbolを企業や個人開発者から見た場合、WebAPI/SDK経由で利用できるため、既存の開発ノウハウを活かせる他、ビルトイン化された機能を使うことにより比較的安全にブロックチェーンを利用することができます。

Symbolでは、NEMと同様の敷居の低さで、ブロックチェーンを使ったサービスを組むことができます。

NEM/Symbolの活用例

3ステップウォレット:

3ステップウォレットは、プログラミング経験がない障がい者支援施設の職員が作ったものになります。障がい者は買い物をする際に後見人の許可が必要なので、欲しい物をすぐに買えないという問題がありました。

そこで3ステップウォレットで、QRコードをスキャンしてマルチシグアカウントで決済承認をする実装をして、欲しい物がすぐに手に入る環境が整いつつあります。

MOAP(近畿大学実証事件):

近畿大学では学内カフェで昼休みに行列ができて待たされることが常態化しており、ブロックチェーンを組み込んでカフェの事前決済を行い、どれだけ行列が解消されるか実証実験が行われました。

MOAPでは、決済エンジンにSymbolのプライベートテストネットが利用され、学生が使うアプリと店舗側が使うアプリで構成されています。開発をサービス層のみに集中できたことで、開発工数の短縮ができたといいます。

実証の結果、行列に並ぶ時間は短くなった一方、新規に注文する場合に待ち時間が増える結果となりました。

MyApostille:

こちらは、岡田氏が属する株式会社Opening Lineのサービスになります。NEM/Symbolのブロックチェーンを活用してより文書・データを公証できるようになります。

MyApostilleでは、実データをブロックチェーンに書き込むのではなく、文書のハッシュ値をブロックチェーンに書き込む仕様になっており、利用者はブロックチェーンを意識せずに文章の公証サービスを利用できます。

文書公証サービスMyApostille

文書公証サービスMyApostille

プレゼンテーションの資料

岡田氏が、プレゼンテーションの資料を共有しました。

Part.2

Part.2では、NEMやSymbolの実活用例を中心にお伝えしていきます。

▼Part.2

NEM SEMINAR 2020 - Road to SYMBOL - イベントレポート Part.2
日本の仮想通貨取引所でも扱われているNEMは、Catapult(カタパルト)と呼ばれていた新しいブロックチェーンの正式名称をSymbol(シンボル)に決定し、いよいよメインネットに入ろうとしています。 2020年1月20日に、NEM財団後援...
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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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