日本の仮想通貨取引所でも扱われているNEMは、Catapult(カタパルト)と呼ばれていた新しいブロックチェーンの正式名称をSymbol(シンボル)に決定し、いよいよメインネットに入ろうとしています。
2020年1月20日に、NEM財団後援のもと「NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL -」が開催されました。NEMの最新動向をまとめてチェックできる良い機会だったので、取材してきました。
イベントページ:NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL –
なお、このセミナーはCoinPostよりYouTubeで内容が公開されています。
Part.2をまだご覧になっていない方は、そちらも併せてご覧ください。
▼Part.2
NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL – イベントレポート
“Symbolのステーキング報酬について”
by 加門 昭平氏 – 株式会社イーサセキュリティ代表取締役
最近はブロックチェーンのステーキングの関心が高まっています。Symbolでも同様にステーキングが用意されています。
今回のセミナーでは、NEMと比べて、ノード報酬が高いのか、ノード構築が複雑化したのか、ノード報酬が高いのはノード保有なのか委任ハーベストなのかという3点に話が絞られました。
SymbolはNEMよりもノード報酬は高いのか低いのか:
ブロック報酬:
Symbolでは、NEMになかったブロック報酬が導入されました。Symbolでは新規ブロックを生成する仕組みになっており、ブロック生成時にブロック報酬を得ることができます。これは委任ハーベストでも可能であり、初年度はステーキングするXYMの量により初年度は年率6-7%になります。これはNEMのスーパーノード報酬、年率3-4%と比べても、高い値となります。
ノードサービス報酬:
Symbolではノードサービス報酬があります。今までのNEMでは委任ハーベスターからの報酬は特にノードに分配されることはありませんでした。これに対し、Symbolでは委任ハーベスターによって生成されたブロック報酬のうち25%がノードに分配されるようになります。
スーパーノードプログラム:
NEMと同様に、Symbolではスーパーノードプログラムが用意されています。ローンチ後6年間はプログラムが継続される予定です。初年度の年率は0.2%で年々低下します。
早期ノードインセンティブ:
Symbolでは、ローンチ前から1年間継続稼働する最大75ノードに対して、特別な報酬が支払われます。合計で190万XYM程度が用意されています。ノード条件は、セミナー時点で公表されていません。
NIS1サポートインセンティブ:
SymbolはNEM(NIS1)と並行稼動します。そのため、SymbolとNEMの両方のノードを18ヶ月運用すると取得できる報酬が用意されています。総額は310万XYMはになり、セミナー時点で参加条件は公表されていません。
SymbolはNEMよりもノード報酬は高いのか低いのかの結論は、全体的にNEMより高いという判断になります。しかし、スーパーノードプログラムの報酬は大幅な減少となります。
ノード構築は複雑化したのか簡易化したのか:
Symbolのノード構築は、NEMと比べると複雑化しました。しかし、Dockerで管理するためのbootstrapが用意されたり、ドキュメントが書かれたりするなど、昔に比べると楽になったといいます。
ノード報酬が高いのはノード保有なのか委任ハーベストなのか:
この件は、マシン条件などが関わるため条件が複雑になるものの、加門氏は100万XYM以上であればノードを建てたほうが収益がプラスになりそう。100万XYM未満でも、委任ハーベスターを集められそうであればノードを建てても収益がプラスになりそう。100万XYMの場合は、委任ハーベストが無難だとみています。
▼資料の案内
#nem_seminar
加門 昭平氏 (株式会社イーサセキュリティ代表取締役)による『Symbolのステーキング報酬について』登壇用のスライドを以下にてご覧いただけます。
掲載のご許可、有難う御座います! @cameonghttps://t.co/aOuQM3AqbN? NEM SEMINAR 2020 – Road to SYMBOL – (@nem_seminar) January 20, 2020
“医療をもっと楽にしたい”
by 保田浩文氏 – 株式会社Health Care Gate代表取締役
株式会社Health Care Gateでは、医療を楽にするために医療機関へのアクセスや医療情報を改善し、”医療サービスを持ち歩く”状況を作ろうとしています。
現在の処方箋のやり取りはFAXを使っているため、アナログでセキュリティの懸念もあります。そこで、Health Care Gateでは、電子処方箋にブロックチェーンを活用し、オンライン医療ソリューション「楽医」を開発しています(楽医のプレスリリース)。
楽医では、プライベートチェーンのmijin Catapultを使用していきます。処方箋画像の真正性の証明の他に、Catapult特有のアグリゲートトランザクション機能を利用します。処方箋を発行すると1枚につき4回のトランザクションが発生する可能性があるため、アグリゲートトランザクションでトランザクションを集約化することにより、薬の受け渡しまでの手続きを効率化することができるようになることが見込まれています。
保田氏は、mijinの採用理由として、コストの安さや他の健康系プロジェクトがmijinを活用していることよる提携のしやすさの可能性、そしてインセンティブの付与により参加者を増やすのが容易になる可能性などをあげています。
このようなシステムを作っている背景として、既に日本の社会保障は保障力がなくなってきていることがあげられます。それを補う自助のための税制優遇があるものの、全く利用されていません。さらに、間違った医療情報を取り上げるメディアが多いために、正しい情報が伝わらず、保田氏はそれらについて危機感を持っています。
保田氏は、医療分野のブロックチェーン活用は、現実的に共助や公助の分野は規制の影響を強く受けるため、これらの分野は難しく、地域ごとの包括的な自助の分野が向いているとしています。Symbolを使うことで、年齢に関係なく元気のシェアリングエコノミーを作れて、それが地域に応じた包括的な医療エコシステムに発展していければ良いとしています。
Part.4
Part.4では、いよいよ開発面の話になります。NEM/Symbolを活用することによりできるプロダクトや、実際にコーディングができない人がNEMを作って開発をした体験を紹介していきます。