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パンデミックにおける安全資産の再定義について(by F)

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コラム by F

新型コロナウィルスのおかげで世界経済は荒れ狂っており、世界各国では自粛ムードが続くなど混沌と化している。

執筆時点で日経平均の下げ幅は一時1,000円を超え、米国株式では主要3指数が大幅続落、ダウ工業株30種は1,000ドルを超える下げとなった。安全通貨と呼ばれている円も急落を見せ始め、2番目に弱かった豪ドルに対しても約1%下落している。

要因としては、新型コロナウィルスによる世界経済成長率の鈍化に対する懸念に加え、昨年末でGDPが大きく予想を下回ったことが考えられる、という分析がある。更に、アジア諸国のGDPの損失は1050億〜1150億ドルにも上る可能性があるというから、もうタダ事ではない。

日本では毎年、1月末で大きなインバウンドを見込めると期待に胸を膨らませていたわけだが、それも虚しく日本への観光客は3月までに40万人が旅行をキャンセルする事態にまで膨れ上がり、地方の旅館等は破産申請をしたというニュースまで聞こえてきた。

 

世界経済が全体的に落ち込んでいる中、人々の中で話題に上がるのが資産をどこに逃すか、という内容である。株も安全通貨である円も見込めない…となるとどこに逃すのが今後の資産運用として的確であろうか。

ウォーレンバフェット氏が言うように暫し大袈裟に聞こえるかもしれないのだが、仮に、パンデミックが大きく吹き荒れ今後さらに大きく下落していった場合、のことを今回は考えてみる。

 

今回の騒動で全てが下落しているわけではなく、金に関しては上昇しており安全資産としての役割を果たしているようだ。金は2000年までは長期下降トレンドであったが、それ以降を境に価格は上昇トレンドへと大きな転換を見せつけた。

1999年9月の上場来安値836円から2013年の上場来高値5,081円と約13年半で6倍にも高騰している。高騰に関して他との比較突っ込みが入りそうなものだが、1990年の湾岸戦争や2001年の米同時多発テロの前後での上昇を考えると、しっかりと安全資産の役割を果たしているというわけだ。

 

ここでようやくビットコインの話に移るわけだが、最近になりビットコインは金と同様の安全資産である、と唱える人が多くなった。確かに、株の下落と反比例で動いている時期もあったが、今回のパンデミックではどうだろうか。現時点でのビットコイン価格は9100ドル台(時間を置いて執筆故。ダウは下げ幅1911ドル)となり、安全資産などとは口が裂けても言えない状況となった。

こういう状況だとバフェット氏の言うように仮想通貨を酷評されても威勢よく反論は到底出来ないだろう。このまま、ただのギャンブルとしての道具であり、かつ多くの詐欺師がぶら下がっている、何の生産性もないただの電子塵となるのだろうか。

 

ただ、賛否両論が飛び交う以上、まだ開拓していく余地のある発展途上のマーケットである、ということは成り立つだろう。現実に、GAFAを始めとする大手IT企業は高額出資含め市場参入を開始しており、世界各国の証券系企業も既に足を伸ばしている。巨大な利益を獲得出来るマーケットには参入するのは当然であるが、金融市場に関わっている以上は立ち回りを考えなければならない。というのも、Facebook社が手掛けたリブラの存在で我々は大きく思い知らされた筈だ、という内容である。まだ検討段階で実装にも足を付けていないプロジェクトがここまで騒ぎ立てた事例があっただろうか。

政財界にとってリブラの存在はパンデミックに近く、アレルギー反応に近いものを見せた。確かに、既存の金融市場が破壊される可能性があることは誰の目から見ても明らかで、更に、周りの金融市場に関わりのある大企業を付けて一つの経済圏のようなものを作ろうとしていたのだから、それはもうパンデミックというものである。

世界経済が好転する方向にも期待を寄せることも出来るが、VISAやマスターカードがリブラ協会から脱退したことでプロジェクトは大きく遅れを取ったように感じる。リブラ反対派はひとまず一安心と言ったところだろうか。

 

リブラはドルペッグとされているが、仮に独自の経済圏で自由に動くことになった場合は大きな資産価値となるだろう。これに関してリブラは大いに期待して良くて、ビットコインが紙ペラになっていった場合でも資産は保護されるし、ビットコインと概ね連動している既存のアルトコインを差し置いて安全資産ともなり得るのではないだろうか。

本来、安全資産である金とドルは反比例の傾向にあるが、リブラがドルとペッグしたステーブル通貨とした場合は安全資産とはならない。ビットコインの安全資産としての地位を失われた現在、個人的には今後のリブラの立ち回りを大きく期待している。

 

今回の騒動でビットコインの信用はだいぶ地に落ちたわけだが、まだ世界経済と連動している可能性を拭い切れないだけに世界的にも著名な人物の声に耳を傾けなければならない。

バフェット氏がビットコインに批判的なのは有名であるが、そのほかにも、ビルゲイツ氏やジェームズダイモン氏などもビットコインに批判的である。他にも既に金融業界で長年培ってきた人物や、政府関係がそれと言えるだろう。

だが、銀行に従事している人の意見は話半分に聞いていれば良くて、銀行の収益源は主に手数料であり、特に海外送金の手数料は大きな利益を獲得出来るという面を持つため、あまり客観性を生まない。

財務省や国税庁など税務に従事している方々の意見は、仮想通貨によって合法的な脱税を引き起こすなど、金融市場を壊しかねない場合の想定も含めた意見もあるため、彼らに合わせた行動も時には必要となるだろう。

 

私自身、仮想通貨取引所に身を置いている故、ビットコインが上昇し世界的にも多くの需要を獲得出来ればそれほど多くの恩恵を受けれるというものだが、定期的にこういった疑問を自分に投げなければ客観性がないと思い、今回はこういった内容となった。

リブラの一件で、仮想通貨の知名度が上がった反面、金融経済を壊しかねないという危機感を持った政財界の住民も多くいることと思う。今後はブロックチェーンの進化とともに様々な分野の住民と混ざり合っていくだろう。

更に、仮想通貨による決済システムは実現しないにせよ、送金手段に関しては画期的なサービスであるので大いに利用されることであろう。まだまだ理解の低い分野であり、私自身、新居を探す際に一苦労したり、人に自身の職業を説明する時に面倒だったり、口座開設で銀行員と大いに揉めたりするのだが、いつの日か真っ当な分野であるという認識を持って欲しいと願うばかりである。本当に、心から願うばかりである。

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この記事を書いた人

ブロックチェーン業界であれば誰もが知るグローバル取引所のメンバー。
職務上様々なプロジェクトと接する中で、プロジェクトを見る目が洗練されており、業界や市場のトレンドに非常に敏感な立場でもある。

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