インタビュー

【インタビュー】グローバルウェイ/TimeCoinプロトコル 代表 各務正人 氏 – 第1部:上場企業が暗号資産プロジェクトを手掛ける背景とは

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今まで暗号資産を使ったプロジェクトはベンチャー企業が主でしたが、規制の整備進行に伴い、徐々に上場企業が参入するケースが増えてきました。今回は、東証マザーズ上場企業の株式会社グローバルウェイの取締役会長 各務正人(かかむ まさと)氏らが取り組む、TimeCoinプロトコルについて伺いました。

本記事は4部構成になっており、第1部では上場企業が暗号資産プロジェクトを手掛ける背景、そしてそのプロジェクトについてを伺っていきます。

第1部:上場企業が暗号資産プロジェクトを手掛ける背景とは

各務正人氏と既存事業の紹介

加藤:最初に今まで各務さんがやってきたことについてお伺いします。現在は株式会社グローバルウェイと株式会社タイムチケットの代表を務めていらっしゃいますが、それぞれどのような経緯で立ち上がり、何を事業にしているのでしょうか?

各務:僕らは、働く人を応援することを事業にしています。日本で働いている人たちが、なかなか自己実現できないということを感じていて、そういう人たちを支援するプラットフォームを作りたいと思って事業を続けてきました。

2004年にグローバルウェイを創業して、第二起業ということで2019年4月にタイムチケットを作って分社化しました。現在、グローバルウェイを新しい代表に任せ、僕自身はタイムチケットに注力しています。

タイムチケットはシェアリングエコノミーのサービスで、人のスキルや経験を使って個人間や法人・個人間で取引をすることができます。今まで個人間の取引というのはあまりなかったので、これは新しいマーケットになります。

タイムチケットのサービス

タイムチケットのサービス

各務:そして、法人・個人間の取引はブラックボックス化されているため、取引の実績が適正に評価されていない状態になっています。この隠蔽されている状態をどんどん可視化していくことが重要になり、現在の僕らはそこに力を入れています。

シェアリングエコノミーが普及しない理由

加藤:タイムチケットの事業領域は、シェアリングエコノミーです。シェアリングエコノミーは将来有望と言われている割に、私の周りからは利用しているという声がほとんど聞こえてきません。実際、私自身も利用した経験はわずかしかありません。つまり、私の経験からはシェアリングエコノミーは活性化していないのではないかと感じています。これについて、各務さんはどう思いますか?

各務:結局のところ、シェアリングエコノミーができているのはメガプレイヤーだけになります。例えば、UberやAirBnBです。国内で有名なサービスだと、スペースマーケットやメルカリでしょうか。

どうしてメガプレイヤーだけになるのかと言うと、シェアリングエコノミーのビジネスをやるのにはものすごくお金がかかるからです。僕はシェアリングエコノミー協会に所属しているのですが、どこもシェアリングエコノミー事業は赤字なのですよ。

加藤:そこまで深刻なのですか?

各務:そうです。僕が色々聞いている限りでは、皆さんとても良い取り組みをしています。社会に良いことをしているのに赤字のままです。

どうして黒字に転換しないのかというと、集客コストが高いからです。売り手と買い手の集客コストがかかります。実際には売りたい人はたくさんいるので、主に買い手の集客コストがものすごくかかるわけです。モノによって、1人500円から1,500円の集客コストがかかります。これが運営の負担にとって大きいものになります。

もう一つは開発コストです。例えば、エンジニアが絶対1人は必要になります。現実的に2人はいないと始まらないです。あと、WebデザイナーやWebディレクターも必要になります。どれかを社長が兼務したとしても、計4?5人必要になるわけです。ここでさらに、マーケティングやセールスが入ると、実際にもっとコストがかかります。例えば、1人あたりの年収が500万円だとすると、どれだけ頑張っても年間3000万円くらいは必ずキャッシュアウトします。そこそこちゃんとやろうとすると5000万円くらいのランニングコストがかかります。

加藤:ベンチャーにとっては相当厳しい額ですね。

各務:そうですね。仮に人件費が年間3000万円だとしても、1ユーザーあたりの広告費を安く見積もって500円、そしてMAU(月のアクティブユーザーが)が10%くらいだとしても、10万人くらいを集めてやっと取引するかもしれないというレベルです。実際には、ログインしても殆どの人が買いません。せいぜい1%くらいです。なので、10万人集めて、やっと1,000人が取引するような世界です。

計算すれば明らかで、1人500円で集客して、1件あたりの取引がものによっては小さいわけです。なので、そう考えると、シェアリングエコノミーというのはなかなか儲からないわけです。

これがTimeCoinの背景に関わってきます。なので、僕の考えは、シェアされるものが世の中にたくさんあるけれども、特定の領域でメガプレイヤーにならないと厳しいということです。しかも、メガプレイヤーになってもまだ赤字のところが多いので、そう考えるとニッチなプレイヤーがたくさん集まって、ユーザーをシェアして、開発運用コストもシェアすることができないかという考えに至りました。

TimeCoinの紹介

加藤:シェアリングエコノミーでブロックチェーンを活用する発想はたまに聞かれます。御社は既にスキルシェアの事業をやっていますが、なぜブロックチェーンへと至ったのでしょうか?その経緯を教えていただけますか?

各務:タイムチケットの事業には、取引実績を確認したり評価したりする機能があります。でも、自分たちが作ったものでは、データがタイムチケットの中で閉じたものになってしまいます。また、スキルや経歴は多岐にわたるので、皆でそれらを共有できるもの作ったほうが良いのではないかという発想がありました。それらの問題は、僕らがやっているスキルシェアのマーケットだけではなく、シェアリングエコノミー全体で同じことが言えるわけです。

結局、売り手と買い手がいて、彼らが取引して決済して、その評価によってまた売り買いをしていきます。そして、実際に使ってみて、今後サービスを使うかどうかが決まっていきます。それがシェアリングエコノミーなんですね。このような一連の流れは型にできるわけです。そして、取引した実績や、売り手と買い手の実績が第三者から評価されることによって価値が出てきます。

これらの仕組みを、ブロックチェーンを使ったプラットフォームとして使えるようにすることによって、もっと価値が出せないのかなと考えました。

加藤:なるほど、そこでブロックチェーンが出てくるわけですね。

各務:ブロックチェーンが入ると、僕たちのものだけではなくなります。3つの当事者がいるわけです。売り手と買い手がいて、アプリを提供しているサードパーティがいます。サードパーティはシェアリングエコノミーを提供しているプラットフォーマーです。

TimeCoinプロトコルの上に様々なアプリケーションが構築される

TimeCoinプロトコルの上に様々なアプリケーションが構築される

各務:TimeCoinでは、もともとアプリ提供者と売買する人でデータが閉じているのを、ブロックチェーン上で全部可視化できるようにします。

ユーザーは、自分の選択によって過去の取引実績を外部に公開することができるようになります。情報を公開すると、色々な企業やアプリ提供者からオファーがきて、選択肢が広がり、良い価格条件で取引できるようになると見込まれます。

サービス提供者は、自分のサービスに合う顧客の集客コストを極めて低くできるようになるメリットがあります。サービス提供者間で顧客を共有できるからです。

加藤: TimeCoinは、ブロックチェーンでユーザーの取引や評価を可視化して、それらをサービスの枠をまたいで共有するという発想なのですね。現実的に、シェアリングエコノミーが活性化していない中、システムの仕組みの工夫でユーザーを確保できるものなのでしょうか?

各務:先程話したように、シェアリングエコノミーはそもそも活性化していないです。公共財がシェアされていないと。本当はシェアされるべきだけれども、シェアされていないということですね。数多くの様々なプレイヤーがいて、使われ続けることができればもっと身近になると思います。

加藤:となると、まずはシェアリングエコノミーを身近にしなくてはならないですね。

各務:だからこそ、僕らのTimeCoinプロトコル上では、まずはサービスを安価に提供できるようにします。既存のシェアリングエコノミーでは、プラットフォーマーはアプリ提供者から結構な額のチャージを取っています。でも、最初は儲からないから、TimeCoinではチャージを取らずにタダにします。一定のところまでサービスが育ってきたら、5%は取るかもしれません。そうやることで、皆がそこに参加してきて良いアプリケーションを作ってくれるようになります。

では、ユーザーはどうなのかというと、皆で分け合うという考え方なので、個人情報はユーザーの選択によって開放できるようになります。今までのように、アプリの選択によって囲いましょうとはなりません。ユーザーは情報を出したかったら出せば良いのです。例えば、このユーザーは何歳でどこに住んでいて、どこで何の取引をしたのかということがわかるようになります。可視化された情報が共通の池に溜まっていくイメージです。こういうのが僕は大事だと思っています。

加藤:ユーザーから見た場合、アプリケーションが増えることよっていろいろなサービスに触れられるということですね。これでシェアリングエコノミーが活性化していくものなのでしょうか?

各務:そこはマーケティングの視点になります。結局はマーケットインの仕方が重要になります。例えば、アプリケーションにしても、対象にしているのが車やモノなのか、産業機器なのかと違いがあります。結局人は、自分が関心ある分野にしか興味を示さないので、サービスの中に色々なコンテンツを盛り込めば良いというわけではありません。なので、ある特定の層をたくさん集めてあげる必要があります。これは僕たちが実際に事業をやってきた経験があるからこそ言えることです。

それをしないと、TimeCoinは結局使えないという評価になってしまいます。そのためには、起爆剤が必要になります。まずは、eSportStars(筆者注:TimeCoin上で動く最初のサービス、後に詳しく取り上げます)とタイムチケットのユーザーをシェアすることによって、自分たちがユーザーの呼び水を作ります。そうすることにより、これらの層が欲しいサードパーティのプレイヤーが参加しやすくなると思っています。後から参加したプレイヤーも自分たちでユーザーを集めてくるので、全体の層が厚くなってきて、取引がさらに活発になっていきます。

TimeCoinプロトコルの最初のアプリケーションeSportStars(いぽすた)

TimeCoinプロトコルの最初のアプリケーションeSportStars(略していぽすた)

加藤:イメージとしては、ショッピングモールに近いように感じます。

各務:イメージでいうと、ShopifyやBASEに近いです。これらは、知識がなくてもECサイトを作ることができますが、ユーザーや情報の共有はできません。でも、TimeCoinではそれらの共有ができます。

加藤:そして、やはり気になるのはサービスを提供するプレイヤーが負担するコストだと思います。実際のところどうなるのでしょうか?

各務:これは、非常に簡単です。先程話したエンジニア2人、デザイナー1人、ウェブディレクター1人、マーケティング1人が最小構成として必要になります。1人500万円として、人件費で2500万円、諸々含めると3000万円くらいになります。これらを全部削ることができます!

そして、理想は社長1人でできることです。技術者でもデザイナーでもない、ウェブディレクターでもない、マーケティングもやったこともない人が1人で運営できるということを目指しています。

加藤:これが実現できたら、既存のシェアリングエコノミーのビジネスを破壊できますね。

各務:そう、なので破壊しようと思っています!(笑)この言い方は良くないかもしれませんが。正しくは、シェアリングエコノミーのモデルをもっとオプティマイズするということです。分散型サービスとはそういうものです。既存のものを変えるということですから。

加藤:分散型という言葉が出てきましたが、シェアリングエコノミーが分散型である重要性は、どこにあるのでしょうか?

各務:先程の話で、1人や5人と言いましたが、ここに入っていない人がいます。サポートする人です。例えばユーザーサポートのような人です。システムは1人で作れるから良いとして、サービス運営では色々あるので、そこで人が必要になってきます。そこができるだけ自動化されたらどうでしょうか。

例えば、売り手が情報を掲載したとします。そうすると、売り手が掲載した情報が問題ないかチェックする必要が出てきます。自分でチェックをするとまた工数がかかってしまうので、誰かにやってもらうことになります。取引にトラブルがあった場合も仲裁が入ります。そのあたりの運営に関わるオペレーションが自動化できたら嬉しいですよね。

加藤:そうですね。当然ながら、そこには何かしらの報酬が出るわけですよね?

各務:そうですね。ですので、サービス提供者がオペレーションに寄与する人たちにリ報酬を与えることによって、低価格で運営ができるようになると思っています。

加藤:TimeCoinで報酬が得られる具体的シーンは、どのようなものがあるのでしょうか?

各務:例えば、売り手と買い手に関しては、商品掲載やモノを出してくれたらTimeCoinがもらえようにします。他のサービスだともらえないので、使う人が増えるかもしれません。また、買ったおまけにTimeCoinが貰えるとしたら、買い手は何か買うかもしれません。

また、オペレーションに寄与するのがどのような人たちかというと、例えば商品を掲載したときにこれを掲載すべきか否かを判断してくれる人や、仲裁に入ってくれる人です。そういう人たちがTimeCoinを貰えるとなれば、自動化して人を雇わなくて良くなります。

ブロックチェーンの仕組みを使ってうまいこと回れば、シェアリングエコノミーを低価格にすることができます。理想は無人運営です。ですが、そこには技術的なハードルがあるので、徐々に作っていかなければいけないのだと思います。

第2部の予告

第1部では、上場企業が既存事業で手掛ける分野を敢えてブロックチェーン化する理由を伺っていきました。

続いて、TimeCoinのシステムメント優位性、そしてなかなか普及しないシェアリングエコノミーをどうやって爆発的に広めて行くのか、最初のサービスとなるeSportStars(いぽすた)について、伺っていきます。

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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