DeFiのエコシステムが発展するにつれ様々なアルゴリズミックステーブルコインが発行されています。しかし、裏付け価値が100%担保されていないものもあり、それらはしばしばペグが外れる現象が見られます。このような問題を解決するため、UXD Protocolは、価値が100%担保されつつ、資本効率や安定性が高いステーブルコインをSolanaブロックチェーン上で発行できるようにします。
今回は、UXD Protocol CEO & Founder 稲見建人氏に、プロジェクトを立ち上げた経緯や、UXDが他のステーブルコインと比べてどのように優れているかを中心に訊いていきます。
インタビューは前後編に分かれており、本記事は後編となります。後編では、UXD Protocolの何が優れているのかを中心にお伝えしていきます。前編をまだご覧になっていない方は、先にそちらをお読みください。
▼前編 UXD Protocolとは?

後編 UXD Protocolの何が優れているのか?
UXDの価格維持メカニズム
加藤:最近様々なステーブルコインが登場していますが、USDペグを謳いつつもしばしばペグが外れるものを見かけます。UXD Protocolでは、どのように 1 UXD = 1 USDを維持していくのでしょうか。
稲見:そもそも価値が100%担保じゃないアルゴリズミックステーブルコインが多いです。私は、基本的に100%担保じゃないとリスキーであると思っています。100%担保じゃないと、ペグが外れるのではないかというユーザーの不安があって、それが実体化してペグが外れるということが起きるのだと思っています。100%担保だとそのような不安はありませんし、裁定取引によって価格が修正されやすくなります。
例えば、UXDが0.99USDで取引でされている状態を考えてみます。ユーザーはUXDを0.99USDで購入して、私たちのDAppsに持っていき1USD分のビットコインと交換できます。そうすると、ユーザーはリスクフリーで0.01USD儲かります。トレーダーはそのような裁定機会を常に探しているので、常にそれが発生することによって、UXDの価格は0.99USDから1.00USDに上がっていきます。もちろん、逆にUXDが1.01USDで取引されている場合も、同じような裁定取引ができます。このように、裁定取引に基づくのでペグが保たれると思います。
加藤:たしかに、私自身も100%担保じゃないステーブルコインは、実は本当は価値がないのではないかと感じるところがあります。稲見さんが100%担保にこだわる理由は、感覚的に理解に難くないですね。
稲見:そうだと思います。100%担保は絶対条件です。
他のステーブルコインとの比較/ガバナンストークン
加藤:他のステーブルコインと比較した場合のUXDの優位性について教えていただけますか?
稲見:UXDは、おそれながらステーブルコイントリレンマを解決する、世界で初めてのステーブルコインになると考えています。
加藤:ステーブルコインのトリレンマというのは初めて聴きます。それはどういうことですか?
稲見:ステーブルコイントリレンマは、「非中央集権性」「安定性」「資本効率性」の3つのうち2つしか達成できない、つまり3つは達成できないという仮説です。
稲見:例えば、USDTやUSDCは安定していて資本効率性は100%です。ただし、非中央集権的ではありません。中央集権的な会社が管理していて、ユーザーは彼らを信用しなければなりません。
一方で、MakerDAOやTerraUSD、Fraxは非中央集権的ですが、安定性は微妙です。かつ資本効率性は低いです。厳密には、TerraUSDやFraxは資本効率性は高くて、微妙に非中央集権的なのですが、安定していません。
UXDの場合は、非中央集権的で資本効率性は100%、ですので安定性も期待できるということです。
それに加えて、デルタニュートラルポジションが生成する金利がユーザーに分配されます。他のステーブルコインで暗号資産ネイティブの金利を得ることは難しいので、ここは大きな優位性だと思っています。
加藤:確かに、ステーブルコインを単に持っているだけで金利が得られるのは、聴いたことがないですね。金利は、だいたい年何%くらいを期待できるものなのでしょうか?
稲見:当然マーケットによって年ごとに大きく異なるのですが、シミュレーションではだいたい年平均5-10%になります。
加藤:一般的にステーブルコインをどこかの中央集権型取引所に預けて金利を得ようとなると、カウンターパーティリスクを負うことになるので、そのようなものと比較するとより安全な運用ができるということになりますね。
ところで、金利の分配はどのようになるのでしょうか?
稲見:原則はガバナンスで決まります。UXPトークンを持っている人がガバナンスの権利を持っていて、金利の分配率を決めることができます。基本的には、UXD保有者、保険ファンド、UXPトークン保有者で金利を分配します。最初から3プレイヤーに分配するわけではなく、最初は保険金ファンドに分配されます。そして、最終的には3プレイヤーに分配されます。
加藤:UXDを持っている人は、早々に金利が欲しいような気がするのですが、その点についてはどう考えていますか?
稲見:UXDを持っている人には他にも金利を与える方法があって、流動性マイニングでUXDを持っている人はUXPトークンを与えることができます。最初はそのような形で金利をユーザーに支払っていく予定です。
加藤:ちなみに、UXPトークンはガバナンストークンとのことですが、ガバナンスだけだとあまり保有メリットがないように感じます。UXP保有者に対する保有メリットはどのように出していくのでしょうか?
稲見:先ほどと被るのですが、UXPトークンを保有している人に将来金利が入るようにするので、保有インセンティブがあります。また、今後UXPトークンをステーキングするインセンティブを追加します。
VCからの資金調達背景
加藤:UXD Protocolでは、Multicoin Capitalを筆頭に資金調達を受けました。差し支えなければ、資金調達の背景を教えていただけますか?また、投資家からどのような評価を受けていますか?
稲見:もともとは、2月にPolychainというVCがやっているインキュベータープログラムに参加していました。その後、Solana財団の助成金プログラムに応募し、Solana財団の担当者が評価してくださりました。また、担当者が以前Multicoin Capitalで働いていた縁で、Multicoin Capitalを紹介していただくことになり、そのまま資金調達へとつながりました。
実は、Multicoin Capitalもデルタニュートラルポジションによって価値が担保されたステーブルコインというアイデアを思いついており、それをやろうとしているプロジェクト創業者をずっと探していたとのことで、先方と私のニーズがちょうどハマりました。そこからは、色々な投資家を紹介していただくことができ、投資がまとまりました。
加藤:あっという間に決まった印象ですね。
稲見:あっという間でした。海外のVC、特に米国勢はみんなつながっていて、Multicoin Capitalが投資するとなると自分も投資したいという感じになります。そうなると、ノールックで投資というのはさすがにありませんが、30分程度のビデオ会議をして「はい、投資!」という感じになります。
加藤:日本のスピード感では考えられないですね。
稲見:そうですね。海外のVCは資金力が大きいので、金銭感覚が違うというのはあるかもしれません。
求めるパートナーシップ
加藤:UXD Protocolではどのようなパートナーシップを求めていますか?パートナーシップに興味がある人は、どこに連絡すればよいでしょうか?
稲見:Solanaの上で開発しているアプリケーションの人たちとは誰とでも話したいと思っています。私たちに出資しているMercurial Financeなどは、典型的なSolana上で開発しているプロジェクトですが、もちろん彼らとは組む話をしています。Mercurial Financeのように、特にSolanaの上で開発しているDeFiアプリケーションとはパートナーシップを結びたいと思っています。
また、Rust開発者も探しているのでぜひ私に声をかけてください。私のTwitter(@kentoinami_jp)あてに直接連絡ができるようになっています。
UXD Protocolが目指す将来
加藤:今後のUXD Protocolのロードマップを教えてください。最終的には、業界においてどのような立ち位置を目指していきますか?
稲見:テストネットを2021年9月、メインネットを10月にリリースする予定です。また、保険金ファンドの資金を調達するためトークンセールもやります。
中期的な目標は、Solanaの上での主流のステーブルコインになることを目指しています。Solanaの上でのアルゴリズミックステーブルコインとして1位にならないと失敗になると思っています。
今後の意気込み
加藤:最後に、読者に向けて今後の意気込みをよろしくお願いします。
稲見:今後UXD Protocolがアルゴステーブルコインを牽引するようなステーブルコインに仕上げていきますのでよろしくお願いいたします。また、Twitterで色々情報発信していきますので是非フォローをお願いします!みんなで楽しく暗号資産業界を盛り上げていきたいです。