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Solana Labs 小野寺諒氏 インタビュー (前編):エンジニア視点からのSoalanaの魅力とは?

インタビュー

既に強力なエコシステムを築き、高速なLayer1ブロックチェーンとして知られているSolana。その本当の良さは、なかなか伝わらないものです。そこで当記事では、Solanaの開発会社であるSolana Labsの唯一の日本人エンジニア小野寺諒(おのでら りょう)氏に、エンジニア視点におけるSolanaの魅力について語っていただきました。

このインタビューは前後編に分かれており、前編では小野寺氏がどのような人なのか、そしてエンジニアからみた技術の優位性についてお訊きします。

前編:エンジニア視点からのSolanaの魅力

小野寺諒氏の自己紹介

加藤:最初に小野寺さんについて教えてください。Solana Labsに入る前にはどのような仕事をしていましたか?そして、今はSolana Labsにおいてどのような活動をしていますか?

小野寺:Solana Labsでエンジニアをしている小野寺と申します。オンラインでは「ryoqun」というハンドル名で活動しています。Solana Labsは、Solanaエコシステムをさらに拡張するためのプロダクトやツールなどを開発している会社です。

僕は、子供の頃からプログラミングをやっていました。オープンソースが好きで、その頃からソフトウェアでキャリアを積んでいこうと決めていました。

Solana Labsに入る前は、Web2のIT企業でソフトウェアエンジニアとして働いていました。サーバーやクライアントの両サイドを触る、いわゆるフルスタックエンジニアでした。

最初はクリアコードというオープンソースに特化した会社、その次はクックパッド、さらにエモーションインテリジェンスと呼ばれるスタートアップに行きました。さらに、NewsPicksを運営しているユーザーベースに行き、その後は起業しました。起業は僕にとっては黒歴史で、Learnabledgeというサービスを立ち上げたのですが、結局上手く行きませんでした。最終的に、ブロックチェーン業界のSolana Labsに行きました。

加藤:色々と経験されていますね。小さい頃からオープンソースが好きだったというのが印象的なのですが、実際にオープンソースプロジェクトに関わっていたのですか?

小野寺:そこを僕に語らせると長くなります(笑)ブロックチェーンの思想と同じなのですが、僕はオープンソースの「自由さ」というのは、既存のクローズドソフトウェアにはないものだと思っています。誰もがコードを見られるというのは勉強になるし、自由だなと思います。僕が関わったことがあるもので、有名なものだとLinux KernelやGeckoがあります。GeckoはFirefoxのレンダリングエンジンです。Linux Kernelは、当時はまだ若かったのでコミットはしませんでしたが、Geckoは僕のコミットが少しだけ入っています。また、クリアコードとクックパッドにいた時代は、Rubyのオルタネイティブ実装のためのRubiniusにだいぶコミットしていました。

加藤:かなりガチなところを攻めていますね。

小野寺:せっかく勉強するならば一番ガチなところをやろうと!僕自身、振り返ってみると様々なものに手を出しています。ただ、その根源にあるのが最終的なユーザー体験です。技術がよくてもユーザー体験がよくないと意味がないと思っています。だからこそ、ユーザーインターフェースから始まって、特にクックパッドでは特にUXについて考えさせられ、超ローレベルなところまで一気通貫して、足りない部分を自分で見つけて補ってきました。局所最適という言葉がありますが、僕はそれが良くないと思っていて、全体最適を追い求めています。

加藤:こうして小野寺さんのお話を伺っていると、今のSolana Labsでの取り組みにも通じるものを感じますね。エンドユーザーを意識しつつ、昔から技術スタックのコア部分も同時にいじってきたと。

小野寺:そうですね。僕はそういう姿勢で真のフルスタックエンジニアとして技術にのめり込んでいると自負しています。勝手に、スーパースタックと銘打ってはいますが(笑)これから伸びそうなところに攻め込むのが好きです。

Geckoにかかわる際、当時ブラウザ戦争でInternet Explorerが大きなシェアを持っていたときに、一石を投じようと思ってFirefoxを選びました。Rubyについても、本家のMRIに行かずにRubiniusを選びました。結局、どちらも競争には負けてしまいましたけどね。

加藤:割合的に見ると、どうしてもうまくいかないもののほうが多いものですよね。今のSolana Labsでは、どのような活動をしているのでしょうか?

小野寺:これにも僕の性格が反映されているのですが、色々なことに取り組んでいます。直近ではコードレビュー、つまりコードの監査を行っています。ブロックチェーンはお金がダイレクトに関わる以上、コードの品質は極めて重要です。余談ですが、Solana Labsではバグバウンティをやっています。腕に自信がある方は、Soalanaのバグを見つけて賞金を稼いでほしいですね。また、最近はネットワーク不安定問題の調査をしています。

加藤:直近でSolanaブロックチェーンのネットワークが止まったというニュースが出ていた記憶がありますが、その件に関連するものですか?

小野寺:まさにその件です!僕はSolana Labsに入ってから他にも色々なことをしてきました。入った直後は普通にコーディングをしていて、主にステーキングのコードをいじりました。ステーキングのコードは、1年半前に有効化されました。他にも、ストレージサブシステムをいじりました。これは、トークンの残高やスマートコントラクトの状態などのデータをオンチェーンで記録しておくというものです。また、エコシステムのサポートもやっています。

加藤:サポートというのは、DApps開発者への支援ということですか?

小野寺:そうです。他にも日本のコミュニティや日本企業への支援も行っています。日本企業はまだ多くはないですが。

加藤:コアなところをいじりつつも、非常に広範囲ですね。

小野寺:そうですね。僕はもともとこういうやり方が好きです。Solana Labsが海外企業であるせいか、とても自由で、これをやれと言われることはありません。Solanaの成長にとって必要なことを自分で考え、自分で勝手にやっています。

そもそもSolanaとはどのようなブロックチェーンか?

加藤:今さら語る必要がないかもしれませんが、Solanaとはどのようなブロックチェーンなのでしょうか?他のブロックチェーンと比べて優れている点は何でしょうか?

小野寺:Solanaは、一言でいうとスマートコントラクトが実行できる超高性能なブロックチェーンです。他のブロックチェーンと比べて何が違うかというと、EthereumやBitcoinと比べてガス代が遥かに安く、トランザクションの承認が速いです。つまり、Web2みたいなユーザー体験をWeb3でも提供できるというのが売りになっています。

加藤:速度については、一般的には5万TPSと言われていますが、以前トランザクション数がピークに達したという記事では、40万台のTPSが出ていたと書かれていました。実際のところ、Solanaはどれだけのトランザクションを捌けるものなのでしょうか?スマートコントラクト実行や単純送金といったように、何かしらの前提条件があるとは思いますが。

小野寺:TPSは、数字だけが独り歩きしていますね。5万TPSというのは公式的なもので、試験環境において単純送金をした際の実測値です。僕は、TPSについてはあまり推していなくて、速いというのが伝わればそれで良いです。確かに、数字を出すと解りやすくはなりますけどね。今は不安定問題があるので、現実とのギャップがあると思っています。

また、僕はSolanaがシャーディングをしない点が良いと思っています。

加藤:それはなぜなのでしょうか?

小野寺:シャーディング*1をしないことでいくつかのメリットがあるからです。それが、セキュリティを担保できる点、コンポーザビリティ*2を損なわずに性能を担保できる点になります。

*1 ブロックチェーンにおけるシャーディングとは、ブロックチェーン上の処理をシャードと呼ばれる単位に分割し、シャードごとに並行処理することを指します。これにより、ブロックチェーン全体が高速になります。
*2 ブロックチェーンにおけるコンポーサビリティとは、許可を必要なしに複数のアプリケーションを連携させられることを指します。例えば、レンディングサービスでお金を借りて、そのままDEXで交換する動作を自動化することができます。

小野寺:セキュリティを担保できる点については、SolanaがProof of Stake (PoS)を使っているという背景が前提にあります。シャーディングをすると、ステークされた資金を各シャードに分割する必要が出てきます。それがそもそもの問題です。資金を分散させると、個別のシャードが経済的攻撃をされる可能性が高くなってしまうからです。

そして、コンポーザビリティを損なわず性能を担保できる点についてです。もし、シャーディングをしてしまうと資産が分散され、シャード間での状態や資金の移動に時間がかかるようになります。また、シャーディングすると実装がどうしても複雑になり、実装コストや脆弱性リスクが増加します。つまり、シャーディングをしないことで、Solana上の資金が1つの状態で、DApps間で自由に読み書きできるようになります。これにより、ネットワーク効果をDApps間で生みやすくします。また、シャード間のブリッジのようなステップが不要になるため、ユーザー体験を損なうこともありません。

加藤:ということは、SolanaというのはDAppsから見たベースレイヤーとしての構造をシンプルにすることで、全体的な使い勝手や性能を上げましょうということなのですね。

小野寺:まさにそれです!僕がSolanaを好きな理由がそれなんです。

シャーディングの実装は複雑で、それに伴うリスクもあります。間違った実装やバグがあると大惨事が起こるかもしれません。シャーディングをしないことでそのようなリスクを排除することができます。Solanaでは、スマートコントラクトの実行環境なども含めて、設計自体をシンプルかつ高性能で、実装が複雑にならないようにするというのを哲学として透徹しています。

加藤:シンプルとはいうものの、あれだけの高性能なプロトコルでそれを実現するのは難しいことだと思います。

小野寺:そうですね。ただ、Solanaはそれをそのまま地で実現しています。例えば、コンセンサスアルゴリズムのProof of History (PoH)は、SHA256というBitcoinで使い古され、枯れた暗号技術を組み合わせてイノベーティブな感じにしています。Bitcoinもシンプルですが、それに通じるものがSolanaにもあります。

もともとSolanaでは、シンプルなものを作ろうというのが根底にあって、シンプルだからこそ高性能が出せるはずだという前提があるわけです。

加藤:私はエンジニアではないので、文献レベルでしか判断できないですが、他のLayer0やLayer1というのは結構複雑なことをやっているなという印象はあります。

小野寺:そうですね。Solanaは逆張りの発想をしているといえます。シャーディングを使わないというのは逆張りですし、Solanaは他のLayer1やLayer2と一線を画して、ブロックチェーン業界におけるアンチテーゼ的なポジショニングをしています。僕は、GeckoやRubiniusに逆張りの思想でジョインしたわけですが、Solana Labsにも同様の発想でジョインしたという経緯があります。

加藤:このような思想は、DAppsを作るエンジニアにはなかなか伝わらないように感じますね。使う側からすると、チェーンの哲学というのは重要ではなく、きちんと使えればそれで良いでしょうからね。

小野寺:DAppsを作るエンジニアにとっては、SolanaはEVMではないのでネガティブに映るようです。DAppsレイヤーのエンジニアにとっては、どのようにインフラが実装されているかというのは気にしないものですね。

筆者注:Solanaブロックチェーン上でEVMを動かすプロジェクトとしてNeonがあります。2022年6月時点、NeonはアルファバージョンでDevnet上で動いています。

加藤:そうですね。インフラというのは、本来それを利用しているユーザーに気にされるようなものではありませんからね。

小野寺:僕が話した点は、DApps開発者にとっては無関心な点だと思うのですが、他のブロックチェーンと比べるとSolanaのセールスポイントであるのかなと思います。

ここまでは技術的なことですが、他にSolanaが優れている点としてエコシステムが成長しているというものがあります。僕がSolana Labsに入った当時は、そもそもSolanaの本番環境(メインネットベータ)も稼働しておらず、DAppsが全くなかったのですが、ここ2年でだいぶエコシステムが成長したなと思います。今は、エコシステムが自走して成長する段階に入っています。また、エコシステムの成長としてハッカソンが良いサイクルを回していると感じています。もし、ハッカソンに興味を持った方は、是非応募してほしいです。

加藤:確かSTEPNもハッカソンからでしたね。

後編記事

前編では、主に小野寺氏の技術に対する取組姿勢、Solanaの技術的な優位性についてご紹介しました。後編では現在Solanaが取り組んでいることや、当事者の視点からブロックチェーン業界で働くために必要とされることについてご紹介します。

▼後編はこちら

Solana Labs 小野寺諒氏 インタビュー (後編):現在のSolanaの取り組み、ブロックチェーン業界で働くために必要なこと
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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTオーナー。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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