インタビュー

STRAYM 山崎氏&片岡氏 – アートの分散型保有権をNFT化について訊く:第3部 – サービスをWeb3化して今までと何が変わったのか?

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NFTというとアートを想起させるほど、いまやアートNFTは最も代表的なNFTのユースケースになっています。そして、既存のアート業界からもNFTを使った新規事業に参入する動きが活発化しています。

アートの小口化による分割保有のサービス「STRAYM」を展開するストレイムアートアンドカルチャー株式会社(以下、ストレイム)は、2022年10月17日に同社のサービスをブロックチェーンベースにし、Web3化しました。

今回は、共同創業者 CDO (Chief Dream Officer) 山崎正典氏とCOO 片岡治樹氏にサービス展開における背景をお訊きしました。

本編は、3部に分かれています。第3部では、STRAYMをWeb3化して今までと何が変わったのかを中心に訊いていきます。本記事では、会社名をストレイム、サービス名をSTRAYMと区別して記載しています。

▼第2部がまだの方はこちら

STRAYM 山崎氏&片岡氏 - アートの分散型保有権をNFT化について訊く:第2部 - アートのオーナー権分割化はなぜ重要なのか?
NFTというとアートを想起させるほど、いまやアートNFTは最も代表的なNFTのユースケースになっています。そして、既存のアート業界からもNFTを使った新規事業に参入する動きが活発化しています。 アートの小口化による分割保有のサービス「STR...

第3部 – サービスをWeb3化して今までと何が変わったのか?

サービスのブロックチェーン化で変わったこと

加藤:ストレイム社は、既存サービスの「STRAYM」をアップデートして、STRAYM 3.0を発表しました。これにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

山崎:まず、作品のオーナー権をNFT化したことによって、ストレイムの信用に限らずオーナー権がブロックチェーンに刻まれていきます。これは、究極的に言うとストレイムが無くなっても作品のオーナーであることは担保されるということです。ブロックチェーンを使わない会社だと、その会社がなくなるとオーナー権が証明できなくなるということがあるのですが、ブロックチェーンにオーナー権を刻むことによってそのリスクをなくすことができます。また、ブロックチェーンを使うことにより、OpenSeaやRaribleでも、STRAYMで発行されたオーナー権の売買が可能になります。

加藤:STRAYMの外でオーナー権を売買できるようにすると、ストレイム社に売買手数料が入らなくなるように見えます。現実的に事業を継続するためにはお金が必要なので、どこかで収益化しなけれいけないと思いますが、これについてはどうなのでしょうか?

山崎:そこは外で販売しても我々にロイヤリティが入ってくる仕組みがあります。これはSTRAYMに限らず、作家にも当てはまることです。日本円のみならず、暗号資産の決済を導入したことにより、全世界のアートコレクターを巻き込むことができるようになります。これからはグローバルマーケットにアプローチできるようになるので、我々にも作家にとってもメリットが大きいと思います。現状は、サービスが英語対応していないので、今はグローバル対応できる基盤を作ったという段階になります。

加藤:もう1つ。サービスの利用ハードルについてお聞かせください。NFTの売買には、MetaMaskが必要になりますが、これは決して万人にとって扱いやすいものではありません。となると、STRAYMのサービス利用開始までの敷居がこれまでより高くなると感じます。なぜ、導入のハードルを上げてまでブロックチェーンベースのサービスに移行したのでしょうか?

山崎:これは考え方次第なのですが、日本円を使った購入のハードルも高いです。日本円の場合はKYCが必要なので、わざわざ身分証明書を撮って口座を登録するという手順が必要になります。

MetaMaskだと、$ETHさえ持っていればKYCなしですぐに作品を買うことができます。ですので、こちらのほうが購入ハードルが低いと考えることもできます。特にグローバルマーケットの場合は、暗号資産で買う方が圧倒的に多いでしょうから、MetaMaskでぱっと買えることによるメリットのほうが大きいです。ただ、日本市場を考えると日本円の購入は残したままにするので、STRAYMのエントランスラインとしてはまず日本円で購入して頂き、そして、今度は暗号資産でも買ってみませんかという流れになります。

加藤:MetaMaskが入るから、必ずしもハードルが上がるという考えではないわけですね。ちなみに、ブロックチェーンベースになるとユーザーのターゲットが変わると思うのですが、どうなのでしょうか?

山崎:当然ターゲットが今までと被るところもあります。もともとは、小口化されていて日本円で買いやすいと思ってくれる方をターゲットにしていました。今後は、NFTを集めている方や、暗号資産投資を積極的にやっている方、そして大口の暗号資産ユーザーもターゲットにしていきます。

加藤:この話題に関しては、先日Web3イベントのHONEYCONの出展担当だった片岡さんは感じていることがあると思います。実際にブロックチェーンベースのSTRAYMに関心を持っている層というのは、どのような人たちでしょうか?

片岡:ファッションブランド「#FR2」のNFTを発表してからSTRAYM3.0が始まったのですが、明らかにユーザー層が変わったなと感じています。例えば、TwitterでSTRAYMについて意見を言う層は、これまでだとアートについて投稿をする人たちでした。一方で、STRAYM3.0になってからは、NFTに投資したり暗号資産に投資したりする人がSTRAYMについて言及をするようになっています。例えば、VeryLongAnimalsコミュニティの主要メンバーの方が、作品の小口化をやりたいと話していて、STRAYMについてTwitterで言及していました。さらに、私がそれにコメントしたらコミュニティの方々からものすごい反響があり、VeryLongAnimalsのコミュニティの中に私も引き込まれました。今回のファッションをきっかけに、NFTコミュニティの中枢の人たちがSTRAYMに興味をもってくれたというのが、私にとってはユーザー層が明らかに変わったと感じる事例でした。

また、先日HONEYCONに出展したのですが、NFTをやっている人かつFR2が好きな人、NFTやカルチャーが好きな属性という人が、STRAYMに興味を持っていました。想像以上の引きがあったのでNFT界隈にポテンシャルはやはりありそうだなと思っています。

加藤:明らかに山崎さんが言及している層と異なりますね。VeryLongAnimalsは、アートではない感じがしますし、STRAYMに新しい可能性があるということを示唆しているように見えます。

コミュニティとビジネスをどう拡大していくのか?

加藤:Web3サービスでは、ビジネス拡大のためにコミュニティ構築が欠かせません。お二人は、STRAYMを通してどのようなコミュニティを作っていきたいですか?また、コミュニティ拡大のために欲しいパートナーシップがあれば教えてください。

山崎:我々の場合はマーケットプレイスという立場なので、NFTを発行しているコミュニティとは少し性質が異なるかもしれません。我々は、いろいろなプロダクトが集まってくるマーケットプレイスのコミュニティを作っていきたいと思っています。あとは、我々が企画したりプロダクトと他のコミュニティとコラボレーションし、それによって互いのコミュニティを拡大していくことも考えていきます。

加藤:コミュニティxコミュニティによる拡大を目指しているわけですね。

山崎:そうですね。色々なコミュニティに入る方がいらっしゃると思いますが、それがいっぺんに実現できるコミュニティがSTRAYMであるという立ち位置というのは非常に便利だと思っています。

片岡:私は、STRAYMのステータスを高めていったら、いろいろなコミュニティに顔を出せるクロスオーバーユーティリティを実現できたらとても面白いなと思っています。AMEXのカードはステータスをあげると様々な航空会社のラウンジに入れますが、あれに似たようなのをやりたいですね。

山崎:そうですね、それはやりたい!

パートナーシップに興味がある場合、info@straym.co.jp(@は半角にしてください)までご連絡ください。

DAO化は達成可能なのか?そこへ至るための道すじ

加藤:これから、STRAYMをどのようにしていきたいですか?また、報道済みの内容をみると、STRAYMは最終的にDAO化しようとしているようです。STRAYMはサービス品質を保つ必要性があるため、中央集権的な組織が必要になり、DAO化は難しいように思えますが、この点についてはどう思いますか?どのようにDAO化していくのでしょうか?

山崎:私の理解だと、DAOはまだいろいろな課題があると認識しています。私は、単純に民主化することがDAOではないと思っています。STRAYMの場合、作品の選定のようなものをDAO化しようと考えています。しかし、現実的に誰もが作品の選定をできるわけではありません。そのため、品質を担保するためには中央集権的な要素が求められます。例えば少人数による承認システムで、1つの作品に対して1つのチームに50人もいるのではなくて、5人しか参加できないといったイメージです。矛盾して聞こえるかもしれませんが、このように「DAOから始まった中央集権」というのがあると思います。一般的には、DAOから始まらない中央集権が、中央集権だと思われていますが。

加藤:DAOから始まった中央集権というのは、私自身は現実的なアプローチだと思います。稀な例ですが、とあるWeb3プロジェクトがDAOから始まっています。しかし、全体の方向性が定まらずうまく拡大できていませんでした。結局そのプロジェクトは、イニシアティブをとるために中央集権的な財団を設立しました。これは、まさにDAOから始まった中央集権そのものですね。

山崎:なるほど参考になります。来年には一部の意思決定をDAO化したいと考えています。

加藤:来年ですか?早いですね!DAO化すると、プロダクトがストレイム社から離れると思われますが、どのようになるのでしょうか。

山崎:詳細はまだ決めていませんが、オープンソース化とDAOによるキュレーションを組み合わせた形を構想しています。むしろ出品候補、プロダクトは増加すると考えています。

今後の意気込み

加藤:最後に、読者やユーザーに今後の意気込みをよろしくお願いします。

山崎:我々は、今まで厳選した現代アートを中心に扱ってきました。NFT作品でもこれまでにない価値を提供していきたいです。NFTはカルチャーをアートに変換できると思っています。例えば、空間デザイナーやイベントプロデューサーであっても、NFTによりひとつのアートに変換した作品ができるようになると思っています。つまり、アーティストの概念の幅を広げていくということです。是非今後を楽しみにしていてください。面白いコンテンツをどんどん作っていきたいと思っています。

加藤:アーティストの幅を広げていくという発想は面白いですね!

片岡:STRAYMは、コミュニティの民主化プラットフォームみたいな形で、必ずしも絵を描く人ではなく、色々なクリエイターがSTRAYMでコミュニティを形成できるようにしていきたいです。例えば、分割化された作品のオーナー権を持っていれば、コミュニティに参加できるということを、アートに限らずいろいろな創作物に適用していきたいと考えています。それは音楽かもしれないし、スポーツかもしれない、食べ物やなにかの楽しみかもしれないです。興味関心で人が集まるコミュニティであれば、STRAYMのオーナー権を当てはめることができると思います。多種多様な分野で、私たちのオーナー権分割化を横展開していきたいですね。

STRAYMに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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