インタビュー

インタビュー:プラチナエッグ 竹村也哉氏 – 面白さと持続的な収益を追求した「Climbers」でブロックチェーンゲームはどう変わるのか?(前編)

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Play to Earnで一気に火がついたブロックチェーンゲームは、単に「儲かる」から「面白くて儲かる」にシフトしています。株式会社プラチナエッグが手掛けるClimbers(クライマーズ)は、面白くて儲かるを重視し、かつ長期に持続可能なゲームを目指しています。今回は、同社の代表取締役である竹村也哉(たけむらなりや)氏に新しいゲームのコンセプトやアイデアをお訊きしました。

本インタビューは前後編で構成されています。前編では、早期からブロックチェーンゲームを手掛ける同氏の哲学や、Climbersのコンセプトについてご紹介します。

前編:Climbersはどのようなゲーム?

竹村氏の自己紹介・今までの実績

加藤:最初に竹村さんについてご紹介ください。ブロックチェーンゲーム分野ではかなり長く取り組んでいるようですが、その前を含め今まで何をしてきたのかご紹介ください。

竹村氏:株式会社プラチナエッグの竹村と申します。私のゲーム業界歴は長く、もうすぐ30年になります。2017年からはブロックチェーンゲームの領域にも進出し、今年で約6年目になります。当時からブロックチェーンゲームを手掛けている会社はなかったので、海外を含めても、私たちがこの分野では老舗ということになります。経験年数が長いだけあり、スマートフォンから家庭用ゲーム機、ジャンルだとRPGやアクション、アドベンチャーなど、ゲームであれば何でもやってきました。

加藤:2017年からだとだいぶ前からですね。なぜ当時からブロックチェーンに注目していたのでしょうか?

竹村氏:私は当時Bit Hunters(ビット・ハンターズ)というゲームを手伝っていました。それはポケモンGOのような位置情報ゲームだったのですが、仮想通貨を入れたほうが良いのではないかという話になっていました。当時はICOが流行っていて、色々な仮想通貨プロジェクトに大量のお金が入ってきている状態でした。これは歩いてお金がもらえるゲームを作ればウケるんじゃないかという話になりました。その後、CryptoKitties(クリプトキティーズ)が登場し、ブロックチェーンをエンターテイメントに色々活用できるのではないかと考えるようになりました。

今まで作ってきたゲームだと、自社タイトルでは競馬ゲームの「Crypto Derby(クリプト・ダービー)」や位置情報を組み合わせた「CROSSLINK(クロスリンク)」、そしてこれからリリースする「Climbers(クライマーズ)」があります。他に受託しているものまでを入れると10本以上のタイトルやサービスに関わっています。

加藤:なぜそこまでブロックチェーンゲームに賭けているのでしょうか?

竹村氏:ブロックチェーンゲームはポテンシャルが非常に高いと考えています。そもそもですが、ゲームの形態は時代とともに変化してきました。例えば、過去にはゲームがインターネットに接続されていない時代がありました。インターネットが普及し始めた当初は、インターネットをゲームに活用することについて疑問視する声がありましたが、今ではそれが当たり前になっています。ソーシャルゲームも同様です。当初は、その制作者たちを軽視する声がありましたが、現在ではほとんどのゲームにソーシャル要素が取り入れられています。スマートフォンの普及でも同じことが言えます。

このようなことを踏まえると、10年後を考えたときにはほとんどのゲームがブロックチェーンを利用していると考えています。その時にはブロックチェーンゲームという言葉自体がなくなり、ゲームにブロックチェーンが組み込まれていることが当たり前になっていることでしょう。少なく見積もっても、既存のゲーム市場の数十パーセントはブロックチェーンゲームになるのではと思います。

Climbers(クライマーズ)の紹介

加藤:今回新たにClimbersというゲームをリリースしますが、これはどのようなゲームですか?

竹村氏:Climbersは、バトルロイヤル形式のレースゲームです。プレイヤーはスーパーマリオのような移動とジャンプのみでコースを進み、障害物を乗り越えてゴールすれば勝利となります。勝者には賞金が授与されます。

ゲームでは、複数のプレイヤーが一斉にレースに参加します。多人数でのプレイでは、運の要素が重要になってきます。もちろん、やりこむことで上位にランクインはしやすくなりますが、平均的なプレイヤーでも十分に勝利することができます。誰もが勝つ可能性があるゲーム性というのは、ブロックチェーンゲームに非常に適していると考えています。

さらに、フィールドにはコインが配置されており、これを集めてゴールすると実際に仮想通貨をもらうことができます。でも、コインを集めるとプレイヤーが徐々に重くなり、ジャンプしにくくなったり移動速度が低下します。この点では、欲望をかきすぎないことが重要になってきます。このような感じで、Climbersのゲーム性は本当にシンプルです。

加藤:確かにシンプルですね。どういった考えからこのようなゲームに至ったのでしょうか?

竹村氏:まず、クライマーズの立ち上げ時からコンセプトとして、ブロックチェーンゲームの問題点を解決することを掲げています。具体的な問題点としては、経済の持続性の欠如、低いクオリティ、そして面白くないという点があります。私は、これらの問題点は独立しておらず、相互に関連していると考えています。つまり、ゲームが面白くないため、実際に収益を得たい人たちしか集まらず、一般のユーザーが増えず、それによって経済が持続しにくくなっているのです。しかし、現在は儲かることが重要と考えるユーザーが多く存在するため、面白いゲームを作っても意味がないという話もあります。これらの要素はおそらく相互に関連していると考えられます。したがって、私たちはこれらの3つの問題を同時に解決しなければならず、Climbersでは経済の持続性を確保し、高いクオリティで面白いゲームを作り上げることを目指しています。そのため誰にでも遊べる、理解できるシンプルなゲーム性になっています。

私たちは、現在のブロックチェーンゲームにはキャラクターを重視したゲームが少ないと認識していますが、私たちはかわいらしく魅力的なキャラクターを作成しています。ブロックチェーンゲームでは、ファンや信者を獲得する必要があります。そのためには、魅力的なキャラクターを充実させ、さまざまなコラボレーションによって新たなキャラクターを生み出すことが実はとても重要です。ユーザーは自身のアバターとして参加できるため、非常に楽しい体験ができるはずです。さらに、他のプロジェクトとのコラボレーションキャラクターなども積極的に展開していきます。

加藤:確かに他のゲームと比べてもかわいい感じがします。

Climbersのキャラクター

竹村氏:さらに、ランドエディターと呼ばれるツールを用意し、レゴブロックを配置する感覚で誰でもステージを作れるようにします。ゲーム上でユーザーが作ったコンテンツを使えるようにすることにより、多くの人を巻き込むことができるようになっています。MineCraftみたいにマップを作るだけで楽しい人も居れば、どうぶつの森のようにデコるのが好きな人も楽しめる作りになっています。実際にβテスト期間中で女性配信者が妙にこだわってエディットしているのを見たときに、方向性が間違っていなかったと確信しました。

Climbersのランドエディター

竹村氏:また、これについて他タイトルではあまり言及されていないのですが、ゲームに関与する人々のユーザークラスターを区別することが非常に重要だと考えています。例えば、Axie Infinityはスカラーシップ制度を用意して投資家とプレイヤーに違う体験を提供していますが、現時点のほとんどのゲームは、ユーザークラスターを区別していないように見えます。

Climbersでは、投資家とプレイヤーを区別しています。例えば、通常のバトルロイヤルを考えてみると、収益が上がらないとみんながプレイしなくなるということはありません。もちろん賞金が出れば少しは楽しいですが、面白ければ賞金がなくてもプレイするはずです。これが一般のユーザークラスターであり、それとは別に投資家のクラスターがあります。投資家は収益が上がらなければ投資する意味がないと考えるクラスターです。これらを適切に切り分けなければならないと私たちは考えています。

また、経済を回すという観点から考えると、クラスターを分けて、ガッツリ稼ぎたい人とそんなに稼ぐ必要のない人、そしてステージを作って楽しいと言われて承認欲求を満たす人など、異なる要素を組み合わせることが重要になってきます。そうしないと持続するゲーム経済は作れないと確信しています。

加藤:我々が生活している実社会の経済は様々なクラスターに分かれているので、ゲーム内でもそれを区別するのは自然な考え方ですね。

後編の紹介

前編では、なぜプラチナエッグではブロックチェーンゲームにそこまで賭け、Climbersを手掛けているのか。そして、そのゲームの内容について伺っていきました。後編では、Play to EarnでもあるClimbersはどうやってユーザーに利益をもたらすのか。そして、ゲームの拡大戦略について訊いていきます。

後編:Climbersはユーザーにどのように利益をもたらすのか?

Climbersに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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