Layer1プロジェクト解説暗号資産

分散型ストレージの商業利用を切り拓く「CESS」の解説

Layer1
スポンサーリンク

CESSの概要

CESS(Cumulus Encrypted Storage System)は、ブロックチェーンを使った分散型ストレージの及びコンテンツ配信ネットワーク(CDN)のプラットフォームです。今までであれば長期のアーカイブストレージとして利用されてきた分散型ストレージを、動的データに対応させることで柔軟に利用できるようにし、商用に耐えるソリューションの提供を目指しています。

CESSは、既存の分散型ストレージにおける主に3つの課題に対して対処します。

  1. データ損失の可能性:ストレージを提供するマイナーは、マイニングを止め、ストレージの提供を停止することができます。また、通常デフォルトで作成されるデータのコピーは1つだけであるため、ユーザーのデータが損失する可能性があります。
  2. ストレージ容量の利用が非効率:既存の分散型ストレージでは、スペースプーリングやスペース管理がサポートされていないことがあります。また、データは1つのノードのみに保存され、大きなデータセットは小さなディスクやノードに保存できなくなることから、全体のストレージが有効に活用されません。
  3. データ取得の遅さ:インデックス作成がないことから、データの取得には時間を要します。また、ストレージ容量の利用の非効率さゆえに、大きなデータセットが容量が大きいマイナーに集中することで、データの取得が遅くなります。

ユーザーがCESSにデータを保存すると、そのデータは小さな断片に分割、暗号化され、ネットワーク内のさまざまなノードに分散されます。そして、データにアクセスするためには、自分自身を認証して暗号化された断片をネットワークから取り出す必要があります。断片はユーザーのデバイス上でローカルに結合・復号化されるため、取得プロセス中にデータがまるごと公開されることはありません。この仕組みにより、分散型ストレージの利用で高いセキュリティが確保されます。

また、CESSではデータを小さな断片にすることとにより容量が小さなディスクやノードにデータを保存することが可能になるため、ストレージ容量を有効に利用することができるようになります。加えて、ディスクステータスの定期的なチェックや、使用可能および使用済み容量の計算、無効なデータの消去を行う仕組みによりストレージ容量の利用効率化が行われます。

CESSでは、データの高速取得を可能にするために、キャッシュノード(Cache Node)と検索ノード(Retrieval Node)を導入することで、データのインデックス化を可能にし、ユーザーが数秒以内でデータを取得できるようにします。

2024年1月2日時点、CESSはストレージマイナーが952存在しており、認証済みのストレージ容量が1.628TiB、実際に利用できる容量が5,675TiBになります。

CESSの動作ハイライト

CESSは、機能別に4つの層:ブロックチェーン層、分散ストレージリソース層、分散コンテンツ配信層、 アプリケーション層から成り立っています。

ブロックチェーン層:CESSネットワークの管理を行うブロックチェーンです。ストレージや計算リソース提供者にインセンティブを与え、データストレージやデータの権利確認、その他のサービスをアプリケーション層に提供する役割を担います。

分散ストレージリソース層:ストレージマイナーとコンセンサスマイナーで構成され、トレージリソースの統合とプーリングを実現します。

分散コンテンツ配信層:キャッシュマイナーと検索マイナーで構成され、データの低遅延配信を実現するためのキャッシュ機能を提供します。

アプリケーション層:アプリケーションに必要なデータストレージサービス、ブロックチェーンサービス、ネットワークドライブサービスなどにアクセスするためのAPI/SDKツールを提供します。

CESSのレイヤー構成

CESSのレイヤー構成

CESSの特徴

データの復旧を保証

CESSでは、データの復旧を保証します。これは、PoDR2(The Proof of Data Reduplication and Recovery)プロトコルによるもので、システムが常にユーザーデータファイルの複数のコピーを保持するようにします。PoDR2により、システムは定期的にストレージノードのチェックを行い、データの有効性と可用性を証明するためにストレージノードに継続的にチャレンジします。データの損失が発見された場合は、リカバリ機能によりデータの復元を行います。また、他にも複数のデータ保管証明プロトコルが使われます。

クロスチェーン利用の容易化

CESSでは、分散型ストレージをクロスチェーンで利用できるようにするための仕組みを提供します。この仕組みでは、クロスチェーンリレーを用意し、2つのブロックチェーン間で相互承認を行い、データの変換を行った後、異なるブロックチェーン間で相互に情報を交換することで安全なクロスチェーン利用を実現します。

プライバシーを確保したデータ共有

CESSでは、データ内容を公開することなく許可されたユーザーのみにファイルを共有することができます。

CESSのストレージにデータをアップロードする場合、ユーザーはプライベートまたはパブリックのどちらかを選択することができます。プライベートを選択すると、ファイルは暗号化されてストレージノードに保存されます。データファイルの所有者が他のユーザーへの転送を許可した場合、CESSはプロキシ再暗号化メカニズムを使ってノードに保存されたデータの断片を再暗号化し、許可されたユーザーのみが秘密鍵を使用してデータを取得できるようにします。

データ所有権の追跡

CESSでは、MDRC(Multi-format Data Rights Confirmation)によりデータの所有権を明確化し、それを追跡することができるようになります。MDRCは、データの指紋に相当するものを抽出し、それをブロックチェーン上に記録することで追跡を実現します。これは、データマーケットプレイスにて、本来のデータ作成者にインセンティブを与えるなどのユースケースにつながります。

EVMとWASMの互換性

CESSはEVMやWASMと互換性があり、開発フレームワークのSubstrateにより、チェーンをまたいだエコシステムやアプリケーションでCESSを利用することができるようになります。

CESSトークン

CESSでは、チェーンのネイティブトークンとして$CESSを発行します。

CESSトークンの用途

  • オンチェーン取引のガス料金
  • 各ノードへのインセンティブ
  • ストレージサービスの利用料
  • ガバナンスの投票

CESSトークンの配布

$CESSは、100億トークンが発行され、以下の比率により割り当てられます

  • 15%:初初期貢献者(6年間のべスティング)
  • 55%:マイナー(べスティング、4年ごとの半減期あり)
  • 10%:コミュニティ、DAO(DAOによる管理)
  • 5%:協力パートナー(DAOによる管理)
  • 5%:準備金(DAOによる管理)
  • 10%:トークンセール用(1~48ヶ月でべスティング)

CESSトークンを売買できる取引所

2024年1月2日現在、$CESSを売買できる取引所はありません。

CESSに関する情報

スポンサーリンク
この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

Junya Katoをフォローする
タイトルとURLをコピーしました