インタビュー

インタビュー:Sunrise 木村優氏 – PoLでDAレイヤーを変革する挑戦とは?

インタビュー
スポンサーリンク

現在、主要なアプリケーションが独自チェーンに移行する流れが加速しています。この流れを支えるのがモジュラーブロックチェーンを実現するためのプロダクト群です。その中で、データ可用性(Data Availability: DA)レイヤーは、データの存在を確かなものにするという重要な役割を担います。

今回は、DAレイヤープロジェクトの Sunrise(サンライズ)のCEO and CTO の木村優氏に、プロダクトの特徴や優位性について伺いました。

モジュラーブロックチェーンとは?

加藤:Sunriseのプロダクトとしての立ち位置を明確にするためには、まずはモジュラーブロックチェーンについての理解を深める必要があると思います。簡単にモジュラーチェーンについて解説いただけますか?

木村氏:まず、従来のEthereumやBitcoinについてお話しすると、これらは1つのチェーンですべての機能を完結させる「モノリシックブロックチェーン」と呼ばれるものでした。それに対して「モジュラーブロックチェーン」は、異なるアプローチを取っています。

加藤:具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?

木村氏:モジュラーブロックチェーンでは、チェーンの機能を複数のレイヤーに分解し、それらを組み合わせて一つのチェーンを構築していきます。これにより、モノリシック型と比較して100倍以上のスケーラビリティを実現できます。また、企業のニーズに応じて柔軟なカスタマイズが可能という大きな利点もあります。

加藤:そのレイヤー構造について、もう少し詳しく説明していただけますか?

木村氏:モジュラーチェーンは主に4つのレイヤーで構成されています。トランザクションを実行する「Execution Layer? (執行層)」、実行結果を一意に決定し、ブリッジの整合性の監督も行う「Settlement Layer (調停層、あるいは決済層)」、トランザクションの順序を決定する「Consensus Layer (合意形成層)」、そしてデータを保存する「Data Availability Layer (データ可用性層)」です。

加藤:その中でSunriseはどのような役割を担っているのでしょうか?

木村氏:Sunriseは、Data Availability Layer、つまりデータ可用性層として機能しています。さらに、私たちはSunrise DA上での独自チェーン構築をサポートしており、OP StackやCosmos SDKなど、様々なチェーンフレームワークに対応可能です。我々は、企画から開発、運用まで、包括的なサポートを提供しています。

Sunriseとは?

加藤:モジュラーチェーンにおけるSunriseの立ち位置がわかったところで、Sunriseについてお聞かせください。これはどのようなDAプロジェクトなのでしょうか?また、CelestiaやAvailの競合と比べた場合の優位性も教えていただけますか?

木村氏:まず、SunriseはProof of LiquidityとオフチェーンBlobに対応した世界で唯一のDAレイヤー(Data Availability Layer)です。Sunriseの最大の特徴は、従来のDAレイヤーが抱えていた課題を克服し、スケーラビリティとアクセシビリティを飛躍的に向上させている点にあります。

2024年7月に初めてテストネットを公開してから、わずか3週間で10万人、6週間で20万アクティブユーザーを達成しました。日本発のプロジェクトではありますが、このように急速にグローバルな成長を遂げています。

加藤:難しいジャンルのプロダクトながら勢いがありますね。具体的にどのような特徴があるのでしょうか?

木村氏:競合と比べた場合のSunriseの優位性は、「オフチェーンBlob」と「Proof of Liquidity」という二つの革新的な技術に集約されます。「オフチェーンBlob」は圧倒的なスループットという技術的優位性を、「Proof of Liquidity」は持続可能なビジネスモデルという優位性を実現しています。

加藤:それぞれの技術がユーザー、コミュニティ、そして開発者にとってどのようなメリットをもたらすのか、詳しく教えていただけますか?

木村氏:まず、ユーザーにとってのメリットですが、SunriseはProof of Liquidity (PoL) システムを通じて、従来のステーキングとは異なる形でリワードを得られる仕組みを提供しています。ユーザーは流動性を供給することで報酬を得ることができ、これはネットワーク全体の活性化に繋がります。

PoLシステムを通じて、スワップ手数料やMEV (Miner Extractable Value) などのプロトコル収益を確保しています。これは、コミュニティにとってはサステナブルな運営が可能になるというメリットがあります。CelestiaやAvailなど、他のDAレイヤーが直面する価格競争に巻き込まれることなく、持続可能な形でチェーンを成長させることができるようになります。

加藤:他のDAレイヤーと比較した、開発者にとってのメリットは何でしょうか?

木村氏:開発者、特にレイヤー2開発者にとって最大のメリットは「ビッグブロックレイヤー2」の実現が可能になる点です。

SunriseはオフチェーンBlobを採用しているため、CelestiaなどのようにオンチェーンにBlobデータを書き込むアプローチによりバリデータの通信がボトルネックになることがなく、データ処理能力の限界を超えることができます。Sunriseでは、Arweaveのようなオフチェーンの分散ストレージにデータを書き込みます。

これにより、従来のレイヤー2のデータ処理能力を超えた、フルオンチェーンのAIやブロックチェーンゲームなどの実現が可能になります。

Sunriseに流動性を提供するメリット

加藤:Sunriseは、他のDAレイヤーのプロジェクトと異なり、流動性提供者がプロダクトを支える重要なステークホルダーとなります。彼らがSunriseに流動性を提供するメリットはどこにありますか?

木村氏:はい、その核となるのが「Proof of Liquidity (PoL)」というコンセンサスメカニズムです。これは従来の Proof of Stake (PoS) とは異なる新しい考え方です。これは、Berachainのコンセンサスメカニズムとして採用されたことで有名になりました。

PoSの場合、単にトークンをロックして報酬を得るだけで、直接的な経済活動は生まれません。一方、PoLでは流動性提供という実質的な経済活動に対して投票力(Voting Power)が与えられます。これによって、ネットワーク全体に正の循環が生まれます。私たちはこれを「流動性フライホイール」と呼んでいます。

加藤:具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?

木村氏:Sunriseでは、$RISEと$vRISEという2種類のトークンを使用します。例えば、$USDTと$RISEをチェーンの流動性プールに預けると、報酬として$vRISEトークンがもらえます。この$vRISEは譲渡不可能なトークンで、ステーキングやガバナンス提案などに使用できます。

重要なのは、流動性提供が$vRISEを獲得する唯一の方法だということです。つまり、意味のある経済活動をした人だけが投票力を得られる仕組みになっています。

加藤:流動性提供者にとって気になるのがインパーマネントロスだと思います。これは、流動性提供者が流動性を提供することを躊躇する要因にもなり得ますが、何か対策をお考えですか?

木村氏:一般に、DEXに流動性を提供する際に、注意しなければいけないリスクがインパマーネントロスです。Sunriseでは、基本的な戦略として、$USDCと$USDTのようなステーブルペアでの運用を推奨しています。これならインパーマネントロスを極めて低く抑えられます。

さらに面白い戦略として、$BTCをステーブルペアで運用する方法も計画しています。Sunriseでは$wBTCや$nBTCなど、複数のBTCラッパートークンをサポートする予定です。これらのトークン同士でペアを組むことで、インパーマネントロスを抑えながら、$BTCと$vRISE両方の報酬を得ることができるようになります。これはCosmos発のIBCをネイティブサポートしているからこそ可能になる戦略です。

加藤:税金を気にして、$BTCを利確せずに利回りを得たい人は多いので、これは興味深いです。

Sunriseのエコシステム拡大戦略

加藤:Sunriseはプロダクトの性質上、エコシステム拡大は他のWeb3プロダクトより難しいのではないかと感じています。現時点で、Sunriseのエコシステムを拡大するための戦略をどのように描いているのでしょうか?

木村氏:はい、私たちはグローバルと日本の両マーケットで積極的なアクションを展開しています。

弊社のBD/DevRelチームはアメリカ人とポルトガル人が中心なので、基本的にはグローバルなパートナーシップの締結を重視しています。また、日本市場にも重点的に取り組んでいます。これは創業者が日本出身であることや、日本からの強力なサポーターの存在が大きな理由です。また、他のDAレイヤーが日本市場へのアプローチに苦戦している現状も、私たちにとってはチャンスだと考えています。実は、日本でのパートナー拡大に向けた新たな展開も間もなく発表予定です。

加藤:確かに、大手のDAレイヤーの日本における存在感はまったく感じないですね。グローバル展開については、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?

木村氏:現在、最も注力しているのが、Sunrise上で開発することの利点が具体的にわかるショーケースの整備です。他にも開発環境をわかりやすくするために開発者向けのドキュメントも作成中で、他のDAレイヤーとの比較も含めた包括的な資料として提供する予定です。

また、RaaS (Rollup as a Service) との提携も重要な戦略の一つです。すでにCrestalSnapchainGateway FMなど主要なプロバイダーと提携していますが、これはとても重要なことです。というのも、競合のCelestiaがRaaSを通じて多くのプロジェクトに採用されているように、RaaSとの提携は成功の鍵となるからです。

さらに、ハッカソンや助成金プログラムを通じて、Sunrise上で開発するプロジェクトのインキュベーションも計画しています。

加藤:また、現在の成果についても教えていただけますか?

木村氏:はい。グローバル向けのXアカウントでは既に8万人以上のフォロワーを獲得しています。また、11月8日に公開したtestnet v2では、現在30万人のユーザーを抱えています。

ユーザーの地域分布を見ると、中国と香港がそれぞれ20%、日本が10%、そしてシンガポール、韓国、イギリスと続いています。かなりグローバルな広がりを見せています。

また、業界での認知度も着実に高まっています。QuicknodeやAlchemy dApp Storeといった主要プラットフォームで他のDAレイヤーと並んで紹介されていますし、モジュラーチェーン界隈で影響力のあるThe Rollupにも取り上げられました。さらに、様々なWeb3イベントで他のDAレイヤー創業者と共にパネルディスカッションに参加する機会も増えています。

紹介実績:

パネルディスカッション実績:

今後の意気込み

加藤:最後に、Sunriseについて期待しているコミュニティについて何かコメントをお願いできますか?

木村氏:Sunriseの使命は、モジュラーブロックチェーン技術によってアプリケーションレイヤーの可能性を広げることです。従来のスマートコントラクトだけでは実現できない、ブロックチェーンの可能性を最大限に活用するアプリケーションを生み出す土台になります。

これだけではふわっとしていてイメージが湧きにくいかもしれませんが、ブロックチェーンのとあるキラーユースケースにおける最大の問題点を解消するアプリケーションの例、いわばショーケースを作っています。Sunriseが果たす使命の大きさを、フィーリングだけでも感じ取ってもらえればと思います!

Sunriseについての公式情報

スポンサーリンク
この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

Junya Katoをフォローする
タイトルとURLをコピーしました