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Polkadot (DOT) の解説 ~ブロックチェーンの相互運用性を実現するマルチチェーンネットワーク

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Polkadot (DOT) の概要

Polkadot(ポルカドット)は、Ethereumの共同創設者Gavin Wood氏らによって創設された、ブロックチェーンの安全な相互運用性を実現するマルチチェーンネットワークです。$DOTをネイティブトークンとするPolkadotリレーチェンがハブになり、リレーチェーンに接続するレイヤー1であるパラチェーンの相互運用性を実現します。

Polkadotの背景

レイヤー2が普及した現在でも、独自のレイヤー1のブロックチェーンを構築するプロジェクトは後を絶ちません。しかし、レイヤー1を構築するには依然としていくつかのハードルがあります。

セキュリティのハードル:

改ざんされない安全なブロックチェーンを実現するためには強いセキュリティが必要です。

現在主流となっているProof of Stake (PoS) のチェーンでは、ステークされているトークンの大半(多くの場合3分の1)が悪意のあるエンティティに支配されないようにすることでセキュリティを維持しています。しかし、多くのトークンの取得を難しくする要因はトークン価格であるため、PoSはトークン価格に依存したセキュリティモデルと言えます。

資金が様々な場所に飛び交うWeb3の世界では、トークン価格を長期的に維持することは困難であり、それはPoSを採用するチェーンのセキュリティを長期的に維持することが困難であるということを意味します。

バリデーター誘致のハードル:

レイヤー1のチェーンでは、トランザクションの検証を行いブロックを生成するバリデーターが必要になります。分散化を達成するための十分な数のバリデーターを誘致するには、プロジェクトにとってかなりの努力が求められます。

また、バリデーターを誘致するためには、初期段階でトークン排出を多くして初期インセンティブを出すことが一般的です。これはトークンのインフレ進行を速め、トークン価格を押し下げる要因になります。トークン価格の低下は、バリデーターが採算性の低下でチェーンから離脱することにつながるため、長期的に安定した数のバリデーターを確保することは困難です。

相互運用性確保のハードル:

レイヤー1のブロックチェーンでは、一般的に、相互運用性を確保するために独自のブリッジが用意されます。これらのブリッジは、流動性の断片化を引き起こし、チェーン間の相互運用性を低下させます。また、一般的なブリッジは単なるトークン転送のみにとどまり、スマートコントラクトの相互運用までは考慮されていません。

Polkadotが提示するソリューション

Polkadotは、様々なチェーンの相互運用を可能にするためのプラットフォームであり、その中心となるのがリレーチェーンです。パラチェーンと呼ばれるレイヤー1のブロックチェーンがリレーチェーンに接続することにより、パラチェーンは初日からリレーチェーンのバリデーターを自らのバリデーターとして利用できるようになります。これにより、各パラチェーンはリレーチェーンの強固なセキュリティを利用することができるため、パラチェーンプロジェクトはセキュリティ確保の負担が大幅に減ります。

さらに、PolkadotはXCM (Cross-Consensus Messaging) と呼ばれるメッセージングを提供しており、これを通じてパラチェーン間の相互運用が可能になります。XCMは単なるトークンの転送にとどまらず、チェーンをまたいだスマートコントラクトの実行を可能にしています。これにより、従来のブロックチェーンでは難しかった高次元の相互運用性を実現し、他プロジェクトとのプロダクト統合や協調をよりシームレスに行うことができるようになります。

Polkadotは、開発を継続的に進めており、2025年1月時点でPolkadot 2.0に移行しています。このバージョンでは、従来からのパラチェーンオークションが廃止され、「アジャイルコアタイム」と呼ばれる柔軟なリソース配分システムが導入されました。この仕組みにより、パラチェーンがリレーチェーンのリソースをより効率的に利用できるようになり、開発者は今まで以上に素早く新しいブロックチェーンを展開することが可能になります。

Polkadotのアーキテクチャ

3種類のチェーン構成

Polkadotは、主に3つのチェーンから構成されています。

リレーチェーン:レイヤー0として位置づけられ、レイヤー1のパラチェーンに相互運用性とセキュリティを提供します。リレーチェンがもたらすセキュリティは、$DOTの高い時価総額の恩恵を受けているため、他のPoSチェーンと比べても高いものになります。

パラチェーン:リレーチェーンに接続する複数のレイヤー1のブロックチェーンです。パラチェーンはリレーチェーンからセキュリティを継承するだけではなく、リレーチェーンのバリデーターにコンセンサスを任せることができます。

システムチェーン:Polkadotのエコシステムに不可欠なサービスを提供する専用チェーンです。アセットハブやブリッジハブ、コアタイムチェーンなどがあります。

アジャイルコアタイム ~ブロックスペース確保の仕組み

かつてPolkadotでは、パラチェーンがリレーチェーンのリソースを確保する仕組みとして、パラチェーンオークションが採用されていました。しかし、これはパラチェーンプロジェクトが多くのインセンティブ提供や、大規模なマーケティングを行う必要があり、非常に労力の大きいものでした。その後、パラチェーンオークションはPolkadot 2.0への移行により廃止され、新たなブロックスペース確保の仕組みとしてアジャイルコアタイム (Agile Coretime) が導入されました。

アジャイルコアタイムでは、パラチェーンプロジェクトはリレーチェーンのコアを使用できる権利の「コアタイム」を$DOTで購入する必要があります。コアタイムの購入は一括もしくはオンデマンドから選択することができ、前者の場合は28日間のコアの使用権を表すNFTをコアタイムマーケットプレイス(RegionXLastic)から購入します。

XCM ~安全な相互運用性の実現

Polkadotでは、パラチェーンの相互運用性をXCM(Cross-Consensus Messaging)を使って実現します。

XCM自体は、ブロックチェーン間におけるメッセージフォーマットであり、プロトコルではありません。XCMのメッセージは、XCVM (Cross-Consensus Virtual Machine) で処理され、トークンの転送やスマートコントラクトの飛び出し、資産のロックなど、単なるブリッジを越えた複雑なチェーン操作を実現します。

※XCMでカバーしきれないブロックチェーンの相互互換性は、後述のBEEFYにより実現します。

BEEFY ~トラストレスブリッジ

BEEFY (Bridge Efficiency Enabling Finality Yielder) は、XCMを使ったメッセージングでは対応できないブロックチェーン(Ethereumなど)と安全にブリッジを行うためのプロトコルです。Polkadotのリレーチェーンやパラチェーンで使用されるコンセンサスアルゴリズムのGRANDPAにより、パーミッションレスでトラストレスなブリッジを実現します。

BEEFYを採用しているブリッジとして、SnowbridgeHyperbridgeがあります。

アセットハブ ~任意のトークンで手数料支払うためのDEX

Polkadotでは、ユーザーがパラチェーンにおいて任意のトークンを支払うことができる仕組みとして、アセットハブ上でアセット変換パレットを提供しています。

パレットがない場合、ユーザーは手数料の支払いで$DOTのみを使用することになりますが、パレットのおかげで任意のトークンで手数料を支払うことが可能になります。パレット自体は、AMM DEXとして実装されています。ユーザーが任意のトークンで手数料を支払うと、自動的に$DOTに変換され、$DOTがバリデーターに支払われます。

DOTトークン

Polkadotでは、リレーチェーンのネイティブトークンとして$DOTが発行されています。

DOTトークンの概要

$DOTの用途は以下の通りです:

  • ガバナンス:ネットワークのガバナンスに参加するために使用されます。
  • ステーキング:ネットワークの運用とセキュリティをサポートするためにステーキングされます。ステーキングは NPoS (Nominated Proof of Stake) と呼ばれる方式で、主流のDPoSに似ています。
  • コアタイムの購入:コアタイムを一括またはオンデマンドで購入し、リレーチェーンのセキュリティと相互運用性のメリットを享受するために使用されます。

DOTトークンのインフレ

$DOTはインフレトークンとなっており、毎年1.2億枚が固定で発行されます。そのうち15%はトレジャリーに、85%がステーカー報酬に配分されます。

また、$DOTはトレジャリーとコアタイムの売上に応じてバーンされます。これらは可変的な数字です。そのため、実質的なインフレは毎年の固定発行数量から、バーン数量を差し引いた値になります。

$DOTの発行数量とインフレ率の推移

$DOTの発行数量とインフレ率の推移 ※バーンを考慮しない値(引用:DOT Inflation Model

DOTトークンを売買できる取引所

Polkadotに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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