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Hinkalの解説 ~プライベートウォレットを実現するソリューション

プロジェクト解説
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Hinkalの概要

Hinkal(ヒンカル)は、オンチェーンでプライバシーを保護することに特化したプロトコルです。トランザクションを非公開にすることができるウォレットや、アプリケーションのためのSDKやAPIを提供しています。

ブロックチェーンのウォレットには一般的に透明性があり、第三者が誰でもウォレットの残高やトランザクション履歴を閲覧できてしまいます。これにより、ハッカーや競合他社に資産状況を知られるリスクが生じていました。

Hinkalはこの「パブリックウォレット」の問題に対処し、あらゆるブロックチェーン取引を可能にしながらユーザーの機密データをオンチェーン上で一切漏洩しない「プライベートウォレット」を実現します。技術的には、ゼロ知識証明などを駆使したセルフカストディのプライベートウォレットを提供しています。通常のウォレットからHinkalに資産を入金すると専用のアドレスが生成され、そのアドレスを通じて資産を保管・送受信しながら様々な分散型アプリケーションと完全なプライバシーを保ったままやり取りすることができます。

また、Hinkalはプライバシーと利便性を両立するだけでなく、規制遵守にも重点を置いて設計されています。ユーザーは、自身のウォレットをKYC/KYBし、アドレスが制裁リストにないことを確認した後にHinkalを利用することができます。

このプロジェクトはスタンフォード大学およびBinanceのインキュベーションプログラムから誕生し、Draper AssociatesやNGC Venturesなど複数の有力VCから出資を受けています。

Hinkalの特徴

プライバシー保護

Hinkalは、ユーザーのオンチェーン上の痕跡を極限まで秘匿します。ユーザーがHinkalに入金すると、資産はユーザーごとに割り当てられたプライベートアドレスに保管され、以降の操作はすべてHinkalのスマートコントラクト経由で実行されます。これによりブロックチェーン上では利用者個人のパブリックアドレスが直接露出せず、外部からはHinkal利用者全体の活動に埋もれて個々のユーザーを識別することが困難になります。

この動画では、$ETHを$hETHとのスワップにおいて、トランザクションを実行したアドレスがウォレットのパブリックアドレスではなく、Hinkalのコントラクトアドレスであることがわかります。

Hinkalのコントラクトアドレスは個人に紐づいているわけではないので、エクスプローラからは誰がスワップをしたかはわからなくなっています。

また、取引の相手方に対するプライバシーも確保されています。例えばユーザーが他者にトークンを送信する際、その送金はHinkalのスマートコントラクトから直接行われるため、受取人は送信元の個人アドレスを知ることはできません。一方で資金を受け取る場合は、Hinkalが生成したワンタイムのパブリックアドレスにトークンが送られ、さらにトークンは自動的にユーザーのプライベートウォレットで保管されます。このように、取引ごとにパブリックアドレスが使い捨てられることで、相手方にもユーザーの資産状況を知られることなく安全に送受金することができます。

さらに、Hinkal上のすべての取引はゼロ知識証明によって検証・実行されます。各トランザクションはユーザーが十分な残高を有し正当な操作であることを暗号学的に証明してから承認されますが、その際に送受信アドレスや取引金額といった重要な情報は一切公開されません。Hinkal自身もユーザー個々の残高や取引内容を知ることはできず、プライバシーを維持しながらユーザーが取引できることを担保しています。

コンポーザビリティ

Hinkalは複数のブロックチェーンやアプリケーションと統合できる高いコンポーザビリティを備えています。現在、Ethereum をはじめ Arbitrum、Optimism、Base、Polygon、BNB Chain、Avalanche といった主要7つのEVM互換チェーン上でプロトコルが稼働しており、ユーザーは各チェーン上のあらゆるERC-20トークンおよびスマートコントラクトとプライベートにやり取りすることができます。またHinkalウォレットはWalletConnectに対応しているため、既存のDeFiアプリに接続してスワップやステーキング、流動性提供といったすべての操作をプライバシーを保ったまま実行することができます。

このコンポーザビリティは開発者にとってもメリットがあります。HinkalはSDKおよびAPIを提供しており、他のウォレットやアプリケーションが既存のスマートコントラクトを変更することなくHinkalのプライバシー機能を組み込むことができます。この柔軟な設計により、Hinkalは他のプロトコルと組み合わせた複雑なユースケースにも対応できるようになっています。

コンプライアンスへの対応

Hinkalは、高度なプライバシー保護機能を提供しながら、規制当局が求めるコンプライアンス要件にも十分な配慮を行っています。具体的な対策として、一定額以上の資産を扱うユーザーには事前の本人確認(KYC/KYB)を必須とし、制裁リストに該当しないアドレスのユーザーのみがHinkalを利用できます。

このコンプライアンス対応の中核となるのが、アクセストークンと呼ばれる検証済みの証明をウォレットに紐付ける仕組みです。ウォレットの認証プロセスでは、ユーザーのウォレットに信頼できる証明が存在するかを確認します。具体的には、Binance Account Boundトークン(BABT)、Galxe Passport、zkMeによるソウルバウンドトークンなどが該当します。これらの証明を持たないユーザーについても、代替的な認証手段が用意されています。提携先のReclaimプロトコルを通じて、BinanceやCoinbaseといった主要取引所のアカウント所有をゼロ知識証明で検証することができます。この方法により、ユーザーは個人情報を開示することなく、制裁リストなどに該当しないことを証明することが可能です。

このように、Hinkalは技術を活用することで、ユーザーのプライバシーを最大限に保護しながら、コンプライアンス要件との両立を実現しています。

Hinkialのアドレス認証
Hinkialのアドレス認証(引用:Compliance & Security

$ETHの匿名リキッドステーキング

ユーザーは$ETHをHinkalのプールにステーキングすることで、$hETHと呼ばれるLPT(Liquid Privacy Token:リキッドプライバシートークン)を受け取ることができます。これにより、ユーザーはステーキングしている$ETHの数量を隠したまま$ETHをステーキングすることができます。

また、$ETHを引き出したい場合、ユーザーは$hETHを確保し、Hinkalのダッシュボード上でステーキング解除操作をします。$hETH ごとに受け取る$ETH の量は異なり、1:1 の比率にはなりません。$hETHの$ETHでの価値は、利回りが蓄積されるにつれて時間の経過とともに増加します。

匿名ステーキング
匿名ステーキング(引用:Anonymity Staking

Hinkalに関する情報

 

 

 

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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