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自律型AIエージェント時代の決済インフラ:TempoとMachine Payments Protocol

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今日のインターネット決済は、アカウント作成・クレジットカード入力・多要素認証など、あらゆる場面で人間の介入を前提として設計されています。AIエージェントが外部サービスに自律的にアクセスし、プログラム的に支払いを行う必要がある場合、この人間中心の設計は十分に動作しません。

加えて、自律型ボットによるデータ消費の急増も深刻な問題です。2024年以降、Wikipediaのリソース集約的なトラフィックの65%以上をボットが占め、帯域コストが大幅に増加しています。こうした事態は、ボットのアクセスを遮断するのではなく、マイクロペイメントで収益化して制御する「機械ネイティブな決済レイヤー」が明確に必要になっていることを示しています。

Tempoブロックチェーン:決済特化型のLayer 1

こうした課題に応えるべく、オンライン決済大体のStripeとWeb3大手VCのParadigmの主導により開発されたのが、現実世界の決済処理に特化したEVM互換のLayer 1ブロックチェーン「Tempo」です。Tempoでは、ネイティブトークンは発行されていません。

既存のブロックチェーンでも決済は可能ですが、DeFiやNFTなど他の用途とブロックスペースを奪い合うため、手数料の急騰や遅延が避けられません。Tempoはこの問題を、以下の設計によって解決しています。

  1. 専用決済レーンにより、ネットワーク負荷にかかわらず決済トランザクションは常に優先処理されます。
  2. ステーブルコイン建てのガス代により、USDCなどのドルペッグ通貨で手数料を支払えるため、価格変動リスクを排除してコストを正確に管理できます。
  3. 約0.6秒の決定論的ファイナリティにより、決済は即座に確定し、チャージバックのリスクもありません。
  4. さらに、ガス代のスポンサーシップ、バッチ処理、パスキー認証といった機能も標準で備えています。

Tempoは、メインネット立ち上げ時点で、Alchemy・Dune Analyticsを含む100以上のサービスに統合済みであり、Visa・Mastercard・Deutsche BankといったレガシーFintech企業から、OpenAIなどのAI企業まで、広範なデザインパートナーがステーブルコインを用いた各種決済のテストを行っています。

Machine Payments Protocol(MPP):AI間決済の標準

Tempoのインフラストラクチャのうえで機能するインターフェース層が、StripeとTempo Labsが共同開発した「Machine Payments Protocol(MPP)」です。MPPはAIエージェントが人間の介入なしに自律的に決済できるオープン標準プロトコルであり、IETFにも正式な標準として提案されています。

MPPは長年未使用だったHTTPステータスコード「402 Payment Required」を活用します。有料リソースへのリクエストに対してサーバーが402を返すと、クライアントが自動的に決済を履行し、承認済みの再リクエストを送信します。この一連のやり取りがHTTPのリクエスト・レスポンスの中に完結する点が最大の特徴です。

決済方法では「Charge(1回払い)」と「Session(継続的なストリーミング決済)」の2種類があります。特に後者は、ブロックチェーンベースの支払いでは簡単には実現できなかった方法であり、電気・水道のような完全な従量課金型の決済ができるようになります。

また、MPPは決済レール非依存の設計になっており、Tempoのステーブルコインだけでなく、StripeのShared Payment Tokens(SPTs)を通じたクレジットカードなど、Stripeが対応する各種支払い手段にも対応しています。

x402との比較:オープン性 vs エンタープライズ実用性

MPPと並ぶ競合規格として注目されるのが、CoinbaseとCloudflareが設立したx402 Foundationが主導する「x402」プロトコルです。両者はHTTP 402を活用するという点で共通していますが、設計思想は明確に異なります。

x402は特定のブロックチェーンに依存せず、徹底したオープン性とベンダーロックインの排除を優先しており、ロングテールのオープンなユースケースを主なターゲットとしています。

一方のMPPは、Stripeの既存エコシステムと深く統合することで、エンタープライズ企業が直面する実用的なビジネス要件を重視しています。税務処理・不正対策・返金といった複雑なコンプライアンス業務をStripeのインフラが自動処理するため、企業はシステムをゼロから作り直すことなく、AIエージェントからのトラフィックを即座に収益化できます。

まとめ

TempoブロックチェーンとMachine Payments Protocol(MPP)の登場は、インターネットの基本プロトコルであるHTTPに長年欠落していた「ネイティブな価値移転の仕組み」を、ついに実装に近づけるものです。AIの普及が進む中、今後の最も増えるであろう支払いはAI対AIと言われており、両者はそのような未来を前提として開発されました。

x402とMPPはHTTP 402を起点とするという共通点を持ちながら、前者はオープンなエコシステムの構築を、後者はエンタープライズ領域での即時導入のしやすさをそれぞれ優先しており、両者は必ずしも対立ではなく、用途に応じた棲み分けが進む可能性があります。

Tempo / MPP に関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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