Midnightの概要
Midnight(ミッドナイト)は、Cardanoブロックチェーンを開発する Input Output Global(IOG)が手がける、プライバシー重視型のレイヤー1ブロックチェーンです。Cardano をはじめとする従来のパブリックチェーンは、トランザクション履歴が誰にでも検証できる透明性を武器とする一方で、その「過度の透明性」が個人や企業の機密データ活用を妨げてきました。Midnightは暗号学的秘匿化と必要時の選択的開示を組み合わせた「合理的なプライバシー」を掲げ、規制要件を満たしつつ安全に機密情報を扱える次世代プラットフォームを目指しています。
技術面では、MidnightはCardano初の “パートナーチェーン” として位置づけられています。これは Polkadotのリレーチェーン/パラチェーンに近い概念で、Cardanoブロックチェーンがセキュリティと流動性のハブを担いながら、用途特化型の独自レイヤー1を自由に展開できるアーキテクチャを実現します。
また、開発者体験も大幅に刷新されました。CardanoがDAppエコシステム拡大に苦戦した主因であるHaskell系言語への依存を反省し、MidnightではTypeScriptベースのスマートコントラクト言語「Compact」を採用。世界有数の開発者人口を抱えるTypeScriptを土台にすることで、より多様な開発者コミュニティの参入が期待されています。
さらに2025年6月現在、Midnightはブロックチェーン史上最大級とも称されるエアドロップを予定しており、複数チェーンにわたってネイティブトークンを保有するユーザーが対象になる見込みです。メインネット公開前から大規模なコミュニティの注目を集めており、Cardanoエコシステムの新たな成長エンジンとして期待が高まっています。
Midnightの特徴
Cardano初のパートナーチェーン
Midnight は、Cardano エコシステム初の “パートナーチェーン” として構築されています。パートナーチェーンとは、Cardano 本体と相互運用しながらも独自のコンセンサス・ガバナンス・トークノミクスを備えたレイヤー1 ブロックチェーンのことで、Cardano が提供するセキュリティや流動性のハブ機能を活用しつつ、個別のユースケースに最適化された設計が可能になります。
Midnight のネットワーク運営には、既存の Cardano SPO(ステークプールオペレーター)がそのままバリデーターとして参加できる仕組みが採用されており、Cardano が誇る高度な分散性と安定性をシームレスに取り込める点が大きな特徴です。さらに、CardanoとMidnightとの間には高信頼のブリッジが提供され、資産やデータの移転を安全かつ効率的に実現。これらのアーキテクチャにより、Midnight は Cardano の拡張チェーンとしての恩恵を享受しつつ、用途特化型チェーンとしての独立性も保持するハイブリッドな構造を実現しています。
It’s time for a thread on Partner Chains it seems ?
Cardano’s Partner Chain framework, powered by the Minotaur consensus protocol, is set to revolutionize blockchain interoperability and scalability.
Here’s how ??
1/13 https://t.co/EEYPsOMd3d pic.twitter.com/4UjNlkTYhk
? Romain Pellerin???? (@rom1_pellerin) February 14, 2025
ZK-SNARKによるデータ保護と選択的開示
Midnight の最大の強みは、ゼロ知識証明、そのなかでもZK-SNARKを用いた高度なプライバシー保護にあります。ブロックチェーン上でやり取りされるデータのうち、機密に当たる部分を暗号学的に隠蔽しながらも、必要な事実だけを数学的に証明できる点が特徴です。たとえば企業は顧客情報を一切開示せずとも規制当局にコンプライアンスを示すことができ、個人は財務情報を漏らさずにプライベートな取引を完結できます。
さらに Midnight では、開発者がスマートコントラクト単位で「公開するデータ」と「秘匿するデータ」を細かく設定できます。こうした選択的開示の仕組みにより、透明性と秘匿性の最適バランスを保ちながらユースケースごとに柔軟な設計が可能です。その結果、ユーザーや企業はデータ漏洩リスクや守秘義務といった課題を軽減しつつ、安心してブロックチェーン技術を活用できる環境が整います。
TypeScriptベースのスマートコントラクト言語「Compact」
Cardanoチェーンでは長らく関数型言語 Haskell 由来の Plutus がスマートコントラクト開発に用いられてきましたが、「習得難易度の高さ」が参入障壁となり、エコシステム拡大の足かせになっている―という課題が指摘されてきました。実際、近年はより扱いやすい選択肢としてAikenが注目を集める状況にあり、Input Output Global(IOG)は開発者体験の抜本的な改善を迫られていました。
こうした背景を踏まえ、Midnight では新たなスマートコントラクト言語「Compact」を採用します。Compact は TypeScript をベースに設計されており、ブロックチェーン固有の低レベル知識やゼロ知識証明の深い専門性がなくても、既存の Web2/Web3 開発者が比較的スムーズに参入できることを目指しています。TypeScript の豊富なライブラリやツールチェーンをそのまま活用できるため、開発初期の学習コストを大幅に削減できるほか、チーム内でのコード共有・レビューも容易になります。
IOG は Compact の導入によって開発の敷居を下げ、より一般的なスキルセットを持つエンジニアを呼び込むことでコミュニティを拡大し、Midnight ひいては Cardano 全体の活性化を図る考えです。
マルチチェーン対応と協調的経済モデル
Midnight は Cardano との連携にとどまらず、複数チェーンを横断する相互運用性を前提に設計されています。その核心にあるのが、独自の 「協調的経済」モデル です。
まず、アプリケーション開発者は Ethereum、Solana、Bitcoin、XRP Ledger など各チェーンのネイティブトークンで手数料を支払えます。一方で Midnight のバリデーターは、どのチェーン由来のトランザクションでも報酬を受け取れる仕組みになっており、経済インセンティブがチェーン単位ではなく “ネットワーク全体” にまたがる点が大きな特徴です。言い換えれば、ユーザーや開発者はチェーンの違いを意識することなく、複数ブロックチェーンのリソースを組み合わせて利用できます。たとえば、資産管理は Ethereum、機密処理は Midnight というように、用途に応じて最適な機能をシームレスに呼び出すことが可能です。
この設計により、Midnightは他のレイヤー1に対して「プライバシー特化のレイヤー2」としても機能します。Cardano創設者のチャールズ・ホスキンソン氏が「暗号資産業界に蔓延するチェーン間の部族主義を終わらせたい」と語るように、Midnight は競争ではなく役割分担による共存を推進。各チェーンが得意分野を担い相互補完する新たなエコシステムのハブとして、多チェーン向けのプライバシーレイヤーを提供することを目指しています。
Midnightのトークンとエアドロップ
Midnightでは、VCが入っておらず、エアドロップやエコシステム貢献者のためのインセンティブとして配られたトークンが流通することになります。
デュアルトークンモデル
Midnightでは、$NIGHTと$DUSTという2種類のネイティブトークンが導入されます。
- $NIGHT:ガバナンストークンであり、ネットワークのガバナンスやコンセンサス参加、ステーキング報酬の受け取り取りに使われます。このトークンは、初期段階ではCardano Native Assets形式(EtereumのERC20に相当)で発行されます。
- $DUST:取引用のユーティリティトークンで、Midnight上での取引手数料支払いやスマートコントラクト実行時のガスとして使われます。$DUSTは$NIGHTから生成され、譲渡不可になっています。
エアドロップ
Midnightでは、大規模なエアドロップが計画されています。エアドロップは3段階で構成されます:
- Glacier Drop
- Scavenger Mine
- Lost-and-Found
Glacier Drop
Glacier Dropは約3700万件のウォレットアドレスが対象になります。2025年6月11日のスナップショット中に、参加ネットワークに属するアドレス($ADA、$BTC、$ETH、$SOL、$XRP、$BNB、$AVAX、または $BAT)にトークンを最低100ドル相当の残高で保有していた場合に、割り当てを受ける権利があります。
8/ When was the Snapshot?
The snapshot took place on June 11th 00:00 UTC.
? Midnight (@MidnightNtwrk) June 23, 2025
Scavenger Mine
Scavenger Mineは、トークン保有者だけでなく、前回の申請フェーズに参加したかどうかに関わらず、計算タスクを解決するためのコンピューティングパワーを提供するすべての人が参加資格を得られます。特別なハードウェアは不要で、申請者は自分のコンピューターを使って参加できます。
Lost-and-Found
メインネットのローンチ後しばらくして、元々Glacier Drop の対象であったものの、最初の60日間の請求期間中に請求しなかった参加者には、元の割り当ての一部を請求する別の機会が与えられます。