Blessの概要
Bless(ブレス)は、「世界初の共有コンピュータ」の構築を目指すDePINプロジェクトです 。その中核的なビジョンは、世界中の日常的に使用されるデバイスの計算リソース(CPU/GPU)を活用し、オンデマンドで計算能力を提供する分散型エッジコンピューティングネットワークをもたらすというものです。
現在、インターネットのインフラはAmazonやGoogle、Microsoftといった巨大テック企業によって寡占されており、その恩恵もまた彼らに集中しています。Blessは、この中央集権的な構造がもたらす高コスト、データ転送のボトルネック、単一障害点といった課題を解決することを目指しています。ユーザーはブラウザ拡張機能を使って自らのデバイスリソースを提供し、その対価として報酬を得します。リソースの需要家は、ユーザーから提供された計算リソースを使って自らのアプリケーションを展開することができます。
Blessの革新的な点が、独自開発の「ネットワークニュートラルアプリケーション(nnApp)」フレームワークと、その内部に組み込まれた「ネッスルドノード(nestled node)」インフラです 。これにより、ユーザーは特別な操作を意識することなく、対応アプリケーションを利用するだけで、保有デバイスの計算リソースを提供できるようになります。タスクの実行には、プラットフォームに依存しない安全な実行環境であるWebAssembly (WASM)が採用されており、開発者とユーザー双方のセキュリティを確保しています 。
プロジェクトは、Akash Networkの元CTOであるDerek Anderson氏をはじめとするWeb3分野の経験豊富なメンバーによって共同設立されました。NGC VenturesやM31 Capitalなどの著名な投資家から合計800万ドルを調達した経緯があり、2025年7月現在、インセンティブ付きのテストネットが稼働中です。
Blessの特徴
nnAppフレームワーク:アプリケーションネイティブなリソース提供
Blessの最も革新的な点は、「ネットワークニュートラルアプリケーション(nnApp)」という新しいアプリケーションパラダイムの導入です 。従来のDAppsが、フロントエンドやRPCプロバイダーなど、依然として中央集権的な要素に依存することが多いのに対し、nnAppはアプリケーション自体に「ネッスルドノード(nestled node)」を組み込むことで完全な分散化を目指します。
ユーザーは、nnApp対応のアプリケーションを起動して利用するだけで、その行為が自動的にネットワークへの計算リソース提供に繋がります 。多くのDePINプロジェクトでは、ユーザーが「リソース提供者になる」と能動的に決断し、専用のソフトウェアをインストールする必要があります。しかしBlessでは、アプリケーション利用そのものがリソース提供につながります。これは、ネットワーク参加への心理的・技術的障壁を大幅に引き下げます。
これは、Blessがターゲットとするリソース供給者の母集団が、単なる「ノードを稼働させたい人々」から「Bless上で構築されたアプリケーションの全ユーザー」へと飛躍的に拡大することを意味しています。結果として、ネットワークの計算能力は、アプリケーションのユーザー数に比例してスケールアップする可能性があります 。
動的リソースオーケストレーションとWASM実行環境
Blessネットワークは、単にリソースを集約するだけでなく、それをインテリジェントに管理・配分するオーケストレーション層に重点を置いています 。
中核となるのが「動的リソースマッチング」機能であり、ネットワークに参加する各ユーザーデバイスをハードウェア仕様、パフォーマンス履歴、地理的位置などに基づいて分類し、個々の計算タスクに最も適したデバイスを割り当てます 。例えば、機械学習のような高負荷タスクは高性能サーバーに、データ検索や分析といった軽量タスクはデスクトップPCやラップトップに、といった具合に最適化されます。この選定プロセスでは、応答時間や過去のパフォーマンスが考慮されるため、信頼性の低いノードは自然と淘汰されていきます。
実行環境にはWebAssembly (WASM)が採用されています 。WASMは、サンドボックス化されたセキュアな実行環境を提供するため、ノード提供者のデバイス本体のシステムから計算タスクを完全に隔離します。これにより、ユーザーのプライバシーとセキュリティが保護されると同時に、開発者はPython、Go、Rustなど多様な言語で開発したアプリケーションをプラットフォームを問わず展開できます。
多層的な検証とセキュリティモデル
分散型ネットワークにおける信頼性の担保は極めて重要です。Blessは、この課題に対して多層的なアプローチを採用しています。
まず、タスクをランダムにノードへ割り振ることで、悪意のあるノードが特定のタスクを予測して共謀することを防ぎ、ネットワーク全体の健全性を高めます 。
また、開発者がアプリケーションの要件に応じて検証方法を選択することが可能な動的検証メカニズムが実装されています 。例えば、価格フィードのようなデータ集約タスクでは加重平均を、より厳密な結果が求められるタスクではpBFTのようなコンセンサスアルゴリズムや、最終的な検証ステップとしてゼロ知識証明を生成することも可能です 。
また、将来的にはネイティブトークン$BLSによるProof of Stake (PoS)の導入も計画されています。
2種類のノード:Extension NodeとNative Node
Bless Networkは、その供給サイドを構築するために、異なるユーザー層をターゲットとした2種類のノードを用意しています。
Extension Node (Chrome拡張機能)
Extension Nodeは、Blessへの参加を最も簡単にするためのエントリーポイントです。これはGoogle Chromeの拡張機能として提供され、ユーザーは数クリックでインストールし、メールアドレスかGoogleアカウントでログインするだけで、自身のデバイスをネットワークのノードとして参加させることができます 。
このノードの最大の特徴は、その手軽さにあります。ユーザーがウェブを閲覧している間のアイドル状態のCPUやGPUリソースを自動的かつ匿名で提供し、バックグラウンドでポイントを蓄積します 。特別な技術知識は一切不要で、安定したインターネット接続さえあれば誰でも貢献可能です。
2025年7月現在、インセンティブ付きテストネットに参加し、将来のエアドロップの対象となる最も簡単な方法はこのExtension Nodeをインストールすることです。
参加方法:
- Blessの公式サイト(https://bless.network)でアカウントを登録します。
- Google ChromeウェブストアからBlessの拡張機能をインストールします。
- 登録したアカウントで拡張機能にログインし、ノードを有効化します。
Native Node
Native Nodeは、より技術的な知識を持つユーザー、開発者、そして本格的なリソース提供者を対象とした、より高性能で設定自由度の高いノードです。
Native Nodeは、単なるリソース提供(workerロール)だけでなく、開発者がタスクをデプロイし、管理するためにも機能します(headロール)。workerとして稼働させる場合、CPUやメモリの使用上限などを細かく設定でき、専用のマシンでリソースを提供することも可能です。一方、headロールではネットワークに計算要求を送信できるため、Blessの需要サイドを担うツールにもなります 。
このNative Nodeは、ネットワークに高品質で信頼性の高い計算能力を供給するノードと位置づけられ、AIや機械学習のような高負荷なタスクを処理できるだけのキャパシティを確保するために不可欠です。
BLSトークン
2025年7月25日時点で、$BLSの詳細は公開されていません。
Blessに関する情報