まだまだ活用方法の模索が続いているパブリックブロックチェーン、しかし多くのパブリックブロックチェーンのプロジェクトは、自分たちが創ったインフラが未来にイノベーションを起こすことを信じながら日々開発競争を繰り広げています。
Orbsもそのようなプロジェクトの1つで、特に企業用途にこだわってブロックチェーンを開発しています。Orbsブロックチェーンの本稼働に伴い、日本事業担当の堀田真代氏にインタビューしました。
第1部では、堀田氏にOrbsがどのようなプロジェクトかを訊きました。
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堀田氏の自己紹介、Orbsとの出会い
加藤:まずは堀田さんの自己紹介お願いします。今まで何をしていて、どうブロックチェーンと関わり、Orbsにジョインしたのでしょうか?
堀田:私は2004年にソフトバンクに就職して、そこを12年間務めて2年前に辞めてイスラエルに引っ越しました。
私は岐阜出身で、実家があるのは人口3万人超の小さな町で、両親は農家をしています。そこでは、特に女性として生きてきて、いろんなものに対してスタックするのですよ。結婚して、子供がいて、それが女の生きる道だ、大学行く必要がないという感じの育てられ方をしました。私には弟がいるのですが、特に祖父母からは私と弟との期待値に差がありました。うちの両親はもう少しリベラルな考え方ですけどね。
そういうのが嫌で、高校で交換留学生としてアメリカのオレゴンに旅立ち、なんだかんだ言い訳をしながら合計6年間アメリカで過ごし、2014年にカリフォルニア大学サンタバーバラ校を卒業しました。
サンフランシスコで就活していたときに、たまたま出会ったソフトバンクで本社採用になりました。その頃の私は、人生をまだ模索しており、本社採用と聞いたときに経営に近いところでいろいろとチャレンジできるのではないかと思い就職を決めました。
ソフトバンクでは、経営企画や投資部門、社長室に置いていただきました。そこでは、投資や投資先のモニタリングをやりました。これらが私の1つの基礎になっています。投資部門では、ニュースに出るような会社を担当していました。例えば、ボーダフォンの買収やアリババも対応していました。仕事では、ジャック・マーにもお会いする機会があったり、同社の上場までのプロセスを株主の立場で関わることもでき、毎日がビジネススクールのようでした。
ブロックチェーンとの出会いは、2011年の東日本震災がきっかけです。ソフトバンクとして東北の支援をするためにプロジェクトをはじめました。そのときに、孫さんと当時のアメリカ大使のルース大使とで何かやろうということになって、高校生向けのプロジェクトをやることになり、立ち上げを担当しました。そこで、孫さんの母校であるカリフォルニア大学バークレー校に初年度は300人、その後2021年まで毎年100人の高校生を連れて行くプロジェクトを立ち上げました。TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラムといいます。
加藤:連れて行く人数がまた多いですね!
堀田:最初は1年限定のプロジェクトとして始まりました。私としては、東北に真のインパクトをもたらすには10年くらいやらないと意味がないと思い、会社から10億円の予算を取り政府が定める復興期間と同じ10年プロジェクトにしました。私がソフトバンクをやめてからも、今も後任の担当者がそのプロジェクトをやっています。昨年度までに900人の東北の高校生がUCバークレーに行っています。
加藤:UCバークレーとは、これはまた名門大学ですね!
堀田:そうですね。孫さんがそこで大学時代を過ごして、インターネットに目覚めたというところです。
私自身、もやもやした10代を岐阜で過ごし、高校・大学時代とアメリカに行くことで人生の機会を掴んだと思っていますが、孫さんも同じような経験をされたんです。
東北の高校生が震災後や震災前から持っていたモヤモヤ感、特に沿岸部の高校生が持っていたモヤモヤ感というのは孫さんとも、私とも似ているところがあると思います。
プロジェクトを進めるために、サンフランシスコに2012年から毎年1ヶ月ずつ行っていたので、その中で2013年にKrakenの創業者のジェシーに会いました。ジェシーとは、ドーナツ屋さんで夜中にコーヒー飲みながら話す感じでした(笑)
そして同じくKrakenで働いていた宮口礼子さんとも出会いました。今は彼女はイーサリアム財団のエグゼクティブ・ディレクターをやっていますが、その後はずっとベストフレンドで、いろいろと関わる機会がありました。
それが私の2013年のブロックチェーンとの出会いですね。
加藤:結果的に、いまの業界の重鎮に早い段階から会っていたわけですね。
堀田:そうですね。私は、まだその時はソフトバンクにいました。
私は、宮崎さんからブロックチェーンというのは社会を良くするものであると聞いていました。私のゴールとして、持続的な仕組みを作り出すビジネスや投資と、東北の支援の中で学んだソーシャルインパクトの2つのバックグラウンドを生かして、社会をより良いものにしたいと思っていました。なので、私の中でそれは何なのだろうと探していた中で、今はブロックチェーンに行き着いています。
なんだかんだで、私はイスラエル人の旦那と結婚しました。夫はイスラエルで最大の災害支援団体を運営していて、世界18ヶ国で運営していて、仙台にもオフィスがあります。彼は人の痛みを知る人です(笑)
私が結婚したときはまだソフトバンクにいるときだったのですが、次に何かチャレンジしたいなと考えていました。そのときに、アメリカに行くかイスラエルに行くかを比べていて、既にアメリカには6年住んでいたので、イスラエルに引っ越すことにしました。イスラエルに引っ越してかれこれ2年ですね。
最初はすぐにブロックチェーンに行き着いたわけではありませんでした。当時2017年の後半くらいから暗号通貨が流行っていましたが、私はそれには興味がなく、お金を儲けるとか損するというのにも興味がありませんでした。
私は、そのときは日本とイスラエルをつなぐコンサルタントとして独立していました。そうこうしているうちにOrbsの創業者に出会って、パッションに触れ、これは探していた会社だと思いました。やっとこの業界で技術にフォーカスする、私が求める経済的価値とソーシャルインパクトを生むことができると思ってジョインしました。
加藤:ちなみに、創業者のパッションというのはどのようなものだったのですか?
堀田:最初に私が出会ったのはウリエルだったのですが、ウリエルという人はアリババに2017年に会社を売っていて、アリババが初めて買ったイスラエルの会社でした。
彼とどうしてブロックチェーンをやっているのかとカジュアルに話していて、そこで話をしたときに、彼がいろいろなことをやってきた話をききました。会社も売って、相当お金も儲けたのでしょうけれども。そこで、次の人生を賭けてでもチャレンジできることは何なのだろうと思ったときに、それがブロックチェーンだったと。
彼には私が思うものと被るところがたくさんあって、この会社は面白いなと思いました。そこからOrbsの技術について知っていくわけですけれども、この会社はただ言っているだけではなく、ちゃんと人も揃えていっているし、先のミッションに向けて進める力を持っているなと感じてジョインしました。
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Orbsとはどのようなプロジェクトか?
加藤:Orbsとは多くの人には理解が難しいプロジェクトでもあります。そもそも、何をしようとしているプロジェクトなのでしょうか?
堀田:すごく難しい質問だと思います。私たちも毎日未来を予測しながら計画を描いているので、毎週変わるものもあるのですけれども。Orbsがビジョンとして持っているものは、パブリックブロックチェーンが社会のスタンダードを作るということです。
加藤:そこでしようしているということは何なのでしょうか?
堀田:概念的にいうと、社会のスタンダードを作っている人が誰なのだろうと考えたときに、私たちはアプリ開発者とかゲームを作っているところとか、そういうところではないと思っています。そうしたときに、大企業や顧客が多いインパクトを生める会社が求めている技術を作っていきたいと思っています。それが、私たちが目指すものです。
加藤:Orbsのようなプロトコルのプロジェクトを理解してもらうのはなかなか難しいですよね。Orbsは、イーサリアムのミドルウェアという方針をとっていますが、なぜなのでしょうか?
堀田:私達のグループは、2013年に共同創業者兼プレジデントのダニエル・ペレッドがヴィタリックと出会っていたり、世界初のICOのマスターコインに関わっていたりと、そういうアーリーステージからのバッググラウンドがあります。
創業者の当時の投資額は6,000倍になり、それを元手に新たな投資やICOのサポートをしていきました。それが2017年にやっていたことです。例えば、有名なところだとKik MessengerのKINですね。カナダのメッセージングアプリのブロックチェーン部門が100億円超を調達していますが、そこの資金調達をしたのも私たちです。
自分たちの投資も含めて、サポートした数多くの会社の資金調達額は合計600億円にのぼりました。
こういうサポートした会社をブロックチェーン化しようとしたときに、色々な技術を試してきて、やってみたときに使える技術がないということがわかりました。しょうがないから自分たちで作ろうとなってできたのがOrbsです。
なので、市場にあるニーズにフレキシブルに対応してきた先にOrbsがあったということですね。
今は、リクイデーションレイヤーとして、イーサリアムが非常に強いと私たちは思っています。あと、パブリックかプライベートかといったときに、そもそもOrbsのビジョンとしてパブリックというのが軸にあるので、その中でもイーサリアムは強いプレイヤーだと思っています。
だとしたら、彼らが補いきれないスケーラビリティや、必要な要素、もう1つ先の私達の顧客となる法人が求める要素を提供するミドルウェアになりたいというのが、私達の立ち位置です。
加藤:Orbsのようなプロダクトの開発はすごく時間がかかると思います。開発に着手したときは、イーサリアムはそこまで詰まっていなかったころだと思われるのですが、イーサリアムが詰まることを見越してOrbsを開発したのでしょうか?
堀田:そんなことはないです。プロジェクトをやり始めたときは、まっさらなプロトコルを作ろうと思ったこともありました。
様々なトライアンドエラーをして、結局2018年になってから、やっぱり強いのはイーサリアムだよねという発見がありました。そこからアトミックスワップができるであったりとか、相互運用性であったりと、イーサリアムが既に築いた市場との連携がしやすい造りになっています。
ただ、イーサリアムにこだわっているわけではなくて、将来はEOSでもいいし、NEMでもいいし、ミドルウェアとして常にありたいと考えています。
加藤:ベースレイヤーについてはイーサリアムありきではなく、柔軟に考えているのですね。
次回予告
いかがでしたでしょうか?
第1部では、堀田氏がOrbsに加わることになったきっかけや、なかなか理解が難しいOrbsについて語っていただきました。
第2部では、Orbsが世界においてどのようなマーケティングをしてきたのかを紹介します。
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