日本に本格進出しつつあるOntology(オントロジー)は、他のブロックチェーンと異なるステーキングを採用しています。
筆者は、Ontologyにステーキングについて創業者のAndy Ji氏に質問する機会があったので、質問内容とともにOntologyのステーキングについて紹介します。
Ontologyの概要
Ontologyは「信用の再定義」を掲げている活動しているブロックチェーンプラットフォームのプロジェクトです。
その発祥は、ブロックチェーンプロジェクトのNEOと深い関わりがあります。NEOは2016年にブロックチェーンの技術導入支援を行う企業であるOnchainを設立しました。Ontologyは、Onchainから派生する形で誕生し、企業がビジネスで直面する信用問題をパブリックブロックチェーンで解決することを目指しています。
Ontologyは日本でこそ名前は知られていませんが、世界的には既に有名なブロックチェーン企業です。200を越える主要チームメンバーで構成され、19の言語圏で活動し、200万を越えるコミュティ貢献者によって支えられています。
Ontologyの主要機能
Ontologyブロックチェーンは、実は機能面の開発がかなり先行しています。ここでは主要機能を紹介します。
ONT IDは、自己主権型のIDの仕組みです。現状のID利用の効率化方法としては、他サービスにおけるGoogle IDやFacebook IDによるログイン方法がありますが、個人情報がID管理者に帰属する形になり、情報流出やプライバシー侵害のリスクをゼロにすることはできません。ONT IDにより、IDがブロックチェーン上で安全に保管され、本質的に自分の管理下に置くことができるようになります。
分散型データ交換フレームワーク (DDXF)は、複数システム間データの相互運用性やデータに基づく価値評価、データ処理の追跡に対応したフレームワークです。DDXFでは個人情報を個人の権限のもと、ブロックチェーン上で売買することができます。さらに、データがどこに渡ったかも追跡することができるようになります。
さらにOntologyでは、マルチレイヤーのシャーディングにも対応しています。ブロックチェーン上の検証作業をグループごとに分担することで、全体の処理を高速化させることができます。Ontologyのシャーディングでは、元シャードを親シャードに分割し、さらに親シャードから小シャードに分割します。現状、4,000 TPSのパフォーマンスを確保できるようになっています。
クロスチェーンでは、他のブロックチェーンとトランザクションを跨ぐことができます。Ontologyのクロスチェーンは、現在ビットコインとイーサリアムに対応しています。将来的には、EVM(イーサリアム仮想マシン)互換のブロックチェーンとのクロスチェーンの対応を予定しており、Ontologyを利用してさえいれば他のブロックチェーンへの接続を気にすることがなくなる状況を創り出そうとしています。
Ontologyのトークンモデルとステーキング
デュアルトークンモデル
Ontologyでは、ONT(Ontology)とONG(Ontology Gas)のデュアルトークンモデルを採用しています。ONTがエコシステムのメインコインになり、ONGがブロックチェーンにおけるGASコイン、即ち手数料用コインという扱いになります。
デュアルトークンの根底思想には、ブロックチェーンを利用する側への配慮があります。イーサリアムのETHのようなシングルトークンモデルの場合、暗号通貨の価格が上昇すると、必然的にGAS価格が高騰することになります。
GAS価格が高騰することは、トランザクションコストを予測不能にします。これは、予算を確保してシステムを運用する企業にとっては、非常に厄介な問題で、パブリックブロックチェーンのエンタープライズ採用を阻害する大きな要因の1つになっています。デュアルトークンモデルを採用することにより、トランザクションコストをメインコイン価格の影響から切り離すことができます。
現実的には、デュアルトークンモデルも万能ではありません。メインコイン価格の上昇局面では、GASコインの価格がそれに追従する傾向があります。それでも、シングルトークンモデルよりはトランザクションコストを低く押さえることができるようになります。
参考までに、他にデュアルトークンモデルを採用しているブロックチェーンとして、NEO(NEOとGAS)やVeChain(VETとVTHO)があります。
独特なステーキング
一般的にPoSベースのブロックチェーンでは、コンセンサスノードを構築してステーキングをすることにより、新規に発行されるコインを獲得できるようになっています。一方で、OntologyのステーキングではONTの保有者が新規に発行されるONGを得ることができるようになっています。
Ontologyでは、ONGの発行上限が10億になっており、すべてがONTの保有という形のステーキングで発行されるようになっています。ONGは、ブロックが生成されるごと(1秒間隔)に生成され、ONTの保有数量に応じて比例配分されます。
ONGの発行ルールは、以下の表の通りになっています。ONGの発行難易度は1年ごとに上昇し、最終的に558,496,000ブロックの生成をもってONGの発行が完了するようになっています。発行完了には、558,496,000秒(≒17.71年)を要します。
ブロック番号 | ブロック生成時の ONG発行数 |
GAS発行数 | |||
---|---|---|---|---|---|
開始 | 終了 | ブロック区間 | 累計 | 発行割合 | |
初期発行(プレマイン) | – | 0 | 0 | 0 | 0.00% |
1 | 31,536,000 | 5 | 157,680,000 | 157,680,000 | 15.77% |
31,536,001 | 63,072,000 | 4 | 126,144,000 | 283,824,000 | 28.38% |
63,072,001 | 94,608,000 | 3 | 94,608,000 | 378,432,000 | 37.84% |
94,608,001 | 126,144,000 | 3 | 94,608,000 | 473,040,000 | 47.30% |
126,144,001 | 157,680,000 | 2 | 63,072,000 | 536,112,000 | 53.61% |
157,680,001 | 189,216,000 | 2 | 63,072,000 | 599,184,000 | 59.92% |
189,216,001 | 220,752,000 | 2 | 63,072,000 | 662,256,000 | 66.23% |
220,752,001 | 558,496,000 | 1 | 337,744,000 | 1,000,000,000 | 100.00% |
すべてのONGは、ONTの保有のみで新規に発行されるようになっているため、コンセンサスノードによる取引承認で新規に発行されるというわけではありません。そのため、Ontologyのコンセンサスノードが獲得できるONGはすべて手数料ベースということになります。もちろんコンセンサスノードもONTのステークが必要なので、その分のONGの獲得は発生します。
上記は、Ontologyブロックチェーンが軌道に乗っていないうちは、ノードの手数料収入が少なくなるということを意味します。つまり、ブロックチェーンの早期段階では、ノードの分散化は他のPoSベースのブロックチェーンより難しくなります。そのため、Ontologyでは承認作業への参加を促すために、ステーキング規模(ステークサイズ)の上位49のノードにOntology財団からボーナスを付与するようになっています。
Ontologyのステーキングについて創業者Andy Ji氏に質問
【質問1】ONGについて教えていただけますか?
ONGはOntologyネットワーク上でのみ使用するように設計されており、Ontologyネットワーク上で設計された特定の機能を使用するための「燃料」として必要とされれます。例えば、トークン取引、ネットワークストレージ、スマートコントラクトの展開と実行、分散アプリケーションの実行、Ontology Network上の他のリソースに使用されます。
【質問2】ONTの保有者にはステーキングメリットをどのように与えているのでしょうか?
Ontologyネットワークの経済モデルにはインフレ率がありません。そのため、ONTとONGの総供給量は固定されています。より多くのユーザーがステーキングに参加し始めれば、循環供給は下降トレンドになります。そのため、ONTの価格は、オンチェーンの動きが続けば、スムーズに上昇していくようになっています。
【質問3】他のPoSベースのブロックチェーンと比較した場合のONGの優位性を教えていただけますか?
人気のステーキングプロジェクトにはEOSとTezosがあります。これらにはインフレ率があります。そのため、インフレ率を除いた実質年利は3%程度です。
例えば、あなたは毎月ステークス報酬を請求します。その際、EOSを市場に売却します。しかし、Ontologyの場合は、「燃料」のONGを売却するだけです。ONGは、他のアプリケーションやユーザーが取得し、オンチェーンサービスに支払う必要があります。これは、ONT価格には影響しません。
【質問4】Ontologyでは、ONTをたくさん保有してる人が儲かる仕組みですが、これについてはどのように思っていますか?
どのようなコインにも2つの側面があります。弱気相場や強気相場があります。これが真実です。しかし、弱気市場の場合は、私たちは資産バスケットを持っていることをお勧めします。それは、私たちのプロジェクトに自信がないからではありません。これがシステミックリスクを防ぐ方法です。
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