ビットコインには、様々な価格予測モデルが存在します。一番有名なのは、PlanB氏が提唱しているStock-to-Flowモデル(当メディアの解説記事)になります。
PlanB氏のものは、ビットコインの希少性に注目したものになっているのに対し、今回紹介するTimothy Peterson氏の予想モデルは、暗号通貨のネットワーク効果に注目したものになっています。
この予測モデルの詳細は、論文の「Bitcoin Spreads Like a Virus」(日本語訳:ビットコインはウィルスのように広がる)で見ることができます。
【論文の概要】
本稿では、伝統的な貨幣の時間価値概念をメトカーフ値に結びつける数学的な導出を行い、その証明の数値例としてビットコイン、Facebookを用いている。 ビットコインや他の暗号通貨の成長と価格は、Facebookや他のネットワークの成長曲線に似た比較的簡単な数学的モデルに従って進む可能性が高いことを示唆する説得力のある証拠がある。 ビットコインの観測データを用いて、価格、ユーザー数、時間の関係を導出し、結果として得られる市場価格がゴンペルツ・シグモイド成長関数に従う可能性が高いことを示している。 この関数は、歴史的にバクテリア、腫瘍、ウイルスなどの生物の成長を記述するために使用されてきたが、ネットワーク経済学にも応用できる可能性がある。 我々は、ユーザーの長期的な成長率がビットコインの長期的な価格にかなりの影響を与えると結論づけている。
難しい内容なので、これから噛み砕いていきます。解説している筆者自身、論文を完全に読み込めたわけではないため、もし間違っている点があれば指摘を歓迎します。
この論文の考えのベースになっているのは、メトカーフの法則と呼ばれる通信ネットワークに関する法則です。「ネットワーク通信網の価値が、接続されているシステムのユーザ数の二乗に比例する」という考え方になります(詳しい説明:ITmedia – メトカーフの法則)。
論文では、Facebookの成長がビットコインとの理想の比較対象としてあげられています。どちらも革新的であるものの、完全にはオリジナルでないからです。ビットコインはDigicashの先行例があり、FacebookにはMySpaceの先行例があります。そして、どちらも中国政府による禁止に直面しています。
まずはメカトーフ値の比較からです。
実際に、Facebookの月間ユーザー数から導いた値と、ビットコインのアクティブアドレス数から導いた値の上昇の推移は類似していることがわかります。
続いて、メトカーフ値を使った価格産出になります。
Facebookの株価の推移を算出したものが以下の図の赤線、実際の価格のプロットが丸になります。
モデル価格は放物線的なカーブを描き上昇していきます。カーブの序盤は、実際に株が上場していないので、メトカーフの法則からの推定になります。
同様に、ビットコイン価格の推移を算出したものが以下の図の赤線、実際の価格のプロットがジグザクの線になります。
実際のビットコイン価格はFacebook価格と比べると、赤線から外れている部分がいくつかあります。これらは、別論文をもとにして、「ユーザー関連要因ではない」価格操作された期間であると述べられています。その要因として、取引所によるウォッシュトレードや取引量の改ざんなどがあげられています。
一方で、赤線がユーザー関連要因の価格とされています。これは、ユーザーの成長やネットワークの利用状況によって引き起されるものになり、トランザクション、アクティブアカウント、ウォレット、ノード、ハッシュレートになります。
上記を踏まえて、「Bitcoin Spreads Like a Virus」では、ビットコイン価格はそれぞれの時期において以下の価格に均衡すると考えられています。2028年末には、日本円にして1億円を超える予想になっています。
日付 | モデルのBTC価格 (USD) |
---|---|
2019/12/31 | 7,283 |
2020/12/31 | 10,459 |
2021/12/31 | 21,386 |
2022/12/31 | 40,731 |
2023/12/31 | 74,247 |
2024/12/31 | 131,408 |
2025/12/31 | 226,680 |
2026/12/31 | 383,323 |
2027/12/31 | 637,206 |
2028/12/31 | 1,044,715 |
Without any central bank or government intervention, #bitcoin‘s price has naturally corrected to the equilibrium value as determined by Metcalfe’s Law. https://t.co/VzVOCjuxE2 pic.twitter.com/UBDFLGoWG9
? Timothy Peterson (@nsquaredcrypto) April 9, 2020
参考情報までに、著者は論文を発行した後も、実際のBTC価格とモデル価格の合致度をツイートしています。2020年5月時点では、実際のビットコイン価格はモデルに沿う形で推移しています(右側の図)。
The first chart is from an early draft of my paper (Mar 2019) and the second chart is the updated version that I maintain (Apr 2020), which shows #bitcoin price moving right along the red line as the model predicts.https://t.co/VzVOCjuxE2 pic.twitter.com/jtlhFN0l5H
? Timothy Peterson (@nsquaredcrypto) May 3, 2020
あくまでも上記の価格予測はモデル上の話であり、必ずしもそうなるとは限りません。しかし、過去に紹介したStock-to-Flowモデルと同様にビットコイン過激派の主張として存在していた「1BTC=1億円説」は、ありえない話とも限りません。
免責事項:このモデルを信じてビットコインに投資をして損をした場合でも当メディアは責任を負いかねます。くれぐれも、投資は自己責任で実行をするようにお願いいたします。