インタビュー

日本暗号資産市場株式会社 岡部典孝氏 – 日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く(第2部)

インタビュー

以前当サイトでインタビューを行った、岡部氏率いる日本暗号資産市場株式会社は、2020年12月23日に日本円建てのステーブルコインJPYCを発表しました。同社は、既に円建てのステーブルコインであるICBを発行しており、今回のインタビューでは発行に至る背景や、ICBとの違いを中心にインタビューしました。

第2部では、2021年1月に発行発行予定のJPYCについて、発行に至る経緯やそれを使う事によるメリットなどを中心に訊いていきます。第1部がまだの方は、まずはそちらをご覧ください。

※インタビュー内容は、2021年1月1日時点の情報に基づきます。

▼第1部はこちら

日本暗号資産市場株式会社 岡部典孝氏 - 日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く(第1部)
以前当サイトでインタビューを行った、岡部氏率いる日本暗号資産市場株式会社は、2020年12月23日に日本円建てのステーブルコインJPYCを発表しました。同社は、既に円建てのステーブルコインであるICBを発行しており、今回のインタビューでは発...

日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く 第2部

JPYC発行の背景

加藤:日本暗号資産市場では、新たに日本円建のだいたい安定通貨「JPYC」を2021年1月下旬に発行しますが、JPYCというのはUSDCみたいな感じで良いシンボルですね!

岡部:コインという意味では、”C”というのは大事な文字だと思いますので、正式名称のJPY Coinというのは名前として自然ですし、私は良いと思っています。

加藤:それでは、ここから質問に入っていきます。JPYCを発行するに至った経緯を教えていただけますか?

岡部:もともとは、ICBを発行した段階から、ICBを事業者用として拡大させ、もっと安定する実績を積んでから、一般向けのJPYCを出す構想がありました。ただ、結果的に、我々の予想より早くJPYCを出すことになりました。

一つのきっかけは、金融庁とのディスカッションが思ったより進んだことです。当初どのようなやり取りをしていたのかというと、ICBは事業者用なので資金決済法の規制にほとんど掛からない形で設計されたERC20トークンになります。金融庁とディスカッションをしていく過程で、一般の人たちがUniswapを通じてICBを買おうと思えば買うことができるので、これは必ずしも事業者用と言い切れないのではないか、というご意見を頂きました。

加藤:なかなかグレーな線引きのところをディスカッションしていたのですね。

岡部:そうなんです。それが仮に事業者用ではないとすれば、一般用と変わらないということになり、事業者用としてわざわざ出す意味がないではないかという話になりました。この点は、一時平行線になってしまいました。

取引所で取引するのは商行為なので事業者用と言っても良いし、金融庁さんが主張されるように一般の人が理論上買えるのだから、それを買えなくしない限り事業者用じゃないという解釈も言えなくもない、ということになりました。ただ、Uniswapで買わせないということは不可能に近いです。

加藤:これは聞いていてモヤモヤする話です。

岡部:実際にモヤモヤしていました。例えば、ICBを拡大して100億円発行した時に、突然金融庁から一般用だと指摘された場合に、急に50億円供託してくださいという話になるわけです。そうなるのはリスクだとなりました。それがネガティブな部分です。

一方で、ポジティブな部分としては、これは一般用なのできちんと規制に入るようにと、ある意味金融庁から誘導されていまして、一般用であればERC20トークンとしてやって差支えないという一種の手ごたえが得られました。

では、供託して金融庁の監督内でやるので、そちらをメインにしようということになり、JPYCを発表することになりました。

加藤:面白いストーリーですね。ICBの立ち位置がはっきりしない中で、結果的にJPYCを発行するということになったわけですね。

岡部:そうなんですよ。金融庁とのディスカッションがなかったら、JPYCはまだ出ていません。今よりだいぶ後回しになっていたと思います。

加藤:興味深いです。私自身は、金融庁は法律の枠組みの中で白黒つけなければいけない立場だと思ってたので、中間的な状況から新しいものが生まれるというのは意外な感じがします。

岡部:仮にICBが事業者用じゃなかったとしても、結局は1000万円未満だと金融庁の届け出義務がないので、それほど変わりません。しかし、規模が大きくなった時にICBの事業者モデルでかつUniswapで取引できるという場合に、若干不透明な部分が見えたので、JPYCをメインにしていこうという意味合いがあります。

ICBとJPYCの違い

加藤:JPYCは、ICBと同様に日本円建のだいたい安定通貨ですが、ICBとJPYCとの違いは何でしょうか?また、利用者から見た場合のICBとJPYCによる制約の違いは何ですか?JPYCを利用するメリットとはどのようなものがあるでしょうか?

岡部:ICBは、事業者用の前払式支払手段で、基本的に事業者の商行為でしか使えないという制約があります。一方で、JPYCは一般用になるのでどなたでも買うことができます。これらが大きな違いです。用途的に、JPYCの方が中長期的により大きな流動性を持つであろうと予想されます。

利用者から見た場合の最も大きな違いは、一般の人が物を買えるようになるということです。例えば、マイクリをプレイしてマイクリのコインを手に入れた人が、JPYCを経由してそのコインで物を買うことができるようになります。このようなことは、今までは事業者がICBを使うことでできて、一般の人はできませんでした。それがゲームのプレイヤーや商行為をやっていない一般の人であっても物を買えるようになります。これが大きな違いですね。

また、アルトコインを持っている方にとってはメリットがあります。例えば今までの場合、ETHを持っている人がAmazonの物を買おうと思ったときに、それなりに高い手数料を払わなければ取引が成立しませんでした。この場合、手持ちのETHを日本の取引所で売ることになるので、手数料やスプレッドがかかります。さらに日本円を引き出すための手数料を払いますし、しかも入金まで数日待たされてしまいます。

一方でJPYCを使う場合、一般の方がUniswapでJPYCを入手して、日本暗号資産市場のWebページから物の購入申請をすれば、Uniswapの手数料0.3%とGAS代くらいで済みます。もちろん、数日待たされることはありません。Uniswapでは、どのアルトコインからもJPYCに直接交換することができるので、先程のコストでほとんどの物を買うことができるということになります。

JPYCとICBの違い

JPYCとICBの違い(JPYCのプレスリリースより引用)

加藤:なるほど、JPYCになると法律的に見て一般ユーザーの利用がクリアになるわけですね。デメリットは何かありますか?

岡部:これはユーザーにとってではなく、我々にとってのデメリットです。当社が金融庁の指導のもと、半額を供託しなければいけなくなります。あとは色々と届出をして、金融庁の指導に従わなければいけなくなります。つまり、当社の負担が大きくなるということです。逆に、ユーザーにとっては安心感につながるのかもしれません。

加藤:なぜ半額を供託する必要があるのでしょうか?

岡部:JPYCのような前払式支払手段は、図書券と似たような法律上の位置付けになります。これは、暗号資産と同じ資金決済法に基づいて規制されます。

代表的な義務として、発行体は自家型の前払式支払手段、JPYCと同じ支払いタイプだと、未使用残高が1000万円を超えると、その半額を国に供託しなければいけないという規制になっています。つまり、1000万円の未使用残高があると、500万円を国に預けて供託するということになります。

加藤:ここでせっかくなので、便乗させてタイムリーな話をさせてください。2020年12月30日に、GMOインターネットが日本円建のGYENを発表しました。GYENは、JPYCと異なり、初期の段階では日本人は入手することができません。JPYCとGYENを比べると、何が違うのでしょうか?

岡部:GYENの場合、発行体が米国の会社になります。なので、日本法における位置づけが判りません。暗号資産になるのか前払式支払手段になるのかは定かではないです。いずれにしろ、GYENは法律の規制により日本で売ることはできません。なので、GMOさんは、現段階で日本でGYENを利用することができませんとアナウンスしていますね。

逆に、当社は日本法に基づいて日本でやっているので、日本で使う分には法的に安定しています。逆に米国で買おうと思ったら、GYENの方が便利だと思います。

加藤:発行体の所在地によって違いが出てくるわけですね。

岡部:そうですね。発行体の所在地と実際に使う人の国によります。日本居住者の方であれば日本法が適用されますし、米国の居住者であれば米国の法律が適用されます。

第3部の予告

第2部では、これから発行するJPYCについて、実際にどのような経緯で発行に至ったのか、そしてそのメリッドなどを訊きました。

続く第3部では、実際にJPYCを入手して使うにはどのようにすればよいのか、そして岡部氏ならではの柔軟な思考法の秘訣について焦点を当てていきます。

日本暗号資産市場株式会社 岡部典孝氏 - 日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く(第3部)
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日本暗号資産市場に関する情報

日本暗号資産市場 公式サイト

ICHIBA COIN 公式サイト

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTオーナー。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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