インタビュー

日本暗号資産市場株式会社 岡部典孝氏 – 日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く(第1部)

インタビュー

以前当サイトでインタビューを行った、岡部氏率いる日本暗号資産市場株式会社は、2020年12月23日に日本円建てのステーブルコインJPYCを発表しました。同社は、既に円建てのステーブルコインであるICBを発行しており、今回のインタビューでは発行に至る背景や、ICBとの違いを中心にインタビューしました。

インタビューは、全部で3部に渡りお送りします。第1部では、2020年8月に発行したICBについて、実際に発行してみてどのようなことがあったのかを訊いていきます。

※インタビュー内容は、2021年1月1日時点の情報に基づきます。

日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く 第1部

加藤:新年あけましておめでとうございます!このインタビューは2021年1月1日に行っていますが、ブロックチェーン業界の方は本当に止まらないですね。

岡部:私は経営者なので関係ないです(笑)それに取引所も常に動いてますしね。

加藤:ビットコインは2020年末に300万円をつけましたし、業界的にはとてもキリの良い形で2021年を迎えられますね!

岡部:誰か300万円を狙っていたのではないかと感じてしまいますね。

加藤:私もそう思います。それでは早速インタビューに入って行きます!

岡部氏と日本暗号資産市場について

加藤:最初に岡部さんと日本暗号資産市場について伺います。現在岡部さん個人やご自身が立ち上げた会社である日本暗号資産市場では、暗号資産の領域においてどのような活動をしているのでしょうか?

岡部:日本暗号資産市場 代表の岡部です。もともとはデジタルコイン系の事業をやった後に、アルクコインというコインを発行しました。その後、2019年11月に日本暗号資産市場を設立し、暗号資産古物商として活動していました。2020年8月に事業者用の前払式支払手段のICBを発行して、今年の1月にJPYCと呼ばれる一般向けの前払式支払手段のコインを発行する予定です。いずれも、日本円建のだいたい安定通貨(ステーブルコイン)になります。

また、LINKSという会社を昨年の11月に共同で立ち上げるのに伴い、現在は芝公園のオフィスに移転して、LINKSのメンバーと一緒に仕事をしています。私は、そこの取締役もやっています。LINKSはウォレット×SNS事業の会社で、SNSを通して気軽にビットコインを送受信できるようになります。

加藤:日本暗号資産市場は、1年で3回もオフィスを移転しているようですね。それにしても、この環境は素晴らしいですね(筆者注:インタビューは日本暗号資産市場のオフィスで実施しました)!

岡部さんのツイートを見ると、この環境に惚れているということがよく伝わってくるのですが、せっかくなので、オフィスについてちょっとだけ自慢していただくことはできますか?

岡部:自慢ですか!?(笑)私が所有しているオフィスではないのですが、今はLINKSと日本暗号資産市場と、その他ブロックチェーン企業の何社かが芝公園にオフィスを構えています。もともとは豪邸だったところです。それが今はオフィスになっています。オフィスが公園の中にあるので、鳥のさえずりが聞こえたり、虫の声が聞こえたりといった環境で仕事をさせていただいています。すごく恵まれた環境だなと思います。

加藤:オフィスの特に気に入っている点はありますか?

岡部:ここには、ブロックチェーン業界の色々な方が遊びに来てくれます。すごい方もよく来ます。自然と彼らと触れ合うことができますし、CoinPostさんと新しい経済さんがYouTubeをやるときのスタジオにもなっています。そういった意味でも、色々なことができる恵まれた環境ですね。

加藤:東京にあるブロックチェーン業界の秘密基地みたいな感じですね。

岡部:最近、少しツイッターで話題になったこともあり、秘密基地感が薄れてきている感じがします。

前回からの進捗

加藤:前回のインタビューは2020年9月の上旬でしたが、あれから日本暗号資産市場のビジネスやそれを取り巻く市場ではどのような変化がありましたか?

岡部:この3ヶ月間、我々に関しての大きな動きは、他社を含めてステーブルコイン分野で色々な動きが見えてきたかなと感じています。当社に関しては、金融庁とのディスカッションが進みました。9月の時点では、金融庁がDeFi(分散型金融)方面について、まだそれほど理解が進んでいませんでしたが、この3ヶ月を通じて相当理解が進みました。おそらく今年は、DeFiの規制元年になるのではないかという気がしています。

加藤:金融庁のステーブルコインやDeFiの理解が進んだことについて、何か具体的なことについて触れることはできますか?

岡部:当社のグレーゾーン照会でも進捗がありましたし、フィンテックサポートデスクや推進側の人に照会をかけて、前向きな回答を得ることができました。また今まで不明確だった部分が明確になってきたので、そういうことを踏まえて理解が進んできたということを感じています。

加藤:となると、2021年はステーブルコインやDeFi方面が変わってきそうということなのですね。

岡部:個人的に、ステーブルコインは法改正が行われて何らかの規制が作られると思っています。加えて、DeFiを利用する立場で事業を組み立てているフィンテックスタートアップが増えているので、そのあたりのビジネスがかなり進捗するのではないでしょうか。

だいたい安定通貨 ICBの状況

加藤:日本暗号資産市場では、日本円建のステーブルコイン(以降、だいたい安定通貨)として、2020年8月からICHIBA COIN(ICB)を発行しています。あれから1四半期が経過しましたが、手応えはいかがでしたか?また、想定内・想定外だったストーリーがあれば是非教えてください。

岡部:全体的にいうと、思ったよりうまくいっていると感じています。

最も代表的な部分でいうと、値段になります。本来ICBは当社が発行した商品券みたいなもので、うちが潰れると価値が下がると予想されるようなものです。そのため、本当であれば1円で売ったものが、二次流通で1円を超えないと予想していました。ですが、いざ出してみると1円を超えることも多くありました。やはりERC20トークンで日本円と近い価値があるというだけで、それなりの需要があるのかなと感じています。率直にそれは意外でした。

もともとICBのホワイトペーパーでは、ICBが1円を下回ったときに当社が買い支えるような前提になっています。例えば、ICBが0.9円だったら買いに行くということなのですが、結果的にそれを1回もやらなくても価格がだいたい1円で維持できました。

加藤:まだやってないんですか!?本当なんですか?それで維持できているというのはなんとも不思議ですね!

岡部:本当に、まだ1回も買いに向かってないんですよ!それがすごく不思議で。

ホワイトペーパーを書いた段階だと、自分たちで買わないと価格が維持しきれないと思っていました。実際に蓋をあけてみると、一時的に0.9円のように下がることはあるのですが、しばらくしたらまた価格が上がるということが起きています。イーサリアムの上昇に支えられた面があるのかもしれませんが、この4ヶ月間は何もしていなくて、物を売っているだけできちんとだいたい1円が維持できています。これはかなり意外ですね。

加藤:買い支えというのは会社の資金を使いますから、それを使うというのは非常に経済的な運営ができていますね。

岡部:そうですね。はっきり言って、今までの経済的な常識からすると「あれっ?」と思うところがあります。これは直感に反しますね。ただ、実際にこの4ヶ月間はそういう感じだったので、これは結構な手応えがありました。

あとは、思ったより早く裁定取引やbotがICBで取引しているなと感じています。

加藤:それはどういうことですか?

岡部:ICBはERC20トークンなので、bot側から見たら他の暗号資産と同じに見えると思っています。その結果、ICBと他の暗号資産との裁定取引が行われ、それをbotが勝手にやっているという、ちょっと近未来な感じの取引がICBをリリースして2週間には起こっていました。

これはフロントランニングと言うのですが、しまいには同じブロックでICBを売り買いするトランザクションに対して、同じブロックで裁定取引をぶつけるということが起きました。投資銀行が他のマーケットでやりそうな高度なことが、実際にDeFiのUniswap上のマーケットで行われています。それらのトランザクションが全部Etherescanで見られるというのはとても面白いなと思っています。

価格がずれると元に戻す力が働いているようなので、結果的に価格が安定しています。botが価格の安定に貢献してくれていると思います。

加藤:Uniswapの取引は、そこまでコストが安くなく、1回あたりのトランザクションが安くても300円程度、高いときは1000円以上というイメージなのですが、フロントランニングするにしてもGAS代がかなり掛かるイメージがしますね。それでも成り立つ取引が実際にできているわけですね。

岡部:GAS代は確かに高いのですが、フロントランニングbotを見るとGAS代は他と同じようですね。確実に数百円でも利益をとっているのでしょうね。

加藤:チリも積もればなんとやらというところでしょうか。今の話だと、フロントランニングbotが、ICBをだいたい1円に安定させてくれているということですが、他に考えられる要因というのはありますか?

岡部:また、現在はRAKUというゲームのコインとICBの流動性プールができています。そちらを見ていて面白かったのが、RAKUが値上がりした時期のことでした。RAKUが値上がりすると、ICBが相対的に置いていかれることになります。

ペアの片方が上がると、ICBが釣られて上がるという現象がありました。RAKUをUSDTで買うよりICB経由で買ったほうが得するという状態になると、ICBとRAKUを使った裁定取引が起こり、その結果ETHベースのICB価格が上がるという状況が観測されました。ですので、理論的には色々なトークンとICBとの流動性プールが作られると、より価格が安定すると思っています。

ICBは、まだ小さな芽に過ぎないのですが、この性質は発行する前には全く予想できなかったので、興味深いところです。

加藤:本当にやってみないとわからないものですね。

第2部の予告

第1部では、2020年8月に発行したICBについて、実際にやってきて見えてきたことを中心に伺いました。第2部では、いよいよJPYCについて焦点を当てていきます。

日本暗号資産市場株式会社 岡部典孝氏 - 日本円建てのだいたい安定通貨JPYCについて訊く(第2部)
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日本暗号資産市場に関する情報

日本暗号資産市場 公式サイト

ICHIBA COIN 公式サイト

岡部典孝氏SNS(TwitterFacebook

この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTオーナー。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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