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Hedera Hashgraph ミアン・サミ氏 インタビュー 第2部 – 技術に対する裏付けとなる考え

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ブロックチェーンをはじめとする多くの分散型台帳は、ベンチャーコミュニティからDAppsが出ていき、次第に広まっていきます。一方で、Hedera Hashgraph(ヘデラ・ハッシュグラフ)は、暗号資産HBARを持ちながらも、全く逆となる大企業からの普及を狙っています。

今回は、Hedera Hashgraphのアジア統括責任者であるミアン・サミ氏にインタビューを行い、Hedera Hashgraphがどのように大企業に向けて分散型台帳を普及させていこうとしているのかを紐解いていきます。

本インタビューは全4部で構成されています。第2部では、ファイナリティやセキュリティをなぜ他の分散型台帳以上に重視するのか、そして特異なガバナンスに対する背景を伺っていきます。

第1部がまだの方は、先に以下のリンクをご覧ください。

Hedera Hashgraph ミアン・サミ氏 インタビュー 第1部 - 氏の覚悟とHedera Hashgraphの高次元なトリレンマ
ブロックチェーンをはじめとする多くの分散型台帳は、ベンチャーコミュニティからDAppsが出ていき、次第に広まっていきます。一方で、Hedera Hashgraph(ヘデラ・ハッシュグラフ)は、暗号資産HBARを持ちながらも、全く逆となる大企...

第2部 技術に対する裏付けとなる考え

Hedera Hashgraphの特徴紹介(後編)

加藤:ところで、aBFTが最高のセキュリティということがよくわからないのですが、詳しく教えていただくことはできますか。

ミアン:1つ重要なところは、ブロックチェーンはそもそもBFT(Byzantine Fault Torelance)ではないと言うことです。BFTというのはファイナリティがあるということです。どこかの時点で、ネットワークに参加しているノードが「この情報は正しいよね」「私が持っている情報は、ほかが持っている情報と同じだよね?この情報は変えられないよね」という問題、ビザンチン将軍問題を解決しているのがBFTです。でも、ビットコインでは、ブロックチェーンの性質上100%その状況が達成されているというところには行き着きません。ブロックが重なるごとに可能性は増えていくものの、100%になることはありませんということです。例えば、99.99999%になるということです。これを、確率的ファイナリティといいます。

分散型台帳の特徴比較

分散型台帳の特徴比較

ミアン:先ほどのスライドに戻りますが、ビットコインやイーサリアムにはファイナリティがありません(確率的ファイナリティ)。ファイナリティは、99.99999%あればそれで十分でしょうという人が結構いるのですが、確かにユースケースによってはそれで十分です。これは、そこまでセキュリティを必要としないユースケースになります。例えば、オンライン広告の正確性を証明するというユースケースがあった場合、99.99999%でも良いわけです。後ほど、誰かが「この広告は違ったんじゃないか」と指摘する価値がそこにはないわけです。

でも、例えば中央銀行がCBDC(中央銀行のステーブルコイン)を作る、どこかの証券会社がDEXを作って株や債券を取引できるようにする、どこかの企業がカーボンクレジットのユースケースをローンチするとなった場合、兆ドル単位の経済圏の話になります。この規模の経済になると、99.99999%だから良いという話ではなくなります。「100%か?100%じゃないか?」ということが重要になります。100%にならないと、そもそも考慮すらされなくなります。

確かに、99.99999%で良いというユースケースもありますが、我々は社会の基盤になるユースケースを重視しているので、ファイナリティがあるかどうかというのは重要なのです。

イーサリアムの後に出てきたブロックチェーンにはファイナリティがあるのですが、そのファイナリティにも、どこまでハッキングに耐えられるのか、ネットワークに対しての攻撃に耐えられるのかという強度を表す基準があります。その強度を表す基準で、一番攻撃に耐えられると言われている性質がaBFTです。正式にはAsynchronous Byzantine Fault Tolerance(非同期ビザンチンフォルトトレランス)といいます。

仮に、誰かがノードとノードの間にファイアウォールを作って通信をシャットダウンする攻撃をした場合、それぞれのノードがお互いに会話できなくなる時間が生じます。このような状況だと、ノード同士で同期が取れなくなります。世の中には、同期をしないとネットワークが安全ではないBFTがあります。こちらは同期ビザンチンフォルトトレランスといいます。

一方で、Hedera Hashgraphは非同期です。ファイヤーウォールの攻撃、シビル攻撃、DDoS攻撃に対して耐えられるコンセンサスアルゴリズムになっています。Hedera Hashgraphは、攻撃に対する条件が一番厳しく、お互いのノードが会話できなくてもコンセンサスを形成することができます。これは、コンピュータサイエンスにおける分散型システム分野では最高レベルのセキュリティです。

これは我々が勝手に主張しているわけではなく、Coq proofと呼ばれる定義に基づいています。Coq proofというのは、プログラムがプログラムを検証するというものです。我々のリーモン博士は、すべてのコンセンサスアルゴリズムは、Coq Proofに基づいた監査じゃないとそもそも意味がないという信念を持っています。そのため、カーネギーメロン大学の教授がCoq proofを使って、Hedera Hashgraphは確かにaBFTだということを証明しています。証明内容は一般公開されています。

なぜ我々がそこまでこだわるのかと言うと、リーモン博士はこの業界の意味そのものがセキュリティだと思っているからです。セキュリティがまあまあであったり、99.9%、もしくはたくさんのハッキングの中でも耐えられないようなものだったら、この業界の存在意味がないのではないかと思っています。そのため、aBFTのコンセンサスアルゴリズム、かつ第三者によってそれが証明されているというのは、我々が非常に高いセキュリティを有していると言えます。

ただし、ほとんどのユースケースは、aBFTがなくても問題ないで終わってしまいます。今から3から5年先、インターネットの様々な価値交換がHedera Hashgraphの上で行われているということを考えたときに、必要なセキュリティが何なのかと考えたらaBFTなわけです。我々は、これをFuture Proofと呼んでいます。未来に出てくるであろうセキュリティの問題を、Hedera Hashgraphは既に解決しています(笑)つまり、Hedera Hashgraphはオーバースペック、Future Proofのアルゴリズムであるということです。

加藤:未来の問題を既に解決しているというのは面白いですね。Hedera Hashgraphの特徴といえば、ガバナンスもあると思いますが、こちらについても教えていただけますか?

ミアン:Hedera Hashgraphの最初のルールは、当たり前ですが創業者が決めています。しかし、時代を経るにつれて、規制やマーケットが必要としているものは変わっていきます。そのルールを誰が変えて、どのように技術が進化し、どのように変えていくかというのがガバナンスです。つまり、誰がどういう基準で決めるのかということです。

ビットコインの場合、ガバナンスは取引所やマイナーが決めています。しかも、構造的に敢えて頻繁に変わらないようになっています。ビットコインは価値の保存という機能に注目しているので、それをコロコロ変えていたら成り立たないわけです。イーサリアムの場合は、イーサリアム財団や開発者の力がものすごく強いです。

加藤:確かに、イーサリアムのGAS代の削減提案(EIP-1559)は、マイナーの大反対を押し切りましたね。

ミアン:Hedera Hashgraphのガバナンスを誰がどう決めているのかというと、運営審議会の企業がガバナンスの責任を持っています。今は21企業で構成されていて、これから39まで拡げていきます。

Hedera Hashgraphの運営審議会

Hedera Hashgraphの運営審議会

ミアン:これらの企業がどのようにルールを変えて、どのようなルールを作って、それをいつローンチするのかを決めています。ここでよくいろいろな人に言われます。それは「超中央集権でしょう!大企業ガチガチじゃね?」と。これはよくある勘違いです。

加藤:私も同じことを思いました。違うのでしょうか?

ミアン:ガバナンスが中央集権か非中央集権かで考えると、ビットコインはマイナーがほとんどを決めているので実質的に中央集権です。主要なマイニングプールは10以下です。イーサリアムだって、イーサリアム財団の25人くらいの開発者がほぼ牛耳っています。他の台帳でも様々なやり方がありますが、基本的には中央集権的です。

例えば、ガバナンストークンという考え方がありますが、これを比喩にすると、日本円を持っている人たちのすべてが日本の金融政策に一票を投じることができるようなものです。わからないですよね?一般人が政策金利を上げるか下げたほうがいいのかどうかは。

我々のガバナンスでは、それぞれの国のそれぞれの業界の企業が参加をすることによって、一番良いバランスを保てていると思っています。国で見た場合、米国だけではないです。他にも、韓国やインド、中東など、南極以外のすべての大陸でノードが稼働しています。地域的には分散化されているということです。では、業界はどうなのかというと、通信や大学、SIer(システムインテグレーター)、エネルギー、法律事務所、トレーサビリティ、IT企業、金融機関、ECなど、様々な企業がいます。Hedera Hashgraph のガバナンスは、地域も横断しているし、業界も横断しています。

そしてもう1つ重要なのが、運営審議会メンバーの任期がトータルで6年しかないということです。だから永久に運営審議会になれるわけではなく、1つの任期が3年で最高2任期です。これは政治の世界と似ています。癒着など、色々なことを考えた上で任期があります。それらを総合的に考えたら、Hedera Hashgraphのガバナンスというのは、業界の中でも最も非中央集権化的なガバナンスであるというのが、我々の意見になります。

これらの企業は、新しいことをやるときに、色々なことを考えなければいけません。違法な事はできないし、それぞれの業界に適した規格を入れなければいけません。南極以外のすべての大陸の規制当局がOKとすることしか、プラットフォームの中にフィードバックできません。もう1つ「どこでどう決められているかわからないのではないか?」という意見がありますが、Hedera Hashgraphではすべてを公開しています。公開情報は運営審議会のページから確認することができます。

例えば、運営審議会のメンバーがどのような契約に署名して参加しているのかという話もありますが、我々は契約書も公開しています。よく聞かれるのが「運営審議会の企業はお金をもらって参加しているのではないか?」という話がありますが、契約書にはお互いに利益をあげる行為をしてはならないという旨が書かれています。審議会のすべての企業は、69ページの契約書に署名をして運営審議会に入っています。もちろん、運営審議会の議事録も公開しています。是非アクセスして確認してみてください。

国連や中央銀行などの国際的なコンソーシアムは、業界の信頼を確保するために議事録を公開していますが、我々も国際的なコンソーシアムと同様のことを行っています。我々というのは、運営審議会のメンバーを含みます。運営審議会は、Hedera Hashgraphの一部を所有しているからです。

加藤:いずれの大陸当局もOKするように、かつ様々な産業で使えるように、ガバナンスに参加する企業の多様性が重視されるわけですね。

ミアン:その通りです。非中央集権化という言葉が独り歩きしがちですが、我々が考える非中央集権化は、地域分散、業界分散、そして時間的分散ということです。地域分散というのは、様々な地域で様々な問題が生じるので、ひとつの地域だけを優先しないということです。業界分散は、あらゆる企業が入ることによって1つの業界に偏らないということです。時間的分散は、任期があることによって同じ企業が運営審議会に居座らないということです。

加藤:実際に、企業はどのように選ばれるのでしょうか?

ミアン:運営審議会が39社になるまでは、Swirlds(スワールズ)社が選びます。Swirldsは、Hedera Hashgraphを設立した、リーモン博士とマンスCEOの会社です。39社になった後は、運営審議会のメンバーが自分たちの後継者を自分たちで探すことになります。

当初、Swirldsがどのように決めるのかというと、基準表があります。分散化されているのか、業界をリードしているかなどです。我々は、失うものの方が大きい企業、つまり変なことをしたらブランドが傷ついて困るような企業を選んでいます。例えば、Google級の会社が審議会を牛耳ろうとして、それが議事録に書かれたら彼らの信用に傷がつきます。ブランドを持っていることによって、変なことができないであろう大企業を選んでいきます。その中にはスタートアップもあります。先日はChainlinkが入りました。彼らは大企業ではありませんが、暗号資産業界では大変有名な会社です。次は、NGOや大学を加えます。大学は4大学まで入れて、さらに分散化させていく予定です。

加藤:他に、Hedera Hashraphについて何か特徴的なものはあるのでしょうか?

ミアン:Hedera Hashraphは、安定性が極めて高く、フォークをしないようになっています。まず、Hashgraphというコンセンサスアルゴリズムは、公開されていて誰でもソースコードを見ることができますが、それを使ってフォークをすることはできません。つまり、コピペをして、Hedera Hashgraph ver.2というものを第三者は作ることができません。コンセンサスアルゴリズム以外は全てオープンソース化されています。

なぜそのようになっているかというと、ユースケースをHedera Hashgraph上で作る場合、例えば不動産のトークン化をした場合、そこには誰が不動産の所有権の一部を持っているかが記帳されているわけです。もし、Hedera Hashgraphのフォークを作ってしまったら、誰に所有権が帰属しているか不明確になってしまいます。これがこの業界のフォークの問題になります。我々は、大企業級のユースケースを安定してローンチできるプラットフォームを目指す以上、フォークを阻止しなければなりません。それが安定性を重視している理由です。

加藤:権利の唯一性に保つためにフォークを許容しないというわけですね。

ミアン:はい、オープンソースはHashgraphの上のレイヤーのみです。Hashgraphというアルゴリズムと、Hedera Hashgraphという本番プラットフォームは、フォークできない仕組みがたくさん入っています。

よく「これはオープンソースじゃないのでは?」と言われるのですが、オープンソースではなくオープンレビューと言います。この理由が重要なのです。我々は、ノーフォークギャランティーと呼んでいるのですが、フォークをしない保証を担保するために、そのような方針をとっています。

加藤:たしか、以前のミートアップでオンチェーンガバナンスを実装していると仰っていましたよね。

ミアン:そうですね。方法は2つあって、法的な部分としてHashgraphを特許化しています。しかし、これは国によっては関係ないところもあります。それもそれでありつつ、さらにHedera Hashgraphを稼働しているノードをすべて集約しているアドレスブックがあります。新しい運営審議会メンバーが入ってきて、新しいノードを立ち上げたら、そのノードはアドレスブックに入ります。仮に第三者がHedera Hashgraph v2を作ったとしても、ノードが違うことが一目瞭然でわかるようになっています。

加藤:アドレスブックで、信頼できるノードリストを設けているわけですね。

ミアン:そうです。あまり長くなるので、これ以上は省きますが、他にもフォークを防ぐ様々な仕組みが用意されています。

また、Hedera Hashgraphの利用コストは極めて安いです。1取引あたり0.01銭、厳密には0.01 セントです。つまり、1万取引をするのにかかる手数料はたったの1ドルです。コストはHBARで払いますが、1取引の価格は0.01セントで固定されています。つまり、HBARの価格が上がったらより多くの取引ができるようになります。イーサリアムの場合、ETHの取引価格が10倍に上がったら手数料も10倍に上がりますが、Hedera Hashgraphの場合は、ドルベースで価格が固定されます。これは他のブロックチェーンと比べた場合の大きな違いです。

加藤:ビジネス側にとっては分かりやすい手数料体系ですね。

ミアン:これによって、例えば1年で1億円かかるというのが予算に組み込めるようになります。公式サイトに、手数料一覧と計算機があるので、条件を入力することによって想定コストを算出することができるようになっています。価格はUSD単位とHBAR単位表示されます。

加藤:実際に手数料一覧を見ると、コストが安すぎてピンとこないですね。

ミアン:現在、1日あたり400-500万件のトランザクションがありますが、これらがすべてトークン取引だと仮定したら、1日あたりのノード全体の収入は、400-500ドル程度ということになります。今のままだと、ノードが赤字になります。

我々はプラットフォームが黒字化しないと始まらないと考えているので、1つのユースケースだけでも1秒に数万取引できるものをオンボードしようとしています。そうしないと、先程話した非中央集権化への道を達成できませんから。

第3部へのつなぎ

第3部では、Hedera Hashgraphのファイナリティやセキュリティの考え、そしてバランスを取るためのガバナンスの話をお伝えしていきました。

第3部では、他の分散型台帳(ブロックチェーン)と異なり、なぜHedera Hashgraphを使うべきなのか、そして大企業が公開台帳を利用するためのハードルをどのように解決していくかについてお伝えします。

▼第3部はこちら

Hedera Hashgraph ミアン・サミ氏 インタビュー 第3部 - Hedera Hashgraphをビジネスに応用する利点とは
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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTオーナー。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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