インタビュー

Hedera Hashgraph ミアン・サミ氏 インタビュー 第4部 – Hedera Hashgraphのユースケース

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ブロックチェーンをはじめとする多くの分散型台帳は、ベンチャーコミュニティからDAppsが出ていき、次第に広まっていきます。一方で、Hedera Hashgraph(ヘデラ・ハッシュグラフ)は、暗号資産HBARを持ちながらも、全く逆となる大企業からの普及を狙っています。

今回は、Hedera Hashgraphのアジア統括責任者であるミアン・サミ氏にインタビューを行い、Hedera Hashgraphがどのように大企業に向けて分散型台帳を普及させていこうとしているのかを紐解いていきます。

本インタビューは全4部で構成されています。第4部では、Hedera Hashgraphのユースケースについてお伝えしていきます。

第3部がまだの方は、先に以下のリンクをご覧ください。

Hedera Hashgraph ミアン・サミ氏 インタビュー 第3部 - Hedera Hashgraphをビジネスに応用する利点とは
ブロックチェーンをはじめとする多くの分散型台帳は、ベンチャーコミュニティからDAppsが出ていき、次第に広まっていきます。一方で、Hedera Hashgraph(ヘデラ・ハッシュグラフ)は、暗号資産HBARを持ちながらも、全く逆となる大企...

第4部 – Hedera Hashgraphのユースケース

Hedera Hashgraphのユースケース

加藤:現在、Hedera Hashgraphではどのようなユースケースが出ていますか?ミアンさんが気になるものをいくつか紹介いただけますか。

ミアン:ユースケースは、Webサイトの Decentralized on Hedera から確認することができます。私が気になっているものをいくつか紹介します。

実際のユースケース

<分散型オラクル:Chainlink(チェーンリンク)>

ミアン:まずChainlinkです。Chainlinkは、Hedera Hashgraphの運営審議会メンバーにもなっています。

これはオラクルのサービスですが、実世界に起こっていることと分散型台帳で起こっている世界とをつなげるという役割があります。実物資産をNFTで扱う場合、例えばスニーカー、アート、ワインなどのコレクティブルの他に、それぞれ異なる金融資産もNFTにすることができます。

Chainlinkは大企業ではないのですが、彼らが暗号資産企業として運営審議会メンバーになったのはものすごく大きな展開です。今まで入った20の企業は、既に実世界で活動している企業だからです。それらの企業のサービスや資産を分散型台帳の資産としてローンチする場合、実世界の資産とオラクルで繋げる必要があります。そのためには、Chainlinkがものすごく重要になってきます。

例えば、伝統的な金融をDeFi化するときにオラクルが活きてきます。これから注目されるユースケースは、伝統的なユースケースをどう分散型台帳でリリースできるかというユースケースだからです。

オラクルとは、外部の情報を提供するサードパーティ製のサービスのこと、ブロックチェーンと外の世界をつなぐ役割を果たします。例えば、ブロックチェーン上で為替レートを扱う場合、オラクルを通してレート情報をブロックチェーンの世界で扱えるようにします。

<トレーサビリティ:Avery Dennison(エイブリィ・デニソン)>

ミアン:Avery Dennisonは、トレーサビリティです。実世界で一番タグのシェアがある会社で、実世界の100億以上のモノのトレーサビリティをAtomaと呼ばれるプラットフォームで行うことができます。

私は、これはすごく面白いと思っています。大企業じゃないとなかなか難しいユースケースだからです。今までなぜトレーサビリティが普及していなかったかと言うと、実世界のモノの動きと分散型台帳上のモノの動きを1対1で連動させなければいけなく、すべての過程において連動させるためのセンサーやIoTが成熟していなかったからです。つまり、今までは効率の良いトレーサビリティを構築しにくかったということです。オラクルが加わることで、このようなユースケースが普及しやすくなります。

▼Avery Dennisonについての詳細

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<クーポン発行:Coupon Bureau(クーポン・ビューロー)>

ミアン:Coupon Bureau、これはね、面白いです!アメリカの紙のクーポン規格を決めているコンソーシアムが、既にHedera Hashgraph上でクーポンを発行しています。

そして、彼らはアメリカの小売のクーポン規格をHedera Hashgraphで統一しようとしています。となると、アメリカの小売企業がクーポンを発行するときに一度Hedera Hashgraphを通ることになります。米国で1年間に発行されるクーポンの数は17億で、クーポンで取引される価値は合計で2250億ドルになります。このユースケースだけでも、先程お伝えしたHedera Hashgraphの取引数が100倍から1000倍になる可能性があります。

▼Coupon Bureauについての詳細

Just a moment...

加藤:ネットワークのアクティビティが一気に活性化しますね。

ミアン:日本にも独自のクーポン規格があると思いますが、世界的な規格を構築していこうとなったときに、既にHedera Hashgraphを使っているのであれば、それを使いましょうとなるのではないでしょうか。

<二酸化炭素の排出権取引:DOVU(ドヴ)>

ミアン:あとは環境系です。DOVUは日本でも結構注目されていますね。これは、二酸化炭素の排出権取引になります。炭素隔離を実施している土地の所有者は、その土地をトークン化して、マーケットで削減量を販売して、企業は二酸化炭素の排出量を相殺できるようになります。いわゆるカーボンオフセットです。Hedera Hashgraphを使うことで、企業と土地の所有者のマッチングがしやすくなり、購入者は、土地またはプロジェクトのステータスについて信頼できる方法で受け取ることができるようになります。

もともとHedera Hashgraphは環境負荷が少ない台帳なので、このようなユースケースには非常に向いています。他にも、類似のユースケースがあります。

▼DOVUについての詳細

Just a moment...
炭素隔離とは、ニ酸化炭素の大気中への排出を抑制する手段のことを指します。植物の光合成を利用して二酸化炭素を森林に取り組む方法の他、地下に二酸化炭素を注入する方法があります。

DeFiについては?

加藤:Hedera Hashgraphでは、DeFiのユースケースがあまり見られないように思われますが、実際はどのようになっているのでしょうか。

ミアン:もちろん、我々もDeFiに対しては非常に注目しています。それに対するサインが、HTS(Hedera Token Service)とChainlinkとのオラクル連携になります。ですので、Hedera HashgraphでもDeFiを実装することはできます。

我々がDeFiをどのように考えているかというと、まずHedera Hashgraphがあります、これは技術的にもセキュリティ的にもガバナンス的にも優位です。しかし、一方でDeFiのほとんどの活動はイーサリアムで起きています。Hedera Hashgraphの弱みが何かというと、イーサリアムほどのエコシステム規模、そして認知度がないことです。

でも、技術的にイーサリアムよりは優位です。それであれば、技術的に優位なところでアプリケーションを作り、イーサリアムのエコシステムを享受できるのであれば、良いとこ取りができます。これを可能にするのが、Hedera Hashgraphとイーサリアムのトークンを行き来するためのブリッジになります。そのブリッジを可能にするのが、Chainlinkのようなオラクルです。

今だとWapped HBAR (wHBAR) がありますが、私はこのブリッジに注目しています。wHBARは、我々ではなく第三者がやっています。徐々にブリッジが確立されているようですね。

Hedera Hashgraphが求めているパートナーシップ

加藤:現在、Hedera Hashgraphではどのようなパートナーシップを求めていますか?パートナーシップに興味がある企業は、どこに連絡をすれば良いですか?

ミアン:我々は複数のパートナーシップを求めています。まず、運営審議会に興味がある企業で、トヨタやホンダのような日本のトップの企業です。sami@hedera.com に直接連絡していただければ、審議会への窓口をご紹介できます。

もう1つのパートナーシップは、SIパートナーシップです。日本で大企業がHedera Hashgraphを使ったアプリケーションを作りたいとなったときに、仕事を受けて開発の対応をできる企業を求めています。我々はプラットフォームビジネスなので、SIerの方々を教育して、Hedera Hashgraphのビジネス機会を提供するということを行います。また、プロジェクトによってはHedera Hashgraphから補助金が出る場合があります。

最後は、Hedera Hashgraph上でアプリケーションを作りたい人です。こちらは、パートナーシップというより docs.hedera.com を参照することで自主的にアプリケーションを開発することができます。個別アプリの開発助言については、リソースが厳しいので基本的には遠慮させていただきます。

日本市場についてどのように見ているのか

加藤:Hedera Hashgraphでは、日本市場をどのように見ていますか?もし、日本市場について公表できるビジネス進捗があれば教えてください。

ミアン:日本市場の開拓は一番先手を切っていましたが、結果的にものすごく遅れています。

我々は、2021年1月から本格的に日本で認知活動をはじめました。その理由は、来年の前半か後半に日本市場が活性化してくると思っているからです。我々が海外の企業と一緒に開発しているユースケースが、今年の後半から来年の前半にかけてリリースされていきます。例えば、Coupon Bureauや他の審議会メンバーとのユースケースがローンチされていきます。日本市場の特殊なところが、海外のユースケースや実績を見てから導入をしてくるという点です。そのため、「これは使えるな」と日本企業が認知するのが来年になると思っています。

当初、一番先手を切って開拓に着手した通り、日本市場は世界的にものすごく重要です。ただし、タイミングも重要です。今から我々の認知度を向上させていき、特に日本市場で注目されているNFT関連などのユースケースを中心に取り上げていきます。

2、3年後には日本市場でHedera Hashgraphを利用する企業が出てくると思いますが、来年参入してくる日本企業は間違いなくイノベーター企業でしょうね。

最後に読者に伝えたいこと

加藤:最後に、読者にメッセージをお願いします。

ミアン:どうしても、この業界は短期的にものを見がちになってしまいます。暗号資産の値動きとか、パートナーシップの公開とか、皆さんなりがちです。

でも、Hedera Hashgraphは100年企業を目指しています。Hedera Hashgraphでは、あらゆることが計画的に考えられています。ただ、我々も人間なので、業界がどのようにになるかは分からないし、この先自分たちが考えた仮説と違う方向に物事が運ぶことは十分にあり得ます。なので、綿密に今後15年の計画が練られている一方で、柔軟性を保つためのベストバランスが考えられています。

私が読者に1つ言いたいことは、Hdera Hashgraphに関わらず、技術に関して全体像を把握して、そもそも何でその技術が存在するのかということに関して、ぜひとも関心を持っていただきたいということです。Hedera Hashgraphであろうがイーサリアムあろうが、我々が解決したい問題は一緒になります。そもそも、その問題というのは何で解決する価値があるのかという原点に戻って様々な物事を見て欲しいと思います。Hedera Hashgraphは、その中の1つの選択肢です。

今ある問題の解決プロセスをやっている中で、今ある1万の暗号資産の99%は基準から漏れていきます。それは、存在価値がないかもしれないということです。ただ儲かるからという存在意義のものは、全部消え去ることでしょう。本質的に、もともとサトシ・ナカモトがビットコインを作った理由は、世界を変えたい、人々の人生を変えたいという理由です。Hedera Hashgraphもその1つですけれども、我々に限らずそれらに注目していただければと思います。

私のTwitter(@samimian33)で以前このような投稿をしているのですが、これを知ってHBARを持つかどうかでもだいぶ違うと思います。是非ご一読ください。

Hedera Hashgraphに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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