Layer1プロジェクト解説

より安全でスケーラブルなDeFiを実現するDLT「Radix」の解説

Layer1
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世の中には数多くの1stレイヤーの分散型台帳技術が存在しており、様々なユースケースを適用できるようにスケーラビリティを重視し、ユースケースを作る開発者に魅力的に思ってもらえる工夫を行っています。Radixは、いままで露わになってきたDeFiの致命的な問題を解決するための仕組みを盛り込み、DeFiへの大規模展開が可能な1stレイヤーを構築しています。

Radixの概要

Radix(ラディックス)は、DeFiを大規模に展開するための1stレイヤーの分散型台帳技術(Decentralized Ledger Technology: DLT)です。Radixでできることはブロックチェーンと同じではあるものの、ブロックチェーンやDAGとは異なる独自のデータ構造を有しているため、ブロックチェーンではありません。

DeFiを大規模に展開すると一言で表現しても、単にスケーラビリティを上げれば良いというわけではありません。これには、DeFiだからこその構造的な理由が存在しています。まず、DeFiサービスは複数のコントラクトと連携することにより動作します。そして、さらに外部のDeFiサービスと連携することでその規模を拡大します。しかし、これは開発者が想定していなかった脆弱性を生み出す要因にもなります。また、外部サービスとの連携が進むことにより並行処理が難しくなるため、DLT自体のスケーラビリティが高くても、いざDeFiになると十分なスケーラビリティが確保できないということが起こり得ます。

Radixは、処理が複雑なDeFiでもスケーラビリティを確保できるソリューションを提供します。そして、Radixを利用する開発者がインセンティブを得て、安全なDeFiを提供できる仕組みを用意します。

なお、Radixは2021年7月28日(GMT+0:00)にメインネットの初期バージョンであるOlympia(オリンピア)をリリースしました。また、同年内にAlexandria(アレクサンドリア)にアップグレードし、2022年にフル機能が利用できるBabylon(バビロン)をリリースする予定となっています。また、既にイーサリアムとのブリッジが動いており、eXRDが取引可能になっています。

Radixの特徴

Radixが目指しているのは、DeFiの爆発的な普及に耐えるDLTを実現することです。しかし、RadixはDeFiが普及するための障壁として以下の4点を指摘してます。そのため、それらに対するソリューションを提供します。

  1. ハッキングや脆弱性悪用が絶えない
  2. DeFi DAppsの相互運用性がなく、速やかな構築が不能
  3. 分散型開発コミュニティへのインセンティブが不足している
  4. DAppsのスケーラビリティが低い

リクエストに応じた予測可能な正しい結果を定義できる

対処する障壁:1. ハッキングや脆弱性悪用が絶えない。

DeFiは攻撃の対象になりやすく、DeFiプロトコルからの資金流出は、もはや日常ともいえる状況になっています。たとえ、DeFiプロトコルのスマートコントラクトのロジックにバグがなくても、複数のDeFiアプリケーションと連携することにより、新たな脆弱性が生まれたりと、開発者がすべてを想定してサービスを構築することは不可能になっています。

そこで、RadixではRadix Engine(ラディックス エンジン)を用意しました。Radixのコンポーネントは、有限状態機械(Finite State Machine: FSM)に基づいて、アクションごとのコンポーネントの状態を決めていきます。これは「このアクションによってどのような状態になるのか?」ということを決め、それらの集合を定義することで、DeFiプロトコルの動作を決めていくというものです。そして、FSMでは「その状態になれるのは一度に1つ」という原則があります。

Radix EngineによりFSMに基づいた動作をすることで、想定外の動作を極力排除し、不正な資金流出を回避します。以下は、DeFiプールに資金をデポジットする場合の処理をモデル化したものです。Radixは、FSMによりシンプルになります。

EthereumとRadixの状態遷移の比較

EthereumとRadixの状態遷移の比較

コンポーネントのカタログを使ってDeFiを開発できる

対処する問題:2. DeFi DAppsの相互運用性がなく、速やかな構築が不能/3. 分散型開発コミュニティへのインセンティブが不足している

今までのDeFiプロトコルは、それぞれの世界が独立しており、相互運用性がありませんでした。また、開発者は自らのサービスを開発する場合に、攻撃などからの資金流出リスクなどのリスクを低減することに力を入れなければいけませんでした。

そこで、RadixではComponent Catalog(コンポーネントカタログ)を用意し、カタログを開発者が利用することで、速やかなDeFiプロトコルの構築と相互運用性を実現します。開発者は、トークン発行や流動性プール、スワップやオラクルなどのコンポーネントをカタログから選び、インスタンス化することでDeFiサービスに機能を組み込めるようになります。インスタンス化はAPIを通して行われるため、コードを記述する手間は必要ありません。また、カスタマイズしたい場合は、カタログからコンポーネントインポートしてScryptoと呼ばれる独自言語でカスタマイズして利用することができます。

また、Component Catalogは、分散型開発コミュニティへのインセンティブ不足解消へ繋がります。Radixエコシステムの初期で利用できるのは、Radix財団が用意した標準プラットフォームコンポーネントのみになります。第三者もコンポーネントを用意し、カタログに提供することができるため、自分のコンポーネントが利用された場合にロイヤリティを徴収することができるようになります。ロイヤリティは、カタログの利用状況に応じて後で調整することができます。

コンポーネントカタログ

コンポーネントカタログ

無限にスケーラブルで賢い並行処理ができる

対処する問題:4. DAppsのスケーラビリティが低い。

ブロックチェーンは、単に高スループットを達成するだけではDeFiのスケーラビリティ要件を満たすことができません。DeFiの大規模な展開を可能にするには、複数のスマートコントラクトを連携させ、1つのトランザクションで実行することが必要になります。このような相互連携のことを、Radixではコンポーザビリティと呼んでいます。しかし、一般的なシャーディングを使ったアプローチだけでは、シャード間でまたがる取引を処理することができず、コンポーザビリティを大幅に低下させることに繋がります。Radixは、コンセンサスアルゴリズムの工夫とアプリケーション層を活用することでこれらの問題を解決します。

コンセンサスアルゴリズムのCerberus(サーベラス)は、従来のアプローチの固定的なシャードのセットを使用するのではなく、実質的に無制限のシャードをサポートすることができます。並列処理による直線的なスケーラビリティを実現できるため、ノードの数を増やすことでスケーラビリティを増やすことが可能になります。

また、アプリケーション層の活用ではRadix Engineの最下層のRadix VMを利用します。Radix上のトランザクションは、大きく2種類に分かれます:

  • 楽観的なリクエスト:変化が予期可能な、単なるトークン送信のような単純な取引を処理するリクエスト。並行処理が簡単。
  • 悲観的なリクエスト:変化が予測不可能な、DeFiプールのように処理が複雑なものに対するリクエスト。並行処理が難しい。

後者は、一連の処理を行っている間の並列処理は難しくなります。Radix VMは、これら2種類のトランザクションを、シャードに動的にマッピングをしていきます。楽観的なリクエストはできるだけ多くを並行処理し、並行処理が難しい悲観的なリクエストは、順序立てて処理することにより、全体を最適化します。

XRDトークン

Radixでは、メインネットでXRDトークンを利用します。XRDトークンは、他のブロックチェーンプラットフォームと同様に手数料の役割を担います。XRDは、以下のような特徴を持ちます。

  • 最大供給量は240億枚
  • 取引手数料の100%がバーンされる
  • イーサリアムとブリッジされ、イーサリアム側ではeXRDトークン(コントラクト情報)として扱われる
  • ステーキング報酬(下図のNetwork Emission部分)は、年間3億XRDが割り当てられ、メインネットローンチ後から40年かけて供給されていく

イーサリアムとのブリッジ(XRD <-> eXRD)は、Instabridgeにより行います。Instabridgeは、ブリッジツールでありながらも、単純送信を利用することでGAS台を最小限に抑えることができます。eXRDはDEXをはじめとするいくつかの取引所から入手することができ、メインネットトークンであるXRDには、世界の主要取引所が順次対応していきます。

以下は、XRDトークン配布の内訳になります。その大半がステーキング報酬(Network Emission)に割り当てられています。2021年8月12日の時点で、XRDの循環供給の25%がステーキングされています。ステーキングの詳しい方法は「How to Stake and Unstake XRD in the Desktop Wallet」から確認することができます。

XRDのトークン配布

Radixに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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