Oasis Networkの概要
Oasis Networkは、プライバシーを有効にすることができるオープンファイナンスや、トークン化されたデータエコノミーの構築を目指すブロックチェーンプラットフォームです。プラットフォームの暗号資産として、$ROSEが発行されています。
Oasis Networkが特徴的なのは、Consensus LayerとParaTime Layerに分かれており、チェーン全体で並列処理を実現している点です。ParaTime Layerにおける各ParaTimeは、それぞれがブロックチェーンのような動作をします。開発者は、Oasis SDKを利用することにより、独自のParaTimeを開発することができ、例えばEVM互換ParaTimeや、トランザクションを秘匿実行可能なParaTimeを実現することができるようになります。
Oasis Networkは、2020年11月にメインネットをローンチし、既に複数のParaTimeがOasis Network上でリリースされています。さらに、チェーンのエコシステム加速させるために、2021年11月に1億6000万ドル規模のエコシステムファンドを立ち上げました。
また、Oasis Networkの機関投資家には、a16z, Accel, Pantera, Polychain CapitalやBinance Labsなどの、ブロックチェーン業界では最も著名なベンチャーキャピタルが名を連ねています。
Oasis NetworkのParaTime
Oasis Networkでは、コンセンサスと処理をぞれぞれConsensus LayerとParaTime Layerに分け、チェーン全体で並行処理ができるようになっています。これは、Polkadotのリレーチェーンとパラチェーンの構造に似ており、Consensus Layerがリレーチェーン、ParaTime Layerがパラチェーンに相当します。ただし、ParaTimeはパラチェーンと異なり自らコンセンサスを行う必要がないため、開発が容易だとされています。
開発者は、Oasis SDKを利用することにより、独自カスタマイズされたParaTimeを開発することができます。例えば、EVM互換、トランザクションを秘匿実行したい、プライベートチェーン構成したいといったニーズに対応することができるようになっています。Oasis Networkでは、プロジェクト公式及びサードパーティから4つのParaTimeがリリースされています:
- Emerald:EVM互換のParaTime。
- Cipher:トランザクションを秘匿実行可能なParaTime。
- Parcel:データのトークン化に特化したParaTime。
- Oasis Ethereum:EVM互換をもち、トランザクションを秘匿実行可能なParaTime。
Emerald ParaTime
Emeraldは、Oasis Foundationによってリリースされた、EVMとの完全互換をもつParaTimeです。Oasis Networkの高いスケーラビリティの恩恵を享受しながら、Ethereumより99%以上低いGAS代でトランザクションを実行することができます。
EmeraldはEVM互換であるため、ユーザーはMetaMaskのような既存の使い慣れたウォレットを使用することができます。MetaMaskの場合、Chainlistを使用するか以下の値を入力することで、Emeraldを利用することができます:
- ネットワーク名:Oasis Network
- 新規 RPC URL:https://emerald.oasis.dev
- チェーンID:42262
- 通貨記号:ROSE
- ブロックエクスプローラーのURL:https://explorer.emerald.oasis.dev/
また、EmeraldではブリッジのWormholeを利用することにより、トークン(ファンジブルトークン、NFT)をEthereumやBinance Smart Chainなどとブリッジすることができます。ブリッジした資産は、Oasis Foundationが提供しているDEXのYuzuSwapなどで取引を行うことができるようになっています。
参考:Oasis Emerald – EVM ParaTime is live on Mainnet
Cipher ParaTime
Cipher は、Oasis Foundationによってリリースされた、トランザクションを秘匿実行可能なParaTimeです。EVMとの互換はなく、WebAssemblyを用いたスマートコントラクトWASMを用います。
Cipherが他と大きく異なるのは、トランザクションを秘匿実行できる点です。Cipher において、トランザクションの入出力は暗号化された状態で扱われます。しかし、トランザクションを処理するにはどこかで暗号化解除する必要があります。それが、CPU上にあるハードウェア的な隔離領域であるTEE(Trusted Execution Environment)になります。TEEはノード管理者ですらアクセスすることができないため、暗号化解除されたトランザクションは誰にも閲覧できず、取引の機密性が確保されます。
Cipherを使うことにより、ユーザーは取引のプライバシーを守ることができます。また、DeFiに応用することで、フロントランニングを防ぐことができ、公平な取引環境を実現することができるようになります。
参考:Cipher ParaTime Live on Mainnet
Parcel ParaTime
Parcel は、Oasis Labsによってリリースされた、機能を犠牲にすることなく、データの使用方法をユーザーが適切に制御することができるAPI群を提供するParaTimeです。APIによって、データの管理や分析、トークン化を行うことができ、BtoB用途に焦点を当てています。
Parcelを使用すると、Oasis LabsのWebアプリであるStewardにアクセスして、ユーザーがデータの使用状況を追跡できるようになります。また、Parcel SDKを使用することで、開発者は独自のデータ管理インターフェイスを構築できるようになっています。
Oasis Ethereum ParaTime
Oasis Ethereumは、サードパーティのSecond Stateが開発しているParaTimeです。総発行数2100万枚の$OETHをGASをとして使用します。Oasis Ethereumは、Ethereumの下位互換性を確保しつつ、仮想マシンの拡張を行っています。具体的には、これまでのEVMに加え、Ethereum flavored WebAssembly (EWASM)を利用することができるようになっています。EWASMは、もともとEthereum 2.0におけるWASMベースのEVMとして提案されているもので、Oasis EthereumではEWASMでトランザクションを秘匿実行することができるようになります。
トランザクションの秘匿実行では、ユーザーが暗号化されたトランザクションをOasis Ethereumに送ります。トランザクションは、TEEで暗号化が解除されてトランザクションが実行されます。その後、実行結果が再び暗号化され、台帳に保存されることになります。TEEの中身には、第三者が絶対アクセスすることができないため、Oasis EthereumではEthereum互換の環境でトランザクションの秘匿実行ができるようになっています。
ROSEトークン
Oasis Networkは、ネイティブトークンとして$ROSEを使用します。Consensus Layerにおけるステーキングやデリゲートで利用するほか、ParaTimeのネットワーク手数料として使用します。
$ROSEは、総発行数が100億 ROSEで、以下のトークン配布割合になっています。
- 23.5%:ステーキング報酬
- 23.0%:初期投資家
- 20.0%:コア貢献者
- 10.0%:財団の財源
- 18.5%:コミュニティ&エコシステム
- 5.0%:戦略パートナー&準備金