Layer1プロジェクト解説暗号資産

シャーディングを実装したLayer1ブロックチェーン「NEAR」の解説

Layer1
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NEARの概要

NEARとは、シャーディングを用いてスケーリングを行うことができるLayer1ブロックチェーンです。ネイティブトークンは $NEAR で、以下2つの用途があります。

  1. トランザクションの処理(GAS代)とデータストレージの維持
  2. TPoSのステーキング

NEARは、シャーディングによりネットワークの容量を水平方向に増やすことで、スケーリング問題を解決します。コンセンサスアルゴリズムにTPoS (Thresholded Proof Of Stake)を採用し、従来のPoSにおける「富むものがさらに富む」ということを防ぎつつ、チェーンのセキュリティを強化することができます。TPoSについて詳しく知りたい方は「Thresholded Proof Of Stake」をご覧ください。

また、NEARは既存のブロックチェーンのユーザー体験の悪さを解決することができます。アプリケーション側がユーザーのGAS代を代払いでき、ウォレットを持っていないユーザーは、一時的なアカウントを作成してウォレットを持っていなくてもアプリケーションを使うことができるようになります。

<NEARの基本情報>

ネイティブトークン $NEAR
コンセンサスアルゴリズム TPOS
ブロックチェーンエクスプローラー https://explorer.near.org/
バリデーター情報 https://explorer.near.org/nodes/validators
NEARのチャート情報 https://explorer.near.org/stats
$NEARの価格情報 https://www.coingecko.com/ja/%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%B3/near
DeFi Lama https://defillama.com/chain/Near?currency=USD

NEARの特徴

NEARは、ブロックチェーンのスケーリング問題を、シャーディングを活用したNightshade(ナイトシャード)で解決しています。

シャーディングの概念

NEARのシャーディングを解説する前に、一般的なシャーディングの概念について説明します。

シャーディングとは、データベースのスケーリング手法として広く普及している技術です。大きなデータベースを水平分割し、より小さく管理しやすいデータベースに分割していきます。この分割されたデータベースをシャードといいます。大きなデータベースをシャードに分割することで、複数のサーバーで分割管理することができるようになります。そのため、データ容量に応じてサーバーを追加することで水平方向にスケーリングすることができます。

NEARでは、このような考え方をブロックチェーンに応用しています。NEARで応用しているシャーディングをNightshade(ナイトシャード)と呼びます。

シャーディングの概念

引用元:https://learnnear.club/what-is-near-protocol/

NEARのシャーディング「Nightshade」

Nightshade は、バリデーターを複数のシャードに割り当て、それぞれのシャードで取引を並列処理し、単一のブロックチェーンを保ちながらスケーリングを実現しています。NEARは、バリデーターを増やせば増やすほど、取引を並列処理するシャードを増やすことができるため、バリデーターの量に比例してスケーリングすることができるようになっています。

Nightshade

引用元:https://learnnear.club/what-is-near-protocol/

Nightshade では、以下の仕組みに従いシャーディングが行われます。

  1. シャードには、アカウントとコントラクトが割り当てられ、それぞれのシャードでTx(取引)が発生します。そして、シャードにバリデーター(承認者)がランダムに割り当てられます。バリデーターは半日で再選考されます。再選考されるまでの期間をエポックといいます。
  2. シャードで発生したTxは、それぞれのシャードのチャンク(トランザクションの塊)に格納されます。
  3. それぞれのシャードはチャンクを並列処理し、ブロックに格納します。それぞれのチャンクはそれぞれのシャードを維持するバリデーターでしか検証することができません(例えば、チャンクCはシャードCに割り当てられたバリデーターでしか検証できない)。
  4. エポック期間が終了すると、問題のないバリデーターはエポック報酬を受け取ります。
  5. バリデーターが再選考され、それぞれのシャードに割り当てられます。同時に、シャードごとに処理しているTxが大幅に異なる場合、それぞれのシャードのTxが均一になるように、アカウントとコントラクトが各シャードに再度振り分けられます。この再選考をリシャーディングといいます。特定のシャードのTxが許容できないほど増加している場合、このリシャーディングによって、エポックごとに均一化されるように振り分けられることでシャードのTx詰まりを解消します。

つまり、NEARはNightshadeによって、シャードを増やすと並列処理できるTxが増加します。そのため、シャードを維持するためのバリデーターを増やせば増やすほど、並列処理できるTxが増加しスケーリングすることができるようになっています。

さらに、Txを処理するために利用される$NEARの数量(GAS)は短時間で急上昇するわけではなく、エポックの利用量(例:前エポックのブロックの半分が埋まっている場合など)に応じて緩やかに変動します。この「GASで必要な$NEARの数量が急上昇しない」という点は、NEARを利用する事業者にとって、GAS代の予測可能性を高めるため大きなメリットになります。ただし、あくまでも$NEARの数量が急上昇しないということであり、$NEARの価格は変動する点には注意が必要になります。

また、バリデーターが不正を行っていた場合、バリデーターになるためにステーキングしている$NEARがすべて没収されます。詳しく知りたい方は、参考資料をご覧ください。

参考資料:

NEARとの相互運用性を高める製品群

NEARでは、外部のエコシステムと相互運用性を高める製品群がリリースされています。実際に利用する場合は、自己責任でご利用ください。

Aurora

Aurora解説記事)は、NEAR上で動くEVM (Ethereume Virtual Machine) です。Auroraを利用することにより、Ethereum用に開発されたスマートコントラクトをNEAR上で動かすことができるため、既存のEthereumの資産を流用することができます(例: DODO等)。AuroraがEVM互換を持つことで、Ethereum開発者の学習コストを低減させる効果があり、Ethereum開発者は、NEARエコシステムに容易に移行することができます。

Octopus Network

Octopus Networkは、NEAR上で動く一連のスマートコントラクト群です。Octopus Relayを中心とし、アプリケーションごとに作成されたアプリチェーンと相互接続することができます。また、同様にOctopus Relayを経由してCosmosやPolkadotなどと相互接続することができます。

Allbridge

Allbridgeは、EVMや非EVMチェーンと相互に資産を転送することができるクロスチェーンブリッジです。例えば、SolanaやTerra、NEARやAuroraとの間で資産を転送することができます。これにより、別チェーンからNEARエコシステムにスムーズに資産を移行することができます。

NEARの主なDApps

NEARの主なDAppsは「AwesomeNEAR」で確認することができます。ここでは、筆者が注目しているDAppsを紹介します。実際に利用する場合は、自己責任でご利用ください。

DeFi:Ref Finance

Rif Finance

Ref Financeは、コミュニティ主導の多目的DeFiプラットフォームです。スワップ、レンディング、ファーミング、ステーブルコイン同士のみのスワップなど、さまざまな機能があり、1回あたりの手数料が0.01ドルと低価格で利用することができます。下記画像は、0.5NEARをwNEARにスワップしている例になります。

Ref Financeにおけるスワップ

NFT:Paras

Paras

Parasは、NEAR上のNFTマーケットプレイスです。ParasではNFTを閲覧する方法が2つあります。1つ目は、Openseaと同様にメタデータのみを見る方法。2つ目は、NFTに必要な情報を載せた3Dカードで見る方法です。

2つ目の方法は、メタデータの外枠に、タイトル、識別ID、コレクション名、発行元アドレス、発行枚数の情報を載せて、3Dカードのように見ることができるため、NFTに必要な情報を一目で確認でき、異なるメタデータでも統一感を持たせることができます。

ParasにおけるNFTの発行費用は、0.01ドル以下と非常に低価格です。NFTを作成する際に、作成者はロイヤリティを設定することができます。ロイヤリティ設定では、権利を複数の人間に設定することができるため、コラボなどを行った際にスムーズな利益分配をすることができます。

学習:NEAR University

NEAR University

NEAR Universityは、NEARが公式で運営するNEARの学習サイトです。いくつかのコースやNEAR公式の認定プログラムがあり、開発者になりたい方やNEARを使って起業をしたい方に参考になる情報が掲載されています。

ブリッジ:Rainbow Bridge

Rainbow Bridge

Rainbow Bridgeは、EthereumのERC20トークンをNEARやAuroraにブリッジすることができます。

NEARの始め方

NEARに興味がある人向けに、NEARの始め方やテストネットの使い方についてご紹介します。

NEARを購入できる取引所

CoinGeckoにアクセスし、「See All Trading Paris」をクリックすることで、NEARを購入できる場所を確認することができます。

CoinGecko - NEAR

NEARに対応しているウォレット

NEARに対応しているウォレットは「AwsomeNEAR」で確認することができます。代表的なウォレットは、以下の通りになります。

NEARのウォレット

NEAR Walletで名前を取得する方法

NEARでは、ENS (Ethereum Name Service)と同様に、ネーミングサービスが存在しています。NEARにおける名前の取得方法をご紹介します。

NEARのネーミングサービスは、メールアドレスに似たオリジナルのウォレットアドレスを、0.1NEARを送金することで取得することができます。今回はNEAR Walletで作成します。初めはテストネット用のウォレットを使い、testnetで名前取得を試してみる運用することをお勧めします。

名前を取得するにはリンク「Create Your Account」に進み、好きな名前を入力します。その後、3つの方法から1つを選択します。

  1. パスフレーズを記録する方法。紙に記録することで最も安全。
  2. Ledger Walletを登録する方法。
  3. メールに認証コードを受信して登録する方法。最も便利ですが、メールを保管する必要があります。

パスフレーズを記録する旧来の方法もありますが、最も初心者におすすめなのは、メールで作成することです。メールでウォレットを作成すると、メールでウォレットを復元することができるようになるからです。しかし、メールを保管することが必要で、メールが流出した場合に、第三者から資産が抜き取られる可能性がある点に注意する必要があります。

以下のように、ウォレットアドレスに取引所などから0.1NEARを送ることで、メールアドレスのようなウォレットアドレスを作成することができます。

NEARのネーミングサービス

NEAR University Japanでエアドロップをもらう

Fracton Venturesが運営するNEAR University Japanのフォームに回答することで、$NEARのエアドロップをもらうことができます。

フォームでウォレットアドレスを入力する項目があるので、作成したウォレットアドレスを入力することで、ENSのようなオリジナルのウォレットアドレスを持ったウォレットを作成することができます。

まとめ

今回はNEARについて解説しました。

NEARは、シャーディングの技術を活用し、水平方向にスケーリングできるLayer1ブロックチェーンです。EVMを扱うことができるAuroraが用意されており、既存のEVM経済圏をNEAR上に容易に持ってくることができるようになっています。

また、既にNEARには、DeFiやNFT、Ethereumや他チェーンとのブリッジなど、基本的なDAppsが揃っています。

参考資料

 

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この記事を書いた人

Hello, token economy.

JPYC株式会社でブロックチェーンリサーチャーとして働いています。

個人では濱口幹久感謝トークンを発行しており、感謝配りお兄さんとして感謝を配っています。Token economyを社会実装するべく、精進いたします。

専門はxDAIとPolygonのアプリです。

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TOKEN ECONOMIST(トークンエコノミスト)
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