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Web3のためのコミュニティ主導型ウォレット「Tally Ho」の解説

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2022年8月現在、最も普及しているブロックチェーンはEthereumやPolygonなどのEVM互換チェーンです。そして、これらEVM互換チェーンにおいて最も普及しているウォレットが、ConsenSysによって開発されているMetaMaskです。今回紹介するTally Hoは、MetaNaskに問題提起を行い、Web3のためのウォレットを開発しています。

Tally Hoの概要

Tally Hoの基本情報

公式サイト https://tally.cash/
公式Twitter https://twitter.com/tallycash
公式Docs https://docs.tally.cash/tally/
公式ブログ https://blog.tally.cash/
Github https://github.com/tallycash/extension
独自トークン なし(2022年8月25日時点)
Gitcoin https://gitcoin.co/grants/5288/tally-ho-open-source-and-community-owned-wallet

Tally Hoは、Web3のためのコミュニティ主導型ウォレットです。MetaMaskの運営方法に対するアンチテーゼによって生まれ、完全なオープンソース、コミュニティ主体の運営、MetaMaskや他のウォレットよりも低いウォレット内スワップ(インナースワップ)手数料を特徴としています。2022年8月現在、Tally Hoは EthereumtとPolygonに対応しており、さらにOptimismとArbitrumに対応する予定です。一方で、テストネットが利用できず、未対応のEVM互換チェーンを手動で追加できないという注意点があります。また、Tally Hoはノード接続サービスのAlchemyと提携しており、Infuraを利用しているMetaMmaskよりもトランザクションの成功率が高く、ガス代の見積もりが正確になっています(参考記事:公式ブログ)。Tally Hoにおけるウォレット機能の追加はガバナンスによって行われており、今後DAO的な手法により運営されていく予定になっています。

また、Tally Hoはセキュリティ監査を受けており、大きな脆弱性は見つかっていません。詳細については、公式ブログ公式サイトから確認することができます。

Tally Hoの機能

この章ではTally Hoの機能について紹介します。

Tally Hoは基本的なウォレットの機能の他に、いくつか特徴的な機能があります。

まず基本的な機能として、Tally HoはハードウェアウォレットのLedger Walletと連携できるようになっています。また、MetaMaskなどの別のウォレットから移行する場合、シークレットリカバリーフレーズ(シードフレーズ、リカバリフレーズ)で簡単に移行することができるようになっています。Tally Hoでは、シークレットリカバリーフレーズ単位でウォレットや追加したアドレスを管理できます。これにより、万が一シークレットリカバリーフレーズが漏洩したとしても、そこに紐づいたアドレスの資産だけが被害を受けるため、NFT用、DeFi用、実験用、などの用途ごとにシークレットリカバリーフレーズで管理することでセキュリティを高めることができます。

以上の基本機能の他、筆者が特筆すべきTally Hoの特徴は以下4点があげられます:

  • ウォレット内スワップ(インナースワップ)
  • 閲覧限定アドレスの追加
  • 複数アドレスの一括閲覧
  • NFTの閲覧

ウォレット内スワップ(インナースワップ)

ウォレット内スワップ(インナースワップ)とは、DEXのサイトにアクセスしなくてもトークン同士のスワップ(交換)ができる機能です。UniswapやSushiSwapなどのDEXから最適なレートを検索し、スワップします。直接サイトにアクセスする必要がないため、偽サイトによる詐欺被害を回避することができます。

Tally Hoのインナースワップ

閲覧限定アドレスの追加

閲覧限定アドレスの追加機能は、閲覧したいウォレットアドレスを登録することで、利用することはできませんが、NFTや保有トークンを閲覧することができる機能です。この機能を法人やコラボプロジェクトが活用することで、利用することはできないが即座に閲覧できるので、内部統制の構築やコラボウォレットの監視が容易になります。

閲覧限定アドレスの追加1 閲覧限定アドレスの追加1

閲覧限定アドレスの追加3

複数アドレスの一括閲覧

複数アドレスの一括閲覧機能とは、閲覧限定アドレスを含む保有トークンや保有NFTを、Overviewから一括で閲覧することができる機能です。注意点として、閲覧限定アドレスのトークンやNFTも含まれるため、クジラなどの監視ウォレットを追加した場合に、正しく自分の資産を把握できなくなる可能性があります。この機能を活用することで、さまざまな用途でウォレットを分割しても一括で資産を把握することができます。以下の例では、クジラ2人を閲覧限定アドレスとして追加した場合の表示です。

複数アドレスの一括閲覧機能

NFTの閲覧

2022年8月16日にNFT閲覧機能が追加されました。OpenSeaなどを使わなくても、アドレスが保有しているNFTを直接閲覧することができます。OverviewのNFTsをクリックすることで、Tally Hoに登録したアドレスが保有しているすべてのNFTを閲覧することができます。注意点として、この機能には閲覧限定アドレスの保有しているNFTも含まれます。

NFTの閲覧

MetaMaskに対する問題提起

Tally Hoは、MetaMaskに対する問題提起によって生まれたWeb3のためのコミュニティ主導型ウォレットです。Tally Hoをより深く理解するためには、MetaMaskに対する問題提起を理解する必要があります。

MetaMaskは、米国法人のConsenSysが2016年にリリースしたウォレットです。EVM互換チェーンを使う場合、多くの人がこのMetaMaskを利用しています。

Tally Hoは、MetaMaskに対して3つの問題提起を行っています:

  1. オープン性がない
  2. ウォレット内スワップで生じた手数料の独占
  3. ユーザーの監視体制を強化する姿勢

参考情報:公式ブログ公式ブログ(ライセンス)

オープン性がない

Tally Hoは、Web3の発展に重要な要因としてオープン性を強調し、オープン性を最大限に生かすためにはオープンソースでなければならないと主張しています。しかし、MetaMaskを運営するConsenSysは、2020年8月21日にライセンスを変更しました。これにより、MetaMaskのソースコードは特定の条件を除いて、オープンソースからクローズドソースに変更されました(参考記事:MetaMaskのGitHub)。

MetaMaskのライセンス

ウォレット内スワップで生じた手数料の独占

MetaMaskの機能の一つであるウォレット内スワップは、多くの手数料収入を生み出しています。例えば、2022年8月20日には約2700万ドルのスワップが行われ、それに伴う手数料収入は1日で約23万ドルになります。MetaMaskがウォレット内スワップを始めてから2022年8月20日までの累積手数料収入は、4億1900万ドルにのぼります。MetaMaskとConsenSysは古くからコミュニティの支援を受けていたにも関わらず、これらの手数料収入をユーザーに一切還元していないと、Tally Hoは問題提起しています。

MetaMaskの手数料収入

MetaMaskの手数料収入(引用元:Dune

ユーザーの監視体制を強化する姿勢

Tally Hoは国別でウォレットのアクセスをブロックし、ユーザー監視を強化するMetaMaskとConsenSysの姿勢に対して問題提起を行っています。2022年3月に、MetaMaskを利用するInfuraが特定地域のアクセスをブロックしました(参考記事:CoinPost)。

InfuraとはMetaMaskが利用するノード接続サービスのことで、ウォレットとノードを接続する役割を担っています。ウォレットがブロックチェーンにアクセスするためには、Infuraなどのノード接続サービスを利用する必要がありますが、InfuraはMetaMaskを運営するConsenSysが運営しています。MetaMaskの実装を変えない限りはInfuraを利用することになるため、ブロックチェーンへのアクセスがInfuraに依存します。この状況が常態化すると、ConsenSysがユーザーのブロックチェーンへのアクセス権をコントロールすることにつながります。

そこで、Tally Hoはノード接続にInfuraではなくAlchemyを採用し、Infuraの寡占状態を打破しようとしています。Alchemyを採用する理由は、他にもトランザクションの取りこぼしを減少させるなどの効果があります(参考記事:公式ブログ)。

Tally HoとMetaMaskの違い

Tally HoはMetaMaskを強く意識して作成されており、MetaMaskとどこが差別化されているかに重点を置いています。この章では、Tally HoとMetaMaskの違いについて説明します。機能的に違う点はいくつかあるものの、機能面よりも運営方法やノード接続などの違いを中心に扱います。

Tally Ho MetaMask
ノード接続方法 Alchemy Infura
ライセンス オープンソース

(GNU General Public License v3 )

クローズドソース

(Copyright ConsenSys Software Inc. 2020. All rights reserved)

所有者 コミュニティ(近日DAO公開) ConsenSys
手数料収入 コミュニティに還元予定 ConsenSys
運営手法 コミュニティ(近日DAO公開) ConsenSys

特筆すべきは、ライセンスと手数料収入の還元の有無です。

まず、オープンソースを前提としたTally Hoと法人利用を前提としたMetaMaskで、ライセンスが大きく異なります。Tally HoのライセンスはオープンソースのGPLv3を採用しているのに対して、MetaMaskのライセンスは非商用利用(ConsenSysが独自に判断)や月間アクティブユーザーが1万人を下回る場合を除いて自由に利用することはできません。ただし、Tally Hoのオープンソースを利用する場合はオープンソースでなければならないという制約があります。

次に、手数料収入です。2022年8月現在、明確な方法は明らかになっていませんが、Tally Hoは何かしらの形でコミュニティに手数料収入を還元する予定です。一方で、MetaMaskを運営するConsenSysも2022年3月にDAOの計画とトークン発行を示唆する発言しています(参考記事:Decrypt)。

Tally Hoの運営方法と今後

2022年8月現在、Tally HoはDAOを計画しており、近日公開予定でDAOメンバーを募集しています(募集情報DAO化計画DAOの仕組み提案)。

Tally Hoはコミュニティによって運営されているため、開発計画などは提案と投票によって行われています。そのため、Tally Hoをよりよくするために、ユーザーとして我々が提案することも可能です。

ロードマップ最新のロードマップはこちら

Tally Hoのロードマップ(2022年8月25日時点)

MetaMaskからTally Hoに移行する方法

最後にこの章では、MetaMaskからTally Hoに移行する方法をご紹介します。Tally Hoの使い方に関しては、公式ドキュメントをご確認ください。

手順は、以下の通りです。

  1. Tally Hoにインポートしたいウォレットのシークレットリカバリーフレーズ(シードフレーズ、リカバリフレーズ)を用意
  2. Tally Hoを公式サイトからダウンロード
  3. シークレットリカバリーフレーズをインポート

Tally Hoにインポートしたいウォレットのシークレットリカバリーフレーズを用意

MetaMaskから設定を開き、「セキュリティとプライバシー」をクリックするとシークレットリカバリーフレーズを確認できます。注意点として、MetaMaskは単一のシークレットリカバリーフレーズで複数のアカウントを管理しているので、MetaMaskにおけるすべてのアカウントがTally Hoへのインポート対象になります。

Tally Hoへの移行1

Tally Hoを公式サイトからダウンロード

Tally Hoの公式サイトからブラウザ拡張機能をダウンロードします。Tally Hoは、2022年8月現在Chrome互換ブラウザのみに対応しています。

Tally Hoへの移行2

シークレットリカバリーフレーズをインポート

「Import recovery phrase」をクリックします。

Tally Hoへの移行3

シークレットリカバリーフレーズを入力します。

Tally Hoへの移行4

これで、MetaMaskからTally Hoに移行することができました。

その他の機能の説明に関しては公式ドキュメントをご確認ください。

Tally Hoに関する情報

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この記事を書いた人

Hello, token economy.

JPYC株式会社でブロックチェーンリサーチャーとして働いています。

個人では濱口幹久感謝トークンを発行しており、感謝配りお兄さんとして感謝を配っています。Token economyを社会実装するべく、精進いたします。

専門はxDAIとPolygonのアプリです。

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