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Diem(旧Libra)の元開発者によるブロックチェーン「Aptos (APT)」の解説

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Meta(旧Facebook)が2019年6月に発表したブロックチェーンのLibraは、後にDiemにリブランドされました。しかし、規制当局からの強い反発に遭い、2022年1月31日にプロジェクトの終了が発表されました。その後、元開発者によるプロジェクトが複数誕生しました。Aptosは、Sui(解説記事)と共にDiem元開発者による二大勢力の1つとなっています。

Aptosの概要

Aptos(アプトス)は、2022年10月12日にメインネットがローンチした、Meta出身者を中心としたメンバーで構成されたAptos Labs(通称、正式名称 Matonee Inc.)により開発されるLayer1のパブリックブロックチェーンです。共同創業者であるCEOのMo Shaikh氏及びCTOのAvery Ching氏は、Diem(旧Libra)及びそのエコシステムの開発に携わっていました。

Aptosは、何十億もの人々のために分散型資産への普遍的で公平なアクセスを作り出すことを目指しています。プロジェクトは2022年2月に公表されたため、プロジェクトそのものの歴史は深くありません。しかし、AptosはDiemの開発で培ってきた3年間の技術がベースになっています。

Aptosでは、もともとDiemのための開発されたスマートコントラクト言語であるMoveを採用し、安全性を重視。これまでのEVM系チェーンにみられた不正送金を防止し、ハッキング被害を最小限にすることを目指しています。また、低遅延で高いパフォーマンスを確保すべく、Diem由来のコンセンサスアルゴリズムや独自の並列実行手法を採用しています。

また、Aptos Labsは2022年3月と7月に大型の資金調達をしており、その規模は3.5億ドルになります。a16zやFTX Ventures、Coinbase Ventures、Multicoin Capitalなど、Web3業界において著名な投資家が含まれています。

Aptosの特徴

スマートコントラクト言語「Move」

Aptosでは、スマートコントラクト言語としてMove(ムーブ)を採用します。Moveは、もともとDiem向けに作られた、Rustにインスパイアされたスマートコントラクト言語です。

Moveでは、シンプルな監査可能性と機械的な分析可能性を有し、高速で安全な実行を実現します。前者は、Bytecode Verifierにより信頼できないコードが存在する場合でも、型安全性とメモリ安全性を保証するというものです。また、後者はMove Proverにより、プログラムの状態をモデル化することで仕様が正しいことを検証する手法「形式検証」を利用できるようになります。

Aptosチームは、より広範囲なWeb3のユースケースをサポートするために、Moveをさらに強化しました。ブロックチェーンのきめ細やかなリソース制御を実現し、データのアクセスや変更に関連するコストをほぼ固定化します。加えて、ストレージ上にテーブルを構築することで、単一アカウントで大規模なデータセットを扱えるようになったり、完全にオンチェーンで扱える共有もしくは自律アカウントを実現したりすることができます。また、Moveで構築されたスマートコントラクトはアップグデート可能で、Aptos向けに構築されたDAppsを安全に更新させていくことができるようになっています。

MoveそのものはAptosではなく、Moveを採用したいくつかのブロックチェーンがあります。競合のSuiもMoveを採用しているものの、オブジェクトの表現が若干異なっています。そのため、Sui向けに実装したコードをAptosでそのまま利用できない場合があります(参考:How Sui Move differs from Core Move – Sui)。

安全なユーザーエクスペリエンス

ブロックチェーンによるユーザーエクスペリエンスは、必ずしも安全とは言い切れません。ユーザーが理解できないものに署名し、資産が流出することは珍しくなく、上級者ですらそれを完全に防ぐことは困難です。Aptosでは、いくつかの機能を用意し、リスクを最小限します。

トランザクションの実行可能性保護:

すべての取引の実行可能性を制約し、署名者が「無制限のトランザクション」を有効にすることを保護することができます。

Moveベースのキー管理:

ユーザーの秘密鍵をローテーション。また、ローテーションを一人以上のカストディアンや第三者に委任できます。また、ブロックチェーンに鍵管理機能が組み込まれています。

署名内容の明示化:

取引への署名前にトランザクション結果を人間が読める形で明示し、ユーザーが確認しやすいようにします。また、過去の攻撃や悪意のあるスマートコントラクトの履歴に関する情報を組み合わせて不正を減らします。

ライトクライアントプロトコルの導入:

クライアントとサーバー間の信頼を確立するためにAPIプロバイダーのTLS/SSL証明書のみに依存させず、ライトクライアントプロトコルによりウォレットとクライアントが第三者のサーバーから提示されるデータの妥当性を検証することができます。

高いスループットと低遅延なトランザクション

Aptosでは、高いスループットを実現するために、ブロックチェーン上のトランザクション処理は並列でバッチ最適化され、パイプラインを介して効率的に実行されます。これにより、トランザクション処理、トランザクションの伝播などが並列実行されます。

Aptosにおける処理のパイプライン

Aptosにおける処理のパイプライン

スマートコントラクトの実行においては、Block-STMと呼ばれる並列実行エンジンが使用されます。このエンジンでは、特定の順序が与えられた場合に最大の並列性を実現し、順序付けられた一連のトランザクションの競合を検出して管理します。トランザクションのバッチは”楽観的に”並列実行され、実行後に検証されます。検証に失敗すると再実行されます。Block-STMでは、読み書きの対象となるデータ位置を前もって知っておく必要がある並列実行方式と比較して、より複雑なトランザクションを同時処理することができます。この特性により、トランザクションの数が少なくても効率が良くなり、コストが削減され、ユーザーに低遅延なトランザクションを提供することができます。

また、AtopsはコンセンサスアルゴリズムとしてDiemBFT v4ベースのAptosBFTを採用していま。DiemBFT v4は、ネットワークの部分的な同期のもとで有効性を保証、即ち非同期のもとで安全性が保証されます。

APTトークン

Aptosでは、ネイティブ通貨として$APTが発行されています。

$APTのトークノミクスは、メインネットローンチと発表日の2022年10月18日にその概要が発表されました。Layer1プロジェクトとしては珍しく、コミュニティへのトークンセールを一切行わず、いきなり上場が発表されました。

APTトークンの初期供給

$APTは、初期供給量が10億APTで、最小単位が少数件8桁のOctaになります。10億APTの内訳は、以下の通りとなります。

カテゴリー 初期トークン配布の割合 初期トークン
コミュニティ 51.02% 510,217,359.767
コア貢献者 19.00% 190,000,000.000
財団 16.50% 165,000,000.000
投資家 13.48% 134,782,640.233

コミュニティ

  • 510,217,359.767 APTのうち、410,217,359.767 APTが財団によって保持され、残りの100,000,000 APTはAptos Labによって保持されます。
  • 510,217,359.767 APTのうち、125,000,000 APTはコミュニティの成長を促進するために最初から使用できるようになっています。
  • トークンのロック解除は毎月行われ、10年継続します。

財団

  • 165,000,000.000 APTのうち、5,000,000 APTは財団の活動のために最初から使用できるようになっています。
  • トークンのロック解除は毎月行われ、10年継続します。

コア貢献者・投資家

  • 最初の12ヶ月間はロックされ、$APTが配布されません。
  • 13ヶ月目から18ヶ月目は、毎月48分の3ずつロックが解除されます。
  • 19ヶ月目からは、毎月48分の1ずつロックが解除されます。メインネットローンチから4年ですべてのトークンのロックが解除されます。
$APTのトークン供給スケジュール

$APTのトークン供給スケジュール(推定)

 

APTトークンの用途

$APTは、取引とネットワーク手数料、ガバナンス投票、およびProof of Stake (PoS) モデルによるブロックチェーンのセキュリティ確保に使用されます。

PoSによる最大報酬率は年間7%から始まり、毎年1.5%ずつ減少していき、最終的な報酬率の下限は年間3.25%になります。また、取引手数料はバーンされるようになっています。

APTトークンが売買できる取引所

$APTが売買可能な、日本居住者が利用できる取引所は以下の通りとなります。

Aptosのエコシステム

Aptosは、エコシステムを積極的に広げつつあります。ここでは、開発が先行しているエコシステムを紹介します。

Pontem Network

Pontem Networkは、ブロックチェーンを活用したグローバルな金融包摂に向けて活動する製品開発スタジオです。Aptosと提携し、開発ツールやEVM、AMM DEXなど、Aptosの採用を促進する基本的ななDAppsやその他のインフラを構築しています。

Martian

Martianは、Aptosエコシステムにおいて最も信頼せれたウォレットです。AptosにおけるMetaMaskのような位置づけになり、Chrome互換ブラウザの拡張機能ウォレットを提供します。

Econia

Econiaは、オンチェーンのオーダーブック型分散型取引所です。オープンソース化され、パーミッションレスであるため、誰でも利用することができます。

Mobius

Mobiusは、Aptosブロックチェーンにおけるレンディングプロトコルです。Aptos上のトークンを貸出すことで利息を獲得したり、トークンを担保にして借入れを行うことができます。

Tsunami Finance

Tsunami Financeは、無期限先物のデリバティブ取引所です。スプレッドを最小限に抑えた取引ができる他、流動性提供者にはTLPトークンが配布され手数料収入を受け取ることができるようになります。

Argo

Argoは、米ドル連動型のステーブルコインです。Aptosのメインネットローンチ初日から稼働し、MakerDAOの$DAIと同様に過剰担保を採ることによりステーブルコインを発行します。

DAOStarter

DAOStarterは、マルチチェーンに対応したIDOプラットフォームです。Aptosへの対応を表明しており、既にBNB ChainやPolygonなどにも対応しています。

OmniBTC

OmniBTCは、あらゆるチェーンに対応した金融プラットフォームを目指しており、スワップやレンディングを提供します。LayerZeroによるクロスチェーンを駆使したソリューションを用意し、Aptosへの対応を表明しています。

Topaz

Topazは、AptosのNFTマーケットプレイスです。

Aptosに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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