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UAEによってライセンスされたチェーン「Venom Blockchain(VENOM)」の解説

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Venom Blockchain(VENOM)の概要

Vemonの概要

Venom Blockchainは、アラブ首長国連邦のADGMによりライセンスされたVenom財団により開発されているブロックチェーンで、ネイティブトークンは$VENOMです。多層化されたチェーン構造と非同期アーキテクチャを備え、無限のスケーラビリティと低コスト、高速トランザクションが保証されています。Vemon財団は規制要件を遵守しながら、規制市場におけるブロックチェーン技術の広範な採用を促進することをビジョンとしています。

Venom財団は、中東・北アフリカ地域(MENA地域)において、企業や政府による自給自足のブロックチェーンエコシステムの開発をサポートすることを目的にしており、最終的にチェーンがCBDC (中央銀行デジタル通貨) に採用されることを目指しています。また、同財団はAGDM管轄の資産運用会社Iceberg Capitalと提携し、10億ドル規模のVenomベンチャーファンド (VVF) を立ち上げることを2023年1月に発表しました。VVFでは、投資をブロックチェーンに限定せず、決済や資産管理、DeFi、銀行サービスなどの幅広いWeb3分野を対象にしています。

Venom Blockchainそのものは、Everscale (解説記事) のチームにより開発されています。これはEverscaleプロジェクトから直接発表されたわけではないものの、2023年1月にEverscaleがVVFより500万ドルの戦略的投資を受けたことによる発表から明らかになっています。発表によると、EverscaleはVenom Blockchainのカナリアネットワークとしても運用されるようになり、Venom Blockchainに大型アップデートや複雑なソリューションを持ち込む前のテスト導入で用いられることが想定されています。

Venom Blockchainは2023年4月現在、パブリックテストネット段階にあります。そのため、$VENOMトークンはまだ発行されていません。

Venom Blockchain(VENOM)の特徴

UAEの規制に準拠したチェーン

Venom Blockchain開発元であるVenom財団は、アラブ首長国連邦の首都アブダビにある国際金融センターおよびフリーゾーンのADGM (Abu Dhabi Global Market) においてライセンスを取得しました。これは、同ゾーンにおいて暗号資産に関連する組織としては初の事例になります。ライセンスにより、Vemon財団はアラブ首長国連邦内でブロックチェーンを運用し、ユーティリティトークンを発行することができます。

多層化された構造による無限スケーリング

Venom Blockchainでは、Polkadotに似た多層化された構造をとることにより無限のスケーラビリティと低コスト、高速トランザクションを実現できるようになります。Venom Blockchainは、レイヤー0とレイヤー1のチェーンで構成されています。

Venom Blockchainのチェーン構成

レイヤー0 – マスターチェーン

マスターチェーンは、データ可用性 (Data Availability) を保証するためのレイヤー0の唯一のブロックチェーンです。マスターチェーンのステートには、ネットワーク構成、バリデータの集合に関する情報、そのステーキング、選出ラウンドが格納されます。また、マスターチェーンのブロックには、シャードの構成と、対応するシャードチェーンの最新のブロックハッシュが含まれます。

レイヤー1 – ワークチェーン

ワークチェーンは、独自のルール(仮想マシンやブロック構造、ネイティブトークンなど)を持った独自のチェーンで、Venom Blockchain上では最大232個のワークチェーンに対応しています。例えば、ゲーム特化型やDeFi特化型のワークチェーンを作ることができます。ワークチェーン同士は、相互にメッセージを交換することで相互運用性を確保することができます。

実際のワークチェーンの処理は、シャードチェーンと呼ばれる単位に分割されて実行されます。シャードチェーンはワークチェーンの負荷に応じて動的に増減される仕組みになっており(ダイナミックシャーディング)、ワークチェーンごとに最大260個まで増えるようになっています。同様に、ワークチェーンの負荷が減るとシャードチェーンの数は減少します。最終的にシャードチェーンのブロックのハッシュがマスターチェーンに取り込まれると取引が確定します。

プロジェクトの初期段階は、マスターチェーンと、Venom財団が用意するワークチェーンであるベースチェーンがリリースされます。

EVM互換アプリケーションの開発者にとっては開発が容易

Venom Blockchainでは、スマートコントラクトの実行でThreaded Virtual Machine (TVM) を実行します。TVMはネイティブのアセンブリ言語の他、複数の高級プログラミング言語を使用することができます。そのひとつがT-Sol (Threaded Solidity)です。T-Solは、並列計算に対応できるようにするために、Solidityの非同期方言をTVMのアクターモデルに適用させたものです。Venom Blockchainでは、T-Solを利用し、Solidityと同じ構文を利用することができるようになっています。

また、アクターモデルをサポートするためにいくつかの機能が利用できるようになっています。

  1. アクター管理:新しいアクターの作成、既存のアクターの削除など。
  2. メッセージパッシング:他のアクターとメッセージを送受信。
  3. ステートの管理:アクターのステートの読み取りや変更など。
  4. アクセス制御:どのアクターが他のアクターのステート読み書きできるかなどのアクセス制御。
  5. 相互運用性:異なるシャードやワークチェーン間のメッセージの送受信。
  6. ステート隔離:あるアクターの失敗が他のアクターの実行に影響を与えないように、アクターを互いに隔離する。

アカウントの抽象化

他のブロックチェーンでは、ウォレットアカウントを秘密鍵で管理された単純なアドレスとして表現するのが一般的で、このようなアプローチは外部所有(Externally Owned)と呼ばれます。一方で、Venom Blockchainのすべてのアカウントがスマートコントラクトで扱われるため、コントラクトのコードには、ユーザーの身元を確認するために必要なあらゆる認証ロジックを含めることができます。このようなデザインパターンはアカウントの抽象化と呼ばれます。

アカウントの抽象化により、ユーザーはより大きな制御と柔軟性を得ることができます。スマートコントラクトをアカウントとして使用することで、Venom Blockchainではユーザーはスマートコントラクトコードを通じて、カスタム権限レベルの定義や取引の一括化、アカウント回復メカニズムの実装、取引制限の設定などが可能になります。これにより、今までの外部所有では不可能な、より高度なセキュリティ、カスタマイズ、ユーザビリティを実現します。

VENOMトークン

Venom Blockchainでは、ネイティブトークンとして$VENOMを発行します。2023年4月現在、$VEMONは発行されていません。

また、ADGMの規制により、Venom Foundationがトークンのプレセール(プライベートまたはパブリック)または他の形式の株式配分を行うことは許可されておらず、いかなる場合も行わないと表明しています。

参考:IMPORTANT. Venom Foundation DOES NOT distribute Venom utility tokens prior to the official launch

VENOMのトークンの用途

  • ネットワーク内の決済手段
  • バリデーターへのインセンティブ(ブロック報酬、手数料)
  • バリデーターへのステーキング

VENOMのトークンの配布

$VENOMは、初期供給が72億枚に設定されています。初期供給時は全体の15.5%がロックなし、もしくはすぐにリリースされ、84.5%がロックされます。ロックされたトークンの10%は初期バリデータへの報酬として割り当てられます。また、インフレの年間レートは1%が見込まれています。$VENOMのリリース時は供給上限はないものの、プロジェクトはデフレモデルを模索していくとしています。

$VENOMの初期供給72億枚の内訳は以下の通りになります:

項目 割当 ローン時のロック解除 クリフ 線形べスティング
コミュニティ 22.0% 10% 6ヶ月 90ヶ月
エコシステム 28.0% 10% 6ヶ月 90ヶ月
財団 15.0% 0% 24ヶ月 72ヶ月
早期支援者 8.5% 0% 12ヶ月 48ヶ月
チーム 7.0% 0% 12ヶ月 48ヶ月
パブリック 0.5% 100% なし なし
マーケット流動性 10.0% 100% ※戦略的にロック解除 なし なし
バリデーター 10.0% 100% ※ステーキングによりロック なし なし

Venom Blockchainに関する情報

 

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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