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インタビュー:リップル社 吉川絵美氏 – XRP Ledger普及に向けたリップル社の取り組み/前編:リップル社とXRP Ledgerとの関係性とは

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国際送金のソリューションを提供するリップル社は、暗号資産 $XRP で知られているXRP Ledgerの普及における最も主導的な企業の一つです。今回は、リップル社の吉川絵美(よしかわえみ)氏に、同社におけるXRP Ledger普及のための取り組みについてインタビューしました。

本編は前編と後編で構成されています。前編では、混同されがちなリップル社とXRP Ledgerとの関係性、そしてXRP Ledgerの特徴についてお訊きします。

前編:リップル社とXRP Ledgerとの関係性とは

吉川氏のプロフィール

加藤:最初に吉川さんについてご紹介願います。どのような経緯でリップル社に入り、現在はどのような立ち位置にいらっしゃるのでしょうか?

吉川氏:はい、米国リップル社のサンフランシスコ本社でStrategy & Operations部門を統括している吉川絵美と申します。

2016年末にリップル社に入社して、もうすぐ7年が経とうとしています。もともと私は金融業界でキャリアをスタートし、その後、米国のビジネススクールを経て、卒業後はシリコンバレーのテック系ベンチャーでプロダクト戦略等の経験を積んできました。

シリコンバレーのテック業界の人々は、常日頃から「Next big thingは何だろうか?」と目を光らせていますが、私も同様に様々なテクノロジーを追いかけていく中で、2015~2016年ぐらいから注目され始めたエンタープライズブロックチェーンの世界に強い関心を持ちました。自分の金融とテクノロジーのバックグラウンドをうまく活かせそうで、最先端かつグローバルな分野だからというのが大きな理由です。リップル社はその中でもパイオニア的な存在で、2016年当時、日本を含むアジア全域に拡大を始める最中にあり、ジョイントベンチャー(JV)などを通してアジア進出を推進する人材を探していました。そこに飛び込んだのがはじめのきっかけです。

その後、SBI HoldingsとのJVパートナーシップやアジアの様々な事業開発などを経て、現在はStrategy & Operations担当バイスプレジデント(VP)としてコーポレート戦略やビジネスオペレーションなど、グローバル統括する立場にいます。また、リップル社は世界中の大学におけるブロックチェーン研究を推進していることもあり、私は京都大学大学院において特任准教授としてブロックチェーン研究の産学連携等を推進しています。

リップル社とXRP Ledgerの立ち位置

加藤:リップル社についてご紹介願います。リップル社は何を行っている会社なのでしょうか?また、$XRPで知られているXRP Ledgerとはどのような関係性にありますか?XRP Ledgerの普及におけるリップル社の立ち位置を教えてください。

吉川氏:リップル社は2012年にサンフランシスコで設立されたエンタープライズ向けのブロックチェーンソリューション企業で、現在は世界で15拠点、従業員数は900人近くを有しています。

暗号資産$XRPで知られているXRP Ledgerは2011年に開発が着手された歴史が長く実績のあるレイヤー1のパブリックチェーンです。もともとビットコインの初期の開発に関わっていた3人の開発者がそこから飛び出して、「マイニングを使わない、より決済に適したブロックチェーンを作れないか?」と考えて開発し始めたのがXRP Ledgerなんです。2012年にXRP Ledgerがローンチされた後に、このチェーンを活用してソリューションを開発する民間企業としてリップル社が誕生しました。よく巷では、暗号資産$XRPがリップルと呼ばれたりしていますが、これは別物で、$XRPはパブリックチェーンに存在する暗号資産で、それを国際送金などのソリューションで活用するのがリップル社という関係性になります。XRP Ledgerはパーミッションレスなので、リップル社以外でも誰でも誰の許可なく使えますし、実際世界で1,750以上のプロジェクト(取引所やウォレットなどを含む)で活用されています。

リップル社はブロックチェーン技術を活用した国際送金ソリューションを金融機関向けに提供してきましたが、ここ数年は様々な分野にソリューションを拡大してきました。例えば、Liquidity Hubという流動性ソリューション、CBDC(中央銀行デジタル通貨)などのトークン化機能、暗号資産カストディ技術など、法人がブロックチェーン技術を活用する中で必要な基本的ソリューションを拡充しています。

また、それに並行してXRP Ledgerの継続的な開発寄与やエコシステム支援も行っています。例えば、XRP Ledgerの新機能をコミュニティに提案したり(メインネットでの採用はバリデータ投票の結果次第)、XRP Ledgerを活用する開発者向けの助成金や教育プログラムの提供なども行っています。日本においても、XRP Ledgerの認知向上のための活動や開発者向けのワークショップや支援、アイデアソンの開催なども行っています。

XRP Ledgerとは?

加藤:XRP Ledgerについてご紹介願います。よく$XRPは送金専用の暗号資産と思われがちですが、実際のところXRP Ledgerではどのようなことができるのでしょうか?その特徴や他のチェーンと比べた場合の優位性を教えてください。

吉川氏:はい、XRP Ledgerは送金以外にも様々なことに応用することができます。

元々2012年にネットワークがローンチした際には、世界初のマルチアセットレジャーとして、誰でも簡単にトークン発行ができ、瞬時に価値をやりとりができる世界、つまり「価値のインターネット」の実現を標榜したネットワークとして誕生しました。ネットワークのローンチ時からDEX(分散型取引所)がプロトコルにネイティブな機能として存在しており、世界初のDEXとも言われています。

その後、様々な機能が追加されてきましたが、EVM系チェーンとの大きな違いは、スマートコントラクトを使わなくてもすぐに使える安全なプロトコル機能が色々と揃っていることです。例えば、クロスカレンシー送金やエスクロー送金、経路探索などの複雑な送金や、FungibleトークンおよびNFTの発行などはスマートコントラクトなしに、コミュニティに精査されてガバナンスを通して実装されたプロトコル機能をすぐに使うことができます。開発者からするとSolidityなどの新しいスマートコントラクト言語を学ぶ必要なく、機能を簡単に実装できたり、スマートコントラクトのセキュリティリスクを回避したりすることができます。またユーザーにとっては、コミュニティに精査された機能を安心して使うことができるという利点があります。

例えば、XRP LedgerのNFT規格では、ロイヤルティがプロトコル機能として自動執行されます。他のチェーンではスマートコントラクトレイヤーで執行されるため、ロイヤルティの執行の有無はマーケットプレイスの方針に依存する形になり、このところ論争を呼んでいますが、XRP Ledgerにおいてはそれはマーケットプレイスに依存するものではなく、プロトコルのポリシーとしてすべてのNFTにおいて標準的に執行されるものとなっています。その意味で、XRP LedgerのNFTは発行者(クリエイター)の権利を保護する仕組みであるといえます。最近特に日本のクリエイター業界でXRP Ledgerを活用したNFTのモメンタムが出てきていますが、これもXRP Ledgerの良い点が徐々に認識された結果だと思っています。

XRP Ledgerに関しては、当メディアにて詳しく解説した記事を公開しています。
解説記事:暗号資産 XRP とそのチェーン XRP Ledger の解説

後編の予告

前編では、吉川氏よりリップル社やXRP Legerとの関係性、XRP Ledgerの概要について解説いただきました。

後編では、XRP Ledgerを使い同社がどのようなユースケースを生み出しているのか、そしてXRP Ledgerを普及させるために同社がどのようにイニシアティブをとっているのかを取り上げていきます。

▼後編はこちら

インタビュー:リップル社 吉川絵美氏 - XRP Ledger普及に向けたリップル社の取り組み/後編:リップル社によるXRP Ledger普及のための取り組み
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リップル社とXRP Ledgerに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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