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共有シーケンサープロトコル「Espresso Sequencer」の解説

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モジュラーチェーンの進歩により、独自チェーンの開発者は自分のニーズにあった機能をモジュールとして自身のチェーンに取り込めるようになりました。スタンフォード大学発のEspresso Sequencerのプロジェクトは、共有シーケンサーに注力しています。

Espresso Sequencer の概要

Espresso Sequencer(エスプレッソ・シーケンサー)は、Espresso Systemsにより開発が進められている共有シーケンサープロジェクトです。

Ethereumのセキュリティを利用したレイヤー2として、主にOptimistic RollupとZK Rollupの方式が台頭しています。いずれの方式でも、ロールアップで発生したトランザクションの並べかえと実行は、シーケンサーによって行われます。しかし、シーケンサーはロールアップのチームによって運営維持されていることが一般的で、ブロックチェーンで重要視される中立性や分散性が犠牲になっています。このような状況では、ユーザーはチームが不正をしないことを信じるしかなく、自分たちのトランザクションが検閲されないという確証を得ることができません。もし、チームがシーケンサーの利益のためにトランザクションを検閲してしまえば、そのロールアップはもはやユーザーが安心して使えるプラットフォームではなくなってしまいます。

Espresso Sqeuencerは、共有シーケンサーを提供することにより、運営者がユーザーを検閲できないことを保証する仕組みを提供します。ロールアップ運営者は、共有シーケンサーを自分たちのロールアップのシーケンサーとして使うことにより、シーケンサーを容易に確保し、そのロールアップが中立的であることを保証することができるようになります。また、共有シーケンサーが様々なロールアップで使われることにより、共有シーケンサーを使っているロールアップ同士の相互運用性を確保することにもつながります。

現状のシーケンサー vs Espressoの共有シーケンサー

現状のシーケンサー

現状のシーケンサーは、主にOptimistic RollupかZK Rollupで構築されています。いずれのロールアップも、ロールアップ上でトランザクションが実行されると、正しく実行されたという証明とともに、集約されたデータをコールデータとしてレイヤー1に送信します。

これらのロールアップは、すべてのコンポーネントを同一チームが開発・保守するモノリシックタイプであり、トランザクションの並び替えから実行、証明に至るものすべてが同一チームによって運営されます。これは、中立性と分散性が犠牲になっているといえます。

加えて、それぞれのロールアップは互いに独立しているため、相互運用性がありません。レイヤー1経由で資産をやり取りするにしても、高いガスの支払いや、拘束期間(Optimistic Rollup側)に囚われてしまい、実用的ではありません。

現状のシーケンサー

現状のシーケンサー

現状のEspresso Sqeuencer

ロールアップは、自身のシーケンサーにEspresso Sqeuencerによる共有シーケンサーを用います。共有シーケンサーへの参加はパーミッションレスであるため、ロールアップの運営チームによる中央集権的な構造にならず、中立性と分散性が確保されます。

Espresso Sqeuencerでは、データ可用性としてEspresso DAが提供されます。これにより、ロールアップがレイヤー1にコールデータを投稿する高いコストをを回避し、データがロールアップのために利用可能になることを保証します。また、HotShotコンセンサスにより、ロールアップはトランザクション実行において低遅延の応答と高いスループットを得ることができます。さらに、Espresso Sqeuencerを使うロールアップ同士で相互運用性を確保します。

Espresso Sqeuencer(現状)

Espresso Sqeuencer(現状)

これからのEspresso Sqeuencer

Espresso Sqeuencerは、さらに進化した形態としてプロポーザー*1とビルダー*2の分離を行います(Proposer Builder Separation: PBS)。これにより、MEVの有害な影響を緩和することができるようになります。また、先着順やMEV最適化など、様々なトランザクションのオーダー方法にも対応します。

複数のロールアップにまたがるビルダーは、1つのプロポーザーと調整するだけでよく、順序と結果が保証されます。加えて、ビルダーが統合されているため、ユーザーにとっては、複数のロールアップにわたるトランザクションがブロックに含められ、実行されることが保証されます。

Espresso Sqeuencer(これから)

Espresso Sqeuencer(これから)

*1 プロポーザー:ブロックを実際に生成するノードです。

*2 ビルダー:ブロックに含めるトランザクションを決めるノードです。

Espresso Sqeuencerのトークン

2024年1月16日現在、Espresso Sqeuencerのトークンに関する情報は公開されていません。

Espresso Sequencerに関する情報

 

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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