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資産の価値保存と転送に特化したチェーン「CROSSVALUE Chain」の解説

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CROSSVALUE Chain(XCR)の概要

CROSSVALUE Chain(クロスバリューチェーン)は、実物資産(RWA)のトークン化を踏まえ、資産の価値保存と転送に特化した、オンチェーンストレージが搭載されたEVM互換のレイヤー1ブロックチェーンです。2024年2月20日にメインネットベータがローンチし、安定したインフラ提供を行うためにメインネット正式版まではパートナーのみに解放されます。

2024年初頭の時点で、RWAのトークン化の9割以上はステーブルコインで占められています。そして、今後は資産性のある容量が大きいデジタルデータをNFTで扱うユースケースが増えると見込まれています。しかし、依然として、そのようなデータをNFTで扱うことにはリスクがあります。それはデータの保管問題に起因します。

現状のブロックチェーンでは、NFTそのものの永続性は確保できるものの、それに紐づくコンテンツデータの永続性は定かではありません。NFTそのものはブロックチェーンに載っていても、コンテンツデータの多くは外部ストレージで保管されるためです。例えば、IPFSを採用する分散型ファイルストレージのFilecoinでは、マイナーがデータ保管の契約を終了してデータが消失するリスクがあります。このような問題は、今すぐ起きる可能性は低いものの、将来的にゼロとはいえません。特にトークン化されたRWAは、資産を次世代に継承することが求められるため、このようなリスクは最初から排除しておく必要があります。CROSSVALUE Chainでは、データ保管の永続性を確保するDACS(Decentralized Autonomous Content Storage)と呼ばれるアーキテクチャにより、この問題に対処します。

チェーンとストレージが密になったアーキテクチャ

チェーンとストレージが密になったアーキテクチャ

また、トークン化されたRWAは必ずしも暗号資産に精通したユーザーが扱うとは限られないため、一般ユーザーが安全にトークンを送信できるようにする必要があります。特に、ブロックチェーンにおおいて送信先の間違いは致命的で、場合によっては二度と資産を取り戻せなくなる可能性があります。CROSSVALUE Chainでは、この問題に対処し、トークン送信において組戻しを可能にする機能を提供します。これは、すべてが組戻し可能というわけではなく、アプリケーション側の対応によって区別されます。

CROSSVALUE Chainは、世界的な自律分散システムの権威である高橋宏尚氏による主導のもとで開発されています。高橋氏はプレストン大学の一員であり、Suicaの開発メンバーとしても知られています。このアーキテクチャの開発は慎重に行われており、通信規格の策定で知られる米国電気電子学会(IEEE)による論文の査読を経て進められています。

また、プロジェクトは、ビジネス開発面ではアフリカ・アラブ地域に力を入れています。目立つ動きとして、アラブ連盟傘下の32ヵ国が加盟するアラブ婦人投資家連合とのデジタル経済協力圏構築において、CROSSVALUE Chainをインフラに採用する発表を行いました(公式リリース)。

CROSSVALUE Chain(XCR)の特徴

オンチェーンストレージデータの永続性を確保

NFTではコンテンツを直接ブロックに保管するにはコストが高すぎるため、一般的には外部ストレージを利用します。外部ストレージには、中央集権型のストレージの他、分散型のIPFSや、ブロックチェーンベースのFilecoin、Arweaveなどが利用されます。

現状のデータ保管で最も代表的であるIPFSでは、コンテンツデータの継続性はそのホスティング方法に依存することになります。例えば、特定の企業がホスティングしている場合、データの継続性はその企業のそれと同等になります。また、IPFSにインセンティブを加えたFilecoinでは、依頼者とマイナーとの契約が切れるとデータが消去されることから、必ずしもコンテンツが永続するわけではありません。加えて、ストレージはいずれ壊れることから、同じストレージにデータがとどまっていると、壊れ方によってはデータが取り出せなくなるリスクがあります。これらの問題は、長期的に継承していくことが必要なNFT化されたRWAにリスクをもたらします。

CROSSVALUE Chainでは、DACS(Decentralized Autonomous Content Storage)と呼ばれるオンチェーンストレージの仕組みを導入します。DACSはデータの永続性に重きを置いており、SGM(Sustainable Generation Manager)と呼ばれる機能により、一定期間(デフォルトで180日)ごとに物理ストレージ間でデータの複製が行われるようになっています。DACSのストレージマイナーになるには、チェーンのネイティブトークンである$XCRを担保にし、ストレージノードを稼働させる必要があります。ネットワークを安定させるために、初期段階ではマイナーは許可制になっており、後の段階で第三者が自由にノード運営に参加できるようになります。

SGMによるデータの永続性の確保

SGMによるデータの永続性の確保

高い改ざん耐性・低い検証作業への参入障壁

チェーンの検証作業の参入障壁の低さは重要であり、参入障壁が低いとノードの分散化が進み最終的に改ざんが困難になります。

現在、チェーンのシビル攻撃への耐性を確保する方式として、主にProof of Work(PoW)とProof of Stake(PoS)があります。PoWでは、複雑な計算のパズルを解くためにプロセッサーを稼働させます。この方法は、エネルギー消費が大きいという問題があるものの、ネイティブトークンの時価総額がセキュリティの強度に影響しません。一方で、PoSでは、チェーンのネイティブトークンをステーキングし、そこで得られた投票力によってブロックを生成します。この方法は、エネルギー消費が少ないものの、セキュリティ強度がトークン価格に依存するために、時価総額が低いチェーンでは脆弱になるという欠点があります。

CROSSVALUE Chainでは、PoWとPoSの両方のメリットを併せ持ったVPoW(Voting Proof of Work)という独自のコンセンサス方式を開発しました。同チェーンでは、トランザクションの真偽の判定が、エスクローノードによりランダムに選出された投票ノードによって行われ、75%の投票ノードが真の判定を行うと、エスクローノードがトランザクションを承認します。トランザクションが承認された時点で、トランザクションの不可逆性が確定します。

また、VPoWは非常に高い改ざん耐性を有します。100万ノードでシミュレーションした場合、悪意のある投票ノードがネットワークの70%を支配すると、50%の確率でトランザクションが改ざんされるようになります(高橋氏の講演ビデオより)。

VPoWの概略図

VPoWの概略図

投票ノードになるためには、後にプロジェクトから提供されるXwalletをスマートフォンにインストールして、マイニングプールに接続します。PoS方式との大きな違いとして、一定額のネイティブトークンを保有しておく必要がありません。このような仕組みにより、ユーザーはチェーンの検証作業に資本なしで参加することができるようになるため、チェーンの分散化が大規模に行われるようになると見込まれています。

組戻しを可能にするエスクロー機能

ブロックチェーンによるトランザクションは不可逆的であり、一度送金したものは取り消しができません。一般的に、送金ミスは起こり得るものであり、送金ミスを取り消せないのは実用の観点からは現実的ではありません。

そこで、CROSSVALUE Chainでは組戻しを可能にするエスクロー機能を実装しました。これはトラストレスで機能し、トランザクションを処理するエスクローノードが保有するエスクローアカウントを通すことにより実現されます。ユーザーが送金を行うと、資金はエスクローアカウントで保留され、ユーザーによりトランザクションが問題ないと判断されると、保留された資金が解放されて相手方のアカウントに着金します。この機能はすべてのトランザクションに適用されるわけではなく、アプリケーション側で有効化した場合にのみ適用されます。

XCRトークン

CROSSVALUE Chainでは、ネイティブトークンとして$XCRを発行します。

XCRトークンの用途

CROSSVALUE Chainにおける$XCRの役割は、以下の通りです。

  • ネットワーク上の通貨
  • ガバナンス
  • ブロック報酬
  • DACSノードのステーキング
  • 貢献者への報酬
  • DACSノードへの投資

XCRトークンの配布

XCRの最大発行数は 1,832,810,964XCR であり、その内訳はジェネシスブロックで生成される1,201,658,964XCRと、その後のマイニングで生成される 631,152,000 XCR から構成されています。

ジェネシスアロケーション

プロジェクトは、2024年2月22日時点で一般に$XCRが流通しないメインネットベータをローンチしており、ジェネシスブロックから生成されたアロケーションの決定をメインネット正式版の直前に発表し、その後$XCRをステークホルダーにリリースするとしています。

マイニングによる排出

VPoWによるマイニングでは、ブロックが毎分生成されるたびにブロック報酬がエスクローノード12%、投票ノード8%、DACSノード80%の割合で配布されます。ブロック報酬は、初期段階では300XCRで、2年ごとに半減期が発生し、最初の10年で全体の96.88%がマイニングされることになります。

VPoWによる総マイニング報酬の推移

VPoWによる総マイニング報酬の推移

XCRトークンを売買できる取引所

2024年1月現在、$XCRトークンを売買できる取引所はありません。

CROSSVALUE Chainに関する情報

 

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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