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ホームステーキングを実現するレイヤー1「Over Protocol(OVER)」の解説

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Over Protocol(OVER)の概要

Over Protocol(オーバープロトコル)は、自宅のPCでProof of Stake(PoS)によるバリデーター運用を簡単に行うことができる「ホームステーキング」を実現するEVM互換のレイヤー1ブロックチェーンです。

今日さまざまなブロックチェーンプロトコルが開発されており、それらのインフラを維持するのは非常に高いリソース要件を課されることが一般的です。このような状況は、ブロックチェーンの中央集権化を招き、最終的に一握りの事業者によるシステムの独占につながります。金融システムとして機能するブロックチェーンは、安全性や安定性、可用性、相互運用性を確保するために高度な分散化を必要としており、Over Protocolはこの課題に対処しています。

Over Protocolは、誰でもバリデーター運用を可能にするホームステーキングを実現するために、一般ユーザーが簡単にステーキングに参加することができるアーキテクチャや、ユーザーインターフェイスの設計を行っています。

チームは、分散化を実現するために3つのことに取り組んでいます。1つ目は、プロトコルが課すリソース要件を大幅に削減することです。一般的なPoSを採用するチェーンは、エンタープライズ向けのサーバークラスを要求することがありますが、Over ProtocolではEthanosと呼ばれる技術により、検証作業に参加するためのリソースを大幅に削減し、個人のPCでもバリデーターを構築できるようにします。2つ目は、より幅広い参加を促すための包括的なコンセンサスアルゴリズムとして、Ethereumが採用しているGasperのカスタム版を使用します。3つ目は、アクセシビリティに配慮したソフトウェアの提供します。多くのバリデーターはコマンドラインによる運用が主であるものの、Over ProtocolではGUIを使い直感的な操作でバリデーター運用を行えるようにします。

2024年3月15日現在、Over Protocolはテストネット段階であり、Over Walletを使ったエアドロップキャンペーンやインセンティブ付きテストネットを提供しています。また、プロジェクトのX(Twitter)は62.7万人のフォロワーを集めており、強いモメンタムを形成しています。プロジェクトは、実際にホームステーキングを導入できるプログラムであるOpen Beta Testnet(OBT)を実施しており、OBT2が2024年3月13日から開始されました。

ホームステーキングを実現するための低い要件

Over Protocolでは、他のPoSベースのチェーンと比べ、諸々のバリデーターの要件を低く設定しています。これは、Over Protocolが自宅でステーキングを実現できるという考えに基づいています。

低いバリデーターのハードウェア要件

Over Protocolでは、ホームステーキングを実現するために低いノード要件を実現しています。以下は、各チェーンにおける推奨ハードウェア要件の比較です。Over Protocolは、SolanaやAvalancheと比較しても要件が低く、一般的なPCをバリデーターとして利用できるようにしています。

項目 Over Protocol Solana Avalanche
CPU 4コア/2.8 GHz 12コア以上/2.8 GHz 8 AWS vCPU相当
メモリ 16GB 256GB 16GB
ストレージ SSD 256GB SSD 1TB(台帳のみ) SSD 1TiB
ネットワーク 20 Mbps 1,000 Mbps N/A

低い稼働率の要件

Over Protocolでは、バリデーターに少なくとも70%の稼働率を維持することを課しています。これは、他のPoSベースのブロックチェーンチェーンが100%に近い稼働率を求めていることとは対照的です。

70%という値の根拠は、チームのシミュレーションによるものです。シミュレーションでは、16,384のバリデーターがチェーンに関与している場合、バリデーターの稼働率が70%以上であればシステムの安全性が確保できるとしています。また、バリデーターの参加数が増えた場合はシステムがより安定することから、70%のしきい値はさらに引き下げられる可能性があります。

ダウンタイムが長いバリデーターに対するゆるいスラッシング

PoSベースのブロックチェーンでは、バリデーターのダウンタイムが発生した場合に、その障害の程度に応じてステーキング残高が差し引かれるスラッシングが行われます。これは、常時バリデーターを安定稼働させるための強いモチベーションになります。

しかし、自宅のPCでバリデーターを運用する場合、データセンターに配置されたサーバーのようにハードウェアや回線、電源を冗長化することは現実的ではありません。つまり、自宅環境では停電などでバリデーターのダウンタイムが発生する可能性があります。このような状況で毎回ステーキング残高が差し引かれるのでは、誰も自宅でバリデーターを運営したがらなくなるのは想像に難くありません。

そこで、Over Protocolではダウンタイムの発生に対して非常にゆるいスラッシング条件が設定されています。Over Protocolのスラッシングでは、十分な稼働時間を維持できないバリデーターはコンセンサスから速やかに除外されます。コンセンサスからの除外に際して、ステーキング残高が差し引かれることはありません。

このような仕組みは、自宅でバリデーター運用を行うための敷居を低くし、より多くのバリデーターの誘致を促し、最終的にはシステムの障害耐性の向上に寄与します。

非エンジニアでも操作ができるインターフェイス

Over Protocolでは、非エンジニアでもステーキングの運用ができるように、GUIを採用したソフトウェアをWindowsとMacに提供し、一般ユーザーでもバリデーターのソフトウェアを簡単に操作をできるようにします。

Over Protocol(OVER)の技術ハイライト

Ethanosによる扱うデータの取捨選択

Over Protocolのイノベーションは、バリデーターを軽量に保つことを実現したEthanosにあります。

ブロックチェーンは、さまざまなトランザクションが入ったブロックが連なって構成され、それらを構成する2つの主要データタイプはステートと履歴になります。ステートは、現在のアカウントの状態を示し、新しいブロックを検証するために不可欠なデータです。ステートは、ユーザーの取引量が増えると、それに応じて拡大していきます。また、履歴はブロックチェーンの取引の詳細を保存したデータで、時間の経過とともにサイズが増加していきます。

Ethanosでは、増え続けるブロックチェーンのデータサイズに対処するため、データを分類し、バリデーターが処理に必要なデータのみを扱うようにすることで、バリデーターの軽量化を実現します。

分類において、ステートを「アクティブ」「非アクティブ」に分類し、履歴を「最近の履歴」「古い履歴」に分類します。この中で、バリデーターが保持する必要があるのはアクティブなステート、最近の履歴、ブロックヘッダ情報のみです。これら3つのデータの集合体はOver Layerとして扱われ、それ以外のデータはNether Layerとして扱われます。バリデーターが処理対象にするのは、Over Layerのみになるため、バリデーターの処理は軽くて済むようになります。

Over LayerとNether Layerのデータ分類

Over LayerとNether Layerのデータ分類(引用元:ホワイトペーパー p.4)

また、この分類はバリデーターのストレージ面にも寄与します。チームの調査によると、Ethereumにおいて真にアクティブなアドレスは全体の5%になるため、Over LayerとNether Layerという分類のアプローチにより、Over Protocol上でバリデーターが保持するステートサイズは従来の10から20分の1で済むことを見込んでいます。これはOver Layerのサイズが一定の範囲に収まるということを意味します。バリデーターにとってはストレージの容量が少なくて済むようになるため、わずか数分でブロックチェーンと同期をし、検証作業に参加することができるようになります。

Over LayerとNether Layerの時間経過によるデータサイズの推移

Over LayerとNether Layerの時間経過によるデータサイズの推移(引用元:ホワイトペーパー p.6)

コンセンサスにGasperのカスタマイズ版を採用

Over Protocolでは、コンセンサスアルゴリズムにEtheruemで採用されているGasperのカスタマイズ版を利用します。

多くの新しいブロックチェーンでは、少数のバリデーターに対して委任を行うDPoS方式が主流ですが、DPoSではバリデーターが高い基準を満たさないとパフォーマンスに問題が生じます。そのため、Over Protocolでは主流であるDPoS方式ではなく、洗練されてないパフォーマンスのバリデーターでも参加可能なGasperのカスタマイズ版を採用します。これにより、包括的なコンセンサスプロセスが保証され、リソースに関係なく誰もがブロックチェーンに参加できるようになります。

ここで生じる疑問は、Etheruemと同様のコンセンサス方式を採用することにより、Ethereumと同じような中央集権化を招かないかということです。2024年2月24日現在、Ethereumはステーキング残高の49.45%を上位の5バリデーターが支配しており、中央集権的な構造になっています(Etherscanより)。プロジェクトは、この構造の根本原因は高いハードウェア要件であると考えており、Over ProtocolのEthanosによるバリデーターの軽量化によりこの問題は克服できると考えています。

OVERトークン

Over Protocolは、ネイティブトークンとして$OVERを発行します。2024年2月24日現在、$OVERの情報は公開されていません。

Over Protocolに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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