2021年1月、株式市場ではインターネット上のコミュニティ「WallStreetBets」を震源地としたムーブメントが話題になりました。これは、ウォール街へのアンチテーゼとなり、その流れを引き継ぐように「WallStreetBets DApp」がリリースされています。
WallStreetBets DApp の概要
WallStreetBets DAppを知る前に、WallStreetBetsについて知ると、このプロジェクトの理解が深まることでしょう。
WallStreetBets(以下、WSB)は、SNSのredditのコミュニティ「r/WallStreetBets」です。
このコミュニティを震源地としたムーブメントは、2021年1月にさかのぼります。当時、一部のヘッジファンドがGameStop株(NYSE: $GME)に空売りを仕掛けていました。空売りは、株価の値下がりに賭ける取引であるため、株価が値上がりするとヘッジファンドの損となります。WSBコミュニティは、空売りしていたヘッジファンドをはじめとする「ウォール街のトレーダーを打ち倒す」ために、団結して$GMEの大量買いを行いました。その結果、月初は17.25ドルだった株価が約3週間後には最高値の483ドルをつけました。結果的に、$GMEを空売りしていたヘッジファンドは致命傷を負うことになりました。その後、WSBの首謀者の一人であるキース・ギル氏が集団訴訟を起こされるまでに至っています。
WallStreetBets DApp(以下、WSB DApp)は、このようなコミュニティから誕生したDeFiのサービスです。ユーザーは、WSB DAppを使うことで、ウォール街が牛耳っている金融の世界ではなく、ブロックチェーンによるオープンな世界で金融商品に投資することができるようになります。
WSB DAppでは、ユーザーは株式やETPにアクセスできるようになります。しかし、これらはウォール街のものではなく、トークン化された株式やETPを通してになります。このような仕組みは、Digital Markets (DIGTL), Liquid Network および MERJ Exchange (MERJ)とのパートナーシップにより実現しています。
WallStreetBets DAppのサービス
WSB DAppは、ユーザーが暗号資産を使いつつも低リスクな資産運用することができるようになっています。主に、3つのサービスから構成されています。
WSB STONKS:トークン化された株式の売買
WSB STONKSは、トークン化された株式の売買を行うことができるサービスです。厳密には、株式への合成資産への投資を行うため、議決権や配当が獲得できるわけではありません。ユーザーは、mAAPL(アップル)やmGOOGL(グーグル)などに対し、USDステーブルコインで投資をすることができます。
WSB STONKSは、2021年12月24日時点でEthereumのみ対応しており、その後はPolygonやBinance Smart Chainへの対応を予定しています。
WSB STAKE:WSBトークンの流動性マイニング
WSB STAKEは、WSB DAppのプラットフォームトークンである$WSBを流動性マイニングで稼ぐためのサービスです。流動性マイニングへのステーキング方法は、全部で3パターンあります。$WSB単体の流動性マイニングは、インパーマネントロスがない分APRが低めになります。それに対し、$WSB-$BNBもしくは$WSB-$BUSDは、インパーマネントロスが生じることと引き換えにAPRが高めになります。
WSB ETP:上場取引型ポートフォリオ(Exchange Traded Portfolios: ETP)
WSB ETPは、株式における投資信託のようなサービスです。ユーザーはETPのポートフォリオを確認しながら、自分のリスク許容度に応じてUSDステーブルコインを使って投資をすることができます。
2021年12月24日現在、2種類のETPに投資できるようになっており、さらに2種類のETPの提供が予定されています。ユーザーが投資可能なETPは、いずれも低リスクで投資ができるようになっています。現在ユーザーが投資できるETPは、以下の2つになります:
WSB Macro Hedge ETP($WSB-MACRO)
$WSB-MACRO は、ポートフォリオの大半がステーブルコインで占められ、残りが金と$BTC, $ETHで構成されています。ETP価格の大幅上昇が狙えないものの、暴落リスクを最小限に留めることができるようになっています。
WSB DEFI ETP($WSB-DEFI)
$WSB-DEFIは、主要DeFiサービスのトークンで構成されています。これらのトークンの時価総額は大きいため、ETPを購入することで、実質的にDeFiセクターほぼ全体に投資をしていることになります。
WSBトークン
WSB DAappは、コミュニティガバナンスにより管理され、ユーザーはETPポートフォリオのリバランスなどのガバナンス投票で$WSB を利用します。$WSBは、10億枚がBinance Smart Chainで発行され、Ethereumにもブリッジされています。
WSBトークンの手数料分配
WSB DAppから発生した手数料は、$WSB保有者に分配されるようになっています。分配対象は、ガバナンス投票への報酬、およびWSB STAKINGにおける$WSB単体ステーキング報酬になります。具体的には、途中の$WSBへの交換過程で多少のスプレッドがあるものの、以下の通りに分配されます:
- 暗号資産ETPのスワップ手数料収入(0.3%):ガバナンス投票の報酬
- トークン化株式のスワップ手数料(0.5%)+株式ETPのスワップ手数料(0.3-0.5%)
- うち10%:$WSB単体ステーキング報酬(WSB STAKING)
- うち90%:ガバナンス投票の報酬