Iron Fish(IRON)の概要
Iron Fish(アイアン・フィッシュ)は、すべての暗号資産のユニバーサルプライバシーレイヤーを目指す、レイヤー1のブロックチェーンです。暗号資産のシンボルは $IRON になります。「鉄の魚」を意味するIron Fishの名前のルーツは、第2次世界大戦中に米軍が使っていたコードネームに由来します。当時、米軍はネイティブアメリカンのナバホ語を使い、戦場と秘密通信を行っていました。しかし、「潜水艦」に対応する言葉がナホバ語に存在しなかったため、「鉄の魚」を意味するIron Fishという言葉が充てられました。
通常、ブロックチェーンの取引は表向きは匿名であっても、アドレスから取引の流れを追跡することができるため、当事者が最終的に特定されるリスクがあります。また、Web3をビジネスに応用する場合、第三者が企業間取引の内容を見ることができるというのは実用の観点からも現実的ではありません。Web3を実用化の観点で考えると、取引の匿名性は欠かせないものであり、ブロックチェーンからもたらされるデータの真正性が何よりも重要です。そして、いざというときに第三者によって取引を監査できるようにする必要があります。Iron Fishは、そのようなニーズに応えるべく開発されました。
Iron Fishにより、様々な種類の暗号資産がIron Fish上にブリッジされ、今まで第三者が追跡可能だった暗号資産の取引においてプライバシーを確保することができるようになります。Iron Fishのプライバシー技術には、Zcash($ZEC)で知られたゼロ知識証明*1の実装であるzk-SNARKs、およびSaplingが採用されています。これらの実績ある技術により、ユーザーは暗号資産の取引において業界最高水準のプライバシーを確保できるようになります。Iron Fishでは、これらを「暗号資産のためのプライバシーレイヤー」「ブロックチェーンのための真のSSLレイヤー」と表現しています。
Iron Fishは、特にユーザビリティに力を入れ、大規模な分散化を実現しようとしています。Iron Fishは、エンジニアレベルのスキルがない一般ユーザーでもWebブラウザでノードを直接実行できるようにすることで大規模な分散化を実現しようとしています。また、Iron FishのコードベースはTypeScript + Rustで、世界中の100万人以上のJavaScript開発者が貢献できるようになっています。このように、Iron Fishはチェーンが広がりやすくなる技術的要素を備えています。
また、Iron Fishは過去に大規模な資金調達を行いました。最初のエンジェル投資ラウンドではSlow Venturesと、Andreesen Horowitz (a16z) の元ゼネラルパートナーでCoinbaseの元CTOでもあるBalaji Srinivasanが中心となり、530万ドルの資金調達を行いました。その後のシリーズAラウンドでは、a16zがリード投資家となりSequoia、MetaStable、Electric Capital、Arrington Capitalらが参加し、2760万ドルの資金調達を行いました。シリーズAのラウンド後、a16zはIron Fishへの投資について解説記事を発表しています。
Iron Fish(IRON)の特徴
外部チェーンから資産を持ち込みプライバシー化
Iron Fishは、ブリッジを経由することで、ユーザーが他のチェーンからIron Fishに資産を持ち込み、非公開で取引ができる環境を提供します。例えば、現状流通している$USDTはいずれのチェーンにおいても取引が公開されていますが、ユーザーが$USDTをIron Fishに持ち込むことにより、$USDTの非公開な取引を行うことができるようになります。また、Iron Fish上で直接カスタム資産を作成することにも対応しています。
Iron Fish上で流通している資産は、ブロックエクスプローラから確認できるようになっています。
すべてのトランザクションが非公開
Iron Fishは、Zcashで知られた技術であるzk-SNARKsとSaplingを採用しています。zk-SNARKsは、本来当事者間で対話を行わなければ行けないゼロ知識証明において、非対話性を実現した技術であり、Saplingはzk-SNARKsを用いたトランザクションを大幅軽量化した技術です。
Zcashは、取引がデフォルトでプライバシーが保護されない公開トランザクションになっていますが、対照的にIron Fishはデフォルトでプライバシーが保護された非公開トランザクションになっています。
ただし、Iron Fishではコンプライアンスに対応するため、取引を行った当事者が非公開のトランザクションを選択的に開示することができるようになっています。この仕組みでは、ユーザーは表示キー(View Key)を利用することで第三者に詳細を表示することができるようになります。
誰でもノードを構築可能
Iron Fishでは、誰でもノードを構築できるようになります。これは、Iron Fishがほとんどのブロックチェーンにおけるアクセシビリティの悪さを問題視しているためです。Iron Fishは、エンジニアアのみしか構築できないBitcoinのノードが”1万個しかないこと”を例に挙げており、そのためにはアクセシビリティを良くすることが重要だとしています。
具体的に、Iron Fishは2つのアプローチでアクセシビリティの改善を行います。
1つ目は、ノードの通信にNAT(Network Address Translation)を容易に越えることができる通信プロトコルを利用する点です。通常のネットワークは、セキュリティのためにブロードバンドルーターをはさみ、ファイアウォール配下にあります。このような環境では、一般ユーザーがノードを構築し、NAT越えできるようにするためには、ネットワークの知識が必要になります。Iron Fishのノードは、WebSocketでブートストラップノードへの接続を行い、その後のノード同士の通信でWebRTCを用いる手法をとります。これにより、NAT越えが容易になります。
2つ目は、ノードのユーザーインターフェイスを簡易にするアプローチになります。Iron Fishでは、他のブロックチェーン同様にコマンドラインのインターフェイスを提供する他、Webブラウザでもノードを設定可能にします。
これらのアプローチより、技術スキルに乏しい一般ユーザーがノードを構築できるようにすることにより、Iron Fishネットワークの分散化を促進しようとしています。
マイニング(Proof of Work)を採用
シビルコントロールにProof of Stake(PoS)を採用したブロックチェーンが増えている中、Iron FishではProof of Work(PoW)を採用しています。つまり、Iron Fishではマイニングを行うことで$IRONを採掘することになります。この理由として、プロジェクトはPoW, PoS, dPoSの長短所をリサーチした上で、最終的にPoWのシステムが安全で、攻撃ベクトルがPoSよりはるかによく理解されており、分散化をするためのより良い方法であると結論付けています(参考:FAQ)。
IRON トークン
Iron Fishは、2023年4月21日午前1時(日本時間)にジェネシスブロックを生成し、メインネットの稼働を開始しました。
IRONトークンの発行計画
Iron Fishのマイニングにおけるブロック生成時間は60秒になるように調整され、マイナーがブロックの生成に成功するとブロック報酬と手数料を獲得することができるようになっています。Iron Fishの採掘難易度は動的な仕組みになっており、前のブロックの生成が60秒を切った場合に採掘難易度が上げられ、60秒を上回った場合に採掘難易度が下げられます。
$IRONは、ジェネシスブロックで 42,000,000 IRON が発行され、それ以降はマイニングで新規発行されます。総供給量の上限は 256,970,400 IRON で、チェーンがローンチしてから100年以上はブロック報酬が発生するようになっています。
ジェネシスブロックから最初の3年における$IRONの供給は以下のようになり、総合的な発行ペースは、さらに下のグラフの通りになります。
年数 | ブロック報酬(60秒のブロック時間) | 総供給 |
---|---|---|
初期発行 | 0 | 42,000,000.00 |
0-1年 | 20 | 52,512,000.00 |
1-2年 | 19 | 62,498,400.00 |
2-3年 | 18.125 | 72,024,900.00 |
IRONトークンを売買できる取引所
$IRON は、以下の取引所で売買することができます。